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さくさくネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第8話

◆Episode08「M・P-メモリーポリス-」◆ (監督:根本実樹 脚本:長谷川圭一 特技監督:北浦嗣巳)
 「待って下さい! ナパーム弾を使えば、僕やこの子まで!」
 前回の悪夢のショックを引きずってか、状況如何で副隊長は自分を躊躇無く焼き殺すと信じている孤門発言は思わず吹きました(笑)
 ゲンゴロンは冷凍弾とナパーム弾のコンボによって退治され、ダークフィールドではネクサスが辛くもファウストを撃退。少女と子犬は無事に救出されて事態は解決を見るが、通信不能中の別行動を問題視された孤門と副隊長は、査問会議に掛けられる事に。
 「意外でした。僕、副隊長の事を誤解してたみたいです」
 単独行動は命令無視による自らの独断であり、副隊長はそんな状況でも尊い命を救ったのだと熱弁を振るい、査問終了後に夜叉の形相で黙り込む副隊長に対し、なんだかんだ言いながら少女を助けてくれたんですね、というか人間もビーストも関係ないハッピートリガー女だと思っていてごめんなさい、とにこやかに話しかける孤門くんのメンタル、さすがにちょっと気持ち悪い。
 副隊長の心情は窺いしれないという部分はさておくにしても、どこからどう見ても怒っている人に対して、「へっへっへ、これって謹慎処分ですかねー、やっとこの仕事にも慣れてきたのに、困っちゃうなー」とへらへら話しかける神経の配線がある意味でまごうことなきヒーローになっているのですが、それは副隊長でなくても「吐き気がする」と言われて仕方ありません。
 真っ直ぐとか、空気が読めない、とかを通り越した孤門の無神経(正しく、神経が通っているのか疑わしい)な精神性と思考回路には、やはりどこか恐怖を感じます。
 任務に従い目の前の命を救えないことに抗う孤門くんが実は一番、「真理」や「救済」の名の下に大量虐殺のスイッチを押せそうというか。孤門って、何が現実で何が虚構かわからなくなっているというよりも、自分ワールドが強固すぎてそれ以外の価値観を受け入れられなくなっているように見えるのですが。
 「人を助ける事の、どこが安っぽいんだ……」
 副隊長から痛烈な罵声を浴びた孤門は、助けた少女を見舞い、少女が自分を覚えていない事にショックを受けた帰り道、黒塗りのバンに乗ったティルトの情報工作班――M・P(メモリーポリス)――の接触を受ける。
 「ずいぶん愚かな真似をするのね。ナイトレイダーの隊員が勝手に生存者へ接触するなんて」
 ホントなんで、そのレベルの講習もしていないんですかね?!
 さすがに第8話ともなると、善良な常識人というより、現実認識の極端に鈍い非常識人に見えてきてしまうのですが、重ねて、孤門くんがぶつかり、そして突破していこうとする(もう一つの)現実をショッキングに描こうとするあまり、その世界を成立させる為の前提となる部分が施工不良になっていて、土台の底が抜けているので建物が立たない、というのが今作の困ったところ。
 さすがに怒られた孤門くんはMPによってある病院に連れて行かれ、ビースト事件に遭遇したショックで精神に異常を来した患者が、MPによって記憶を消される事で恐慌状態から脱する場面を見せつけられ、MPを一方的に憎まれ役として描かず、MPなりの正義の理屈と、目の当たりにした現実を受けて生じる孤門の価値観の揺らぎ、が描かれたのは良かったです。
 ……にしても、ここまでで一番、無視でも頭ごなしでもなく、孤門くんに向き合って転職先について説明してくれたのがメモリーポリスってどうしてそうなった。
 「この世界には…………知らない方が幸せな事もある、か……」
 「悩み事か」
 そんな状況に危機感を抱いたのか、隊長、ようやく孤門に話しかける。
 「チームに配属されて二ヶ月、そろそろいろんな矛盾に突き当たる頃だ。この時期、誰もが自分の仕事に疑問を持つ」
 そもそもビーストは何か、という謎についてなどを語る隊長に対し、考えていたらキリが無いからって、考えなくなったら駄目なのでは、と切り返す孤門くんは珍しく格好良かったのですが、Aパートでアリバイ的に巨大戦をこなした後(勿論無いよりはマシなのですが、ネクサスvsファウストは、苦戦も逆転も全くドラマ性が無く、尺の都合に当てはめただけの戦闘にしかなっていない)、Bパートは延々と悩める孤門くんを描いていくという構成が単純に面白くなく、既存のヒーロー物の文法から離しているのはいっけん挑戦的なのですが、むしろ、既存のヒーロー物の文法の中で成立させる方が挑戦的であるという点において大きな不満が出ます。
 「何が信じるべき現実なのか、それを最後に決めるのは、自分自身だ」
 隊長はいいこと言った風味で投げっ放すとそそくさと去って行き、彼女と一緒の写真を見つめて逃避する孤門。ところがその彼女の身に異変が……?! で、to be continued...
 ナイトレイダーも頑張れば巨大ビーストを倒せる事と、子供時代のトラウマを抱えているらしい副隊長が救出した少女に笑顔を見せて優しく接するシーンが提示されたのは良かったですが、この先の展開に期待して部分的な良かった探しをするしかない、というのが残念な現状。
 次回――モグラの穴からのそっと出てくるファウスト! 予告の切り取りだと物凄く間抜けな映像になっていましたが、大丈夫かファウスト?!