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焼き肉は絆への回数券

ウルトラマンタイガ』感想・第2話

◆第2話「トレギア」◆ (監督:市野龍一 脚本:中野貴雄 特技監督神谷誠
 「俺とおまえはこれから、この星の平和を守るヒーローになっていくんだ!」
 「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
 「選ばれた事を誇りに思え」
 主人公ヒロユキに一方的に宣言するタイガですが、ヒロユキ幼少のみぎり、墜落死の危機を救っていた事が明かされたので、まあ、仕方がないですね。
 私が知る限りの正義のエージェントの中では、割と良心的な部類に入る気がします!
 12年前、宇宙を漂うハッピーパウダー状態だったタイガは少年時代のヒロユキと出会い、その強い想いに共鳴してヒロユキと合身していたのだった……と「他界に踏み込んだ者に聖なる存在が力と命を与える」というシリーズの代表的手法でウルトラマンの神秘性を提示。前回のシンプルな構成も含め、前3作と比べるとシリーズの先祖返りへの意識が強いように思えますが、少年ヒロユキの怪獣や宇宙人との出会いと真っ直ぐな正義感を示しつつ、タイガは何故ヒロユキを選んだのか、の補強がスムーズに収まって良かったです。
 ……まあお陰でタイガが、
 「……だが実に……勉強になったよ。少年だった君が成長していく過程を見る事は。君が、いつか、あんな人間になる兆しはどこにもない。憎むべき君の姿は。だからといって――決して許されない。君は報いを受けるんだ。約束しよう、ヒロユキ。――君は死ぬんだ」
 とか、
 「そのまま一生なまぬるい暮らしをしたいならそうしろ! だが俺は、光の力で輝けるおまえに期待して待っている」
 みたいな、理想のヒロユキ育成を目指して物陰からいつも見ていた系のちょっとヤバい人になりましたが!(容疑者の供述によると、12年の間、ヒロユキの内部で復活の為のエネルギーを溜めていたそうですが、つまり光合成なのか)
 なお詳しく追求すると、
 「じゃあ、中学2年の冬休み、彼女と、映画に行った時も?!」
 「俺も居た! 映画館は、暗くていいよな」
 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ」(床をのたうち回る)
 といった悲劇が掘り起こされる事が予測されるので、強く生きろ、ヒロユキ。
 事務所の掃除中、部屋の隅に向けてブツブツと喋り続けるヒロユキを同僚達が生暖かくスルーする中、社長と旧知の刑事がわけあり事件の調査依頼に訪れ、ヒロユキと先輩は港湾地帯に出現した謎の巨大生物と、その生物との関連が疑われる目からビームを出す不審者達を追う事に。
 「怪獣兵器、出撃!」
 前回に続き、地球をショーの舞台とした怪獣闇オークションが開催され、「野生動物としての怪獣」と、「それを利用する存在」を別々に置く事により、怪獣の“脅威”は残しつつも、後者こそを“悪”と分離出来るのは、良いアイデアになりそう。
 TVで見ていると本編の合間に、「欲しい怪獣を競り落とせ!」というスマホゲーのCMが入るのが、大変、複雑な気持ちにさせられますが(笑)
 暴れ回る怪獣が、少年時代に餌付けしていた捨て怪獣(タイガとの出会いのきっかけ)だと気付いたヒロユキは、タイガに変身して食い止めようとするが、熱線攻撃に苦戦。
 「ヒロユキ! あの指輪を使ってみよう!」
 ……え。
 さして絶体絶命でもなく、先輩パワーも使う前から、先日拾った落とし物を何の分析もせずにぶっつけ本番で実戦投入しようとする思考回路が理解不能なのですが、露骨な販促の都合にしても、事前に指輪についてタイガに言及させておくとか、もっと一か八かの戦況に追い込むとか、露骨さが減じる工夫は切実に欲しい。
 過去3作を見ても、とにかく一桁話数の販促を物語と噛み合わせるのに苦労している節は強く窺えるのです、それが改善される気配が全くないのは、もはやスタッフも諦めているのか。どうにもシリーズ近作の、「シリーズ構成」という肩書きへの不信感は募っていくばかり。
 タイガは怪獣リングパワーでクロー攻撃を放ち、倒した敵の能力を自分のものにするというのは定番の面白さなのですが、特にその要素が強調される事もなく平然としているので、最近の光の国では当たり前の事なのでしょうか。「メタ的なギミックとしての扱いの大小」と「登場人物がそれを見た反応」とは別の事項の筈なのですが、そこでリアクションが欠落してしまうので、強引にねじこんだ割には劇中の意味づけが弱い、というよくわからない事に。
 「甘いなぁ。チョコレートより甘い」
 落ち着かせた怪獣に、かつての記憶を取り戻させるタイガ/ヒロユキであったが、それを見ていた白黒シャツの青年@若作り疑惑が、ちょっと変態的な仮面ステッキ(いや、ウルトラアイの派生だと思えば、そこまでおかしくもないのか……アイテムのギミックとしては面白いと思うのですが)により、かつてタイガ達を宇宙を漂う抹茶パウダーに変えてしまった青黒の巨人へと変身。
 「トレギア?! なぜ貴様がここに!」
 「君に会いに来た……と言ったら?」
 「ふざけやがってぇぇぇ!!」
 タイガの突撃を易々といなしたトレギアは、ダメージを負ったタイガをかばう怪獣を散々いたぶった末、タイガの目前で爆殺する外道ぶりで悪の魔人として鮮烈のデビュー。憎しみのオーラ力を纏って立ち上がるタイガ/ヒロユキだが、やはり軽くあしらわれてしまう。
 「私が怪獣を殺さなければ、もっと被害が出たぞ?」
 「チビスケは、友達だ!」
 「この世界は矛盾に満ちている。宇宙には昼も夜も、善も悪もないのだよ。あるのはただ真空。底知れぬ虚無」
 「黙れぇぇぇ!!」
 「この地球人もおまえと同じで未熟だな。ウルトラマンタロウの息子よ」
 「……俺は、タイガだぁぁ!」
 指輪の使い方には大きく不満のあるエピソードでしたが、冒頭の回想シーンや怪獣への対応で「ヒーロー」としてのヒロユキを補強し、それを無惨に打ち砕く事で「悪」としてのトレギアを立てたところから、「タロウの息子」から自立しようとするタイガの核(コア)に至る、という流れは綺麗に決まりました。
 絶叫と共に必殺光線を放つ姿も劇的になりましたし、今回差し込まれた「目の前の人命救助と、大局的視野に立った怪獣退治と、どちらをより優先すべきか?」という問題や、冒頭に掲げられた「俺とおまえはこれから、この星の平和を守るヒーローになっていくんだ!」というタイガの前のめり具合の背景と、巧く連動していってほしいです。
 渾身の必殺光線を放つタイガだったが、トレギア光線に押し負け、うちゅーんブレスを起動。だがシスコン先輩兄の力を借りて放ったウルトラ魔球火の鳥もトレギアの大胸筋シールドに受け止められ、見ろ、これが時空を超える筋肉の力だ!
 「ふふふふふ、あはははははは。なかなか骨のある攻撃だったよ。これからが楽しみだ。では、この世の地獄でまた会おう」
 年期の入った筋トレの成果を見せつけたトレギアは余裕の嗤い声を響かせながら虚空へと姿を消し、完膚なきまでの敗北を喫したタイガ/ヒロユキは、無念の思いで空を見上げるしかできないのであった……。
 「何者なんだ?!」
 「奴の名は、トレギア。…………あいつのせいで、俺は大事な仲間を!」
 シリーズ近作における問題点が顔を出したりはしたものの、今作における「ヒーロー」と「悪」の存在を照応させながら描き、互いの位置づけをしっかり対比させてくれたのは好感触。またその「ヒーロー」像を通して、ヒロユキとタイガの優先順位の違いという、先の展開に期待を持たせる布石も手堅く打てましたし、端々の会話を通しての二人の情報の共有にも目配りが窺えます。それから、主人公の筋トレシーンがあったので、プラス1点(笑)
 タイガというキャラクターが居れば物語の軸を見失う可能性は低そうに思えますが、賢者と覇者が合流した後が色々な意味で本番になりそうで、両者がどんな位置づけに置かれるのか、期待と不安が半々という部分はありますが、次回――「賢者の拳は、全てを砕く!!」
 ……タイタスがいちいちツボに入りそうな気配(笑)