東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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夏休み改め夏の映画祭り4

野生の手裏剣

◆『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャーVSニンニンジャー 未来からのメッセージfromスーパー戦隊』◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)
 (※注:TV本編から時間が経過しているので書き添えておきますと、本感想では、「門藤操/ジュウオウザワールド」は、「さわお/サワオ」と表記されますので、あらかじめご諒解下さい。サイ・ワニ・オオカミ!)


 「そんな……ニンニンジャージュウオウジャーが全滅した……。スーパー戦隊の歴史が終わっちゃった……」
 忍者装束の少年の前に無惨に倒れ伏す12人の戦士達……果たして、スーパー戦隊の運命や如何に、で始まる《スーパー戦隊》シリーズ、40周年記念作品。
 時間は少し遡り、セラ・レオ・タスク・アムがジューマンの姿に戻り、山奥でキャンプを楽しもうとしていたジュウオウジャーだが、そこに手裏剣が投げつけられ、周囲を取り囲んだのは、5人の――ニンジャ。
 「ようやく見つけたぞ!」
 「……忍者?」
 「ニンジャってなに?」
 「ワルもんか?」
 「ワルもんは、そっちでしょ!」
 「悪い妖怪ジュウオウジャーめ! 覚悟しろ!」
 あ、ちょっと、見た目的に反論しづらい……!
 「「「「妖怪?」」」」
 「……しまった! みんな、ぱっと見妖怪っぽい!」
 劇場版でも冒頭から炸裂する、大和くんの真人間ツッコミ!(身内に)
 一斉に顔を人間に戻すジューマンだが、むしろますます妖怪ぽくなった気はしないでもなく、もちろん事態は悪化。なにやらスーパー戦隊に化けて悪事を働いている事になっているらしいジュウオウジャーを取り囲みながらニンジャ達は変身し、戦隊が別の戦隊に出会った時の困惑を、ジューマンの異文化への困惑を重ねる事で物語の中に取り込むという仕掛け。
 「忍びなれども忍ばない!」
 「……忍ばないの?」
 繰り返し炸裂する真人間ツッコミ!
 「「「「「手裏剣戦隊・ニンニンジャー!!」」」」」
 いきなり撃たれたジュウオウジャーはやむなく変身し、二つの戦隊が睨み合い、戦闘の火ぶたが切って落とされた所で、大変長いタイトルコール。
 ……長い。
 妖怪なので人権は存在しないと殺意を向けるニンニンジャーと、割と殴られたら殴り返す方なジューマン達の間で結構な真剣勝負が展開し、一計を案じたジュウオウ赤は、ジュウオウホエールにフォームチェンジすると番長キャノンを地面に撃って、目くらましにする事で逃亡。
 「なに今の攻撃?!」
 「あいつらやっぱヤバいよ!」
 改めて、ニンニンサイドから、クジラ大王どうなの? という疑問が間接的に提出されます(笑)
 それに対して、盛り上がってきた赤ニンジャは掟破りの巨大ロボ召喚で足止めを図り、動物戦隊もジュウオウ&ワイルドキングを持ちだして戦いはヒートアップ。
 巨大戦ではシノビマルが分離して軽妙なアクションで引っかき回す、というのがアクセントになって面白く、まさかのUFO丸発動に動物大合体で対抗の末、必殺技の撃ち合いで互いのロボットが強制合体解除で両戦隊はバラバラに……と、本気のバトルが驚くほど続きます。
 ロボから投げ出された大和は執拗に追いかけてくる天晴から逃げ回る羽目になり、一方、八雲達が一時帰還したニンジャ屋敷では、ジュウオウジャーに一族を虐殺されたと吹き込んだ花の妖精が帰りを待っていた。
 忍者……虐殺……戸隠流……音忍……ううっ、頭が……。
 ニンニンジャー視点ではジューマンは妖怪の一種に見えてしまう、というのが掴みの誤解としてスムーズに機能している一方、虐殺の疑いをかけられるのがニンニンジャー側だったら、それはそれで面白かったなと思ってしまう『ジライヤ』ファン(笑)
 大和とはぐれたセラ達4人が、オープンカフェで「そもそもニンジャって何?」と呟いたところを、通りすがりのゴールド寿司、じゃなかった、ゴールドおでんに過剰反応で絡まれていた頃、互いに疲労困憊ながらも追いかけっこは続いており、大和くんは天晴にズボンを脱がされそうになっていた(尻尾を確認する為です)。
 だがその時――
 「やめろ父ちゃん!」
 割って入った忍者装束の少年の言葉に、二人はフリーズ。
 「「……とうちゃん?」」
 一方、マリオ家に忍び込んだ忍者白黄は、遅れてキャンプに参加する筈が誰も居ない、と混乱したままマリオ家をおとずれていたさわおを拉致。
 「誰だおまえら? その恰好、もしかしてスーパー戦隊か?」
 「そう、あんたと違って、本物のね」
 「……! そうだ……俺は……みんなと違って……本物のジュウオウジャーじゃない」
 トラウマスイッチを押してしまい、体育座りをはじめるさわおを、面倒くさいので気絶させる桃忍者は、相変わらず邪悪だった。
 気絶したさわおは花の妖精によって拘束され、少年忍者に突き飛ばされ手作りお弁当を台無しにされる冒頭に始まり、ここまで不幸しか起きていません。
 「未来から来た俺の息子か……すげぇぇ! 熱いなこれ!!」
 W赤サイドでは、未来から来たと語る少年・伊賀崎快晴(よしはる)をあっさり受け入れ、タカ兄は、こういう時、凄くいい方向に転がるなぁ(笑)
 「いや、いやいやいやいやいやいや……」
 そして大和くんは、あくまで真人間だった。
 快晴に対するこの二人の反応の差が、今作で一番面白かったシーンかも(笑)
 「未来だよ? 軽く受け入れすぎじゃない?」
 「え、だって、そう言ってんじゃん」
 「……言ってるけど」
 ニンジャのノリについていけない大和くんだが、手裏剣忍法で未来からやってきた快晴は、明日、ジュウオウジャーニンニンジャーが同士討ちの末に全滅し、この世界からスーパー戦隊が消滅してしまう……という危機を告げ、急・展・開。
 妖怪ハンター時代の事はメモリから消去されたおでん屋に「ニンジャ」の説明を受けていたセラ達の元には、さわおを人質に預かった、という手紙が届き……卑劣! 桃色の策士、卑劣!
 ニンニンジャー、という言葉に反応したおでん屋は、空気を読まずに変身した事でジュウオウジャーに身柄を拘束され、追加戦士二人が双方で人質にされる、というのは面白い展開。
 そして弓矢基地では、花の妖精の正体は、ナリアに雇われて地球にやってきたヒーロー始末人であると判明。
 「仕上げにもう少し、正義の怒りを煽ってやれば……くっくくくくく」
 忍者屋敷で尋問を受けるさわおは、ルンルン拘束具の影響で「最悪の妖怪か。最っ高の褒め言葉だぜ」と台詞が悪役に自動変換されていたが、ここでまさかの、妄想フレンズ投入!(大歓喜
 「操、気持ちを伝える手段は、一つじゃないよ」
 そのアドバイスを受けたさわおは、なにやら床で藻掻きだし……そして訪れる、運命の日。
 花の妖精の特殊な花粉(冒頭の映像が伏線に)により通信が分断されたまま、八雲達とセラ達による人質交換の交渉は不発に終わり、激突するダブル戦隊。駆けつけた大和と天晴の声も届かず、両者の戦いは過熱していき、拘束をほどいたさわおとキンジの二人まで、次々と参戦してしまう。力尽くで言う事を聞かせようとアカニンジャーも変身し、いよいよキレた大和くんが全員まとめて番長キャノンで生き埋めにして戦隊の歴史終了かと思って大変ドキドキしましたが、大和はなんとか冷静さを保つ事に成功。だが両戦隊の戦いは止められないまま互いの一斉攻撃がぶつかりあい……快晴の知る歴史が再現されてしまったのかと思われたが、全ては示し合わせの末の芝居だった!
 前夜、さわおは決死の尻文字によりルンルン拘束具の秘密をニンニンジャーに伝える事に成功。誤解が解けた両者は一計をめぐらす事で花の妖精の本性を引きずり出したのだった、というのはストレートな展開ですが、両赤だけが真相を知らずに振り回される側だった、というのは戦隊の作劇としてはなかなか珍しいでしょうか。
 まんまと乗せられた花の妖精は花の悪魔の正体を現すとお約束の再生幹部軍団を繰り出し、その前に並ぶ12人の戦士達。
 スーパー戦隊の未来は、俺達が繋ぐ!」


「「忍ぶどころか!」」
「「「「「「「「「「本能覚醒!」」」」」」」」」」

 Wレッドが体を入れ替えながら、12人の揃い踏みに繋げる動きが、妙に格好いい。

「忍者と」「王者を」
「「「「「「「「「「「「なめるなよ!!」」」」」」」」」」」」

 大人数バトルに突入し、見所は、スターニンジャーとのツーショット写真の喜びで野生大解放するサワオ。
 各メンバーが順調に戦いを進める中(妙に、強敵扱いで活躍する蛾眉さん……蛾眉さん……)、Wレッドは幻月コピーに苦戦。快晴が忍術で支援したその時、<終わりの手裏剣>(呪いのアイテムなので、本編終了後に再生した?)が飛んでくると快晴用の変身手裏剣が生み出され、更に<終わりの手裏剣>を追いかけてきた旋風父さんが顔を見せる。
 という事で3世代アカニンジャー再び、というのはファンサービスかつ『ニンニンジャー』本編の丁寧な継承となっており、『ニンニン』本編が上手く処理しきれなかった「父と子」という要素を改めて強調してもいるのですが……個人的にはちょっと、心の傷を抉る展開。
 旋風・天晴・快晴がアカニンジャーへと変身し、“かつてヒーローに夢見た大人が、今またヒーローになってもいい”というテーゼ自体は嫌いではないのですが……本編感想の繰り返しになりますが、旋風が“かつて夢見たヒーローにはなれなかったけど、別の道をちゃんと生きている大人”ではなく、“かつて夢見たヒーローになれなかった事を引きずり続けている大人未満”なのが、どうにもこうにも辛い。
 3アカニンジャーが幻月コピーと戦っている間にジュウオウゴリラは花の悪魔に挑み、加勢に入ろうとするナリア・アザルド・クバルの前に立ちはだかったのはバド! と思いきや、そこに通りすがりのキュウレンジャーが現れて冬の劇場版恒例の先行出演タイムとなり、物凄く蚊帳の外に追いやられるバド(笑)
 今作、なんと後半約30分ずっと戦っているので一つ一つの戦闘の体感時間がかなり長いのですが、キュウレンジャーも9人揃ってメーバ軍団を蹴散らすと必殺技でアザルドバリアー(便利)を粉砕する大暴れで、毎度毎度このゲスト登場は扱いの難しいところですが、ナリア・アザルド・クバルに完全勝利を収めてしまうのは、サービスとしてもやり過ぎた印象。
 究極の救世主達は去って行き、花の悪魔に挑み続けるジュウオウゴリラ。
 「倒す……絶対! 天晴と快晴くんの未来を……みんなが繋げた未来を……俺は守る!」
 ジュウオウゴリラは漲るマッスルで花の悪魔の射撃を弾き落とすと、ジュウオウ番長に変身。片手にキャノン、片手に鞭剣を持っての連続攻撃から零距離番長キャノンを放ち、今回! 物凄く溜まっているストレスを! 全力で叩きつける!!
 ブチ切れ大和くんの砲撃にギリギリで耐え抜く花の悪魔だったが、そこに再生幹部軍団を壊滅させた仲間達が集い、ジューマンパワーと忍タリティを結集した合体砲撃で遂に滅殺。だが、花の悪魔はナリアから拝借していたコンティニューメダル×3を使うと、下半身が巨大な植物と貸したお花の大魔神へと変貌。
 「星ごとぶっ潰しちまえば、貴様等も終わりだ!」
 二大最強ロボも打ち砕かれW戦隊の消し炭寸前、<終わりの手裏剣>を介して40大スーパー戦隊パワーが発動し、絶体絶命の危機を免れる12人。
 「今のが、先輩達の……」
 「スーパー戦隊の、繋がりの力……」
 「行くぞ! おまえら! 先代達にばっか、甘えてらんねぇぜ!」
 「ジュウオウジャーニンニンジャーの繋がり、見せてやろう!」
 歴代スーパー戦隊の力を受けた動物手裏剣大合体により、ワイルドトウサイキングの胸に巨大な手裏剣が付いた、割とぞんざいなワイルドトウサイシュリケンキングが誕生すると、一つになった野生と忍者の力で、花の大魔神を圧倒。
 「馬鹿な……この俺が、こんなちっぽけな奴らに!」
 「私たちをバラバラに襲えば、倒せたかもしれません」
 「あんたの卑怯な作戦が、逆に私たちを繋げたのよ!」
 というのは、『ジュウオウジャー』本編のテーマを活かして、好きな台詞。
 「最後の最後に覚えとけ!」
 スーパー戦隊を――舐めるなよ!!」
 お花の大魔神スーパー戦隊ビッグバンを受けて塵となり、ここにナリアプレゼンツ、正義のヒーロー始末作戦は失敗に終わったのであった。なお、ジニス様は“一切登場しない”という裏技により、格を保ちました。
 戦い終わり、スーパー戦隊の存在しない未来を変えた快晴は手裏剣忍法によって自分の時代へ戻り……そもそも今日死ぬ筈だった天晴に子供がいるのはどうしてだ? と至極もっともな疑問を口にするタスク。
 その答は……
 「新婚だ!」
 身内が誰一人知らない内に天晴は結婚しており、近々子供も生まれる予定だったという清々しいまでの正面突破に、ところどころの無茶な部分の大半が、どうでも良くなりました(笑) (一応、途中で天晴が快晴をあっさり受け入れた理由の補強にはなっている)
 良くも悪くもこれで話が成立してしまうのは、長い戦隊史の中でもタカ兄他数名程度に絞られると思いますが、天然ホスト気質の疑いがあるタカ兄の、TVでは話題にしにくい子供とかではなくて本当に良かった……!
 天晴の「え……結婚って家族に知らせるものなの?」レベルの反応に一同騒然とする中、伊賀崎一家にげしげし踏まれる大和くん。
 「あー……最初から最後まで散々だ……」
 両戦隊入り乱れて天晴を追いかけたり勝利を祝う中で、一部スタッフ(?)が強硬に主張するも『ニンニン』本編途中で派閥が粛正されて消滅した霞×八雲がなんとなく拾われたり、キンジとさわおに友情が芽生えたり、凪がLV.Xの女にロックオンされたり、色々とありつつ、ドタバタ騒ぎ。
 「散々だったけど……まあいっか」
 と、なんだか少々、『ジュウオウ』本編ラストにも繋がる気配を漂わせるオチで、これにて一件落着。
 ……ただし凪、その女の「責任取ってくれるよね?」は、「全部弁償してくれた上に相応の誠意を見せてくれるよね?」の意味なので、将来にわたってありとあらゆる預貯金貴金属から有価証券の類いが凪ーーーーー!
 戦隊冬映画恒例のVSコラボですが、前年作品であるニンニンジャーが全編に渡ってがっつり登場し、ゲスト出演というより共演といった方がふさわしい形になっている、というのが一つ特徴。
 合わせて、物語のキーになる人物もニンニンジャーの関係者であり、《スーパー戦隊》の“繋がり”という形で『ジュウオウジャー』本編のキーワードと絡めてはいるものの、どちらかというと『ニンニンジャー』本編における“世代の継承”というテーゼを拡張する構成で、『ジュウオウジャー』にとっては番外編で、『ニンニンジャー』にとってのエクストラエンド、といった内容。
 この辺り、TV本編が佳境に迫る中で、香村さんが劇場版とのバランスをどう考えたか、というのがありそうですが、渾身の「変わるんだ」編に近いタイミングという事もあったのか、爆発力の高いキャラであるさわおの扱いも終始控え目であり(一応、さわおの尻文字が状況逆転の契機になっているのが“コミュニケーションの戦隊”の面目躍如ではありますが、そう考えると……歴史の分岐点は快晴がさわおを突き飛ばしてキャンプへの合流が遅れた所なのか)、主客逆転まではいかないものの、“たまたま40周年目の作品であった『ジュウオウジャー』”とでもいったバランスになっているのは、VSシリーズとしても変則的な印象です。
 そんなわけで『ジュウオウジャー』としては物足りない面がありましたし、さすがに少々、戦闘シーンが長すぎたのでは、と思う所はありましたが、40周年記念作品である事を第一とした娯楽作品としては楽しい一本でした。