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よっさーもっさー(段々気に入ってきた)

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第16話

◆第16話「海に沈んだ希望」◆ (監督:坂本浩一 脚本:荒川稔久
 前回、ドルイドンに捕まった事を直接謝罪するオトと、それに「大丈夫。気にしないで」と笑顔で返すメルト、手堅い、手堅いなぁ……!
 ……このレベルの手堅さが感動的なのもどうかという感じはするわけですが、今作に行き届いていなかった部分が猛烈なスピードで補われていき、荒川脚本が実に鮮やか。
 オトを心配して扉に張り付いていたカナロも捕獲され、コウ達の善意を信じたいとは思いながらも、胸に抱え続けていた不安を、オトは問いかける。――それこそ、海のリュウソウ族に連綿と伝えられてきた、陸のリュウソウ族へのぬぐえぬ不審。
 「本当は……あなた方がドルイドンを倒して、地球のみんなを支配しようとしてるだけじゃないんですか?」
 「「「え?」」」
 「ちょっと待って、何それ?!」
 「私たちは、モサレックスにずっとそういう風に聞かされてきました」
 ドルイドンが去った後の地球にもたらされたのは、平和、ではなく、残った種族による地球の覇権を賭けた跡目争いだったのだ!
 ……えー、だいたい、第1話の時点で抱いたリュウソウ族への不信感の通りになってしまい、面白がっていいのか困惑しています(笑) まあ、ここから更に一つ二つ捻りが入ってくる前提ではありましょうが、「対ドルイドンの最終兵器」というには何かと扱いの怪しげだった騎士竜も、回想イメージだと思い切り古代人類に牙を向けていますね!
 5人はひとまず気分転換だと街に繰り出し、オトのお着替えタイムを入れてくるところに荒川×坂本の意地とプライドを見ますが、そこからオトの少女らしい可愛げに繋げ、なんだかオトに好意を向けられている風のメルトの年下の女の子相手なら余裕を持って振る舞える姿を好青年として描き(まあ前回体を張ったのはコウなのですが、バランス的にメルトをプッシュする判断は正しいかなと)、そんな2人にジェラシーの炎を燃やす事でカナロに愛嬌を付け、と、まずはキャラの魅力をプラスに引き出さなくてどうする、とあらゆる手管を駆使して好感度上昇シーンを圧縮してくる荒川稔久、匠の技。
 根幹に種族間に横たわる問題を抱えつつも、和やかな時間を過ごす5人であったが、そこに満を持してガチレウスが直接出馬。リュウソウレッドは戦いの中で、ガチの弱点に気付き、ゴールドと共にそこを突く。
 「俺が囮になるから頼む!」
 「……なぜ俺に?」
 「ん? 理由……いる?」
 ガキ大将気質のコウの開けっぴろげな部分、やや無神経だが裏表の無い素直さから出る、「おまえが何を言っているのかよくわからない」という対応が、役者さんの、とぼけてないけどとぼけた感じの台詞回しも絶妙にはまってコウの良い面として鮮やかに引き出され……もう、今からでも荒川さんメインライターに交代しませんかね……。
 赤と金のダブル攻撃によりガチさんは結晶化。疲労から気を失ったオトをYoutuber家に寝かせている間、陸のリュウソウ族との和解についてモサレックスを説得しようとするカナロだが、コウ達の「知らなかった“歴史”」ではなく、「目の前の悲惨な“現実”」として体感しているモサレックスは頑として耳を傾けず、カナロもまた、モサの抱える傷を蔑ろには出来ないのであった。
 「俺はそれを捨ててくれなんていえない」
 「……正しいと思うよ、それ。でも、大事にするのはそれだけじゃないよね。カナロ自身の気持ちもちゃんと伝えるの。忘れないで」
 カナロとオトにとってモサレックスは親(マスター)のような存在という事で、一歩間違えると表現が洗脳事案になりかねなかったのですが、頑ななレックスの心の痛みを慮れる人間として能動的に描く事で、地雷を回避しつつカナロの持つ善良さを描き、それを肯定すると共に“その先”を示唆するアスナにも見せ場が入って手堅い、ホント手堅い……!
 さすがに黒緑兄弟までは手が回りませんでしたが、これはメインキャラの多い戦隊の作劇としては通例ですし、まずは幼なじみトリオのベースアップから、というのは納得できる割り振り。その黒緑兄弟はガチさんが死んでいない事を伝えに来て合流し、弱点を攻撃されると仮死状態となり、より強化した姿で復活する体質だったガチは、6人の前でいきなり巨大化。リュウソウジャーは騎士竜王でそれに立ち向かう。
 「俺に出来る事はなんだ……俺に出来る事……」
 モサの協力が得られず、それを見る事しか出来ないカナロだが、苦戦する騎士竜王の姿に再挑戦を決意。毎度、噴水に手ばちゃばちゃして会話するのは間が抜けるな……と思ったら、表現を大きく変えて噴水の真ん中に座り込んでザゼーンする事で、交信そのものを劇的にしたのは秀逸。
 「俺は……俺はモサレックスの辛い記憶を消す事なんか出来ない! だから全部受け止める! でも俺とオトが見た陸のリュウソウ族はその記憶と同じじゃない! 俺は……モサレックスになんと言われても、そう感じた自分の気持ちに嘘はつきたくない! もしそれが間違っていたら……俺は全力で取り返す。だから……だから一度だけ信じさせてくれ! 平和を守りたいと言ったあいつの言葉を! それは……俺が生まれて初めて感じた、未来への希望なんだ!!」
 過去の苦しみを他者が勝手な価値観で切り捨ててもいけないが、しかし、過去を見ているばかりではなく、未来を見る事もまた大切、というのは両者の関係改善の第一歩として綺麗に収まりました。
 そもそも、「自分たちの先祖の蛮行を歴史の闇に封印して平然としている」事に問題があるのでは?という特大の地雷も、「今のリュウソウ族(コウ達)の姿と言葉」を被害者(の末裔)サイドが積極的に肯定する事でひとまず回避。
 気になるのは、少なくとも今回限りでは、モサの過去の記憶自体は否定されなかった――つまり現実に抗争はあったらしい――事ですが、背後にドルイドンの関与があったのか、コウ達の先祖とは別の一派だったのか、もしくはモサの記憶が改竄されているのか、或いは過去の罪は過去の罪として認めた上で乗り越えていくのか……コウ達がどんな形で「過去」と向き合う事になるのかは、この先でしっかり描いてくれるのを期待したいです。
 割とリスキーなテーマというか、正直ここまでの今作メインライターの筆だと、吊り橋を駆け抜けようとして谷底に落下しそうな予感はありますが……「過去」絡みの話の時に黒緑が不在、というのは伏線の可能性もあるかな、とは思ってみたり。
 「…………愚かな」
 果たして、カナロの言葉にモサレックスは何を思ったか……その瞳が紫に輝いた頃、騎士竜王は水中戦闘形態ガチサブマリンに追い詰められていたが、その絶体絶命の危機を救ったのは、海底より浮上した深海の王者・モサレックス!
 「馬鹿め。その巨大魚の動きは分析済みだ!」
 「だったらこれはどうだ! ――リュウソウチェンジ!」
 ここで改めて、港に駆けてきたカナロのよっさーもっさーをフルで入れ、周囲に祖霊ソウルを展開させながらくるっと回って電撃銃を一閃する、一段階派手な変身により、新生リュウソウゴールド誕生を劇的に描き出し、メリハリ!
 この変身によりカナロ/リュウソウゴールドがヒーローとして非常に格好良くなり、一気に好感度が上がりました。
 その流れから変形合体する騎士竜ネプチューンの初登場も余勢を駆って当然劇的となり、挿入歌を上乗せしてバトルへと突入。
 ……試行錯誤は常に必要でありましょうし、時代時代で求められるものも変化すれば、それに適応してきたからこそ、40作を超える長寿シリーズとして今も続いているのが《スーパー戦隊》でありますが、では“戦隊”を“戦隊”たらしめているものは何か? という時に、その一つのコアが、この瞬間の心を揺さぶる「美」ではないだろうか、としみじみ思うところです。
 ガチさんは捨て台詞を残して海の藻屑となり、早期リタイアの雰囲気満々だったのでインパクトは無いのですが、一応の幹部ポジションとしては、歴史的短命か……?
 「自分の愚かさに気付かされた。おまえ達に過去の恩讐だけを授けて、未来への希望を渡していなかった自分のな」
 カナロからコウ達に、モサレックスもまた、少しずつ前を向こうとし始めた事が明かされ、ひとまずお試し期間で採用される陸のリュウソウ族……今回の限りでは許せる範囲でしたが、君たちは明日から、長老を捜し回った方が良いのではないかな!
 最後はオトがメルトにストレートに求婚し、みんな仰天、逃げ回るメルト@へたれ、のドタバタでオチ。バンバ兄さんがガシッとメルトの逃走を封じるのが、素敵(笑)