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男なら誰かの為に強くなれ

ウルトラマンネクサス』感想・第1話

◆Episode01「夜襲-ナイトレイド-」◆ (監督:小中和哉 脚本:長谷川圭一 特技監督菊地雄一
 「目覚めの時は――近い」
 物語は奇妙な遺跡を見つめる革ジャンの男の姿から開幕し、なんとなく、鍛えて音叉構えて太鼓を叩きそうな顔立ち。
 OP明け、都会に暮らす青年の
 「僕たちは生きている。平和な日々を、ごく当たり前のものとして。例えば、その日常の裏に、得体の知れない何かが存在したとしても、多くの人が、自分とは無縁のものと思うだろう。……でも、目の前にある現実が、全て偽りだったとしたら――」
 というモノローグを挟み、深夜のガソリンスタンドで人間を襲う巨大ウミウシめいた怪物と、それを撃破するステルス装備の秘密部隊の姿が描かれ、謎の怪物と歩兵の戦いからスタートする変化球ですが、ここまでの率直な第一印象は、少しこだわった『ブルースワット』。
 これは放映当時と2019年現在では、映像などから受ける印象の変わってくる所もあるでしょうが、これから何が起こるのだろうという期待感を煽るよりも薄暗いリアリティを重視した結果、変化球を投げる事そのものが目的になってしまって、直球だろうが変化球だろうが共通して必要なワクワク感が見えてこない、というのが正直なところ。
 第1話時点では、『ブルースワット』ばりの歴史的大惨事などは発生しませんでしたが、変化球を投げるのはいいけれど、キャッチャーミットはどこに構えられているのだろうか、というのは少々不安です。
 レスキュー部隊の青年が過去のトラウマからレスキューに失敗し、同僚や彼女(如何にも不幸そうなオーラを醸し出しているが大丈夫でしょうか……)と会話を交わす流れものんびりしすぎていて、個人的にはだいぶ物語に入り込みにくい導入。
 私自身の小中監督との相性の悪さはありますし、本格的な怪獣バトルが無い事で尺が余り気味だったのかもしれませんが、全体通して、会話シーン・車の移動シーン・謎の男達、などなど個々の場面がいちいち長すぎて、丹念に描かれているというよりはテンポが悪く、全てが長いので特にメリハリによるサスペンスが強調されるわけでもない、と演出面もだいぶマイナス。
 レスキュー青年は怪しげな男達に受けた検査の結果、特務機関TLTに配属される事になるが、任地に向かう途中に巨大ウミウシと遭遇。おいしくいただかれそうになったその時、天から降り注いだ巨大が火球がウミウシをぷちっと潰して消滅させ――その正体は、見上げるほどに雄大な銀色の巨人の拳。
 道路に突き刺さる輝く巨大な手と、主人公だとばかり思っていた青年がウルトラマンを見上げるシーンは映像も展開も意外性があって面白かったのですが、これが「『ウルトラマン』で見たかったもの」か?と問われると、悩ましいものがあります。
 この辺り、《平成ライダー》もそういう部分がありますが、背景にある時代性、シリーズとしての流れ、いったいどのような要請としてこの作品が登場したのか、が見えているかどうかで印象の変わるところはありそうですが。
 「ここでいったい何があったの? 何があったかって聞いてるのよ?!」
 一足遅れで駆けつけた特殊部隊の女隊員は青年を問い詰めるが、青年が配属予定の新人だと気付くと銃を持ち上げ、背後に残っていたウミウシの欠片を粉砕。
 「一つだけ忠告しておくけど……次からは自分の命は自分で守りなさい」
 厭味ったらしく言い捨てると去って行き、第一印象では感じ悪いけど……的な先輩のイメージを主人公と視聴者で共有してもらいたい意図であったのでしょうが、まだ主人公が新人隊員と知る前、“現場に立ち尽くしていた生存者”に一方的かつヒステリックに喚き立てる姿からは、ただの出来の悪い隊員のイメージが先行してしまい、やり過ぎて足を踏み外した感。
 まあ実際に、ただの出来の悪い隊員の可能性もありますが……そこから冒頭と同じどこかしんみりしたBGMで、
 「これが僕と彼女の、そしてあの――銀色の巨人との、初めての出会いだった」
 とかモノローグ入れられると、だいぶ困惑します。
 「でも僕は、これから待ち受ける、驚くべき現実について、まだ何一つ知らずに居た」
 そしてそんな青年を、革ジャンの男がじっと見ていた、でto be continued...
 ウルトラマンが顔見せ登場のみだったり、主人公始めモザイク的なキャラクターの描き方だったり、個と全体の構造を時間をかけて見せていきたそうな構想の窺える作劇で、まだエンジンを暖めている最中といった感のある第1話でしたが、ポイントとしては「巨大ウミウシと特殊部隊の戦いに興奮できるか」「主人公の訥々とした突然のモノローグを受け入れられるか」の二つが大きいように思え、私は二つとも、駄目でした(笑)
 最後の最後に姿を見せたウルトラマンの、鉄兜めいた意匠の顔デザインはインパクトが強く、肩部も張り出しが大きいのは「騎士」のイメージがあるのでしょうか……?
 ただ、一風変わった風貌のウルトラマンの姿もOP映像でばっちり見せているので、ビジュアルで殴る攻撃力も弱まっており、構成としては「主人公と思われた青年がウルトラマンに変身しなかった」という変化球に、いったいどこまで他の要素を犠牲にする価値があったのかというと、シリーズ固有の魅力を上回る面白さは出せなかった第1話というのが正直な感想。
 今回を前後編の「前編」と見ても、楽しさ・面白さが不足していると思いますし、意欲が先行しすぎたのかなと(この辺り、シリーズがどのような状況にあったのか、というのも関係はしてくるわけですが)。
 上述したように、少し長い目で見て欲しそうという雰囲気は感じ、ウルトラマンそのものは格好良いので、次回の活躍に期待したいです。
 なお、EDはなぜか、80年代ポップス風味?で、これまた困惑(笑)