『仮面ライダーゼロワン』感想・第3話
◆第3話「ソノ男、寿司職人」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也)
「人工知能搭載人型ロボ・ヒューマギアが、様々な仕事をサポートする新時代。AIテクノロジー企業の若き社長が、人々の夢を守る為、今、飛び立つ――」
今回から通常OPとなり、入りの「ゼロワンゼロワンゼロワン……」というスキャット部分のリズムに合わせて次々と主要キャラとその変身する仮面ライダーが映し出されるのが大変格好良く、滅亡ギルド側もライダーに変身する事を出し惜しみせずに見せて複数ライダーの存在を押し出した作り。
そして明らかにそこ、ボスキャラの登場タイミングなのですが先代ーーーーー(笑)
本編にはまだ劇中CMにしか登場していないのに、今回も先代の深すぎる爪痕に持っていかれてしまいましたが、OP映像において、バルキリーがゼロワンやバルカンと同格で描かれているのは、今後の楽しみなポイント。暴走ヒューマギア集団とのバトルシーンで、しれっとバルカンを踏み台代わりに使っているのもおいしい
……で、お客様! そこのお客様! ビル内部で拳銃を剥き身で持ち歩くのはご遠慮下さいお客様ーーー?!
不破諫、逮捕。
後は秘書子さんのウェイトがかなり大きく、こちらも期待大。秘書子さんは立ち位置のヒロイン度が物凄く高いですし、ここまでの描写も良い感じなので、順調に成長していってほしいです。
アルト&イズが寿司職人ヒューマギアを社長自ら売り込んでいる頃、デイブレイクタウンでは滅亡ギルドが本日も暗躍中。
「我らがアークの完全復元は近い」
第1話で存在を強調されていた湖底の赤い光がクローズアップされ、どうやら滅亡ギルドは、シンギュラリティに到達したヒューマギアのデータを集めているらしき事が示唆。
一方、寿司職人ヒューマギア・一貫ニギローの売り込みは難航し、そこに訪れたA.I.M.S.の刃唯阿が先端テクノロジー大好きな技術屋らしき顔を見せ、ただのトリガーハッピーではありませんでした!
「テクノロジーと共に生きるのが、新時代の生き方だ。ヒューマギアとどう付き合うかは、ようは人間次第」
唯阿は不破と違ってヒューマギアにも肯定的であり、A.I.M.S.はあくまで「違法ヒューマギアの取締機関」であって、「ヒューマギア(飛電)の敵」ではない、というバランスを提示。
唯阿に助け船を出して貰うアルトだが、三つ星寿司屋の頑固な老店主は首を縦には降らず……まあ、ロボットの握った寿司に心がこもっているかという形而上学的な問題以前に、いちいち「魂の一貫」とか「匠の一貫」とか言いながら寿司を出してくる職人は、個人的には御免被りたいですが!
契約交渉の難航中に、床屋ギアが変貌したイカマギアが近傍に出現。バルカンとゼロワンはイカのゲソ攻撃に苦戦した末にイカスミで逃げられてしまい、今回のアルトはひたすらくだらない言葉遊びを繰り返す路線なのですが、アルトのお笑いキャラをどう見せていくのかは試行錯誤中といったところでしょうか。
その戦闘をイズが冷めた瞳で見つめているので、これは後で、「是之助様、貴方のバカ孫、ごほん、失礼しました。もとい、アルト様はまだゼロワンの能力を使いこなせておりません」みたいな事になるのかと思ってドキドキしていたら、解析した戦闘データを衛星に送る事で、新たなプログライズキーを製造、と超便利・超お手軽。
今後、逆にイズが居ないとゼロワンが強化できない、なんて事もあるかもですが。
新たなキーを手に入れたアルト達は再び営業に向かい、元弟子から得た情報を元に大将秘伝の握り技・天空真心握りを再現する事で、老いた職人の心の隙間に忍び込むに成功するが、イカマギアが広範囲のヒューマギアに滅亡迅雷精神を注入した事により、ニギローも暴走してしまう。
暴走ニギローの破壊を躊躇う内に、暴走マギアの軍団に襲撃されそうになったアルト達を救ったのは、イカの行方を追っていた唯阿。
「一つ教えておいてやる。バックアップさえあればいつでも復元できる。それが人工知能。それがヒューマギアだ。たとえ壊しても作り直せば済む話」
「そう簡単に割り切れるかよ。ヒューマギアは人間と心を通わせるパートナーだ! 道具じゃない!!」
「――ただの道具だ」
先端技術畑でヒューマギア肯定派だが、それはあくまで「道具」としてである唯阿と、ヒューマギアを道具扱いする事ができないアルトの間の断絶が描かれ、いっけんアルト寄りだったが本質として全く違う所を見ている唯阿の、第三のスタンスが綺麗に確立。
アルトに向けて簡潔に言い放った唯阿は、オレンジ色のプログレスキーを取り出すとクルクルと回して装填し、オレンジと白というカラーリングの、新たな仮面ライダーに変身。
「人工知能特別法違反を確認。対象を破壊する」
唯阿のライダーは、ゼロワンやバルカンよりも更にスピード感のある華麗な体術で暴走マギアを次々と迎撃し、猫モチーフと思われるデザインといい“しなやかさ”を重視したのでしょうが、きっちりと差別化されたアクションは非常に良い感じ。変身アイテム的にも警察的ポジションとしても銃は手放せないようですが、今後もっと格闘を押し出してくれると、なお嬉しい。
あと、一度ぐらいバルカン(の頭)を踏んでほしい(待て)
ヒューマギアの優秀さを誉めていた唯阿の真意、暴走状態で他と混ざってしまえばニギローを区別できない自分自身……言葉を失い立ち尽くすアルトの背中を押したのは、思わぬ声。
「道具じゃないさ。あの姉ちゃんも言ってたろ。ヒューマギアとどう付き合うか。ようは、人間次第って」
「…………人間……次第……」
そもそも、物言わぬ道具にさえ思い入れを持つのが人間なればこそ、ヒューマギアに道具として接するかどうかも人それぞれ、というのは、現実へのフィードバックを伴いつつ前半の唯阿の台詞を拾うのも効いて巧い接続。
一方で、“人間”の側が「心を通わせるパートナー」だと思っていても、“ヒューマギア”の側があくまで「道具」に徹するならばそれは一方通行でしかないのですが、仮にそれに満足できず、ヒューマギアに「道具」以上のものを求めた時、果たしてそれは双方にとって幸福なのか?というのは、もしかしたらこの先、アルトを待ち受ける落とし穴になるのかも。
「ヒューマギアに心はあるのか?」「心はデータ化できない」というロボットテーマの定番を用いつつ、その向こう側にあるのは、「心を得たヒューマギアは幸せか?」であり、先鋭化したアルトはもしかしたら滅亡迅雷ネットに近いのでは、という可能性も窺わせます。
大将の言葉に立ち直ったアルトはゼロワンに変身し、ネコライダーが暴走マギア軍団を引きつけている間に姿を見せたイカマギアと激突。
「今日のお前に最適なネタは……これだ!」
新たなプログライズキーを用いてバッタからサメにフォームチェンジしたゼロワンは、連続チョップでイカゲソを切り払い、両腕から大量の牙を広げて放つバイティングインパクトでこれを撃破。
一方、蹴り飛ばして地面を滑らせた木箱と同じスピードでダッシュする事で、常に遮蔽物を維持しながら射撃する、という格好いいアクションを見せたネコは、「俺は俺のやり方で探す」と毒づいてから出番の無かった不破(バルカン)が背景に登場した所で、高速移動からの回転包囲射撃・ダッシュラッシングブラストで、暴走マギア軍団を一掃。
うろちょろしていたバルカンの姿を目に留め、余裕たっぷりの態度で変身解除する。
「これが戦い方の手本だ」
筋力でキーをこじ開ける男にスマートさを見せつけ……それにしても、腰、細い。
この辺り、ベルトというのはある程度、男性性のあるアイテムであり、男性性のあるアイテムだからこそ男児用玩具になるのだな、となんか納得。そこで敢えて、(バルカンと共通装備ですが)ベルトを強調して見せるところに、刃唯阿というキャラクターの一つの狙いがありそうですが。
「ヒューマギアにも心があるように見えるのは、俺だけ?」
「……はい?」
「だって、大将の心を動かしたからさ」
結局、破壊されてしまった一貫ニギローだが、真心寿司の大将は、データのリセットされた新品と敢えて契約し、一から寿司を教えてやる、と笑顔を見せる。
「魂の一貫、イカ一丁」
「大将がそう言うなら、いっか」
「今のは、「イカ」と「いっか」をかけた、面白いジョーク」
「え?!」
「はい、アルトじゃーナイト!」
着々と、余計な学習をしていく秘書子さん(笑)
「……いや今のは偶然だから! ていうかここを真似しないで?!」
「イカもう一丁!」
「ニギロー、ストップ!」
和気藹々としたテンポの良いやり取りで、つづ……
「飛電インテリジェンスの企業秘密を入手しました」
くかと思いきや、アルト=ゼロワン、速攻でバレた。
寿司屋を訪れてアルトに助け船を出したと思われた唯阿の真の目的はニギローへの接触であり、スマホのデータを見せると同時にニギローに不正アクセスしていた唯阿は、視覚データを自動送信させるプログラムにより、ニギローを通して社長室の秘密ラボ映像を入手。それによりデイブレイクで消滅していたと思われていた、プログライズキーのデータを飛電インテリジェンスが有している事を掴み、隠蔽工作、いきなり露見する。
そもそも唯阿が寿司屋に突然現れたのは、飛電の社内を探る狙いの為だったというのは納得ですが、滅亡ギルド側以外からもあっさりハッキングを受けるヒューマギアのセキュリティにはますます疑問が高まります(笑)
「つまり、方舟は甦る。その鍵となるのが、飛電の社長……ゼロワン」
唯阿から報告を受ける上司らしき人物として、チェスの駒を動かす伊達男が顔は映さずに登場し、今度こそ、つづく。
パイロット版の出来が良すぎたので、制作上の難しさ(通常、1-2話の完成前に撮影に入る為)も含めて出来が多少落ちるかな、というのは予想通りだった第3話。特に、天空真心握りを見せ、その非効率さの中にこそ大将の大事にする真心が存在するという解析を披露したらころっと大将がほだされる、というのは強引かつ飛躍しすぎでしたが、職能ギアとゲストとの絡みをやりつつ新ライダーと新フォーム登場までを1話に詰め込もうと思うと致し方ないかなという面はあり、ここが単発エピソードの下限の基準(これ以上雑になると辛い)かな、という出来。
一方で、A.I.M.S.側の新ライダーは前回に引き続き印象的な登場と活躍を見せ、ヒューマギアを「優秀な道具」としてのみ捉える唯阿の物の見方も劇的に伝わり、唯阿スポット回としては満足の行く内容。
「わかってないなぁ。道具は使いようだ」
と口にしている時に見ていたのは、ニギローから贈られてきた盗撮映像、とわかってみると、邪悪さ200%増し(笑)
アルトと不破ほど明確な対立点を持たない代わりに、何者かと繋がっている、というのも巧くポジションの個性化になりました。
そして、どちらかといえば堅物キャラかと思われた唯阿が、任務(?)の為には不正アクセスからの盗聴盗撮お構い無しであり、「道具の有効活用」と「倫理観による自制」のバランスが取れているのか不安なマッド気質も窺われる一方で、いっけん狂犬体質の不破が少なくとも現時点では、通りすがりのヒューマギアへの職務質問から別件射殺をキめない程度には遵法精神を持ち合わせているように見える、という位置づけも面白いところです。
次回、今度はゼロワンとバルカンが同時に新フォーム?! とまたも忙しくなりそうですが、パイロット版の貯金がそびえている内に、序盤の濁流を乗りきってほしい。
ところで、中澤監督はこれで、『ルパパト』→『ジオウ』→『リュウソウジャー』→『ゼロワン』と、文字通りに四作連続で3-4話を担当する事になっており、新鋭の抜擢と入れ替えに伴って実績と信頼感のあるエースを……という事情は感じられますが、そろそろ腰を据えて年間ローテ参加も見たいなぁ、とは思うところです(監督的に、どちらが撮りやすいのかはわかりませんが)。