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野球とルールと深い闇

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第19話

◆第19話「進撃のティラミーゴ」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:山岡潤平
 (吾輩は、騎士竜。名は、ティラミーゴ)
 草野球に参加したり、ジョギングする人と挨拶を交わしたり、いつの間にやらティラミーゴは、リュウソウジャーより余程、街の人々と友好を深めていた。
 (吾輩は、この街が好きだ。助け合いながら生きている、この街の人間が好きだ)
 そして、リュウソウ族より余程、人間に親近感を抱いていた。
 (吾輩は、この街が好きだ。こいつ以外は)
 ……だが、メルトの事は嫌いだった。
 ティラミーゴがメルトを嫌っている理由が、第2話における騎士竜への態度だとしたら(精々それぐらいしか思い当たらないのですが)、当のトリケーンとの間で解決した問題をティラミーゴが根に持って不信感を抱いているのは何やらおかしな話ですし、ここ最近、視聴者からの反応のフィードバックがあってか収まり気味だった、メルトなら雑に扱ってもいい、というのがまた顔を出したようにしか見えず、あまり感じの良くない導入。
 (気がつくと、いつも、ここへ来てしまう。子供の声はいい。心が癒やされる。未来の声だ)
 リュウソウ族よりよほど人の心に寄り添っている感のあるティラミーゴが訪れた小学校で、エージェントSもとい女教師からマイナソーが誕生。戦闘力は低いが特定のフィールドにおいて特殊な能力を発動するマイナソーにより、今回は先に相手が既婚者だと気付いたカナロ、犬好きという特徴が明確になったトワ、不意打ち上等のバンバが、次々と敗北してしまう。
 暑さに負けてだらけきり、怒髪天を突くお父さんによって家を追い出され、路上に最低な感じで座り込んでいたコウ達3人だが、本当に開設されていたクレオンチャンネルで変事を知るとティラミーゴと共に学校へ向かうも、あっという間にコウとアスナも蜘蛛マイナソーの能力に敗北。
 「……ルールだ。ルールを破った者は、ここに閉じ込められる」
 コウとアスナは飛ばされた閉鎖空間で消えた子供達や仲間達を発見し、教室の壁一面に張られたルールの貼り紙が、軽くサイコホラー。
 劇場版から上堀内監督が帰還し、パイロット版以来の上堀内×山岡となった今回、変則的な能力を持ったマイナソーがリュウソウジャーを翻弄する、趣向を凝らしたバラエティ回としては作劇の幅も広がって悪くなかったのですが、後半その突破手段が、「力尽くで学校の外に連れ出す」だったのは大変残念。
 そこは、野球が伏線として発動するところではないのか(笑)
 閉鎖空間で子供を慰めるトワ、トラップの発動により崩れた机から子供達を守るアスナ、窮地を脱する一手を閃くバンバ、と各キャラへの目配りも利かせられただけに、詰めの部分でもうワンアイデア練り込めなかったのが物足りない出来。最後の一手は力尽く、というのも見せ方次第では十分面白さになりますが、それならそれで、思わず笑ってしまうぐらいの勢いが欲しかったところ。
 蜘蛛マイナソー自身がルールを破った事で閉鎖空間が解除され、メルト回だったらこちらにも焦点が当たったのでしょうが、メルトとティラミーゴのタッグによる問題解決を巧く組めなかったのでティラミーゴ単独回という事にされた感がどうもあり、本来ならメルトのアイデアとティラミーゴの勢いを掛け合わせる構想だったのが、前者が消えてしまった事により「実はメルトはあまり活躍していない」「ティラミーゴによる力技というには中途半端な解決」という状況が生まれてしまったのではとも思えます。
 「子供達を、この星の未来を脅かすのが、一番のルール違反だー! ティラぁぁぁぁぁ!!」
 リュウソウジャーが合流し、ティラミーゴ怒りの巨大化を見たクレオンは、女教師の前でゴミを散らかすなどストレスを与える事でマイナスエネルギーの放出を加速させ……以前に触れた通り、この設定は本当に危ないと思うのですが、無かった事にせずに拾ってしまいました……。
 素体ゲストが女性という事もあってか直接打撃はしませんでしたが、それなら科学者Youtuberの回も「幸せそうなカップルの写真を見せつける」とかで良かったわけですし(それなら場合によってはギャグとしても処理できた)、どちらにせよ、対リュウソウジャーの罠だった今回は別にしても、基本的なドルイドンの目的が「マイナソーを巨大化させる」事にある以上、そんなシンプルな手段があるのになぜ素体を手元に確保しておかないのか? は大きすぎる穴。
 蜘蛛マイナソーはギガント竜王に一方的に撲殺され、キャンペーン期間中で仕方ない面はありますが、巨大戦に一切関わらないメルト、完全にアバンタイトルで雑に扱われ損。
 実はマイナソー最初の被害者はワイズルーであり、囚われの子供達の一人はワイズルーの変装だった、というのは面白かったですが、そこかしこに悪くない所が顔を出しつつも、総合的な連動性、エピソードとしてのまとまりの部分で完成度が一手二手三手足りないのが、実に『リュウソウジャー』。
 いつの間にか子供達よりルールの方を大事にしていたかもしれない、と女教師が反省し、ティラミーゴがそれをなんとく諭すシーンのとってつけた感は相変わらずですし、誰がこだわっているのか知りませんが、そろそろこの方向性は諦めた方が良いのでは。
 また、「メルトとティラミーゴのタッグによる問題解決」エピソードではなかったので、ここで横にメルトが立っているのが大変意味不明になり、ティラミーゴがメルトの名前を正しく紹介して二人の距離感が多少縮まるというのも、内容と噛み合わず首をひねる着地点になってしまいました(という点が逆に、上述した「本来なら……」という推測の根拠なのですが)。
 ラスト、深く反省したコウ達3人はYoutuber家を念入りに大掃除。ところがその最中にティラミーゴを脚立代わりに扱おうとしたメルトはまたまた機嫌を損ねてしまい、それはメルトが悪い、と今作お家芸の無神経ボムが華麗に炸裂。
 減るよ! ハート! 減るよ!
 (……もしかしたら、メルト自身がコウとアスナから雑に扱われがちな為、これぐらいではハートは減らないと言い聞かせる事で自己を防衛しているのかもしれない……と考えると、幼なじみトリオの間の闇は深い)
 ティラミーゴにスポットを当て(すっかり社会に溶け込んでいるティラミーゴの姿を映像で押し通してきた辺りは好き)、楽しげな雰囲気から変化球を投げ込んできたエピソードの骨組みは悪くなかったのですが、後半息切れして突き抜けきれず、前回今回と、設計図段階の問題点や脚本家のスキルなど諸々の要因から、『リュウソウジャー』という作品が現状超えられない壁、が見えてしまうエピソードになりました。
 次回――ようやくトワのターン! 忘れられそうになっていたウルッポイゾも再登場! ……ところでここ最近、クレオンが妙にタンク様を懐かしんでいるのですが、ガイソーグの中身が宇宙から帰ってきたタンク様だったら、拍手します(笑)