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ウルトラマンガイア』感想・第41話

◆第41話「アグル復活」◆ (監督:石川整/村石宏實 脚本:吉田伸 特技監督:村石宏實)
 見所は、次元の彼方へキャプチャーされていく我夢の、売られていく子牛のような表情。
 巨大ワームホールの向こう側から、ロボット怪獣が登場! 奇妙な光線を浴びたガイアだが、それは破滅招来体の罠だった! マーカーを刻み込まれた我夢はガイアへの変身前に囚われの身になってしまい、ワームホールの彼方へ連れ去られそうになるがその時藤宮は?!
 というエピソードなのですが、古式ゆかしい磔状態で、十字架を模した巨大ロボ(変形機構も含めて、人類文明からの異質感が面白いデザイン)に取り込まれたまま浮上していく我夢の姿を見守るしかない面々の内、当人と藤宮とコマンダー以外が全員、ところでどうしてアイツ、捕まった上にさらわれかけているの?!という状況設定が、そこはかとない可笑しさ。
 勿論、その状況で皆が、高山我夢を心配している姿はしっかりと描かれるのですが、一方の我夢は我夢で、ただ一人ワームホールの向こうへ連れ去られようとする絶望の表情、がなんだか、一人きりで寂しくてプルプル震えているみたいに見えてしまい、映る度につい笑いがこぼれてしまって困りました。
 「……藤宮? 藤宮ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 浮上していく我夢に追いすがろうとするも、怪獣のミサイル攻撃に巻き込まれて倒れていた藤宮だが、その胸に、我夢、玲子、稲森博士、アグルとして戦いながら、出会ってきた人々の姿が去来する。
 (彼らを救ったのは、君だ。アグル。君が居なければ、彼らは……戦う誇りを、取り戻すんだ。藤宮)
 光量子コンピューター・クリシスの予測が破滅招来体に汚染されていたという真実を知った時、何の為に戦うのか、を失ってしまった藤宮に、我夢は戦う理由を取り戻すように呼びかける。


 「海は……生きている。……様々な命を生み出し、疲れた魂が戻っていく。そんな生命の営みを、俺は見守りたかった。……だが俺のした事は結局、アグルの脅威で人を混乱に陥れただけなんだ! ……結果、地底貫通弾だ。……今は償いもできない」
 「――人類は地球の一部だ。皮肉にもアグルの力を失って初めてそう思った」
 脚本の吉田さんが、これまでの藤宮にまつわる諸々を拾って繋ぎ合わせていき、環境テロリストであった藤宮の再生を、地球への愛に集約。
 「俺には守るものが……ある」
 目を開いた藤宮は、歯を食いしばりながら身を起こす。
 「地球よ……もう一度……もう一度……俺に力をくれぇぇぇぇ!!」
 戦う誇りを取り戻した藤宮が目にしたのは、海の中から近づく蒼い光――
 「アグルーー!! 俺はもう一度、戦うぞぉぉぉ!!」
 ガイアの大地に対して、アグルの出自が「海」であった事が明確になり、巨大な瀑布に藤宮が飲み込まれると、海を割ってアグルが新生する、というのがインパクトのある復活シーン。
 アグルはワームホールへ向けて浮上していく十字架ロボに飛びつくと、そのまま地面にダイブして、我夢の拉致を阻止。
 一度は、勢い任せのアグルのパンチでぐしゃぁっとなりかける我夢だったが、君を信じる、的に両目を閉じるという芸術点10のヒロインムーヴを発動すると、それに応えたアグルはアグルセイバーを抜き放ってその一突きで十字架ロボの胴体を華麗にくり抜き……
 遂に、クールなようで割と力任せなやり口を克服。
 アグルによって救出され、地上に降ろされた我夢は瀬沼らの手で十字架カプセルから解放されるが、長期休養明けのアグルは、強敵・十字架ロボの集中砲火を正面から浴びてしまい、猛火に包まれる……も、取り戻した筋肉への信仰でそれに耐え抜いて逆に挑発を見せ……
 遂に、盛り上げてからのガックリ体質を克服。
 対ガイア用の十字架ロボは、突如しゃしゃり出てきた青い巨人に困惑を隠せず、攻撃の手が緩んだ所にウルトラマリンビッグバンの直撃を受け、背中を向けたところで爆発! を格好良く決めるアグル……
 遂に、致命的な詰めの甘さを克服。
 (やっぱり君は、凄い奴だよ)
 エリアルベースに帰投する我夢は、海辺に立つ藤宮と笑顔をかわしながら互いの変身アイテムをハイタッチ代わりに掲げ、次回より、新生アグルのご活躍に……本当に信頼を置いていいのか若干の疑念も漂うのですが、色々な紆余曲折を経てアグルが真のヒーローとして再生した事により、諸々のウィークポイントが克服されたという事でいいのでしょうか?!
 変身前の絶叫といい、背中を向けて爆発といい、やや今作としては珍しい見せ方なのですが、非常に華々しいアグル復活劇となりました。
 なお、筋肉勝負で完敗したショックを引きずってか、髪の色が一部抜け落ち、ボロボロのコート姿で海岸線を彷徨っていた藤宮を我夢が諭していた所に、今回もいい所でお邪魔虫に現れた瀬沼さんは、我夢の言葉を聞き入れて「保護」を思い留まり、そろそろこのポジション(藤宮に対してお役所的警戒をする役回り)もお役御免になってきたのか、態度が大きく軟化。
 ここでの我夢の、
 「藤宮は、ずっと地球の事を考えてきたんです。矛盾だらけの問題を、真剣に考えているんです」
 というのは、たった一つの単純な正解はなく、世界は矛盾に満ちていて、でもその中で、なるべく良い未来へ進む為にもがき考えていく大事さ、が表現されていて好きな台詞。
 同時に、藤宮はある意味で、カウンターとしての生け贄であったんだ、というメタなエクスキューズとしても、物語に収まる台詞として納得出来る形になっているのが、上手かったです。
 こに来て初見の監督でしたが、村石監督と連名になっているのは、デビュー枠とかだったりしたのでしょうか。
 次回――東京ドイツ村?でダーク我夢と握手!