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男には自分の世界がある

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第20話

◆第20話「至高の芸術家」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:たかひろや)
 必殺・ドラム缶投げ!!
 コウ・アスナ・トワの戦闘訓練を監督していたメルトは、感覚先行で戦う3人にダメ出しをし、特にトワに対して「おまえは速いだけだ。速さを奪われたらおまえは何もできない。もう少し頭を使え」と厳しく指摘。
 理論派のメルトが戦術でトワを追い詰め、リュウソウジャーの戦士としてのシビアな一面が顔を出すのですが…………10話以上前にやっておいてほしい展開で、どうにも漂う、今そこなの感。
 そもそも、スキルソウルが汎用・共有な為に、5+1の戦闘における差別化があまり上手く行っていないので、リュウソウグリーンを「速いだけ」と言われても、登場当初を除けば取り立てて強調されていない為に積み重ねによる説得力の不足がまたも重く響きます。
 コレクションアイテムは誰でも使える方が遊ぶ側にとって楽しい、というのはわかりますが、例えば同じ「はやソウル」を使っても、緑が使った時と青が使った時ではスピードが違う、みたいな描写は過去にあっても良かったかな、と(ムキムキソウルに関してはほぼピンク専用なので、適性による向き不向きという机上の設定は存在していそうですが)。
 そして、劇中の描写の積み重ねを反映するよりも、描写されていない設定に基づいてキャラクターが動いたり物語が進んでしまうので、スタッフ脳内で展開している物語(供給している情報)と、受け手の目に見えている物語の間の齟齬がどんどん広がってしまうという典型的なパターン。
 今回のエピソード内での“速さ”の表現は随所でこだわって面白かったのですが、一桁話数の内にはこれぐらいやって、もっと印象づけておいて欲しい要素でした。
 変わり種のスケッチブックマイナソーを操るワイズルーにより、ほとんど描写もないままコウ達が捕まってしまい(タコ焼きパーティ略してタコパグッズを背負っているアスナは、相変わらず独特の可愛げを発揮)、トワだけが辛くもその魔の手から逃げ延びる。
 「俺一人で……どうすれば……」
 座り込むトワの前に、何故かフィルター効果付きで現れたのは、紫の鎧の騎士、ウルッポイゾことガイソーグ。
 「なんだ……バンバから何も聞かされてないのか」
 「兄さんを、知ってるのか?」
 「ああ。トワ……おまえの事もな」
 ……こ、これは本当に、ウルさんルート?!(笑)
 「一つ助言をやろう。力は頼るものでない。――活かせ」
 いきなりトワに切りかかったガイソーグは、しばらく剣を打ち合わせた後、くるりと背を向けると思わせぶりな言葉を残して去って行き、その背から濃厚に漂う俺の美学が、ますますウルさんルート?!
 (※詳しくは、『魔法戦隊マジレンジャー』に登場する窓際騎士ことウルザードを参照下さい)
 「なんであいつが……」
 そしてそれは、かつてトワがバンバから聞かされた事のある、マスター(黒+緑でフカミドリ?)の言葉であった……。
 一方、素体の絵を描けないストレスから成長した巨大スケッチブックにワイズルーが自らを描く事で、巨大ワイズルー(絵)が誕生。ワイズルーと巨大ワイズルーはお互いに誉めたたえ合い、終始ハイテンションのワイズルーは今回も非常に面白いのですが、今後ワイズルーが退場した場合、その穴を埋める事ができるのかは、大変心配です。
 「駄目だ……俺一人じゃ」
 ビルの谷間に出現した巨大ワイズルーを目にして絶望的になるトワだが、素体とされてドルイドンに囚われた兄を必死に捜し回る少年の姿を目撃し、何の為に戦っているのかを、取り戻す。
 「…………俺がやらなきゃ……誰がやる」
 戦士としての使命感に、兄を慕う弟への共感をまぶし、前回、子供に優しく接する姿を見せていた事も効果的になったのですが……
 「考えろ、考えろ!」
 足を鳴らして打開策を見出そうとするトワの陥った「仲間が全て戦闘不能」という苦境と、アバンタイトルでメルトが指摘した「速さを奪われたらおまえは何もできない」という弱点が全く別の事項なので、「頭を使う」というキーワードが、繋がっているようで繋がっていない大混線。
 恐らくは、少年への思い入れから戦う心を取り戻したトワが、メルトの助言を受け入れて頭も使う事で、精神的な成長から実戦でのスキルアップへ戦士として一皮剥ける姿を二段構えで描く狙いであったのでしょうが、後段が物語として適切に接続されていない為に前段と後段が分裂してしまい、焦点が二つにぶれてしまう事に。
 また、途中のウルッポイゾの助言も“マスターフカミドリと同じ言葉”というだけで、このクライマックスにはさして関わらない為に浮いてしまい、これなら「兄弟の話」か「頭を使う話」かのどちらか一つに絞った方が良かったと思うのですが、全部入れても出来るつもりでやはり出来ていない、という毎度ながらの『リュウソウジャー』仕様。
 もしかしたらこれでも少し削っているのかもしれませんが、プロットの錬磨による洗練、というのが本当に見えません。
 ワイズルーの言動などを振り返り、何かを閃いたトワは巨大ワイズルーに挑むも降参。だが、その直前に飛びついたスケッチブックに檻の鍵を描いて実体化させており、わざと敵に捕まる事で全員の救出に成功してみせる。
 「頭を使うって、こういう事だろ?」
 「………………ああ。助かった」
 だから全然違うよ!!
 「速さを封じられた時に頭脳(別の戦法)で勝つ」のと、「絶体絶命の状況をひっくり返す為に機転を利かす」のは、似ているようで物語的には全く違う事なのですが、メルトの「ああ」まで物凄く長い間があるのは、素直になれない性格の問題なのか、内心屈辱にまみれてグヌヌなのか、(いや、俺が言いたかったのはそういう事じゃないんだけど、ここで否定するとまたこじれそうだし……結果オーライでもういいか!)という煩悶だったのか。
 アバンタイトルにおける弱点の指摘と劇中でトワの陥った苦境が別物なので、一見「頭を使って逆転」という要素でまとまっているようで実は何もまとまっていない超スライド着地なのですが、多分これで「よくできました」扱いで通ってしまうのが今作の現況で、根っこのところで、プロデューサーが脚本に要求しているハードルが、甘すぎるのでは……。
 (※今回もこのタイミングでメインライターではないのですが、なんだか『ブルースワット』辺りの脚本家の使い方を思い出してしまいます。……『ブルースワット』は過去最大のブラックホール級でしたが)
 勿論、過去作でも出来の悪いエピソードというのは幾らでもあるわけですが、今作の場合、「プロットの入力段階で既におかしかったものが、制作過程の様々な場面で修正される事なく、そのまま出力されてしまっている」感があり、プロデューサーの眼鏡の度が合っていないのではないか、という気になって仕方ありません。
 「さあ。反撃開始だ!」
 開放されたリュウソウジャーは6人揃い踏みを決め、ミストソウルで包み込んだ敵にビリビリソウルで電撃を拡散するなど、赤&桃、青&緑、黒&金、がそれぞれスキルソウルによる連携技を決める趣向は悪くないのですが、黒と金が連携を決めていると、石の件は水に流して距離が縮まったというより、石の件によるわだかまりは物語上で存在していなかった事に見えてしまうのが、困ったところです。
 トランプ兵を蹴散らしたリュウソウジャーは、ファイブナイツとネプチューンによる怒濤の攻撃を浴びせ、スケッチブックマイナソーと巨大ワイズルーは消滅。大ショックのワイズルーはクレオンと共に帰宅し、無事に戦いを終えたコウ達3人はういちゃん主催のタコ焼きパーティに参加。ういちゃんの悪巧みにより一つだけ混ざった激辛タコ焼きはメルトに直撃し………………うん、だからさ、もう、メルト集中攻撃するのやめましょうよ……。
 山岡脚本回ではないので、スタッフの総意なのかもですが、正直、面白くない。
 あと今回ちょっと気になったのが、絵描きの女性にしつこく言い寄るカナロの描写。カナロは惚れっぽいナンパ男でそこは人間的短所という扱いそのものは構わないと思うのですが、尺の問題もあるとはいえ多少なりとも相手の女性の良さ(カナロがどこに惚れたのか)を描かないと、回が進む程に「見た目が好みなら誰にでも求婚する男」になってしまうのは、今作十八番の無神経さと絶妙な相性を発揮しそうで、危うく感じます。
 既婚者にしろ相手にされないにしろ美人局にしろ、基本的にカナロは失恋仕様なのも、メルト集中攻撃と同じカテゴリの気配が漂い、その内、大事故を起こしそうで心配。
 まあカナロの場合、初回が特大事故だったので、あれに比べればマシ……というクッションに結果的になってはいるのですが。
 トワはガイソーグについてバンバに問うがバンバは黙り込んでしまい、何やら隠し事をしている兄の様子に、トワは不審の眼差しを向けざるを得ないのであった……で、つづく。
 次回――そういえば回想登場もなかったマスターピンクが再登場。そして、感動の再会。
 「あの変な鎧の中身は、タンクジョウ様だったんっスねー! 500ポイントでーーす!」