『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第3話
◆第3話「呪いの視線」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:山岡潤平)
見所は、第3話にして石化する主人公。
……早かった。
前回失踪し存在を黙殺されていた青と桃の騎士竜は、ティラミーゴの案内した洞穴の奥であっさり発見され、完全に「前回のエピソードにおける要素を削る為だけに消していた」という扱いは残念でしたが、コウにならって名前をつけて友好度を上げるアスナと、リュウソウ族に作られた存在だから従え、という態度で接して尻尾を向けられるメルト、という対比が盛り込まれたのは良かったです。
街には新たなマイナソーが出現し、Youtuberを素体にしたと思われる蛇マイナソーの我執が「見ろ」なのは、人間の嫌な部分を容赦なく暴いてきて、なかなか凶悪。
立ち向かうリュウソウジャーだがマイナソーの能力で赤が石化してしまい、敵を正面から見られないという難局に陥るが、まぶしソウルの輝きがマイナソーの動きを封じ、光が晴れると姿を見せたのは、黒と緑、二人の新たなリュウソウジャー。
1-2話では存在を仄めかすだけだった黒と緑が本格登場し、力強く大地を踏みしめる黒と、街路樹に片肘ついて斜に構えた緑、という対比を出しつつ、ビートを刻むBGMが格好いい。
「このマイナソー、まだ生まれたばっかだね」
「今のうちに倒すぞ」
「余裕!」
目くらまし継続中のマイナソーに切りかかろうとする2人だが、トランプ兵に阻まれてはやソウルとかたソウルを発動し、軽やかなステップで戦闘員の攻撃をかわし切り裂く緑と、鋼鉄のボディで攻撃を受け止め次々と蹴散らす黒、というのが、昨年見た気もしますが、つかみの色分けとしてこれも鮮やか。
「うへぇ! こいつら強い!」
キノコも手堅く台詞で補強し、立ち去ろうとするマイナソーを追おうとした青と桃の前には、タンク様が降臨。両者を一撃粉砕で戦闘解除に追い込み、前回に続いて200ポイントでーす、はさておき、格の違いで存在感をアピールしてくれて良かったです。
蛇マイナソーが退却成功すると、キノコもタンクも前回同様あっさり撤収し、現時点では目前のリュウソウジャーへの興味は薄そう。
キノコ「邪魔させるかよ! 今回、かなり上玉なんだ。大事に、大事に育てますよっ」
タンク「邪魔する者は、全て消す!」
という台詞からすると、結果としての人類殲滅とは別に、マイナソーを成長させる事そのものに目的意識があるようにも見えますが、リュウソウジャーと本格的に交戦しない理由付けが物語と上手く繋がってくれるのは期待したい部分。
…………割と堅実な戦力分析をしていて、ドルイドンの現保有戦力では、巨大怪獣でも居ないと人類に勝てないと認識した上での極めて真っ当な戦略的撤退という可能性もありますが。
緑は倒れたメルトの上をひょいっとまたぎ越え、黒は両者の間を一顧だにせず闊歩していく、というのも緑黒の現時点でのリュウソウジャーへの扱いが鮮明に打ち出されて良く、二人は変身を解除。
「あんた達、本当にリュウソウジャー?」
「え?」
「だって、弱すぎでしょ」
振り返って屈み込んだ緑はメルトとアスナを嘲弄するが、そこに物陰から現場を撮影していたYoutuberが倒れ込み、前回ラスト、騎士竜王の戦いを『ういチャンネル』にUPしようとしていたういが、スライムキノコによりマイナソーの素体にされていた、と接続。
キノコが気付いた人影の正体については保留となり、シーンの繋ぎ方から考えれば、キノコが丁度良くYoutuberを素体にした事と関連性があるとするのが自然(誠実)ですが、この辺りはまだ、ミスディレクションの余地を残しているのかなと思われます。
ひとまずYoutuber家に戻り、布団に横たえたういを心配そうに見つめるアスナ(多分、運搬係)のアップからカット切り替えて、カメラを下ろしていくと床に転がっている石化レッド、というのは大変面白かったです。そのレッドは、黒の用いたミストソウルで潤いを取り戻し(早くも何でもあり感)あっさり快復。
「あれ?! マイナソーは?!」
「にげられました~」
「誰?!」
「俺達以外のリュウソウジャーだ」
「え?!」
「……バンバ。こっちは弟のトワだ」
一応名乗ってくれる黒い人、いい人ポイント100入りましたー。
「仲間! 本当に居たんだ!」
「別に仲間じゃないけどねー」
「宜しく! 宜しくー!」
「いや、今の聞いてた?」
「5人力を合わせれば、ドルイドンなんて目じゃない!」
「あー、全っ然聞いてない。「目じゃない!」とか言いながら、石にされてましたけど~ね」
軽くあしらおうとする緑――トワ、無視を決め込もうとする黒――バンバに対し、態度に頓着せずに暑苦しく迫るコウだが、バンバがマイナソーの素体であるういに剣を向けた事で、表情を変えてそれを止める。
マイナソーは素体である人間が居なくなれば消滅する事、成長を続けて素体の生命力を喰らい尽くすと完全体――第1話で神殿を破壊したような巨大怪獣――になる事が語られ、黒緑兄弟は、マイナソーへの早急な対処として、素体の抹殺を宣言。
「マイナソーが完全体になれば、破壊の限りを尽くし、大勢の人間が犠牲になる」
「そうなる前に、マイナソーを消滅させるのさ」
バンバは再びういに剣を突き立てようとし、覚悟決まっているのは良いですが、せ、せめて外でっ!
……と思ったのですが、もしかすると、リュウソウ剣で刺し殺すと、(第1話のマスターレッドのごとく)肉体が消滅して魂が剣に吸収されるのではと気付いて、戦慄。
黒緑が「マイナソーは素体である人間が居なくなれば消滅する」事を断定しているのは、過去にそういった経験があるからなのでは、と思えてならないのですが……兄弟がほいほい変身できるのは、斬殺したマイナソー素体の人々の魂が、剣を通して変身ソウルに蓄積されているからなのでは。
赤青桃がそれぞれのマスターを目の前で失っている事を考えると、物語のバランス的に黒緑も、マイナソーの素体になった近しい人を自ら殺害している(映像的に戦隊では難しそうですが……)ないし近いレベルの壮絶な過去を持っているのではないか、とは思えてみたり(それこそ、両者のマスターとか)。
あと、第1話の完全体の素体になった人(黒緑の言を信用すれば死んでいる筈)が居る、という事になりますが、これは後から持ち出しても面白くなりそうなカード。
「待てよ! ういは友達だ!」
「だからなに?」
バンバを押しとどめるコウに対し、ここで薄ら笑いを浮かべるトワは、一人だと少し浮いてしまいそうなキャラなのですが、暑苦しいが真剣な表情は格好いいコウ、感情を出さず淡々としたバンバとの対比が効果的となって、かなり良い感じにパズルのピースとしてはまりました。
1-2話もでしたが、キャラのやり取りの中で色彩の濃淡を付けていく手並みは割と上手い感じなので、後は物量をカバーして掘り下げを行っていける事に、期待。
「リュウソウジャーの使命は、マイナソーからこの星を守る事でしょ」
「一人の命と、大勢の命。どちらが大事か……考えるまでもないだろう」
「そんな……」
「確かに理屈は通ってる……」
「これは理屈とかの問題じゃないでしょ!」
ぼそっと呟くメルトにアスナがすかさず噛みつき、アスナの、カワイイ系(キレイ系ではない、の意)ではあるがマスコットにするつもりはない、という描き方にも好感が持てます。
「わかった! ……ういも、大勢の命も、どっちも救う! ようはマイナソーを倒せばいいんだろう」
「……はっ。じゃあとりま、お手並み拝見」
「……マイナソーを倒せないと判断すれば、容赦はしない」
コウの宣言を受けて黒緑兄弟は去って行き、最初から距離感が近く目的に対する一体感も強いコウ達3人に対し、同じ使命だが違う考え方を持った2人が異物として対立関係となる姿を、戦闘、そしてマイナソーの素体をめぐる衝突を通して王道のテーゼを取り込みながらテンポ良く展開し、個人的な好みも含め、ここまでは大変面白かった、のですが……
――一夜明け、コウ達の会話を聞いていたYoutuberが父との思い出の地で入水自殺をはかろうとし、それを止めようとするアスナに、何者にもなれない自らの劣等感と鬱屈をいきなり吐露し始めるという、凄くついていきにくい展開。
「もう放っておいて! 私が犠牲になれば、あのマイナソーは死ぬんでしょ!?」
「放っておけないよ! …………ういは、友達だから」
アスナはういをぎゅっと抱きしめ、隠れ里育ちで純朴そうなリュウソウジャー達の「友達」感覚はまだ飲み込めるとしても、Youtuber側の掘り下げがあまりに不足。もう10話ほどかけて、しょーもないコメディリリーフだけどリュウソウジャーの社会生活の面倒は何くれとなく見てくれて、どうも下衆な思惑も見え隠れするけど土壇場では善良さが顔を出す(のが視聴者にだけ見える)、みたいなものを積み重ねておいてこそ効果的な展開だと思うのですが、どうして第3話でやってしまったのか。
この先色々イベントの予定が詰まっているのかもしれませんが、早すぎる身内狙いも含めて、なぜ第3話でこれをしないといけない構成になってしまったのか、は疑問が出ます。
「私たちが、あのマイナソーを必ず倒す」
約束するアスナの手の中で、生命エネルギーを消耗したういは気絶。
「――だから、信じて」
からの、地面放置(笑)
……いやまあ、担いで帰る流れではないのですが、ないのですが、生命力が消耗しきった人を、寒風吹きすさぶ中、野ざらしにして走り去る、というのはさすがになんとならなかったのか、とアスナが怪力担当だけに、どうしても気になる流れになってしまいました。これがメルトだったら、(どこか暖かいところへ……うっ、僕の筋力では駄目だ……と、とにかく早くマイナソーを倒せば!)ぐらいの脳内補完は可能だったのですが(笑)
藤○「だから言っただろう。地球を救うには、筋肉が必要だと!」
我○「君も、XIGに入隊して、僕と一緒に筋トレをしよう! 4/7まで受け付けているぞ!」
……まあ或いは、森育ちなので野宿とかふつーというリュウソウ基準を、現代文明人に適用したのかもしれませんが。
一方、街では赤と青が今回もさっくり巨大化したマイナソーに立ち向かっており、ティラミーゴはボタン一発で召喚できる事が判明。蛇マイナソーに立ち向かう騎士竜王は恐竜マッスルパンチで殴りかかるが、視界を封じられて苦戦。合流した桃はアンキロを呼ぶが、険悪な雰囲気を作ってしまった青はそれを躊躇い、桃、他人の騎士竜に勝手に名前をつけて呼び出す(笑)
アスナが走り去った後、放置されたYoutuberを監視していたバンバとトワは、完全体の誕生を止めるべく処刑を決行しようとするが、二体の騎士竜の出撃を目にしてその手を止め、蛇マイナソーに立ち向かう桃竜と青竜。
だが一発リタイアの石化攻撃への対応からやはり力を発揮できず、その時、一計を閃いた青は必死に騎士竜に呼びかける。
「トリケーン! 力を貸してくれ! 俺だって、一人の人も大勢の人々も、両方救いたいんだ。……頼む!」
ういの掘り下げ不足からの衝突事故は大変残念でしたが、今回良かったのが、前半戦で持ち込んだ「一人の命と大勢の命のどちらを救うか」というテーゼを理屈と感情の間で揺れるメルトの葛藤に接続する事で、コウの思想信条を“物語の正解”としてバンバとトワを殴りつける展開、にならなかった事。
メルトのぶつかった問題を人と騎士竜の関係に重ねたのも悪くなかったですし、何よりこうする事で、バンバとトワはコウが口にした考え方を“わかってない”のではなく、“わかった上で飲み込んでいる”のではないかという解釈が可能となり、それはとりもなおさず兄弟の背景を想像させるものともなるわけで、そういう話作りをしてくれたのは、この先に向けた大きな光明。
青竜が地面を切り裂き、桃竜がそれを砕いて吹き飛ばし、飛んできた瓦礫を軽ソウルで軽量化してマイナソーにぶつけた上で、逆ソウルで元の状態――道路――に戻す事で腹部の鏡を封じる、というのは、だいぶ迂遠でわかりくい感じになりましたが……。
少なくとも、スキルソウルを押し出しつつ、各人の活躍の場面を作ろう、という意識はプラス。
「今だ! リュウソウ合体だ!」
青と桃もそれぞれの変身ソウルを騎士竜めがけて投擲し、人型に変形した騎士ソウルのCGに付けられた個性を見るに、初代リュウソウピンクはメイス使いだった模様。
青竜と桃竜が変形して騎士竜王の右腕と左腕にジョイントし、今再び、三色の騎士竜王が大地に立つ。その名を――
「「「キシリュウオー・スリーナイツ!!!」」」
遂に3人搭乗3色合体した騎士竜王ですが、コックピットが別々かつ、青竜と桃竜の扱いが尻尾やヘッダーと似たレベルなので、現時点では戦隊ロボとしての一体感はまだ弱め。ロボットのスケール感を考えると、遠からず一回りは大きくなる5色合体が控えているのかと思われますが、ジョイントギミックを楽しみつつ、スピード感をどこまで残せるか、その存在をどこまで劇的にできるのか、など楽しみに待ちたいです。
「俺達の騎士道、見せてやる!」
前回に続き、人間大の戦闘では倒せないまま巨大化してしまったマイナソーですが、ここで巨大戦の仕切り直しに決め台詞を入れてくる、というのがかなり象徴的に思え、どうやら今作、「戦隊フォーマットの中で、“巨大戦に如何に意味を与えるのか”」という、過去に『特命戦隊ゴーバスターズ』がアプローチして立ち上がりに噛み合わなかったコンセプトへの挑戦が狙いの一つにあるのかな、と。
騎士竜王は連続の斬撃からトリケン回し蹴りとアンキロ膝蹴りを浴びせ、トドメは低い体勢からの切り払いファイナルブレードでスマッシュ。
ういは自宅のベッドで目を覚ますと父親に抱きつき、
「寂しさから誰かに見て欲しい、構ってほしい、そんな想いがマイナソーを生んだのかも」
「でも、もう、大丈夫そうだ」
と綺麗にまとめるリュウソウジャー、は毎回やるの……?
後それなんというか、無自覚にうい父の懐をシュート回転で抉りにいっているのですが、うい父はいまいち娘の心情はわかっていないようだし、生命エネルギーを吸収されて相当弱っていた筈のういを平気で外出させているし……やはり、しれっと重大な隠し事をしてツボの中にビデオメッセージを仕込みながら覆面被って暗躍している、東映名物・駄メンターなのでしょうか。
今回Youtuberの「見て」という我執が浄化されてとすると、次回からYoutuberのスタンスがいきなり変化する事になるわけですが、この辺り、どこまで意識しているのか、ういをどう描きたいのか、というのは第4話を待ちたいと思います。第4話以降が本番、という事ならば、それはそれでまた印象が変わりますし。
「やるね、あいつら」
「俺達も騎士竜を探す」
「だね。騎士竜さえいれば、巨大化したマイナソーも目じゃない」
バンバとトワがマイナソーの素体を抹殺するという非情な手段に訴えざるを得なかったのは、これまでいざという時の巨大戦力を持っていなかった為、とも捉えられる言い回しですが、いずこかに存在する、緑と黒の騎士竜の姿が映し出されて、続く。
上がって・墜落して・少し上がって、と個人的に波の激しいエピソードでしたが、私が中澤監督ファンというのを差し引いても、パイロット版に比べ、今後へ向けた明るい材料が増えた印象。
梯子が見えてきた一方で、大きな落とし穴が見えるのも相変わらずで、しばらく油断ならない状況が続きそうですが……当面のハードルは、5人の距離感が縮まってからの黒緑の扱いがどうなるか、でしょうか。今回はわかりやすく対立構造の中でキャラを色づけするのが上手くいきましたが、どう馴染ませていってくれるのか、期待と不安が半々……そして、5人で、あそこに、居候、するのか?
今回少し気になった部分として、居候トリオの凄まじいばかりの生活感の無さというのがあるのですが、5人に増えるとそれが加速しそうというかYoutuber家の異次元空間ぶり(ういの自室は、あそこなの……?)がとんでもない事になりそう。そういった部分は完全無視というアプローチも勿論ありますが、どうせ共同生活設定なら、スパイスとしてちょっぴり生活感あると嬉しいのですけれども。
そういえば、黒が石化をミストで直す際に、背後の段ボールに書かれた文字がはっきり映っていたのでちょっと気になって確認したら、
「2018年 波杜蓮遺跡調査資料」
とあり、読み方は色々考えられますが……「パトレン(遺跡)」?だとすると、スタッフの小ネタ的お遊びでありましょうか。
次回――水と油、というか、プログラム言語の違っている感があるコウとトワ、激突?!