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飛竜の星

電撃戦隊チェンジマン』感想・第38話

◆第38話「幽霊ベースボール」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 「ふふふふふふふふ、恨み重なる剣飛竜よ。地獄の底から迎えに来た。恨みを晴らしてやるぞ。剣飛竜よ、殺してやる!」
 主観映像で真っ暗な電撃基地に入り込む不吉な影と滴り落ちる血? そして呪いの声、というホラー演出でスタートし、ベッドでうなされていた飛竜が跳ね起きると、そこに見えたのは岩の塊の中から人の顔だけが覗いている、とでもいったような不気味な怪物。
 悪夢の具現のような怪物は尾を引く笑い声を残すと亡霊のようにかき消え……一方、どういうわけかゴズマの宇宙獣士ドロンは、高校球児の幽霊を生み出していた。
 「野球がやりたい……ドラゴンボールが打ちたい……」
 そしてパトロール中の飛竜を襲う燃える魔球!
 ……なんかもう、今回はここまででだいぶ満足しました(笑)
 「剣飛竜、会いたかったぞ。おまえと戦いたかったんだ」
 ユニフォーム姿の野球戦士は次々と飛竜に火の玉ノックを打ち込むが、疾風達が駆けつけるのを見て獣士と共に撤収。
 「また……幽霊が出たんだ」
 剣さん、あなた、 度重なる高所転落で頭を打ちすぎ 疲れているのよ……。
 ――炎と共に今、黙示録の幕が上がろうとしている。
 ……はさておき、幽霊野球戦士の弟と接触した飛竜達は、その正体が甲子園で飛竜と対戦する事を夢見ていたが、若くして病死した球児だと知る。
 「妙だな……。たとえ幽霊だとしても、俺と野球をしたかった者がバットやボールで俺を襲ったりするか?」
 それは……ええと……飛竜がもはや野球を捨てた事を知り、別の形で勝負を挑もうとしているのでは。
 「じゃあゴズマの陰謀ってわけか」
 「恐らく」
 第9話の一件はともかく、元球児としての野球魂から幽霊の行動に疑念を持った飛竜は、兄のような野球選手になる事を夢見る少年の為、幽霊野球戦士の触媒となっているユニフォームを取り返す事を約束。
 一方、宇宙ではアハメスとドロンが、甲子園で飛竜と対戦する事を夢見ながら死んでしまった若き高校球児達の無念を集め、亡霊野球チームを作り出していた。
 「今度こそ必ずチェンジマンを倒してみよ!」
 脚本上でねじ込む隙間が無かったのか、度重なる敗北で追い詰められつつあるアハメスの切迫感を、物凄く真剣な表情のアハメス様の演技力だけで表現しているのですが、その結果、真顔でバズーに「亡霊野球チームを作ったのです」と説明するアハメス様の、打席から3塁へ向けて走り出した感が大変面白い事に(笑)
 チェンジマンは、亡霊野球チームにやられたように見せかける事で背後で暗躍していたドロンを誘い出すも、アハメス監督のビーム攻撃から形勢不利となるが、そこに轟く雷鳴と不吉な声。
 「……恨み重なるアハメスよ。地獄の底から迎えに来たぞ」
 スモークの立ちこめる中に姿を見せたのは、飛竜の前に現れたのと同じ、強い怨念を纏った不気味な怪物であった!
 「あれは俺の見た幽霊だ!」
 「よこしまな女アハメスよ。この恨み、晴らさでおくものか」
 「何者?! 何者だ?!」
 「ふふふふふふははははは」
 顔面蒼白となったアハメスは八つ当たり気味に幽霊獣士を攻撃し、哄笑とともに謎の存在が姿を消すと、怪鳥に乗って撤収。
 「いったいあの幽霊は……何者か」
 登場タイミングに加え、言動や声からすると、十中八九ダークネビュラ送りにされたギルークの怨霊と思われますが、見た目に全く面影が無い、という予想外の復活(仮)。そして、本当に、あれで一度は死んでいた扱いなのか。
 「剣を呪ったのと同じ幽霊が、アハメスをも呪ったというのか」
 宇宙オカルトの権威(※独自の研究です)である伊吹長官は、幽霊の存在はすんなり受け入れつつも、「伝説」とか「神秘」とかが絡んでこない為か、いつもの調子で「あれは宇宙伝説に語られているスペース幽霊!」と解説を始める事もなく、少々困惑気味。そこへ野球のユニフォームに身を包んで現れた飛竜(と戦士団の一部?)の姿を見て、亡霊野球チームと勘違いしたさやかと麻衣が、疾風を突き飛ばして長官に助けを求めるという一幕。
 「な、なんだよ?! 野球なんかしてる場合かよ?!」
 「そう。やるのさ野球を!」
 飛竜は、野球の無念を野球で晴らす事により亡霊野球チームを成仏させようと提案し、襲撃してきた亡霊野球チームをグラウンドへと誘い出す。
 「さあ! 野球やろうぜ!!」
 飛竜が元高校球児である事が明かされ、ドラゴンボールに焦点が当たったのが第9話の事なので、前振りと言うには昔すぎる事もあり大変バカっぽい展開なのですが、野球戦士達はあくまで幽霊獣士による被害者であり、その無念と真摯に向き合った上で彼らを救おうとする飛竜(たち)のヒーロー性がこの一言に集約され、やたらと格好いい。
 無念の対象であるドラゴンボールを餌にする事で、真の野球魂を取り戻した亡霊野球チームと電撃野球軍の試合が始まり、この日の為に特訓を積んだのか、ドラゴンボールをキャッチしてみせる勇馬!
 幽霊達の想いに応えるべく、ドラゴンボールを投げ続けるも飛竜は連打を浴び、最後は火の玉ノックを浴びせてきた球児の満塁ホームランがスタンドに突き刺さり、歓喜の輪の中で亡霊野球チームは揃って成仏する……のですが、ここ数年はあまり真面目に見ていないものの、野球ファンの末席としてどうしても気になったのは、やたらポンポン打たれるドラゴンボールと、それで無念を晴らしてしまう野球戦士達。
 勇馬が取れる程度に球威を抑えている疑惑はまだともかく、それも加味した飛竜が亡霊達に気持ち良く打たせてやろうとしているように見えてしまい、果たしてそれは、「野球やろうぜ!!」なのか? 飛竜自身のブランクというのも考えられますし、映像上の盛り上がりや話のテンポを考えると妥当ではあるのでしょうが、導入の格好良さに比べると、真剣勝負の末に無念を晴らして成仏していった、という印象が弱くなってしまったのは残念な部分でした。
 ベースを一周した野球戦士が歓喜の中で弟にエールを送ってかき消えると、ホームベースの上に残されたユニフォーム一式に弟が駆け寄り、情報提供役だった弟が視聴者に対する感情の導線として機能する、というのは巧かったですが。
 「おのれぇチェンジマン! ドロン! もう一度幽霊を作り出せ!」
 「出来るものか! みんな思い残す事なく野球をやったんだ! 野球選手の無念の想いを悪用した事、許さん! ――レッツ・チェンジ!」
 変身した5人に襲いかかるヒドラ兵は、大リーグ仕込みの殺人スライディングからアクロバットな蹴り技を繰り出し、どういうわけか強化仕様。更に殺人ゴズマ投法でチェンジマンを苦しめるが、バットを握ったチェンジマンは、電撃ピッチャー返しでホームラン。
 ドロンの霊体化能力に苦戦するも弱点を見切ると、空中に飛び上がったドラゴンがきりもみ回転から放つ新必殺魔球・ドラゴンソード(ドラゴンボールと同じ軌道で飛んだチェンジソードが敵の眼前で消失してから突き刺さる)が放たれ、野球選手の想い、とは。
 そんなものは既に、第9話で渚さやかに破壊されたのだ! と地球を守る殺人野球が炸裂し、霊体化不能になったドロンを大リーグバズーカ2号で爆殺。リリーフのギョダーイがマウンドからドロンを巨大化し、前回今回と、テーマ曲入りでアースコンバージョンして定型フォーマットへ戻った印象を強めつつ、スーパーサンダーボルト。
 最後は野球少年の活躍に歓声を送るチェンジマンの姿に、ナレーションさんが「チェンジマンは謎の怨霊の事を考えているんだよ!」と映像と全く噛み合っていない深刻な調子で語って、つづく。
 30話越しの野球ネタ(幽霊の正体が、飛竜のドラゴンボールによる負傷で引退を余儀なくされた元キャッチャーとかだったら凄かったのですが……)に、待望のギルーク復活(仮)の大ネタが挟まるという大変不思議な取り合わせのエピソードでしたが、2年前の『科学戦隊ダイナマン』は初期設定では野球モチーフであったという話を聞いた覚えがあるので、いつかやろうと暖めていた本格野球回……だったの、でしょうか?
 出来の方はぼちぼちといったところでしたが、スーパーアハメスの賞味期限が切れる前に、電撃戦隊とアハメス、双方に関わる存在を投入してくれたのは面白く、フラれ男の怨念が何処に行くのか、大宇宙アハメスファンクラブの運命や如何に?!