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地球ギリギリの時

ウルトラマンガイア』感想・第47話

◆第47話「XIG壊滅!?」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:右田昌万 特技監督:北浦嗣巳)
 注目は、いつの間にか「玲子」呼びな上に、家の場所まで知っている藤宮。
 藤宮ぁ?!
 ……まあそもそも、今まで藤宮が玲子さんをどう呼んでいたか記憶にないのですが、面と向かって名前を呼べないシャイボーイなので「あんた」とかだったような気がしないでもない藤宮は、玲子を人質にTLTに勧誘される(同じ役者さんだそうで)、ではなかった、「主の使い」を名乗る不気味な魔人により、奇妙な空間の中へと引きずり込まれる。
 いよいよ物語も終局へ、という事でか、紫の衣を身に纏い全身がブヨブヨの肉襦袢に覆われた仏像ないし怪僧、とでもいったデザインの魔人は、役者さんの目を出しているなどカラス天狗以上にこれまでとは一線を画す芸風。
 そんな魔人が「宇宙の真実の一部」「根源的破滅招来体の動機」を長々と語り、デザインともども今作これまでとはアプローチがあまりに違いすぎる為、“種明かし”なのか“攪乱”なのかという戸惑いが先行してしまい(個人の気分的には、種明かし2:攪乱8ぐらい)、そこは後編を待たないとどうにもスッキリしない内容になってしまいました。
 「何故だ?! 何故こんなものを使う必要があるんだ!」
 「人類を滅亡させ、誕生したての希望の星に戻す為、浄化する」
 「浄化?」
 一方、エリアルベース上空には超巨大怪獣が出現し、その正体は、磁石の一つの極しか持たない理論上の物質――モノポール。それがもし地球に落下すれば、マントルへの影響による地殻変動により、世界は滅亡待ったなし!
 地球への降下を始めたモノポール怪獣の影響が発生するまで、タイムリミットは僅か30分。
 「地球防衛指令デフコン1・発令!」
 コマンダーの号令一下、緊急事態に慌ただしく動き回る乗員の姿が挟み込まれるのが雰囲気を盛り上げ、全9機のファイター、そしてエリアルベース自らが、モノポール迎撃の為に出撃し、前回のアレがでっかいフラグだった事になった梶尾さんの天使のマグマが火を噴きそうです!
 「なぜ人間を嫌う?! 人間がおまえ達にいったい何をした!」
 「……我々も……滅ぼされたくない」
 魔人はこのままでは宇宙そのものが滅亡すると藤宮に告げ、“動かしにくい戦力”である藤宮を玲子さんともども別の空間(魔人は、モノポール内部と説明)に隔離し、我夢サイド(緊迫の活劇)と藤宮サイド(テーマ要素の語り)を交互に展開する事で、長い会話シーンを飽きさせずに展開したのは上手い工夫でした。
 「主はいつもあなた方を見ています。そして常に、憂いています。お見せしましょう……宇宙の真実の、ほんの一部を!」
 魔人は、苦しむ少女になぞらえた宇宙の姿を藤宮へと見せつけ、人類こそがその苦しみの原因たる病原菌であると語る。
 「人間が、人間が宇宙を蝕んでいる、ウィルスだというのか?!」
 かつて、人類を「(地球の)ガン細胞」に例えた藤宮に、この言葉が跳ね返って突き刺さってくる、というのも面白い拾い方。
 「主は、あなたを必要としています」
 「破滅招来体が、俺を?」
 新世界のアダムとイブまっしぐらの展開に炎の黙示録が待てこれは大門の罠だ深呼吸して円周率を数えながら腕立て伏せするんだ藤宮博也している頃、一斉砲撃も甲斐なく怪獣の反撃を受けたエリアルベースはほとんどの砲門を破壊され内部にも大きな損害を被り、本当に万が一の時の為の武装だったのでしょうが、機動性もなければ防御システムも脆弱しすぎて、根本的に正面から撃ち合うのに向いていない感。
 打撃戦力を大幅に失ったXIGに残された最後の手段は――今こそエリアルベースとジオベースが一つになる天地合体XIGバリオン降臨の時! じゃなかった、エリアルベースのリパルサーリフトを単極子Sに限りなく近付ける事で怪獣を安全圏まで誘導した上で、エリアルベースを自爆させる事のみ。火を噴くブリッジの中で我夢は苦渋の計算を口にし、コマンダーは全乗組員を退艦さ、エリアルベースの放棄を決断する!
 「……こんな戦い、いつまで続くんだろう」
 「宇宙に命が芽生えたその時から、強い者が弱い者を飲み込み、エネルギーとする。その戦いのシステムが、彼女の痛みを生み出したんだ!」
 「人類は進化しすぎた。それ自体が、宇宙を破滅に導くのだ!」
 「勝手すぎるよ」
 思想的活動家の病歴がある為か、ついつい魔人と同じフィールドで論戦に入ってしまう藤宮だが、その時、玲子さんが口を出した!
 「あの人達は、私たちを取り除く事しか、考えてない。私たちが、同じ宇宙で生まれた、大切な命なんだってこれっぽっちも考えてない。私は……あなたが好き」
 振り向きざま突然の告白に、藤宮ドッキリ。
 まあ玲子さんの藤宮への感情は中盤から明確になっていたので、違和感はないですが。あと、藤宮からは色々な意味で告白しそうにないですし(笑)
 「人類を憎しみながらも、少女も、私も、沢山の命を救ってくれた。私は、あなたの中にある、その優しさが好き。その優しさは…………みんなが持っているもの。人間に、その心がある限り、地球も、宇宙も、救えるような気がする」
 毎度ながら玲子さんの語りは背景の積み重ね不足で説得力の弱さはあるのですが、一度は人類を滅ぼそうとした藤宮だからこそ、“人の抱える矛盾”の象徴としてこれ以上なく成立し、それは、過ちを犯す者の中にも常に存在する希望の光である、というのがありきたりの言葉を超えた説得力を持つ事に成功。
 今作における、藤宮博也という存在の意味も劇的に着地し、ここはとても良かったです。
 エピソードとしては、ここに到達するまでに、虚実定かならぬ魔人の語りが少し長くなりすぎはしましたが。
 「人間に、ウィルスごときに何ができる。ふふ、ふふふふ、ふっふはははははははは!」
 大事な話の最中に目の前で告白イベントを見せつけられた魔人は嗤いながら姿を消し、溶け去るように消えていく幻影空間の中で、玲子を抱きしめながら藤宮はアグルに変身。
 一方、エリアルベースに一人残ったコマンダーは、モノポール怪獣を安全高度まで引き上げる事に成功。だが、先程の戦闘による損傷からリパルサーリフトに異常が発生して磁極が元に戻ってしまい、再び地球へ降下していく怪獣を食い止めるべく、エリアルベースによる特攻を決意。コマンダーの退艦をアシストするべくEX機に残って待機していた我夢はコマンダーを救おうとガイアに変身するが、覚醒した怪獣の攻撃により逆に囚われの身になってしまい、でっかい死亡フラグを立てていたのは僕もでした梶尾さん!
 「我夢……逃げるんだ我夢」
 コマンダーはガイアを救うべく限界寸前のエリアルベースで突撃を仕掛け、ウルトラマンを完封する巨大怪獣に人類が立ち向かうという逆転の構図の中に、若い部下を救おうとする上官の想いが込められる事で、人間関係を濃縮。前半、何かと思わせぶりだったコマンダーは、若者を見守り導いていく大人の戦士、として宇宙に散る事に。
 「このまま突っ込め!」
 崩壊寸前のエリアルベースは超巨大モノポール怪獣に真っ正面から激突し、大変気合いの入った爆破特撮で、粉微塵に吹き飛んでいく、怪獣、そしてエリアルベース。その炎の中にコマンダーは消えて……というところでそのままEDへと突入し、つづく。
 直前にアグルが変身していたので、最終回にひょいっと登場する可能性も有り得ますが、コマンダー、殉職(仮)。
 そして、過去2度の墜落の危機を乗り切ったエリアルベースも、最終回付近名物・基地崩壊の圧力には抗いきれず、ここに轟沈。空中要塞、というアイデアがまず格好良いですし、それをしっかり映像に乗せ、物語の中における意味も与え、作品を特徴づける良い空中母艦でありました。
 コマンダー退場は、途中リタイアするキャラが居るなら本命だった上に、予告で殺しにかかり、総員退艦時に最後まで残るという最大の死亡フラグを立てたので衝撃度は薄めでしたが、最後の行動が、地球を守る、と同時に、我夢を守る、だったのはふさわしい散り様でありました。
 キャラクターとしては、思わせぶりな口ぶりと思わせぶりな目線で思わせぶりに立っているけど特に裏も秘密も無かった、という扱いであり、これなら個人的な好みとしては、もう少し早めに特に裏も無いという部分を固めて、実直な軍人像を打ち出してスッキリ見られるようにして欲しかった部分はあり。
 ……いやまあまだ、残り数話の中で実は生きていたコマンダーが「俺はかつて破滅招来体によって滅ぼされた星の唯一の生き残り、ヴァンダム星人のクロードだったのだ」とか、裏も秘密もある可能性はありますが!
 そういえば今作に、地球人類より優れた科学力を持つ異星人が明確に登場しないのは、「人類は進化しすぎた。それ自体が、宇宙を破滅に導くのだ!」同様、一定レベルに達した文明を破滅に追い込む浄化システムこそが宇宙の摂理、だとすれば筋は通りますが、さて。その辺り含めてどう転がっていくのか、次回、嫉妬に燃える魔人の怒りを見よ!