東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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夏の映画祭り6

獣と相棒

◆『劇場版 炎神戦隊ゴーオンジャーvs獣拳戦隊ゲキレンジャー』◆ (監督:諸田敏 脚本:香村純子/荒川稔久
 見所は、なんかすっかり激気を出せるようになっている、なつめ。
 あと、ゲキバズーカの横でなんかもう全くよくわからないけどポーズを取る前座ーズ。
 なつめの誕生日を祝う為に集まったゲキレントライアングルだが、ヌンチャクバンキに襲われ、臨獣トータス拳によって異世界へ飛ばさされてしまう。遅れて駆けつけたゴーオンジャーも見た事のないヌンチャクの拳法に苦戦している内に逃げられた末、トライアングルを襲ったと勘違いしたゲキレン前座ーズに殴りかかられる羽目に。
 「……なんか、違くね?」
 「んー……」
 「「参ったぜ」」
 誤解が解けた一行は状況の整理の為にスクラッチに招かれ、
 「若いおなごのほっぺも、やわっこくて良いの~」
 早輝に肉球を触られた猫は、劇場版でも安定して最低だった。
 ケンが早輝にちょっかいをかければ、範人にはかつて既婚者と知らず美希をナンパして玉砕した過去が付け加えられ、両戦隊の女好きキャラをフォーカスする事で親和性を強める狙いだったと思われるのですが、範人のナンパキャラは本編途中で実質的に消滅しているので、もうひとつ効果的にならず。
 またその流れで白(ケン)が黄(ラン)にやたらと抱きつきボディタッチを繰り返そうとするのがやりすぎ感あって、つくづくハラスメントから逃げられない戦隊です。
 敵の狙いはジャンの守る慟哭丸にある……ボンパーと猫の協力により7人はトライアングルの閉じ込められた異世界に突入し、正義のパワーが半減する空間で、10人は合流。
 「どんな世界でも、こっちは正義10人分!」
 突撃からOPに入ってウガッツとの戦いにキャラ紹介を重ねていき、見事にヌンチャクを撃退する10人であったが、臨獣殿残党の亀の不意打ちを受け、炎神ソウル、そして慟哭丸を奪われてしまう。
 ガイアークと亀が慟哭ソウルを作って無幻龍の力をほしいままにしようとする一方、獣拳への弟子入りを志願したゴーオンジャーは次々と変態的な修行を見せつけられ……どうして、「説得力の薄いインスタントな修行」と「おまえが修行している間に俺達が戦うぞ!」という、『ゲキレン』本編の悪いところを踏襲してしまったのか。
 ゴーオンジャーが修行を通して激気を身につけ、相棒をオーラとして放つ炎神拳を修得する、というアイデアも、コラボ戦隊のギミックを利用するのはともかく、コラボ戦隊と同質の能力を身につける、というのは個人的にあまり面白く感じず。
 また、修行よりも「仲間を助ける」事を優先した走輔と、修行をこなした他の4人が共に激気を身につけてしまうのは、だいぶちぐはぐ。4人の修行も統一感が無いですし、突き詰めると暗に「本当に大切なのは「修行の内容」そのものではない」という事を描いてしまっているのですが、『ゲキレン』本編とは齟齬を来す為にひどく宙ぶらりんな表現となり……重要なキーワードである「修行」そのものが作劇のネックになる『ゲキレン』の悪い部分をそのまま取り込んでしまう事に。
 即席師弟コンビはそれぞれ炎神ソウルを取り返し、W赤はヌンチャクバンキを撃破。慟哭丸の事を完全に忘却しているけど大丈夫……? と思ったら案の定甦ってしまったロンは、ビリヤードの球扱いで小突かれた恨みで、物凄く、怒っていた。
 復讐するなら、まずゾウから!!
 一方、あぶれて川に倒れていた須塔兄妹が、理央メレの声を聞く、というのは上手い展開。
 ……とはいうものの、“夢の共演”というよりは、色々台無しというのが正直な感想で、個人的にノりにくい番外編のタイプ、にドンピシャではまってしまいました。
 それはそれとして、『ゲキレンジャー』の主題歌は、ホント好き。人間大バトルを『ゲキレン』主題歌、巨大戦を『ゴーオン』主題歌、というのは綺麗に締まりました。
 ロンバンキは二大戦隊の最強ロボット一斉攻撃で再び封印され、なつめの誕生パーティでほのぼのEND。
 巨大戦の実況でバエが登場したのは嬉しかったですし、両戦隊の要素を丁寧に拾ってはいるのですが、丁寧に拾いすぎて全体的に淡々としてしまい、そう持ってくるのかという意外性の驚きや、ぐいぐい引きずり込まれるようなスピード感に欠けていたのが残念。
 当時の香村さんの引き出しの問題もあるでしょうし、『VS』シリーズの条件の悪さもありますが、なんというか、入れた方が良さそうな要素を生真面目にみんな投入した結果、のっぺりとペースト状になってしまっており、この映画に必要だったのは、どこかを削ってどこかを尖らせる事だったのではないか、という、そんな一作(ファンサービス的には、これはこれで正解だったのかもですが)。