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ウルトラマンガイア』感想・第49話

◆第49話「天使降臨」◆ (監督:村石宏實/八木毅 脚本:吉田伸 特技監督:村石宏實/八木毅
 謎の飛行生物の群れが、世界各地に大量に発生。巨大な昆虫のようなその生物はこれまでに出現した破滅招来体の特徴を少しずつ併せ持っており、応戦に出た各国ガードの戦闘部隊は、次々と壊滅していく。
 「今、我夢と藤宮に発生源を特定させている。それを待つんだ」
 さすらいのテロリストだった藤宮はさらっと協力者の扱いを受けており、発生源として特定されたワームホールを攻撃するべく、梶尾と稲城が出撃するが、藤宮はその作戦に疑問を投げかける。
 「なぜ俺達を兵器として、戦力として扱わないんですか。俺と我夢の力を含め、作戦を立てるべきです」
 「それは出来ん」
 「俺達に頼れば、XIGの能力が疑われるからですか?」
 「やめろ藤宮」
 「君たちは兵器ではない。共に戦う仲間だ」
 コマンダー(XIG)が藤宮を、人として仲間として認める事の重要性はわかるのですが、手持ち戦力の一つして「ウルトラマン」を計算に入れるという藤宮の提案自体は理に適っているので、「兵器か人か」という極端な話に広げてしまったのは、藤宮が少しひねくれているというか、コマンダー(XIG)を意図的に試した、と受け止めた方が良いのか。
 飛行生物を発生させる巨大なワームホールには新型ファイターのビームも通用せず、梶尾機が戦線離脱。それを見た我夢はそっとオペレーションルームを離れ、廊下で合流すると、爽やかな笑みを浮かべながらハンバーガーを投げる藤宮の誰コレ感が凄いのですが、これが、人気女子アナといい感じになっている男の余裕だ!
 ……いやまあ、重い贖罪の念を抱える藤宮が、コマンダーの言葉に少し救われた、というニュアンスが入っているのかとは思われますが。
 「俺はアグルの力が戻ってから、ずっと考えてきた。なぜ俺達は二人なんだ? いや、幸い二人居るといったほうが適切だな。――どちらかが居なくなっても、もう一人居る」
 だがそれでも、ワームホールへの特攻を仄めかす藤宮だが、そこへ敦子が姿を見せ、気を遣ってなんとなく距離を取る藤宮、さっきからなんか面白いぞ藤宮!!
 「……どうして、黙って行くのよ」
 「あ……うん」
 「どうしてみんなに黙って行くの?! どうして?」
 「……ごめん……そういうの、苦手で」
 「ちゃんと……行ってきますぐらい言ってくれなくちゃ。私には、頑張れって言うぐらいしか……何も出来ない」
 決戦に向かうヒーローを見送るヒロイン、という古来より伝わる渾身のヒロイン仕草を放り込んできた敦子ですが、突然の泣きの芝居にドラマチックすぎるBGMが重なり……すみません、正直、笑いがこみ上げてきてしまい本当にすみません。
 どうにもこうにも積み重ねが足りないというのもあり、今作の短所の一つである、ウェットな台詞は女性キャラに言わせておく的な話運びに見えてしまうというのもありましたが、距離感としては“みんなの代表”というのは無理のない範囲に収まりましたし、色々と酷い扱いをしてきた敦子への、多少なりとも救済になったのは良かったと思います(村石監督が少しは申し訳なく思っていたのか、連名の八木監督が強硬に主張したのかはわかりませんが!)。
 前回のチーム・リーダーズ出撃に続き、“あの我夢”が、XIGに参加して戦い続けていく中で、いつしか“みんな”に溶け込んでいた……というだけでも一つ感動的なシーンでもあるのですが、敦子のヒロイン力の低さをBGMでブーストしようとしすぎているのも手伝って、どうしても笑いがこみ上げてきてしまって本当にすみません。
 「……敦子。……行ってくる」
 あ、でも、我夢がここで、「アッコ」ではなく「敦子」と呼ぶのは、男の子から男へ、という感じがあって、とても良かったです。
 「……うん」
 敦子に見送られながら我夢は藤宮と肩を並べて歩き出し、一方、増加を続ける昆虫生物の影響により通信が途絶し、重く立ちこめる灰色の雲に覆われた無人の街を走る田端&倫文は、緑色の光に包まれた、亡霊のような怪物が街を練り歩くのを目撃。……この怪物は今回時点では謎のままなのですが、どこか半魚人めいて見えるのは、小中さんの宇宙的恐怖趣味が出たのかどうなのか。
 「みんなの絶望を煽るような中継に、いったいなんの意味があるんだよ!」
 全世界の通信システムがダウンする中で何故かTV局の周波数だけは生きており、外の状況をリポートしようとする田端は、局の報道があまりにも暗く悲痛であるのを見てそれに輪を掛ける中継をする事を躊躇い、真実を伝えさえすればそれでいいのか、と己の在り方にブレーキをかける。
 その時、響く子供の悲鳴に駆け出した田端は、野外に取り残されていた少年を救出。そんな2人と出会い、「ウルトラマンは必ず来る」と少年を励ます一幕を挟み、我夢と藤宮は、いよいよ巨大ワームホールと対峙する。
 「……おまえがいなければ、俺はここに居ることはなかった」
 「え?」
 「悪い意味じゃない。俺は今、おまえとここに居る事を、誇りに思っている。……感謝している、我夢」
 「僕だってそうさ。――行こう!」
 地球そのものから立ちのぼる、陽炎のような淡い輝きに包まれながら、我夢と藤宮は、二つの光を掲げる――


「ガイアぁぁぁぁぁ!!」
「アグルぅぅぅぅぅ!!」

 赤と青の巨人は天空に並び立ち、少年を家へと送り届けた田端らは、飛翔するその姿を目にする。
 「……家に帰ったら、TVをつけるんだ。そこにはきっとウルトラマンが映ってる筈だ」
 おお、これは格好いい。
 「……行くぞ倫文」
 「はい! ウルトラマン撮るんですね」
 「決まってるだろ! あいつらだけが絶望したみんなに希望を伝えられるんだ」
 TVを通して、というややメタ的な要素を取り込みつつ、しっかり物語とも接合し、“ヒーローとは何か”をこういう形で描いてくるのは好みで、痺れる展開。
 今作が序盤から重視し続けてきた「視点」の一つであるKCBというピースも絶妙にはまりましたし、基本的にひたすら情けない役割だった倫文の成長が描かれたのも良かったです。
 そしてワームホールへ突入しようとしていたアグルだが……虫にたかられ、墜落(笑)
 第41話「アグル復活」で、「盛り上げてからのガックリ体質を克服」したように見えたのは、幻だったのか。
 全身を虫に覆われたアグルは地面をのたうちまわって見せ場の筈がとんだ災難となり、同様のガイアも続けて墜落してくるが、両者はなんとか、脈動する筋肉の力で張り付いた虫を引きはがす。
 ガイアとアグルの前には虫が合体した怪獣が立ちはだかり、その戦いをカメラに納める田端&倫文からの中継映像が入ってきている事にKCB社内の玲子が気付いた所で流れ出す、OPイントロ。
 「田端さん! 田端さんだわ!」
 OPが流れ出して筋トレ殺法コンビは合体怪獣へと殴りかかり、
 ギリギリまで頑張って ギリギリまで踏ん張って
 という歌詞がシチュエーションに見事にはまり、見ろ、これが、知性と筋肉と神秘の融合、光量子格闘術の力だ!

 「たった今、緊急映像が入りました。地球を救う為に、ガイアとアグル、二人のウルトラマンが出現しました。ウルトラマンが居る限り、地球はきっと大丈夫です。だから皆さんも、希望を捨てないで下さい」

 詰めの甘いアグルに代わり、うにょんバスターで怪獣を吹き飛ばすガイアであったが、再び飛ぼうとした両者の前には合体昆虫怪獣が次々と出現。OPブーストも終了したガイアとアグルはじわじわと追い詰められていき、ここでXIGの戦力が無いのが見ている側も歯がゆいその時――突如として天から降り注いだ光が怪獣の集団を呆気なく消滅させ、ワームホールの向こうから荘厳な音楽と共に、光に包まれた白亜の巨大な立像、とでもいった存在が出現すると、消耗したウルトラマンのエネルギーさえ回復させる……。
 「あれは……?」
 「天使……」
 という、予想外の展開で、つづく。
 サブタイトルの「天使」は、てっきり飛行生物をなぞらえた表現だとばかり思っていたので(途中で藤宮が「イナゴ」と呼んだり、今回の状況そのものが『ヨハネの黙示録』第9章を意識していると思われるので)、本当に天使的な何かそのものが出現したのは、驚きました。
 …………はっ?! 昆虫軍団の人類総攻撃、そして、地球に降り立つ巨大な神秘的存在……こ、これはまさか、セントパピリア?!


 「勘違いするな。セントパピリアは、破滅を食い止めに、現れるものではない。破滅したものを救いに、現れるのだ」
 以前から、今作と『重甲ビーファイター』の妙な親和性について触れていましたが、まさか、この最終盤に、そんな大ネタを拾ってくるなんて!!(拾ってない)
 ……えー、恒例の与太はさておき、ED、これまでの我夢と藤宮のメモリアルを関係者多数出演のダイジェスト映像で、というのは非常に良かったです。
 我夢が居て、藤宮が居て、両者の存在と関係は今作の太い軸になっているのですが、同時に、周囲の人々との繋がりによる二人の“変化”というものを丁寧に描いてきた『ガイア』らしいED映像でした。
 次回――出来の悪かった炎山回以降、拾うタイミングの無かった我夢両親も登場するようで、どう走り抜けてくれるか、楽しみです。