『ウルトラマンネクサス』感想・第5話
◆Episode05「適能者-デュナミスト-」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:荒木憲一 特技監督:北浦嗣巳)
謎の遺跡の前で空を覆う昆虫(破滅昆虫……?)の群れに襲われた過去にうなされて跳ね起きる革ジャンさんが、元・新聞記者と明かされ、前回までがプロローグ-孤門-という扱いだったのか、ようやく革ジャンさんのターン。
必要最低限のものしか置いていない殺風景な部屋、で乾いた人間性を表現するというのはよくある描写ですが、革ジャンさんの住居は割と雑然としており……何故か、ドラム缶が積まれていた。
……じ、自爆用?
一方、ナイトレイダーでは銀色の巨人について検討中。
「コードネームは、ウルトラマン。今後巨人をウルトラマンと呼称する」
今作のリアリティ重視による弊害の一つとして、ヘルメット被ったナイトレイダーの区別がつかない、というのがあったので、やや緩んだ状況での会話シーンを作ってくれたのは良かったのですが、根本的に遅すぎる上にまだまだ分量不足(正直、尺が足りないというわけでもないですし……)。
隊長ともう一人の男隊員の差異は相変わらずさっぱりですし、キャラの区別もつかなければ個性が見えないから隊員に思い入れの持ちようが無いというのが、ナイトレイダーを戦闘シーンで応援しにくい大きな要因になっているので、もう少し意識的に掴みのキャラの愛嬌付けはやってほしかったところです。
「ウルトラマンは、人類の味方です」
「飛躍しすぎよ」
わざわざ立ち上がって主張する孤門をばっさり切り捨てる副隊長に今回は理があるのですが、副隊長は副隊長で般若の形相で「撃つ・撃つ・撃ち殺す」しか考えていない為、見ていて疲れる極と極。
そして懲りずにミーティング後に副隊長にアタックを仕掛ける孤門くんは、心が強いというか、学生時代、不登校になった同級生(特別親しいわけでもない)の家を100%の善意から毎朝訪れて「楽しいから僕と一緒に学校に行こう!」(満面の笑み)と3ヶ月繰り返し続けた末に根負けした同級生を家から引きずり出した実績とかありそうで怖い。
「副隊長は、なぜウルトラマンを憎むんです?!」
「憎む?」
「はい! 僕にはそう見えます」
「私が冷静な判断を失ってるとでも?」
あなた、物語が始まってこのかた一度たりとも冷静な判断をした事ありましたっけ……。
副隊長は革ジャンについて何か知っているのでは、と踏み込む孤門だが鬼の形相に言葉を失い、そこで踏みとどまる神経は持ち合わせているのだ、とちょっとホッとしました(笑)
山間部に、空を飛び車を襲うゲンゴロウビーストが出現し、襲った車の残骸が、ゴミ捨て場のように積み重ねられている、というのはインパクトのあるカット。
革ジャンさんは変身してそれに立ち向かい、やはり一定の尺の巨大戦があると、話の作りが安定します。
今作、序盤の設計ミスとして、“「正義のヒーロー」であるウルトラマンが人類に信用されず背後から撃たれる衝撃”を物語のフックにしているにもかかわらず“劇中で「正義のヒーロー」としてのウルトラマンの描写が弱い”為、ウルトラマンが「正義のヒーロー」である事がメタな前提になってしまっているというのがあるのですが、これはシリーズ近作に頻出するメタ前提の作劇に繋がっていく萌芽が、この時代から既に存在していたとも見えるところ。
“視聴者にとってもウルトラマンを謎の存在”とするなら、ナイトレイダーによる攻撃のインパクトは弱い前提で構成しなくてはいけませんし、そこにインパクトを与えたいなら、少なくとも最初に“「正義のヒーロー」としてのウルトラマンの行動と意志”を視聴者に対しては明確にしておく必要があり、“敵か味方か謎の存在だけど、視聴者には「正義のヒーロー」として受け止めてほしい”というアプローチが、だいぶ混迷を生んでしまったように思えます(物語としては更に、そのメタ前提をひっくり返す可能性も想定はされますが)。
ゲンゴロウビーストの尻尾噛みつきなどに苦戦するウルトラマンはじわじわと戦いの主導権を奪い返していくが、そこにナイトレイダーが現着し、ビーストとウルトラマンにそれぞれ攻撃。
「副隊長、攻撃をやめてください。ウルトラマンは味方です!」
「だからだよ」
微笑する白い人の思惑はいったい……というのは、良いアクセントとして機能しているのですが、今回ウルトラマンが「亜空間」を作り出さない理由がさっぱりわからない為、ナイトレイダーにウルトラマンを攻撃させるという展開ありき――そして上述したように、その衝撃度が物語の中で構築されていないので劇的な効果も弱い――で、物語の特色として大きく打ち出した要素が、さっそく100%話の都合による出し入れになってしまっているのが、大変残念。
ビーストは羽を広げて離脱するが、副隊長はここぞとばかりにウルトラマンを撃ちまくり、逃げるビーストに光線技でダメージを与えたウルトラマンは変身解除。地上に降りた孤門と副隊長は、ウルトラマンと同じく脚を負傷している革ジャンを発見し、問答無用で射撃する副隊長を止める孤門だが、孤門を払いのけた副隊長は再び発砲し、空に向けて何かを放つ革ジャンの胸に迫る凶弾……で、TO be continued...
ところで:サブタイトルに一言も言及が無かった。
単語からはアリストテレス哲学における「デュナミス(可能態)」を想起しますが、そこから来ているのでしょうか。
次回――革ジャンさん、ようやく名前を呼ばれる。