『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第2話
◆第2話「ソウルをひとつに」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:山岡潤平)
アバンタイトル無しでOPからスタート、というのは近年では割と珍しいでしょうか。
姿を消してしまった騎士竜を探す為、コウ・アスナ・メルトの3人は、大変あっさりと森の外へ。コウは前回よりも天然傾向が強くなり、アスナはそれと丁々発止のやり取りを繰り広げ、メルトは道中の情報整理で頭脳派ポジションを強調。
ドルイドン族が宇宙に逃げたのは、6千500万年前、地球に衝突した巨大隕石の被害を避ける為であった、という過去の歴史(そういう事になっている)がさらりと語られ、ここから広がる可能性もありますが、特にミステリーではなかった模様。
個人的にはこの辺りに、隠蔽されたリュウソウ族の歴史の闇とか盛り込まれて欲しいですが(笑)
「今地球に戻ってきたのは何か理由がある筈だ」
ドルイドン族の思惑は何か? 神殿を破壊した巨大マイナソーとは関係があるのか? マイナソーとは「人間のマイナスの感情が生み出す怪物」と説明され、前回の話と繋げると、リュウソウジャーはドルイドン族とは関係なく、地球を守る為にマイナソーと戦い、その力を代々伝えてきたようですが、では、マイナソーはどこから出現するようになったのか?(ドルイドン族の置き土産?)という要素が、過去と絡み合って上手く繋がってくれる事に期待。
3人は道に転がっていたYoutuberに遭遇し、騎士竜らしきものの情報を持っていた事から、招かれるままにお宅訪問。古生物学者であるYoutuber父の話から、神殿(らしきもの)が割とあちこちにあった事が判明し、コウ達3人はYoutuberの家に居候させてもらう事になる、というくだりは外界との接触含めてあっけらかんとざくざく進行。
一方その頃、厳しいトレーニングを行うフェンシング選手の口の中に、粘液を注ぎ込むスライムキノコ。
「レディースアンドジェントルマン! マイナソーの、誕生です! 拍手ぅ!」
上堀内監督の参戦が影響しているのか、“人間の負の感情から怪人が誕生する”というのは《平成ライダー》風味の印象ですが、ざっと記憶を漁ってみた限り、「世界に漂う邪悪な念や衝動のパワーが、物の姿を真似て具現化したもの」という、オルグ(『百獣戦隊ガオレンジャー』)の設定が本質的に近いぐらいで、少なくとも00年代戦隊では初、でしょうか。
Youtuberうい(文章中で埋没して大変困る名前なので、もうずっとYoutuberでもいいか……)を加えたコウ達は神殿を探しに向かい、聞けソウルで本能覚醒!ならぬ聴覚アップ、と一部ソウルは変身前でも判定の難易度を下げるブーストが可能であると判明。
金属の触れ合う音をキャッチした一行はフェンシングの練習場に入り込み、そこで見た選手の剣の冴えに、あれが長老の言っていた仲間なのではとアタックしようとするコウを止めるとまずはYoutuberが当たり障りの無い感じに接触し、リュウソウジャーと現代社会の間に挟まるクッションとしてのポジションをまず一つ確立。
ところが結局、コウがそのフェンシング選手・三島の前に飛び出し、
「あの、もしかして、リュウソウジャーの方ですか?!」
……はじめてのオフ会ノリであった。
前掛かりなコウを引きはがしているところに悲鳴を聞きつけ移動した3人は、巨大なユニコーン頭の怪人大マイナソーを発見し、リュウソウチェンジ。
「俺達の騎士道、見せてやる!」
細剣を操るマイナソーに対して3人が連係攻撃を仕掛けるも軽々と受け止められ、「「「え?」」」となる所は、3人が積んできた修行と、それに対応してみせる剣の使い手(がマイナソーの素体)である姿を印象的に見せ、その後も、しっかりと呼吸を合わせた攻撃を仕掛ける事で、一つの魅力・特性をアピール。銃撃・格闘戦主体であった前作とも、立ち上がりの明確な差別化になりました。
まあ、マスタークラス=フェンシング日本一級でいいのか、という問題は若干ありますが……高校インターハイレベルの蟲毒房三冥獣よりは、納得ができます(笑)
「いちばーーーん!」
プロレス、じゃなかった、フェンシング日本一を目指す為に2年の間、妻子の顔も見ずに自分を追い込んでいるという、三島の行きすぎた執念が更に分離・肥大化した姿であるユニコーンマイナソーは高々と吠え、そのスピードに対抗しようとした赤は、早ソウル、のつもりで臭ソウルを発動してしまう。
「もー、いっつもいっつもあんたは~!」
ところがその臭気爆弾がマイナソーに思わぬ効果を発揮し、もがき苦しむマイナソーにこれ幸いとトドメを刺そうとするレッドだが、突如出現したトランプ兵の盾に阻まれ続けて槍衾、というのは戦闘員の特性が活かされて良かったです。
「マイナソーは、生み出した人間のエネルギーを吸って、成長していくんでーす! おまえら、人間を、全員やっつける為になー!」
スライムキノコが解説に現れ、続けて降臨したタンク様が、どすーん着地で道を分断。
「タンクジョウ様、200ポイントをあげまーす」
「そのポイントで何を貰える?」
「新しいポイントカード」
は、中田譲治さんの重々しい物言いが効いて、面白いやり取りでした。
マイナソーが移動するとタンク様もあっさり撤収し、リュウソウジャーは、ドルイドン族が「人間からマイナソーを生み出す力」を得て、地球に戻ってきた事を知る。
素体となった三島は、マイナソーにエネルギーを吸収される事で意識不明となり、三島の妻子を探しに走るコウとYoutuber。一方、メルトとアスナは三島から吸収されていくマイナスエネルギーの光を追い、早くも巨大化したマイナソーを発見。
リュウソウブルーとピンクは巨大マイナソーに立ち向かう内にその狙いが現在のフェンシング日本代表選手だと知り、非対称のバトルの合間に、素体となった人間の負の感情の正体を知り得る、というのは上手く繋がりました。
三島妻子から家族の事情を聞いていたコウとYoutuberは、三島娘の目撃情報から、動物園で寝そべっていたティラミーゴも発見。ライバル選手がイベントを行っていたビルに向けて、マイナソーが灼熱の刃を突き立てる寸前――それを食い止める悪の貴公子世紀王キンタロ、じゃなかったティラミーゴ。
フルCGで行くのかと思われたティラミーゴは、リュウタロスもといおぐらとしひろさんが演じているそうで、マイナソーと体をぶつけあう激しい立ち回りを演じるが、割とザックリ敗北。
「騎士竜が……負けた?」
前回も真っ先に諦めていましたが、青は逆境に弱いという扱いか。
「…………諦めるな。限界は――自分で決めるっ。諦めなきゃ……限界なんかない!」
だが赤は下を向く事なく歩き出し、台詞に合わせて足下の“境界線を越える”というのは、上堀内監督っぽい演出。
ところが、そこから格好良く投擲した臭気爆弾は、まさかの無効。
前回の敗戦を糧に、マイナソーが臭気対策で口呼吸している事に気付くと、青が伸びソウル、桃がムキムキソウルを発動し、第2話にしてソウルの名称が動詞や形容詞を外れましたが、とにもかくにも、ムキムキピンクが鼻の穴を筋肉でこじあけ、ではなくて、赤と青を筋肉で宙高く放り上げ、伸びソウルで口を塞ぐブルー。天高く舞った赤が間髪入れずに臭ソウルを放り投げる事で強制的に匂いを嗅がせ、やっている事は、牛乳を拭いたまま2年間放置した雑巾を顔面に押しつけるなのですが、上下左右を大きく使い、空間の広がりや高低差を印象づける画面構成により、それを華麗な必殺コンボのように見せたのはお見事。
また、この連携を事前の打ち合わせ無しにその場のアドリブで即座にやってみせる事で、前半の戦闘に続き、3人の積み重ねてきた修行という背景が見えてくる、というアクションでキャラを補強する見せ方も良かったです。
福沢アクション監督は前作もアクション面でだいぶ盛り上げてくれましたが、今作も、剣技とソウルの組み合わせをどう見せてくれるのか、様々な工夫に期待したいです。
苦しむマイナソーの足下にピンクが追いマッスルを叩き込み、よろけた所にビルの壁を駆け下りながら強ソウルを発動したレッドが渾身の斬撃を繰り出す、というのも迫力のある映像。
その連続攻撃にも耐え抜いたマイナソーに弾き飛ばされたレッドが、転がった屋上で立ち上がろうとするその背後にティラミーゴ、というカットも格好良く決まり、赤のソウルに答えるかのように、限界を超え、息を吹き返すティラミーゴ。
「ソウルを……一つに!」
マスターの言葉を思い返したレッドは、「一緒に戦おう、ティラミーゴ!」と、赤のリュウソウルを投擲、巨大化。人型となったリュウソウルがティラミーゴの上にまたがると、変形したティラミーゴの頭部にドッキング、同時にレッドも乗り込んで、単体キシリュウオーが誕生する!
騎士竜王は特徴として押していくと思われるダッシュとジャンプでマイナソーに近付き、前回同様のスピーディな立ち回りでパンチとキックを叩き込んだところから、間合いが離れた途端にすかさず腕のバルカン砲を叩き込むのが、大変、戦闘民族です。
……いや、リュウソウ族の方は「戦闘民族」とは語られていないですが、ドルイドン族に「戦闘民族」のレッテルを貼り付けつつ、それに対抗していたというのですから、どう考えても現状、太古の地球の覇権を争っていた別の戦闘民族としか思えないわけなのですが。
ひるんだ所に躍りかかって組付きから投げ飛ばすと、ジョイントチェンジ。背中の尻尾が外れて左腕に付くと鞭の要領で振り回して細剣を叩き折り、こういうギミックは非常に好み。続けて胸部のティラノヘッダーを右腕に装着し、恐竜マッスルパンチでマイナソーを撲殺するのであった。
ジョイントチェンジのギミックは玩具の遊び要素として非常に好みで、そこに焦点を合わせた巨大戦の見せ方も好感触の一方、前回の今回で、青と桃の騎士竜が完全黙殺されているのですが、要素を絞ってスッキリ見せる一方で切り捨てた部分があまりにもざっくり、という第1話の長短が、そのままスライドした感のある第2話でありました。
脚本家が特撮作品初参加という点も考慮されているのかとは思われ、あれもこれも色々と詰め込もうとして空中分解から崖に激突、するよりは遙かにマシとはいえますが、目的地に安全に辿り着く為に、ちょっとでも曲がりくねった道は徹底的に避け、なんなら事前に、建っていた家を潰して真っ直ぐな道を整地しておく、とでもいうような作劇になっているのは、今後に向けては少々不安。
見せたいポイントがハッキリしていて、そこから逆算した構成は一つの手法でありますが、あまりに枝葉を切り取りすぎると、裸の樹の先端に貧弱な果実が一つぶら下がっているだけの袋小路に行き当たってしまいかねないので(場合によってはそこに新しい樹を継ぎ足そうとして全部枯れる)、もう少し、道の左右の風景も取り込んでくれてもいいかなと思うところ。
まだパイロット版ではありますが、ソウルに関してもいまひとつ整理しきれていないというか、赤とティラミーゴのシンクロが前回同様、もう一つ劇的になりきらず(映像的には非常に溜めを作ってそう見せようとしているのですが)、第1話は単体騎士竜王の方がスムーズだし説得力が高いとわかってはいても、初回で3色騎士竜王は見せたいし、そこから揃い踏みまで繋げたいし……と色々な事情が見える中で、今回それを補うべく「ソウル」の中身をどこまで詰めてくれるか期待していたものの、第1話の展開に後から説得力を持たせるほどのものはなく、想定以下の事故は起きなかった代わりに期待のハードルも越えてはくれなかった、という内容。
特に「ソウル」に関しては、曖昧なまま放置して大事故に発展、のパターンにはまらないかは心配です。エピソードの情報量を意図的に絞っているのかな、という節も見られるので、「ソウル」の扱いは長いスパンで見たいとは思いますが(ただ、ある程度序盤に戦う力のベースについて踏み固めてくれる方が、好み)。
「あれが騎士竜か……」
「厄介だね。もっと強いマイナソー、生み出さないと」
余裕の観戦を終え、憤懣やる方ない様子のスライムキノコが何かに気配に気付くと、そこに歩み寄る人影が……。
一方、病院で目を覚ました三島の元には妻子が寄り添い、それを見届けるとそっと去って行くリュウソウジャー。
「良かった、命が助かって」
「うん。一番強くなくても、家族にとっては一番大事なパパだった。三島さんはとっくに一番だった」
「きっとあの人はここから強くなる。……守るべきものがちゃんとわかったからな」
三島の箍の外れた執念は浄化されて綺麗に収まるが……
「ぐふふふ……」
Youtuberは何やらスマホの画面を覗きながらほくそ笑んでいた。
「これを『ういチャンネル』にもUPして……あ! お父さんにも送信! ぐふふふふふ」
いいねを稼ぐ為にリュウソウジャーを売るのか?! と思われたところで、その背後に何故か姿を見せるスライムキノコ……。
そしてススキ野原で剣を打ち合わせるリュウソウ黒と緑の前に、ポケットの中でバイブ音を鳴らす謎の覆面男が姿を見せる。
「誰だ!?」
「探したぞ」
と、序盤から謎を連続させて、つづく。
覆面男はOP時点では追加戦士の示唆かと思っていたのですが、ラストのアップだと結構目元が年配の人物に見え、バイブレーションの伏線をストレートにつなげるなら、うい父という事になるのか。そのうい(邪念でいっぱい)は、次回予告からすると、単純にマイナソーの素体にされるのかもですが、ミスディレクションの可能性も含め、父娘は積極的に物語に絡みますよ、という宣言として、面白く転がってほしいです。
パイロット版の感想を一言にまとめると、上述した「想定以下の事故は起きなかった代わりに期待のハードルも越えてはくれなかった」というものとなりますが、ジョイントチェンジのギミックは好きですし、上手い事、見せたいポイントと物語が噛み合って加速してくれるといいな、と。
キャラ的な本命は黒の人なので、次回、黒の人がどんな描写をされるかでも、結構印象が上下しそうです(笑)
後少し気になるところを挙げておくと、マスターが一緒だった前回に比べると、コウの子供っぽい行動力がクローズアップされ、前作との差別化もあってか主要視聴者とのシンクロを重視したキャラクター性が押し出された結果、もう少しシリアス寄りだった前回とのギャップがやや大きくなりすぎたかなと。
勿論、二面性を持ち合わせている事に問題はないのですが、“二面性が一つの人格として融合しているキャラクター”と“話の都合で二面性を物語が使い分けてしまうキャラクター”は全く違うわけで、特に戦隊の尺・作劇ではキャラクターをある程度デフォルメして描く必要がある事から、『天装戦隊ゴセイジャー』のアラタのように、前者をやろうとして後者になってしまう場合があるので、二の舞になってしまわないかは、少々心配。