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空も飛べる筈

電撃戦隊チェンジマン』感想・第51話

◆第51話「ナナよ!伝えて!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ようやく大星団ゴズマ本社総務課で書類が認可され、クレジットが「スーパーギルーク」に変わった記念に副官コンビを従えて行動するスーパーギルークに対し、副官も作戦の主導権も奪われてしまいすっかり蚊帳の外でゲーターから情報を聞き出そうとするアハメス様の姿が大変もの悲しく、そろそろ廊下に頽れながらハンカチを噛みそうな勢いです。
 余裕綽々のSギルークはそんなアハメスへの嫌がらせとして、進行中のネオジャンゲラン誕生計画をとくとくと講釈。
 それは、大量に集めたジャンゲランの卵をゲランの火炎放射で暖めてから高熱高温のマグマに投じる、というものだった。
 「この試練に耐えた、たった一つの卵から、ジャンゲランよりも恐ろしい、ネオジャンゲランが誕生するのだ」
 つまり、ネオジャンゲラン=ドラゴンコンドル。
 「素晴らしいぞ。宇宙で最強最大の怪鳥・ネオジャンゲラン。その伝説が甦ろうとしている」
 「恐らく街が廃墟になった時、ネオジャンゲランが、誕生するでありましょう」
 「廃墟に生まれる命。まさに大星団ゴズマの地球征服を象徴するような、光景だ。なんとしても、ネオジャンゲランを誕生させよ」
 Sギルークからバズー様へのプレゼン回想が挟み込まれ、宇宙の闇を背景にマントとステッキを翻すSギルークの姿(真紅の色彩が実に映えます)と、伝説の復活にワクワクするバズー様の姿が大変印象的。
 一方、高校を辞めて新聞配達をしながら暮らしていたナナは、教会に潜んでいたゾーリーとワラジー母子を見つけ、産気づくゾーリーからゲーターへの伝言を頼まれる。街では、マグマの熱に負けた卵が地上へと浮上して爆発する、というネオジャンゲラン誕生計画の副産物による大規模無差別爆破テロが巻き起こっており、その痕跡を追うチェンジマンと、ゲーターを探すナナは、卵の運搬役をしていたゲーターと山で揃ってばったり遭遇。
 「剣さん! ゲーターの赤ちゃんが生まれるんです!」
 衝撃発言に狼狽する飛竜の表情が地味に面白い。
 喜ぶゲーターの姿を思わず微笑ましく見つめてしまうチェンジマンだが、そうは問屋が卸さない、と現れたSギルークはゲーターに任務の続行を強要する。
 「おまえ! その手で赤ちゃんを、抱きたいとは思わないのか?!」
 「……どないしたらええのやろ……」
 悩めるゲーターは結局はゴズマを裏切れずに卵を担いで走り去るが、ネオジャンゲラン誕生計画の余波により、ナナから聞いた教会付近が壊滅の危機にある事を知ると、動揺して卵を取り落としてしまう。ナナとチェンジマンをスーパーパワーで弾き飛ばしたSギルークはこれを激しく叱責するが、そこに戻ってきた飛竜は、Sギルークのお仕置きビームから身を挺してゲーターをかばう。
 「ゲーター、頑張れ。おまえの愛する家族は、おまえを待ってるんだ! ゲーター……やっと生まれてくる、小さな子供の為に頑張るんだ! 本当の父親になるのは、今だぞーー!」
 前回、「父親失格」となったゲーターに父親として家族を取り戻すチャンスが与えられ、それが“ゴズマから離脱する覚悟”と重ねられているのが、秀逸。
 そして、一切の躊躇なくゲーターをかばう飛竜の姿により、征服者と被征服者の構造を持った「戦争」であり、集団の中で個人の意思は圧殺されているとはいえ、侵略者の一員としてそれなりの悪行や破壊行為に荷担してきた者を許すのかどうか、というミクロ視点の問題に対して、何よりも今は、繰り返される哀しみを止める為に戦うというチェンジマン(『チェンジマン』)の選択が示されたといえます。
 個人単位での罪に対する裁きが必ずしも最適解と限らないとはいえ、メタファーを含んだフィクションなればこそ因果応報の成立には意味の大きい面があるのですが、今作は徹底してマクロ視点の「戦争」を基盤に置いていた事でこの解答を成立させ、そしてやはり、チェンジマンの戦う敵とは“そんな世界の在り方”そのものである、という構造が浮かび上がります。
 「わいは! わいは赤ちゃんを抱きたいんや!」
 悩乱の既にアジトへ飛び込んだゲーターは必殺ボディプレスからビームを乱射してジャンゲランの卵を片っ端から破壊すると、“父親”として戦う事を選んでゴズマを裏切り、ナナと共に教会へ。
 ブレスレーザー一斉発射から集団タックルという荒技をSギルークに仕掛けたチェンジマンはレッツチェンジし、間接的に“子供を守る為”に戦う事で根幹のテーゼに支えられた熱いバトル。
 計画が水泡に帰したSギルークらは撤退し、残ったゲランのホーミング火球に苦戦するチェンジマンだったが、クロスハリケーンソードによる脳細胞破壊から、パワーバズーカ。巨大戦ではチェンジロボが火あぶりにされるも、シールド防御で炎を食い止め、カウンターの風車斬りからサンダーボルトで成敗し、振り返れば第32話からチェンジマンを苦しめ続けた怪鳥ジャンゲランは、遂に最期を迎えるのであった。
 そもそもはスーパーアハメス編における対チェンジロボ要員として登場したジャンゲラン、怪人とロボの中間的なスケールというポジションの独自性に、“高みから見下ろす”アハメス様の在り方にふさわしい簡易玉座としての機能で存在感を発揮し、最終的には宇宙獣士になる事で、玉座の喪失によるアハメス様の転落を暗喩する、という大変良い使い切りぶりでした。
 特撮的にはなかなか、大きさといい飛行シーンといい出すのが大変そうではありましたが、面白かったです。
 割との因縁の強敵を打破し、笑顔で教会に向かった飛竜達だが、そこで目にしたのは倒壊した教会。立ち尽くすナナと呆然と座り込むゲーターだったが、瓦礫の下から赤ん坊の泣き声が響き、それを頼りにどけた瓦礫の下には、無事だったゾーリーとワラジー、そして生まれたばかりの赤ん坊の姿が!
 「わいの、赤ちゃんなんや……女の子や! 女の子やでぇ!」
 ゲーターは歓喜にむせびながら赤ん坊を抱き上げ、ここにゴズマによって引き裂かれていた家族は念願の再会を果たし、それは小さな、だが確かな希望の光なのであった……。
 廃墟に生まれたのは宇宙怪鳥ではなく小さな命であった――とナレーションさんが綺麗にまとめて、つづく。
 それにしても、すっかりゲーター一家を受け入れ、赤ん坊を「可愛いー」と囲むチェンジマンの面々も、1年間の激闘の中で、適応力がたくましく成長しました(笑)
 手段こそ「闘争」でありましたが、そういう「理解と共感」が折に触れ織り込まれてここに至っているというのも、今作の良いところ。