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ウルトラマンガイア』感想・第48話

◆第48話「死神の逆襲」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:川上英幸 特技監督:北浦嗣巳)
 コマンダー、さくっと助かる(笑)
 前回ラストの如何にも殉職な絵作りから、爆死寸前にガイアに助けられていました、はズルい引きでしたが、キャラクターの喪失を描いて面白いタイプの作品とも言いがたいので(人的被害そのものはかなり出ている物語ではありますが)、総合的な判断としては良かったと思います。
 「僕のせいで……エリアルベースが」
 「我夢! ……うぬぼれるな。おまえ一人が戦ってきたわけじゃない。そして、おまえ一人が戦えば済む事でもない。……我夢、全てを背負おうとするな。おまえは…………一人の人間なんだ」
 と、背中で語るコマンダー、のシーンは引きのズルさを帳消しにしてもいいぐらいには格好良かったですし。
 ガイアと繋がった者として、主人公として、色々と思い悩んできた我夢ですが、物語が最終章に入ったところで、それは本来、皆で考えていかない事である、とミクロからマクロに連結をし、虚構から現実へのフィードバックが示唆されるタイミングとしても良いですし、それを一人でやろうとすると、初期藤宮になりかねない危険性が人間には常に付きまとっている、という点を押さえてくれたのも秀逸。
 そして今回のエピソードを通しては、我夢がXIGに加入し、クルーと共に戦う事で道を踏み誤らなかったように、今の藤宮には、傍らで共に悩み考え歩んでくれる玲子の存在がある――というのも美しくまとまり、前回-今回と、藤宮博也という男の意味付けが劇中で再確認され、その着地点が見出されているのは、丁寧にやってくれて大変嬉しい部分(まあ藤宮もまだ、油断できない立ち位置ではありますが!)。
 藤宮に関しては前半のやらかし具合がやらかし具合だったので、どこまで許せるのかというわだかまりは多少あったのですが、前回-今回で、だいぶスッキリとしました。
 また結果的にではありますが、我夢サイドのヒロイン的存在の弱さが、藤宮サイドとの明確なコントラストを成す事により、我夢とXIG(チーム)の繋がりをより強調する事に。
 エリアルベースを失ったXIGはジオベースに拠点を移して再始動するが、改めて突きつけられた破滅招来体の脅威を前に、これまで対破滅戦線を支えてきた超国家的な結束に亀裂が生じつつある事を、参謀は憂慮。
 「ほとんどの国が、己の国の保全のみを、優先しようとし始めている」
 「……各国が、そんな失望感に包まれていく。そして失望の先に待ち受けているものは……」
 「絶望」
 川上脚本は今作の中ではアベレージ低めでやや心配だったのですが、今回は組み立ても台詞の置き方も面白い。
 上層部が地球防衛の今後を懸念している頃、全ての六角ファイターを失い、翼をもがれて飛べない豚と化したパイロット達はくだを巻いていた(笑)
 そこに、重病で余命数ヶ月といわれ休養していた筈のチーフエンジニア乱橋が顔を覗かせ、テストパイロットであったクロウ02・樹莉の経歴を拾いつつ、生命の翳りを感じさせない乱橋の軽妙さが、状況に対するカウンターとして重苦しさに凝り固まらない視点を提供する良いアクセント。
 一方、街では第1話の大水害以来レベルの無差別破壊が発生し、実に贅沢な爆破の中心に姿を見せる死神。
 「ウルトラマンを差し出せ。人類が助かる道は……ウルトラマンを生け贄に差し出す」
 前回の藤宮相手に続いて、いやらしい搦め手からの攻撃がこれまでにない存在として特徴的となり、居ても立ってもいられず、ジオベースを飛び出そうとする我夢。
 「待て我夢!」
 「行かせて下さい! 奴の狙いは僕なんです」
 「策はあるのか?」
 勢いで実質的にカミングアウトしていますが、司令室にはなんとなく、やっぱりそうなの、という空気が流れているように見えるのは気のせいでしょうか(笑)
 我夢がコマンダーに制されていた頃、閉鎖空間を離脱した藤宮と玲子は死神と対峙しており、戦いを決意した藤宮が玲子を振り返り、無言で頷き微笑む玲子と、微笑みを返す藤宮、そして勇壮な音楽でのアグル変身は、鳥肌の立つ格好良さ。
 「青いウルトラマン!」
 「……藤宮」
 我夢、我夢、精神的に追い詰められて、色々ダダ漏れ過ぎだぞ我夢……。
 アグルの攻撃を受けた死神は巨大な破滅魔人の姿へと変貌し、先制攻撃から蹴り技ラッシュを浴びせるアグルだが、調子に乗って突っ込んだところにカウンターでぐっさり刺されて悶絶するのが、大変、アグルです。
 「藤宮!」
 我夢の絶叫にクルーが一斉に振り返り、これも瀬沼さん辺りのルートから偉い人達は勘づいていても良さそうなのですが、なんだか色々なところで(というかコマンダーが)情報が止められている感。
 「……コマンダー、僕は行きます」
 「我夢」
 「策はありません。でも、あいつを僕は許せない。一緒に戦ってきた友人が苦しんでる。……僕は行きます!」
 コマンダーに一礼した我夢は今度こそジオベースを飛び出していき、状況を確認するべく司令室を訪れていた梶尾・米田・稲城の3人を含め、ガイアの正体を確信する面々。
 「……コマンダー、まさか、我夢は?!」
 「……ウルトラマンガイア」
 「そうなんですね!」


「ガイアーーーーー!!」

 変身した我夢はアグルの危機を助けて死神魔人と激突し、司令室ではXIGのクルー達がその勇姿に歯がみする。
 「我夢が……ウルトラマンガイア」
 「隊員として、そしてウルトラマンとして」
 「彼はずっと、俺達と戦ってきた」
 「くっそぉ……今の俺達は我夢と共に戦う事すら出来ないのか!」
 だがその時、乱橋が3機の新型ファイターの完成を一同に告げ、ここで隊長トリオが急造チームで出撃、というのは文句なく熱い展開。
 「我夢、おまえはずっとみんなに黙って……待ってろよ、我夢」
 まあ、「部屋が狭くなるからお前達は来るな」と待機命令を出された部下ーズがちょっと可哀想ですが……と思ったら稲城リーダーと樹莉の会話が挟まり、部下2人と言葉を交わしていた米田リーダーの元には慧が駆け寄り……か、梶尾さん? 我夢に花束をプレゼントされたシーンとか回想している場合ではないのでは梶尾さーん?!
 まあ、パイロット組から我夢への感情も集約はしたいところで、それはそれで無いと困る要素ではあるのですが、米田×慧のシーンに凄く尺が割かれる事もあり、北田と大河原は、色々なものの犠牲になりました。
 「…………必ず、帰って……」
 消え入るように呟く慧に、米田はスーツから引きはがした隊章を預け、これをちょっと離れた所から空気を読んで見守っている部下2人といい、ファルコンはひたすら大人のチーム。
 「……チームファルコンの、誇りを預ける」
 死神魔人と死闘を繰り広げるガイアは、遂に必殺のドスを叩き折る事に成功するが、目つぶしから反撃を受け、エネルギー放射であぶられる窮地に――
 「全機攻撃態勢。ウルトラマンガイアを、いや、高山我夢を援護しろ」
 「「「了解」」」
 「待たせたな、我夢」
 「我夢、今行くぞ」
 「あんた一人を苦しませたりはしない」
 チーム・リーダーズが駆けつけると魔人に猛攻を浴びせ、立ち直ったガイアがファイターと一斉攻撃を仕掛けるのが、これまで要所要所で丁寧に積み重ねてきたウルトラマンと防衛隊の共闘の、一つの集大成という趣き。
 「おまえ一人が戦ってきたわけじゃない。そして、おまえ一人が戦えば済む事でもない」
 という冒頭の言葉が、実を持って響きます。
 だが一斉攻撃は魔人が全身に張り巡らせたバリアによって防がれてしまい、肉弾攻撃も無効。苦境に陥るXIGだが、我夢のお株を奪うアナライズ(我夢の存在が歴戦のファイターにも影響を与えていたという補完関係として美しい)で魔人の弱点を探った米田が、魔人の目だけはバリアに覆われていない事を発見。
 「俺達は、勝つ!」
 ガイアを助け、猛然と急降下攻撃を仕掛けた米田機は見事に魔人の目にレーザーを直撃させ、片目を失いもがく魔人を、ガイアは地球の隙間ビームで爆殺。だが魔人に接近しすぎた米田機は墜落してしまい、ガイアもまた気を失うように我夢の姿へ戻っていくのであった……。
 地上で回収された我夢は梶尾に揺り起こされ、玲子さんの看病を受けている藤宮の無事を確認。……もう僕のマネージャーは、梶尾さんで構いません!
 梶尾「断る」
 チーム・シーガルと共に米田機の墜落現場に駆けつけた慧は、無惨に四散した機体、焼け焦げたヘルメット、そして血まみれの米田を発見するが、米田は慧が伸ばした手を握り返し、なんとか、生還を果たすのであった……!
 米田生存の報告に喜ぶ一同の姿をEDパートで描いて幕を閉じ、冒頭でコマンダーがさくっと生き延びただけに、死亡フラグキラーパスを受けた米田さんが流れ弾で殉職しなかったのは、大変良かったです。
 米田リーダー、腕さえ良ければ人格に多少難があってもOK、なんて事は無く、ひたすら人格者なのが、結構好きなキャラ。……まあ、背景が判明するまでは、ちょっと突飛な所はありましたが(笑) そして、この最終局面で驚くほど米田×慧に尺が割かれたのは、いったい誰の陰謀なのかと思ったら、米田×慧の絡みがあった第32話の監督が北浦監督だったので、主に北浦監督の陰謀でしょうか。過去作出演キャスト、というのもありそうですが、最後の最後で、原田監督より自制しなかった感(笑)
 それにしても、殉職するならこの人候補の1位(コマンダー)と2位(米田)が、三途の川を渡りかけたところから奇跡の生還、が2話続いたので、次回あたり、三度目の正直で梶尾さんが危ないのではないかと大変不安です。
 我夢=ガイアを皆が知るシーンはそれほど劇的には描かれませんでしたが、どちらかというと、薄々勘づいていないと頭悪く見えてしまうレベルになっていたので、案配としては、わざとらしくなりすぎず、良かったと思います。
 そこからファイターチームとの共闘に繋ぐ展開は非常に格好良かったですし、並行して、前回またややこしい思索に飲み込まれそうになるも玲子さんに引っ張り上げられた藤宮が、満を持して“ヒーローとしての飛翔”を決める姿が描かれたのが素晴らしく、我夢サイドの一つの到達点と、藤宮サイドの一つの到達点を、別々の筋でまとめて見せるという離れ業を鮮やかに成功させた良エピソードでした。
 主筋は我夢×ファイター(XIG)回なのですが、個人的にはそれ以上に、アグル回として高く評価。
 ……ところで、結果的には死神の罠が何もなかったような気がするのですが、アグルが先に戦ってくれたお陰で、死神のカウンタードスアタックをガイアが見切れた、という事でいいのか。
 次回――格好いいサブタイトルから「燃えろ田端!」でちょっと困惑しますが、田端さんも拾ってくれるようなのは、嬉しい。