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しんじるネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第7話

◆Episode07「魔人ファウスト」◆ (監督:根本実樹 脚本:長谷川圭一 特技監督:北浦嗣巳)
 革ジャンさんをかばったところ、副隊長にざっくり撃たれる、滅茶苦茶リアリティのある悪夢で目覚める孤門(笑)
 (何が夢で、何が現実なのか、全てが曖昧だった。でも……信じるべき現実は一つに違いない。僕は自分に、そう言い聞かせていた)
 相変わらず、コツコツ貯めていた結婚資金をFXで全て溶かしてたみたいなモノローグを呟く孤門くんは深夜の基地で副隊長に出会ってしまい、冒頭から、ウォーターサーバーを巡って争うみみっちい二人。
 そして、まさかの黒のタンクトップ三連発(笑)
 孤門と副隊長に関しては、いつ緊急出動がかかってもいいように、制服の下のインナーを常時着用、でわからなくもないですが、どうして革ジャンさん改め姫矢まで被せてしまったのか。
 地中から触手を伸ばして人間を襲うビーストが出現し、被害者が土中に飲み込まれる映像を劇中ハンディカムカメラが捉えた映像として見せたり、穴の中からぺっと吐き出されるスプレー缶など、低予算B級クリーチャーパニック映画めいた演出が続き、妙に間延びしたり薄暗い映像が延々と続くよりは、こういう工夫を入れてくれた方が好みです。
 出撃するナイトレイダーだが、現場となった廃工場に、少女が取り残されているかもしれない、という情報がもたらされる。
 「救出よりビースト殲滅を優先して下さい」
 「…………了解」
 「救出より、殲滅を優先するんですか?」
 生存の可能性は低い、とシビアな判断を下す白い人からの命令に、隊長が返答するまで躊躇う間があったのは良かったのですが、それはそれで孤門くんに問われると、諭すでも自ら命じるでもなく無視を決め込むので、部下との間に信頼関係を築くつもりは果たしてあるのでしょうか。
 前任者が行方不明なのも、副隊長があんななのも、7割方、この人が悪いのでは。
 一方、ニュースで異変を知り現場へ駆けつけた姫矢は、少女の気配をキャッチして救出に向かおうとするが、謎の攻撃を受けて足止めをされる。光線が巻き上げた土煙の中から姿を見せたのは、「ファウスト」を名乗る、黒い瞳の魔人。
 「逃げても無駄だ。何故なら私は、おまえの影なのだから」
 おお、声が、稲田さんだ!!
 「影だと?」
 「光と影。おまえの手にした光が、私という影を作り出したのだ」
 ウルトラマンをベースにしつつ、黒い瞳が異彩を放つファウストは、互い違いに配置された赤と黒という非対称のカラーリングも特徴的。そして声が稲田徹さんで私が得!
 「どういう意味だ」
 「いずれわかる」
 「確かに、俺の心にはぬぐいされない影がある。だが、それは貴様なんかじゃない!」
 変身アイテムを抜き放った姫矢はウルトラマンへと姿を変え、並ぶとこちらの方が黒色の部分が多くて悪い奴っぽい?!
 作戦司令室では白い人が二つの特殊振動波をキャッチし、とりあえず犯人ではなかった。
 巨大化したネクサス(作品タイトルであって、今作におけるウルトラマンの固有名称かどうか現時点では判断つかないのですが、同タイプの存在が出てきたので区別をつけやすくする為、便宜上、姫矢の巨人を「ネクサス」と呼称します)は亜空間を展開しようとするが、ファウストの妨害を受け、それはナイトレイダーズにも強力な電波障害という影響を及ぼす。
 「ふふふふはははははははは、ここは無限の闇、ダークフィールド。光の存在である貴様に、勝ち目はない」
 ダークフィールド内部でネクサスとファウストの激突が始まった頃、孤門と副隊長は巨大ミミズと遭遇し、人を襲う巨大ミミズ的なものと戦う映画があったような……とうろ覚えで検索したら、『トレマーズ』か(未見なので、全然違うかもですが)。
 今回、穴から飛び出す巨大ミミズはCGで表現されているのですが、CG(そこにないもの)相手の芝居に慣れていないのか、二人揃って動きも表情もぎこちなくて、アクションシーンに説得力を与える、プロらしさ皆無なのがきつい。
 まあ、ナイトレイダーズの装備も、演技がしづらそうではありますが(この辺りも今作の設計的問題点)。
 ミミズと一当たりして転進中、物陰に少女と犬の姿を発見した孤門は、少女の捜索を主張。副隊長の制止を無視して一人で走り出してしまい、通信も途絶した状態で勝手な単独行動とるなやボケ! という副隊長の言い分はもっともなのですが(一応、孤門が標的になる可能性を示唆してもいる)、かといって現場に取り残されているかもしれない人命救助の為に現段階で出来る事を何も考えようとせずに一方的に上官権限だけ発動しようとするのもあんまりで、信頼感さーん! お客様の中に、信頼感さんはいらっしゃいませんかー!
 ……命がけで戦うチームの信頼感は一朝一夕に芽生えない、というのはリアルかもしれませんが、それ以前の段階で、孤門くんに命がけの戦いに参加できるレベルの教育が明らかに施されておらず、そんな新人に対する受け入れ側の体制にも問題が山積みで、見せたいリアリティを成立させる為の前提となるリアリティが既に崩壊してしまっているという大変残念な状況。
 ダークフィールドではネクサスとファウストが戦っており、キックの打ち合いの際にアップになった爪先のデザインや、クラウン(王冠)を思わせる頭部の形状からして、ファウストのモチーフはクラウン(道化師)でしょうか。そう見ると、ボディの模様と配色は 道化服のイメージにも見えてきます。
 ただ、モチーフが道化だとすると名前は「メフィスト(フェレス)」の方がふさわしそうな気もしますが、語感なのか、商標関係なのか、仕込みなのか。
 少女と犬を発見した孤門が、少女との交流でヒーロー度を上げるもビーストの本体に追い詰められ、ネクサスはファウストのダークメテオを帯びて地に倒れ、あちらもこちらも大ピンチで、To be continued...
 ナイトレイダーズ関連の諸々を無心で受け流しさえすれば、謎の魔人が登場してネクサスと激突という展開は面白かったです。
 ナイトレイダーズ/TLTに関しては、とにかく、素人を連れてきて「今日からおまえは軍人だ!」ノリで任務に当たらせる段取り及び、その過程で関わる周辺人物達の描写があまりに雑な為、「ナイトレイダーズ/TLTの見ている現実」と「孤門くんの見ていた現実」の対比が成立せず、「常に沸騰している副隊長」と「常にぬるま湯の孤門くん」という個人の関係性――ミクロサイズの対立から“世界観に拡張してくれない”のが困ったところ。
 作り手の側は、マクロな世界観の対比を、孤門vs副隊長に象徴させている意図なのかもしれませんが、あまりにも残りメンバー3名の描写が薄い為に、副隊長が過激派なのか副隊長が標準なのかの判断材料が少なすぎて、象徴化の機能が効果的に発揮されていません。……しかも後者だった場合、残り3名の位置づけは「命令に黙々と従うウォーマシン」という事になってしまうわけですが……それでいいのか。
 現状、そんなウォーマシンの世界に放り込まれた孤門くんの“異常の中において平常であり続ける事”こそを「ヒーロー性」として描く意図が見えてはいるのですが、果たしてそれは「ヒーロー性」として成立するのか? という疑問が一つ生じた上で、「異常」への導入に成功しているとは言いがたいのが、厳しいところ。
 次回、なんとなくオチまで見えた上に、予想が当たると掘り下げられても興味の薄い辺りなのですが、はてさて。