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近年屈指の傑作パイロット版

仮面ライダーゼロワン』感想・第2話

◆第2話「AIなアイツは敵?味方?」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:高橋悠也
 大きな見所は、
 アプリを起動すると宇宙から降ってくるバイク。
 じいちゃーーーーーーん!!
 先代社長、第2話にしてもはや、「人類の夢と未来を真摯に考えていた偉人」ではまず無いだろう人物像になっていて凄い。
 今回もOP無しで、新社長となったアルトと秘書子の出社風景を描く中に様々な未来的なガジェットを散りばめていき、前回もでしたが、社長の車がさらりと自動運転なところなど、秀逸。
 「ここが或人社長の部屋になります」
 「……マジかよ?!」
 興奮するアルトですが、この社長室、7割方、ラボでは(笑)
 ここに座っていて落ち着ける人と落ち着けない人を大変選びそうですが、先代社長に高速で募っていく、ただのマッドサイエンティストだった疑惑。或いは、通信衛星ザットの傀儡だった疑惑。
 まあこの先、ザットの中で培養液に浸かった脳だけの存在になった先代社長が出てきても驚きません。
 果たしてその椅子は、世界の希望なのか、祖父の玩具なのか、人工知能の傀儡なのか……社長室で張り切るアルトを待ち受けていた最初の仕事は……政府関係者による任意の事情聴取であった。
 そして秘書子は、さらっとラボを壁で隠していた。(本日の隠蔽工作1)
 「内閣官房直属の、対人工知能特務機関・A.I.M.S.です」
 「エイムズ?」
 社長室に入ってきたのは、遊園地で暴走ヒューマギアとドンパチしていた男女の二人組。
 「これより飛電インテリジェンスに対し、取り調べを行います。私は技術顧問の刃唯阿(やいば・ゆあ)。そして捜査官の――」
 「不破諌(ふわ・いさむ)だ」
 前回に引き続き、人名や組織名など、固有名詞の示し方が丁寧なのは好印象。
 「覚悟しろ。返答次第ではおまえを連行する」
 「れんこう?!」
 社長就任から瞬く間に襲いかかる苦難がテンポ良く進行し、社長交代のアイコンとして印象づけたネームプレートを、机を叩いてひっくり返す事で不破とアルトの敵対関係が示唆される演出が細かく巧い。
 「隠し通せると思うな。ヒューマギアは殺人マシンだ!」
 アルトというよりは飛電インテリジェンスそのものに対して、隠蔽体質を指摘し攻撃的な姿勢を鮮明にする不破に対して、場を和ませようと新作ギャグを披露するアルトだったが、その反応を見るよりも早く、鳴り響く不審者警報。
 「人間は、残らず殺す!」
 謎のフード男により運送員ヒューマギアが滅亡迅雷精神を注入され、赤い絶滅ギアへと変身。
 ベルトのデザインや変身のシステムなどがゼロワンに似ている絶滅ギアですが、目の意匠がライダー的なライン(特にキバ似)になっているのは、デザイン上の共通要素にしていくのでしょうか。ヒーローと怪人が根を同じくする改造人間テーゼが仕込まれているならば、色々と不穏。
 エントランスに降りた唯阿と不破は絶滅ギアと戦闘を開始し、逃げる奴は殺人マシンだ! 逃げない奴は訓練された殺人マシンだ! と訪問先の会社内部に銃弾をばらまき、壁に張り付いて逃げようとしたギア(……ヤモリ?)を直撃弾ではたき落とす不破。
 「変身して畳みかける」
 背広の内側から青いパスケースを格好良く取り出す不破だが……開かなかった。
 その間にヤモリギアが体勢を立て直し、かわしたと思ったウイングカッターがブーメランのような軌道で戻ってくるのに気付くや、このプルトップ固いんですけど! と必死になっている不破の背中を蹴り飛ばして一緒に回避する、というのは唯阿の性格や咄嗟の判断力などをアクション一発で見せて大変良かったです。
 「武器の管理権限を持つ私の許可無しで、それは開かない」
 多分、先日の遊園地の一件で始末書を書かされた私怨も入った唯阿の一蹴りで不破が床を転がっている頃、アルトは秘書子から「A.I.M.S.に正体ばれないようにやっちゃって下さい」とさらりと後ろ暗いお願い(本日の隠蔽工作2)をされ、ゼロワンに変身。
 スピーディな蹴り技の連続でヤモリギアを社外に追いやるが、同類と誤解されてA.I.M.S.組に後ろから撃たれている内に逃げられてしまい、自身も慌てて物陰に隠れると変身解除して、なんとか不破をやり過ごす(本日の隠蔽工作3)。
 「プログライズキーのロックを解除しろ」
 「おまえみたいな危ない奴に許可するわけがないだろ」
 「A.I.M.S.の隊長は俺だ」
 「そのA.I.M.S.武装指揮権は私にある」
 唯阿と不破は至近距離で睨み合いの末に物別れし、猟犬ならぬ狂犬と鎖の関係というか、互いに個別の権限を持っている(肩書きや会話のやり取りを見るに、階級は唯阿が上な感じですが)というのは、今後のバランスをも含めて面白そうな関係です。
 女優さんの方の演技が固いのが、ポジション的にちょっと気になりますが、こなれていってほしい。
 飛電インテリジェンスでは「ただの防犯訓練」(本日の隠蔽工作4)と言い抜けを図っており、そこに戻ってきたアルトは、身を挺して副社長達を守ったガードマンギアに声をかける。
 「みんなを守ってくれて、ありがとな!」
 前回は踏み込まなかった“アルトがヒューマギアをどう思っているのか”が今回の主題の一つであり、アルトから感謝の言葉をかける事で他の社員達とは少し違う距離感を印象づける、というのがまずは手堅い布石。クライマックスにまとめて感情を放出するのではなく、順を追って気持ちや間合いを見せていく事でラストシーンまでしっかりと積み上げて到達する、というのが今回の良く出来ていたところ。
 「アルト社長。社員を守るのが、私の仕事ですから」
 あくまで機械として応対するギアだが、その損傷に目を止めたアルトは、父ギアの事を思い出し……
 「おまえの事は覚えておくよ。名前は?」
 「マモルです。是之助社長に名付けてもらいました」
 「……そっか。じゃ、俺の家族みてぇなもんだな」
 ガードマンギアの損傷箇所にハンカチを巻いてアルトは立ち去り、怪訝な表情でその背中を見送ったギアの顔にやがて自然な笑みが浮かぶが……それを目にした滅亡フードの男は物陰でほくそ笑む。
 冒頭、デイブレイクシティにおいて、
 「シンギュラリティが起きようとしている。データを回収しろ」
 「OK~」
 というやり取りがあるのですが、ここまでの描写を見る限りでは、AIの枠を超えた“自然な喜び(に限らない感情?)”の発生が、今作における「シンギュラリティ(技術的特異点)」という事になるのでしょうか。
 マスコミ相手に、先輩秘書子による鉄壁の塩ガードで対応する飛電インテリジェンスだが、アルトの追い落としを図る副社長派は、この一件を責任問題に発展させようとし……本当にこのタイミングでこの会社の社長になっていいのか、副社長さんにはもうちょっとよく考えてみてほしい(笑)
 その辺り如何にも小物っぽいのに、どうやって副社長の座まで上り詰めたのか割と謎な副社長ですが、「福添准」とはまた、随分な名前……ただ、「副添准」ではないので、もしかして超強運の持ち主なのかもしれません。
 脚本の高橋さんと大森Pというと、『エグゼイド』の時はネーミングに色々と言葉遊びを仕込んでいたようですが(小耳に挟んだぐらいなので詳細は知りませんが)、「是れ-其れ-或」を筆頭に、「イズ(IS)」とか「ザット(THAT)」とか、ただのお遊びなのか仕込みがあるのかは、気になってくるところです。
 「飛電(HIDEN)」=「HIDE-N(Nを隠す)」と読み解けるのは割と怪しいのでは、と勘ぐっていたり。
 出社初日にクビ?! と狼狽するアルトは、社長室に乗り込んできた不破に連れ出され、飛電とヒューマギアに対する不破の強い敵意を目の当たりにする。
 「かつて街一つが消えた爆発事故――デイブレイク。…………だが、あれはただの爆発事故じゃない。本当に起きたのは、ヒューマギアによる人間の大量殺戮だった」
 学生時代、デイブレイクに巻き込まれた不破は、大量の暴走ヒューマギアに追われて急死に一生を得ており、回想で描かれる無機質な殺人マシンに追われる恐怖が迫真で、これは根深いトラウマになっても仕方ありません。
 「その事実を飛電インテリジェンスは隠蔽し、事故として処理した。おまえの会社の悪事は、全て俺が暴いてやる」
 立ち尽くすアルトを間近で睨み付けて不破が去っていったのと同じ頃、ヤモリギアが再び会社前に襲来し、それを止めようとしたマモルはフードの男により滅亡プログラムを注入されてしまう。
 「叩き込め、滅亡迅雷ネット精神!」
 ……じゃなかった、
 「君も僕の友達だ。この会社を破壊して?」
 「この会社を守るのが……私の仕事です!!」
 オーバーライドに抵抗するマモルはアルトに巻いてもらったハンカチを掴みながら絶叫し、定番ながら、ヒューマギアの「ロボットとしての部分(与えられた職務への意識)」と「人間性めいたものの発露(それ以上の感情)」の混濁が描写として積み重ねられていって、手堅い。
 「はは、違う違う。君の仕事は、人間を殺す事」
 「!……マモ…………滅亡迅雷ネットに接続」
 ヤモリギアは部下を引き連れた唯阿が対応して飛電ビルから引き離すが、社内で避難誘導を行っていた秘書子とアルトの前に、絶望フードの男が姿を見せる。
 「誰だおまえ?」
 「僕? …………んー……新時代の支配者、かな?」
 スべり続ける売れないお笑い芸人とは別のベクトルで、ちょっと可哀想な子だった!
 それはそれとして、早速アルトと敵サイドが邂逅してくれたのは、変に引っ張って余計なストレスを生まずに良かったです。全体的に、尺をフルに使って詰めに詰め込んだエピソードなのですが、見せる部分と削る部分の取捨選択が非常に良く(或いは脚本の完成度が凄まじく高く)、雑になるかならないかギリギリの所を疾走しながら出し惜しみなくキャラクターを(過去も踏まえて)繋げていく展開が、結果的にピタリとはまりました。
 フード男と共に現れたマモルはサーベルタイガーギア(頬の膨らみ部分がライダー目を取り込んだデザイン)にぜつめライズし、必死に止めようとするアルトを、事も無げに吹き飛ばす。
 「一度データを改竄されたヒューマギアは、元には戻りません」
 「……じゃあどうすりゃいいんだよ?!」
 「破壊するしか、ありません」
 「…………嘘だろ」

 「人間は――」
 「――皆殺しだぁ!」

 一方、倉庫街でヤモリギアと交戦していた唯阿の元には、どこかでベルトを手に入れた不破がやってきて、右手に銃を構え、左手にぶらぶらベルトを下げた登場が、なんか変な格好良さ(笑)
 「ヒューマギアは残らずぶっ潰す!」
 「よせ! 今のおまえが扱える代物じゃない!」
 「俺がやるといったらやる! 俺がルールだ」
 ベルトを巻き付けた不破は、唯阿の制止を無視してキーをこじあけようと力を込め……
 「ヒューマギアは絶対に許さない……」
 そして飛電ビルでは……
 「…………ヒューマギアのおかげで、今の俺がある……」
 不破がヒューマギアにより死と絶望の淵に立たされたあの日あの時、飛電或人は、父ヒューマギアによって命を救われていた。
 少年アルトの前で父ギアが激しく損傷していた理由が明かされ、アルト、不破、共に今の生き方に納得の出来る背景を映像で示し、そこから変身へ繋げたのは、実にお見事。
 「アルト……夢に向かって……飛べ……」
 「お父さん! ねえ! お父さん! おとうさーーーん!」
 泣きじゃくっていたあの日の少年は、今、ヒューマギアの夢を証明する為に、立ち上がり――

 「ヒューマギアが、俺を守ってくれた…………ヒューマギアは…………殺人マシンなんかじゃない! 人類の夢だぁ!!」
 「ヒューマギアは人を傷付ける! 人類の敵だぁ!! 一つ残らず、ぶっ潰す!! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 恐怖と絶望を限りない憎悪へと変えたあの日の少年は、今、ヒューマギアの真実を証明する為に、鍵を開ける――
 筋力で!!
 「……なに?!」
 唖然とする唯阿を気にする素振りもなく、不破はベルトに取り付けた銃に力任せで起動した青いキーを填め込み、ベルト音声において「カメンライダー」という単語が登場。
 セキュリティ的には色々と不安ですが、物理的なキーロックを情念で打ち砕き、その情念の発生源に十分な説得力を与えた事により、第二のライダーの初登場も非常に劇的なものになりました。
 「――変身!」
 撃ち出した特殊弾丸を殴りつける事で展開した装甲が全身に、というのも格好良く、不破は青と白のツートンカラーな仮面ライダーに変身。
 おおまかなデザインを見た際、顔の両サイドの突起部分がヤマアラシ的な針の意匠に見えて、2号ライダーのモチーフはハリネズミか! 一時期だいぶ流行ったしな! この、仮面ライダーコビコビめ! みたいに思っていたのですが、キーのイラストや必殺技のCGを見るに、モチーフは狼でしょうか。それはそれとして耳部分がチャームポイントみたいになっていますが、不破の性格的にも納得というか……ロンリーウルフか!
 飛電ビルではアルトも決意と共に変身し、スピード感のあるバトルが交互に展開。その最中、唯阿は青白ライダー――仮面ライダーバルカンの戦闘を撮影しながらナレーションを吹き込み、単なる資料映像なのか、不破の感知しない所でどこかと繋がっているのか、現時点では不明。
 ゼロワンに追い詰められたタイガーは盗んだバイクで走り出し、宇宙バイクで後を追うゼロワンと、そういえば第1話では無かったバイクチェイス。両者の戦いはいつしか倉庫街にもつれこみ、ゼロワンは鞄ブレードにキーを装填する。


 「おまえを止められるのはただ一人……俺だ!!」

 ゼロワンはライジングカバンストラッシュ(まさか技名に「鞄」が入るとは……)でタイガーギアを両断し、「倒す」ではなく「止める」というアルトのスタンスが、決め台詞に入ったのは、立ち位置をこれ以上なく示して秀逸。

 「ぶっ潰す」

 一方の荒ぶるバルカンは、特殊ホーミング弾でヤモリギアを磔状態にすると、バレットシューティングブラストで滅殺。高威力の銃弾が絶滅ギアごとコンテナの列を貫くとその向こうには戦いを終えたゼロワンがおり、風穴の向こうに見える相手と距離を隔てて向き合う両者を、互いの視点で描いてくれた事で、現時点でのライバル感が高まる演出も非常に良く、溶解したコンテナから放出された蒸気が画面を覆うと、ゼロワンは姿を消している、というのも格好良かったです。
 そして――
 「ヒューマギアが暴走したのは、事実なんですか?!」
 記者会見の場に立った副社長は「現段階では何もお答えできません」(本日の隠蔽工作5)と追求をかわそうとするが、騒然とする会見場に一つの声が響く。
 「事実です」
 静まりかえる会見場、流れ出す主題歌、一同の視線が向けられた先――秘書子をともない背広でキリッと決めたアルト登場、が大変格好良く、第1話と全く違うアプローチで、劇的なヒーロー(社長)誕生を描いてみせたのは実にお見事で、今回の白眉。
 MOPさんにいただいたコメントがどんぴしゃで、マーベルヒーロー映画『アイアンマン』を彷彿ともさせるシーンですが(意図的なオマージュか?)、“ヒューマギアへの視点”を軸にアルトと不破の対比を鮮烈に描いたクライマックスの後で更にもう一回、真の意味での社長誕生を描いて、二段階クライマックスとしてもう一つ跳ねさせたのは、脱帽です。
 副社長を退けたアルトは、秘書子の映像データにより滅亡迅雷ネットの存在を公表し、主人公と敵サイドの顔合わせがそのまま、「社長誕生」と「暴走事件への世間に向けた説明」の二つに活用されたのも、非常にお見事。
 「真犯人は、滅亡迅雷ネットというテロリスト。奴らはヒューマギアをハッキングし、人に危害を加えています。だから…………ヒューマギアは悪くない。いろんな仕事をサポートできる、夢のマシンだって事を、私が証明します」
 「あのー……あなたは?」
 「飛電インテリジェンス、代表取締役社長、飛電或人です」
 堂々名乗ったアルトはとっておきのギャグを披露し、にこやかな笑顔で横に立って下から照明を当てる秘書子さん、素晴らしい(笑)
 お笑い芸人としては鳴かず飛ばずで、人々の笑顔の為にゼロワン、そして飛電インテリジェンス社長の道を歩み出したアルトですが、前回も今回も、天丼オチである以上に、“決してアルトが笑いを捨てたわけではない”事が示されており、この目配りは、非常に素敵。
 無に等しい沈黙と氷点下の視線が場を支配する中、右腕を吊った不破だけが、ひとり懸命に笑いをこらえ、マスコミの一人が勇気ある質問を口にする。
 「あのー……今のは?」
 「今のは、「新入社員」と、輝くという意味の「シャイン」をかけた、非常に面白いギャグで」
 秘書子さんに、太鼓持ちアプリが!
 「お願いだからギャグを説明しないでぇぇぇぇぇ!!」
 絶叫するアルト、対角線上で会見場を去って行く不破と唯阿、の対比もバッチリ決まって、つづく。
 アルトのヒューマギアへの視点を描く、のみならず、そこに当面のライバルキャラ(不破)のヒューマギアへの視点も加え、互いの主張の原点を物語における過去の大きな謎に繋げ、新ライダーを劇的に登場させ、ゼロワンの扱いもおざなりにせず、ヒューマギアに関わるウェットな要素も盛り込み、相反する二人のライダーをそれぞれ格好良く描いた上で、クライマックスを二段構えとし、最後にもう一つの「誕生」を描く、と詰めに詰めまくった内容で、ここまで詰め込んでキャラもぶれず要素もしっかり連動している脚本の出来も相当良かったのでしょうが、この物量のバランスを取ってテンポ良くまとめきってみせた杉原監督が、滅茶苦茶巧くなっているのですが!
 顔芸がくどくなりがちなのは従来通りで、そこはやや好みからは外れるのですが、戦隊初参戦した上堀内監督が『リュウソウジャー』で苦戦する一方で、入れ替わる形でライダー初参戦となった杉原監督が、大化けしたかも(こういうのは、どこまで行っても企画その他との兼ね合いはありますが)。
 そんなわけで、早速の二番手ライダー登場や、『エグゼイド』の感想を読み返したら第2話で主人公の好感度が急降下していたとかで不安もあった第2話でしたが、ヒューマギアに対して相容れない信念を持ち、社会的立場の上でも敵対に近い関係にあるアルトと不破の変身する両ライダーを直接対決させる事なく、しかし互いの主義主張の決定的な隔たりを描く事により、今作のキーとしてのヒューマギアへの視点を印象づけながら対立関係を効果的に成立させ、非常に面白かったです。
 両者の信念を生み出したのが「同じ事件における正反対の体験」というのも劇的ですし、映像でしっかり見せる事により説得力もともない、その体験が「今のアルト/不破の原点になっている」事に納得のいくものだったので、後はその重みをしっかりと抱えて、なるべく半端に馴れ合わないでほしいところ。
 台詞回しなども非常にこだわって見せていたので、そう簡単に崩さない前提の対比だとは思うのですが、逆にここを軽く見てしまうと大きな地雷に転ずる可能性があるので、慎重に取り扱ってほしい要素です。
 不破さん、「もはや社会インフラとなっているロボット(的存在)に対して深い憎悪を抱えている」「俺がルールだ」「ロンリーウルフ」と、大変ジャンパーソン成分高めなので、どんなキャラになっていくか楽しみです(笑) ……バルカンが紫色だったらオマージュ認定100%だったのに。
 『特捜ロボ ジャンパーソン』(1993)は、社会に人型の高性能ロボットが浸透しているどころか、ロボットに部分的な人権さえ存在する世界において、“正義のロボット”に生まれた自らの出自を誰よりも憎み、心の奥底に深いロボット差別主義と破滅願望を抱える主人公ロボットが、躊躇なくロボットを抹殺していく《メタルヒーロー》シリーズの傑作です!
 (ちなみに、今回の感想で頻出している「滅亡迅雷精神」というのは、最強無敵のラスボスことジャンパーソンに勝つために、ネオギルド魂あふれる根性ロボットを送り込もうとネオギルド精神注入棒によりロボットに強靱な精神力を植え付けようとする、『ジャンパーソン』屈指のトンデモエピソードが元ネタ)
 「叩き込め、ネオギルド精神!」
 前回今回と、OP省略してめいっぱいに尺を使い、怪人を3体投入、各種未来的ギミックのCGに加え、遊園地や飛電社内、街のあちらこちらに記者会見など様々な場面で人数も動員、全体的にかなり贅沢な作りで、第3話以降もこれが出来るか、というのはわかりませんが、戦隊も含めて、近年最高傑作レベルのパイロット版。
 絶滅ギアに関しては、同一のベースに外装を被せる方式になっているように見えますが、骨組みは共通のヒューマギア素体、という設定と噛み合っていますし、この設計により、ある程度の怪人数を投入できるのなら、期待したい部分。
 スピード感を前面に出したアクション面も魅力的ですし、ここから、新時代のライダーアクションをどう作っていってくれるのか、楽しみです。
 次回――早くも3番目のライダー登場。そして、お魚、というか、寿司ネタ?

 (※追記:「不破がアルトのギャグに吹き出すのを懸命にこらえている」のは、不破の愛嬌付けでありギャグシーンなのですが、同時に、不破が「怒り」と「憎しみ」にのみ囚われているのではなく、まだ「笑い」という感情を残している事を示しているのが、実にお見事。そしてそれはもしかしたら、誰かを笑わせたいと願うアルトにとっての「救い」になる事もあるかもしれず、「笑い」というキーワードの使い方が、本当に良く出来ています。)