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守る事と戦う事

電撃戦隊チェンジマン』感想・第46話

◆第46話「美しきシーマ!」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 祝・スパナ剣、直った。
 宇宙獣士ガルガと共にスーパーギルークを暗殺しようとするシーマだが、反撃を受けた際のショックで、なんと記憶を失ってしまう。洋服姿で街を彷徨うシーマにパトロール中の疾風が……気付いた!
 割と面白いエピソードだったのですが、疾風が見ただけでシーマと認識するのは納得が行きませんでした(笑)
 シーマを尾行する5人は、ブーバから逃げるシーマに助けを求められ、とにかくレッツ・チェンジ。何とかこれを撃退し、宇宙医学研究所での検査の結果、シーマが完全に記憶を失っている事を知る。
 「記憶を失っているシーマは、大星団ゴズマの地球侵略軍副官ではない。ただの女の子だ」
 女の……子?
 「それも、とっても優しい女の子。シーマは、本当はこんな女の子なのかしら」
 「彼女も自分の母なる星を再興する為にバズーの命令に従い、侵略者になった悲しい宇宙人なんだよ」
 「じゃあ……今のシーマが、本当のシーマ、てこと?」
 飛竜は動物とたわむれるシーマの姿を優しく見つめ、“被征服者側の悲哀”という、今作の根幹に位置し、特に藤井さんが初参加のタロウ回から掘り進めているテーマを、イカロス回に続けて強調。
 「そいつは甘いぜ剣。冷酷非情なシーマの事だ。ひょっとしたら、記憶喪失なんて芝居でバズーの罠かもしれん。さっき……長官に聞いたが、シーマを直ちに連行しろとの命令だ!」
 一同に加わっていなかった疾風が非常な通告を伝え、無邪気な様子のシーマに近づいていく飛竜。
 「どうするの、剣さん?」
 「……今のシーマには、ゴズマも地球侵略も関係ない」
 「剣……どうする気だ剣?!」
 「疾風、すまん!」
 四国で鍛えた渾身の右ストレートを疾風に叩き込んだ飛竜はシーマと逃避行。
 いや、記憶喪失はともかく、身柄の確保は当然で、いくら何でも対応が過激すぎるのでは、と思ったの、ですが……
 (処刑も追放もさせん。誰が好んで戦う、誰が好んで侵略者になる。記憶を失った事で、シーマが優しい心を取り戻しているのなら、俺はそれを信じて守ってやる)
 地球守備隊及び伊吹長官に対して、迸る負の信頼感(笑)
 電撃基地では伊吹が司令部の説得を買って出る懐の深いところを見せていたが、ひとり疾風は状況の危険さと剣の迂闊さを訴える。
 元来どちらかというと、疾風の方が情に脆く感情で動くタイプだったのですが、飛竜と衝突(のち和解)して見栄えするのは立ち位置としてやはり疾風、という事もあってか、飛竜が甘さを見せた時は疾風がドライになる、という形にスライド。
 ややキャラクターにぶれが見えるのと、序盤にあった疾風とシーマの因縁が拾われない形になったのは残念でしたが、飛竜だと「心を信じた」ように見えるけど、疾風だと「結局女に弱い」ように見えてしまうので、テーマ的にも致し方なかったところでしょうか。
 また考えてみると疾風、
 (飼い猫捜しを請け負ったら授乳プレイ寸前の上に身内から囮にされる) → シーマに騙されて異空間に閉じ込められる → (恋した美少女は家畜化光線を操る危ない宇宙人だった) → アハメスに騙されて海の藻屑にされそうになる → ゾーリーに騙されて木っ葉微塵にされそうになる → (溺れていた少女を救ったら呪い殺されそうになる) → (保育園の先生に粉をかけようとしたら痴漢に間違われ魔空空間に飛ばされる)
 という華々しすぎるメモリーで、さすがにトラウマになってきたのか。
 なお、冷静な判断力と思考という点で飛竜との対比が本来最もスマートになりうるさやかさんは、内心で考えている事がえぐすぎて、この時間には放送できません!
 「……まったく、あいつは何考えてんだ」
 「確かに危険だ。しかし、剣が自ら選んだ方法だ。君たちが剣を仲間と認めるなら、協力してやり、その危険をカバーしてやったらどうだ」
 伊吹長官が珍しくチームをまとめるフォローを入れている頃、当の飛竜はすっかりシーマとデート状態で、疾風が見たら問答無用で「チェンジソード!(射撃)」されそうだった。
 海岸で耳に貝殻を当てるシーマの脳裏には幼き日の記憶が僅かに蘇り、映像でウーバを拾ってくれたのが、手抜かりなし。
 (シーマ……君は記憶を失った事が悲しいかもしれない。しかし、俺は君がいつまでも記憶を失い、大星団ゴズマの一員である事に気付かないでほしいと……願わずにはいられない)
 飛竜とシーマは砂浜であははうふふダッシュを決め、誰が主導したのかはわかりませんが、アハメス様の登場後、だいぶ影の薄くなっていたシーマを拾ったと思ったらあっという間にこの有様で、藤井先生は本当にブレません!!
 今作はこの、藤井先生の趣味というかこだわりが割と良い形に転がっているのは、非常に大きいところ。
 そこへ飛竜の選択を信じようと4人がやってきて、なんか、こう……ちょっと気まずい。
 ブーバの報告を受けたバズーは、記憶を失ったシーマを利用してのドラゴン抹殺を命じ、宇宙獣士ガルガの催眠電波(今回の獣士の扱いは非常に適当)に操られたシーマが、突如として運転中の飛竜の首を締め上げる!
 ……こ、これは、運転操作を誤って車ごと崖から転落 → 高所落下のショックによるイケメンムーヴが2話続けて発動?! かと思ってドキドキしたのですがそんな事はなく、路肩にぶつかって車は停止。ガルガの存在に気付いたさやか達が一斉にブレスレーザーを放って催眠電波を停止させ、シーマの洗脳が解けたところにブーバらが来襲して戦闘へ突入。
 アハメスも久々の空襲を仕掛け、ドラゴンはシーマを守りながらジャンゲランと獣士の集中攻撃を受ける事に。その途中、シーマはアハメスのマジカルビームから身を挺してドラゴンをかばい、アハメス様、「あ、やっちゃった……?」という顔になる(笑)
 アハメス様、時折、ドジっ子疑惑が浮上するのが、あざとい。
 だが結果として、シーマはそのショックにより記憶と姿を取り戻すと、ドラゴンを攻撃。
 「シーマ! 思い出せ、君の優しい心を!」
 「優しい心? そんなものアマンガ星を取り戻す為、とっくに捨て去っているわ!」
 今回のサブタイトル「美しきシーマ!」は、容姿以上にを指しており、ゆえに記憶喪失による精神退行という要素も含め、「ただの女の子」という表現には、イノセントな状態に戻ったシーマ、というニュアンスが含まれていた事が見えてくるのですが、ではそんなシーマを汚したものはなにかといえば、それは第41話で明確に言語化された
 「強いものだけが生き残る……それが、それがバズー様の作った宇宙の掟だ!」
 であり、目の前の怪物や、目の前の侵略組織ではなく、その背後に君臨する巨大な“悪”の存在が濃厚に浮かび上がってくるのが凶悪。
 では、その“悪”とは何か?
 というと、それは他者を道具にする存在ひいてはそれを良しとする“世界”そのものであり、星王バズーとは、そんな世界を作り出そうとする存在であると同時に、その象徴である、という描き方が、徹底していて素晴らしい。
 今作の悪の組織は、大星団ゴズマ-ギルーク遠征軍、という二重構造を特徴とするのですが、それはまた、目前の侵略者(ギルーク遠征軍)-それを生み出した世界(バズー)という二重構造にもなっており、究極的にチェンジマンが立ち向かうのは、悪の組織の大ボスではなく、“哀しみを繰り返す世界”の摂理そのものであり、シリーズの中でも、これだけハッキリと“そんな世界(を作り出したもの)”に立ち向かう戦隊、というのはかなり珍しい気がします。
 そしてそれを、婉曲な隠喩にとどめるばかりでなく、構造的に成立させた上で、違和感なく物語と結合させているのがお見事であり、今のところ星王バズーは、傑作といえるキャラ造形。
 シーマとブーバの撤収後、怒りのドラゴンアタックが獣士に炸裂し、大リーグバズーカ2号で爆殺。巨大戦はバルカン風車斬りサンダーボルトで一刀両断し、2話続けてあっさりめ。
 「……夢。私は地球で楽しい夢を見ていたような気がする。……まるで、子供の頃のような」
 母艦に戻ったシーマは、地球を見つめながらどこか陶然と呟き、地球では飛竜達5人が暗い星空を見上げていた。
 ナレーション「チェンジマンは信じた。明るくて優しい、シーマの姿を。そして、いつか再び、シーマが本当の姿になって、自分たちの前に、現れる事を、願わずには、いられなかった。その時が来るのを信じて、戦え、電撃戦隊・チェンジマン!」
 一貫して藤井先生が追求してきた今作のテーマ性を更に深め、シーマにまさの救済フラグが立ちましたが、果たしてどんな落としどころになるのか楽しみです。合わせて、ここに来てヒロインレースが大変白熱してきましたが、抜け出すのは、ナナちゃんか?! アハメスか?! 急浮上のシーマか?! 一歩後退したさやかに反撃の機会はあるのか?! それとも麻衣にミラクルが起きるのか?! 大穴はギョダーイだ!
 次回――ゲーター一家もヒロインレースに参戦!