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つかめサクセス

ウルトラマンガイア』感想・第32話

◆第32話「いつか見た未来」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:武上純希 特技監督:北浦嗣巳)
 「とうとう来たか」
 「ええ。そのようですね」
 「いつでも死ぬ覚悟は出来ています」
 積乱雲状のエネルギー帯の調査に向かった我夢とチーム・ファルコンだが、現場を見たファルコンが突如、ろくな調査もしないまま内部へと突入。慌てて追いかけた我夢のEX機が、内部に生息していた巨大な飛行怪獣に襲われた事からファルコンはEX機を援護して全機撤収するが、その空間の内と外では、奇妙な時間のズレが確認される……そしてそれこそが、地球防衛任務の中で、チーム・ファルコンが抱え続けてきた凄絶な秘密の正体なのであった――。
 「どうしていつも、死に場所を捜すような戦い方をするんです?」
 「我夢さん……あなたは運命を信じますか?」
 「運命?」
 「ええ。私にはわかるんです。死ぬべき時が近づいているんだと」
 モシカシテ、フレテハイケナイワダイダッタノカ。
 「――馬鹿みたい」
 我夢が米田の真意を問い質している所に通りすがったクロウ03・慧が口を挟み、まあ、端から見ていると米田リーダ-、圧倒的に危ない人ですからね!
 第26話でのやり取りを引き合いに出し、命を安売りするような戦い方はしない、と約束した筈だと詰め寄る慧だが、米田の意志は固い。
 「嘘じゃない。……しかし、運命ってのは自分ではどうにもならない力の事なんだ」
 「人間は、死ぬ事を前提に行動してはいけない。そんなの間違ってます!」
 僅かに米田が目を逸らした時、何故かそこを通りすがる黒猫。
 「子供の頃、可愛がっていた黒猫に似ている。俺を迎えに来たのかもな」
 空間を凍らせた米田と、部下の二人はその場を足早に立ち去り、取り残されたクロウ03は我夢に、気になって調べていた米田リーダーの飛行記録を見せる。それによると米田と部下の二人は防衛隊時代、訓練飛行中に通信が一時途絶。実際に行方不明になっていた時間と、機器に計測された時間が1時間以上も違うという、不思議な時間のズレを経験していたのだった……。
 「我夢……米田リーダーに力を貸してあげて」
 元々チーム・クロウの中では最も台詞が多く、我夢やガイアにも好意的な反応を見せる事が多かったクロウ03にスポットが当たり、第26話の絡みが活かされるのですが、遡れば初登場の第10話において梶尾リーダーとの厭味の応酬において


 「未知のターゲットを相手にしてるんです。命張ってね」
 「――安い命ですね。あたしは犬死にはしたくないです。勝つ為に飛ぶ」
 という言葉があり、それが踏まえられてもいるのだろうか、というのが今作の巧い所。……それにしても、改めてこの回の梶尾リーダーは最低です(笑)
 「林……塚守……遂にこの時が来たな」
 「自分たちが、未来を救う事になるのなら」
 「無駄死にじゃありません」
 果たして、チームファルコンの3人は、“その時間”に何を見たのか? 3人は再び出現したエネルギー帯に突入してしまい、後を追って出撃した我夢は、エネルギー帯の内部で時間の歪みをくぐり抜け、大地に叩きつけられ崩壊したエリアルベースの姿を目にする。またそこには、化石のような屍と化した飛行怪獣、そして無惨に破壊されたチーム・ファルコンの六角ファイター3機も朽ち果てるように転がっていた。
 奇妙な空間の中で我夢は続けて、エリアルベースが飛行怪獣の強襲を受けて紅蓮の炎に包まれる瞬間、飛行怪獣が倒される代わりにファルコンの3人が殉職する光景、という交錯する不確定な未来を目にする。そしてそれこそが、かつてチーム・ファルコンの3人が訓練飛行中に見た、未来の姿であった――。
 「もし、俺達が自分の運命から逃げ出せば、未来は変わってしまう。俺達が死ぬ事で、みんなが救われるんだ」
 チーム・ファルコン3人の殉職と引き換えに飛行怪獣が倒され、エリアルベースが墜落を免れ乗員が生き残る未来――チーム・ファルコンの3人は、その日の為に飛び続けていた事が明かされ、第14話で割と唐突に差し込まれた米田リーダーの死にたがり体質の真相に、約20話越しに到達。
 正直、第14話時点では、米田の言動があまりに突飛で物語に馴染まず、背景の挿入として興味を引くというよりは完全に「いきなり何を言っているんだこの人は」になって頓珍漢な地平に突入してしまっていましたが、第26話でのトスを活かしながらの解決編としては、相応に納得できる形に。
 しようと思えば退役する余裕は十分にあるけれど、そしたらエリアルベースが全滅してしまうのでそれを選ぶ事はできない、という状況で飛び続けていれば、それは自分に酔いたくもなるわけで、なんという鬼畜設定。
 合わせて、これまでの描写では、死にたがりの米田リーダー(今となっては、飛行怪獣の来襲までは死なないと判っていたからこその危険な任務への志願だったと意味が逆転するのですが)に、巻き込まれて危険な任務へ出撃する事を何故か受け入れる形になっていたメンバー2人も、米田と同じ未来を見ていた、という形になり、行動の説得力が増しました。
 後は3人とも、
 どーせ死ぬんだから、給料全部LD-BOXに注ぎ込むぞ! とか
 どーせ死ぬんだから、給料全部週末のレースに突っ込むぞ! とか
 どーせ死ぬんだから、ビデオメッセージを残しておくぞ! とか
 していなかった事を祈ります。
 チーム・ファルコンの壊滅/エリアルベースの全滅、どちらの未来も回避しようとする我夢は交錯する未来空間のブリッジで戦闘データが残っていないかを調べるが、その時、またも響く黒猫の鳴き声。
 それを見た我夢はファルコンの3人に「シュレディンガーの猫」の講義を始め、前半には怪獣の時空歪曲能力に関する推論シーンもあり、武上さんはこういった“理屈っぽさ”とその説明シーンを『ガイア』の特徴としてかなり意識的に組み込んでいるようですが(第14話はやり過ぎてテンポが悪くなりましたが)、最近やや、理屈っぽいアプローチが薄れて筋肉に偏り気味だった事もあり、量子力学と言えば、という素材も含め丁度いいアクセントになりました。
 「つまり、未来は一つじゃない。だから皆さんも、死ぬことはないんです」
 そこに飛行怪獣が襲来し、我夢は怪獣もまた、自分が滅ぼされる未来を書き換える為にチーム・ファルコンを別の時間軸で倒そうとしているのだ、と指摘。
 「どうすればいい……何が未来を変えるんだ?!」
 「――意志です」
 「意志?」
 「ええ。死のうとするか、前向きに生きようとするか。どの未来を選ぶかは、人間自身の意志なんです」
 予告時点ではどんなトンデモエピソードが来るかと身構えていたのですが、米田の不安になる言動とその秘密が明かされた時に、そこに至る道筋を丁寧に整えた上で“運命を乗り越えるものは、人間の意志である”事を主人公が力強く告げる、というのは作品全体のテーマとも繋がって、大変良いまとめ方でした。
 フォーメーションを組んで飛行怪獣に立ち向かう4人だが、次元跳躍を駆使する怪獣にはレーザー攻撃が通用せず、苦戦。不確定な未来における自機の残骸にヒントを得た米田は、エリアルベースを救う為、やむなく特攻を決意する。
 「駄目だ。米田リーダー! 死んじゃ駄目だー!!」
 「やはり、未来は変えられなかったか」
 「信じて下さい、米田リーダー」
 米田機の特攻寸前、我夢が変身して間に入るが、怪獣の次元跳躍はガイアの光線さえ回避し、後頭部に火球を浴びたガイアは墜落。
 早々と地上戦に移行してしまいましたが、ここまであまり居なかった本格的な飛行型怪獣とのバトルは、シルエットの違いが新鮮で、画が秀逸。
 怪獣の次元跳躍に翻弄され危機に陥るガイアだが、チーム・ファルコンの援護攻撃が触角を破壊し、その隙にアグトルニック。肉弾戦で猛攻を仕掛け、大腿四頭筋キックからの大円筋スローを決めると、トドメは新必殺技のマッスルブーメランで、飛行怪獣を頭から木っ葉微塵に打ち砕くのであった。
 チーム・ファルコンと我夢はエリアルベースに無事帰還し、運命の14:00――虚空に陽炎のごとく浮かび上がったエネルギー帯と飛行怪獣の姿は、エリアルベースの強襲目前に消滅し、ここに未来は書き換えられたのだった。
 「俺達は、未来を勝ち取ったのか」
 「ええ。決められた未来なんて、ある筈がない」
 今回良かったのは、チーム・ファルコンが目にして受け入れてきた未来に立ち向かおうとする姿が、破滅の予言に抗おうとする人類の姿に重ねられ、単体エピソードのテーマが、そのまま『ガイア』全体のテーマと繋がっているところ。
 そして米田リーダーに対する我夢の言葉は、姿を消した藤宮へのメッセージにもなっていて、米田リーダーの伏線を回収しつつ、今作全体の構造を補強する形になりました(そういう話の構造が、個人的に好み)。
 ただ、我夢→米田が、我夢→藤宮を投影させすぎた事で、後半に行くにつれてクロウ03の存在感が薄れてしまい、折角ここまでの蓄積を踏まえてスポットを当てたのだから、もう少しクロウ03のパーソナルな部分を引き出しても良かったかな、という点は勿体なかったところ。チーム・クロウの他のメンバーも、クロウ03の単独出撃を止めるだけの係、になってしまい、ここで、他チームから見た米田リーダー(チーム・ファルコン)の姿が補強されれば、より良かったのですが。
 思わせぶりに姿を見せていた黒猫は、ジョジーの飼い猫だった?というオチで、つづく。
 次回――我夢のマネージャー、カナダで発見?!