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『超劇場版ケロロ軍曹3』感想(ネタバレあり)

 Twitterであでのいさん(@adenoi_today)が激賞していたのでちょっと気になって、唐突にアニメ『超劇場版ケロロ軍曹ケロロケロロ天空大決戦であります!』を視聴。
 マンガはある程度まで読んでいて、アニメ版はこれが初見。キャラクターの大まかな関係がわかる程度の作品知識(サブローの事はすっかり忘れていた)で見たのですが、いやこれが、面白かったです。


 地球を侵略しに来た筈がすっかり日向家の居候と化しているカエル似の宇宙人・ケロロ軍曹とその率いるケロロ小隊の前に、ケロロのクローンであるケロロ大軍曹が出現。大軍曹は優秀極まる部下達と共にたった2分で地球を侵略してしまい、洗脳した人々に巨大ケロロ像を建造させる。地球侵略の任務を取り戻すべく、ケロロ小隊と、ケロロと友情を育む地球人の少年・冬樹は、巨大な天空要塞に挑むのだが、そこには恐るべき秘密が隠されていたのだった――。
 日常要素は少し脇に置き、ちょっと神秘、から入ってかつてない強力な侵略者が登場! オールスターで立ち向かえ! という、ザ・劇場版なストーリーで、スペクタクルに次ぐスペクタクル、脱力系含めて小刻みに差し込まれるギャグ、と子供視聴者を強く意識したと思われる作法に則った作りの上で、終盤に向けてきっちりと状況がエスカレート。
 キャラクターの基本設定や関係性の情報をTV版および原作に依拠している、という強みはありますが、その条件をフルに活かして軽快に進行しながら手抜かり無くテーマを積み重ねてクライマックスへと雪崩れ込み、ラストの大オチも大変気持ちが良い、と芯の通った爽快な一作でした。
 以下、映画後半の内容に触れます。
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 今作、危機また危機に大人の反射神経が疲れてくる頃合い(本編ちょうど3分の2ぐらい)で、〔MGガンダムの制作→ケロロ軍曹の超アイテムで兵器化→ブリッジ突撃からラストシューティング〕という豪速球のパロディネタが放り込まれてくる、というのもファミリームービーとして構成が巧いのですが、ここでMGガンダムは、敵の特殊な仕掛けによりお互いを認識できなくなったケロロ達が、“互いが見えない筈なのに自然と集まる場所”に設定されます。
 お互いが見えないままそれぞれが手足などを作って一つにドッキングさせる、という展開は単純に熱く、そこからのブリッジ特攻をパロディはパロディで正面から豪速球で行いつつ、しかしそれがただの飛び道具というばかりでなく、アニメから誕生し、もはや独立したマテリアルである「ガンプラ」が他のアニメ世界の中で“心の繋がり”のシンボルと化す事で、元々のアニメ――更には、TVアニメーションというジャンルそのもの――への、この上ない賛歌になっている、というのが凄まじい作劇。
 映像的にはサンライズ制作のアニメ『ケロロ軍曹』ならでは、というのも含め、寓意も込めた“玩具が世界を救う話”として、非常に鮮やかに出来ており、玩具(プラモデル)が人の意志を乗せた器になる事で、原作アニメに加え、“玩具への思い入れを肯定する物語”になっているのが、大変美しい。
 その上で、「玩具を兵器にする事」(不思議な薬の影響で巨大化する)を「決定打」にするのを避けて「突破口」に留め、そこからもう一つ二つ三つ物語として山を重ねていく、という虚構と現実に関するバランス感覚がまたお見事。
 加えて凄く最終盤に好きなのが、自分にはないもの、としてケロロ大軍曹が解明に執着する「特別な関係」――ケロロ達と冬樹達の繋がり――は決して「特別じゃない」と告げられる事で、これにより、フィクションの向こう側が現実にフィードバックされ、誰にでも持ちうる可能性が示唆される、というバランス感覚が本当に素晴らしかったです。
 多分ここで「特別」である事が強調されたら個人的には冷めてしまったと思うので(前半から少し引っかかっていたのが、解消されるタイミングとしても絶妙でした)、それが回避されたのも嬉しかったですが、これはまた大オチをより効果的にする機能も果たしており、モチーフの繰り返しというお約束を超えて、それが少し世界を広げれば誰にでも起こりうるかもしれない出来事としての説得力を持ち得る、という集約点が実に綺麗な着地。
 一つの物語として貫かれたテーマ性が、ラストシーンを大変気持ちの良いものへと押し上げ、完成度の高い良い映画でした。
 そして、見終わった後の脳内にはどういうわけか『翔べ!ガンダム』が流れ続けるのでありました(笑)