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この筋肉に祈りを込めて

ウルトラマンガイア』感想・第28話

◆第28話「熱波襲来」◆ (監督:児玉高志 脚本:川上英幸 特技監督:佐川和夫)
 OP冒頭、二つの光が重なり合って、黒ラインのガイアV2が誕生しているという事なのか、と遅ればせながらなるほど納得。
 房総半島の一部地域――くしくも我夢の生まれ故郷の付近で、春だというのに異常な暑さが続き、調査に向かう我夢と樋口。画面にエフェクトかけて表情も暑そうなのですが……今回通して映像的な問題点が、熱射病で人が倒れるほどの真夏の気温という設定の筈なのに、我夢も樋口も厚ぼったい制服を着っぱなしの事。
 XIG隊員のアイコンでもあるので映像的なわかりやすさとしては理解できますし、アルケミースターズ謹製リバルサークールシステムが内蔵されて今なら39,800円! とかなのかもしれませんが、今回のエピソードで必要だったのは、“暑くても制服を着ていられる理由の解釈や防衛隊意識”ではなく、XIGが現地調査に向かうレベルの異常気象という状況設定を“如何に視聴者に伝えるか”であったわけで、今作にしては珍しいレベルで、絵空事を現出させる為の映像的なリアリティ補強を欠いてしまいました。
 せめてサブキャラの服装で補えれば良かったのですが、ワイシャツ姿の我夢父はともかく、異常高温を知った上で取材に向かった筈の田端さんが全く暑くなさそうな服装で、これまた噛み合わない事に(実際の撮影時期はまだ寒かったと思われるので、田端さん役の円谷さんの体調的問題で薄着させるわけにもいかなかったなどの事情もあったのかもですが)。
 役場のケースワーカーとして、山奥に暮らす老人の元を訪れていた我夢父が帰路に熱射病で倒れた所を田端に助けられ、偶然から田端が我夢の両親と出会っていた頃、我夢と樋口が調査していた異常高温の熱源・油田山の内部から、奇妙な巨大物体が出現。
 その名を――炎山(エンザン)。
 第7話に登場した地球洗濯プレシャス・テンカイを、登場回の脚本だった吉田さんではなく、川上さんが拾う形になったのですが、謎だらけの超古代人(外来宇宙人?)の残した環境浄化システム? というアイデアが扱い辛かったのか、周囲の気温を上昇させる炎山の存在理由や目的もこれといって広がらず(天界エピソードは、そこからのSF的飛翔が面白かったのですが)、率直にパッとしない出来。
 「これは……やはり篆書体の文字ですか?」
 「ああ」
 と答えるコマンダー、確かに「天界」の時よりは遙かに読みやすいのですが、それは本当に篆書体なのですか。そこはそのまま拾ってしまって良かったのですか?!
 炎山の表面にある謎のゲージが満タンになると、炎山は頭部に巨大なハサミを持ったアントラー似の怪獣形態にトランスフォーム。ゴーレム風味のメカ甲虫、というデザインそのものは好みでしたが、『ガイア』の魅力は、そのゲージは何か? どうしてそれが溜まっていくのか? に理屈をつけていく部分にあると思うので、その辺りすっ飛ばして怪獣に変形した! という展開も冴えません。
 住人の避難が進む中、我夢父は山奥の独居老人の存在に思い至り、車を出してそれに手を貸す田端。熱波にやられて倒れていた老人を救出するが、帰路が倒木で塞がっており、必死にそれをどけて道を切り拓く中年コンビ。なんとか老人を反対側に運ぶのに成功したのも束の間、今度は我夢父が倒れてしまう……というのも少々くどく感じてしまいました。
 様々な異常現象と破滅招来体の関連を取材し続ける田端(久々登場)、小さな街で人々を助ける為に働く我夢父、地球的視野とは関係なく視聴者からの励ましの便りを目にして現場復帰を決める玲子……言ってみれば今回は、“地上の人々”の話であるのですが、例えばそれがサイコメザード回のように、“天空の人々”の存在と絡み合ってこそ今作としての面白さが生まれてくるのに、その接続が無い為、『ガイア』としての広がりが生まれてこないのも、もどかしい展開。
 母から事情を聞き、山道に踏みいっていた我夢は、父らと合流直前にスキップしながら迫り来る炎山を目にして、ガイアに変身。
 開幕のヨルダン代数飛翔蹴り! 光のエネルギーEは光子の持つエネルギーの倍数の値のみを取り得るキックの嵐から背負い投げ、そして高さのあるバックドロップと、今日も溢れるマッスルが地球の力だ!
 量子力学×筋トレの融合により優位に戦いを進めるガイアだが、ハサミで足下をすくわれてひっくり返された所に熱線を浴び、一転して危機に陥ると劣勢を跳ね返すアグトルニック。
 本当の筋肉を見せてやる! と炎山の突撃を片手で受け止めると、頭部を鷲掴みにしたまま軽々と放り投げた炎山が地面を猛スピードで滑っていき、凄いぞ筋肉!
 ジャンプ一番、回り込んで滑走を止めたガイアは、そのまま炎山を持ち上げ、簡単に投げ落とすのではなく、大道芸のごとく巨体をクルクルと縦回転させて連続で振り回し、凄いぞ筋肉!
 十分に脳を揺さぶった炎山を地面に叩きつけると、朦朧とする炎山を再び持ち上げ、今度は皿回しの要領で激しい横回転を加えてから投げ飛ばし、凄すぎるぞ筋肉!
 ……思えば、投げ技=大地への叩きつけダメージとはすなわち、凶器は地球であり、これ以上なく、ガイアグルにふさわしい攻撃手段といえるのかもしれません。
 「僕は地球を守る! 出て行け!」
 地球もとい筋肉の力を見せつけたガイアは怪獣に立ち退きを要求。恫喝に怯えた炎山はすごすごと引き下がる……と見せかけて不意打ちを仕掛けてくるが、それを受け止めたガイアは隙間パワーで熱線を消滅させると、全身是筋肉之槍により炎山を貫通して爆砕し、圧倒的だ筋肉!
 平和の戻った房総で我夢は倒れた父を見舞い、それぞれの場所でそれぞれの出来る事をする(という形で親子が繋がっている)中で、老人の亡き息子の存在を取り上げて「親より先に死んではいけない」と一言入るラストも今作の独自性が特に活きる余地がなく、せっかく前回、休暇を取った割に帰省しない我夢の姿が描かれたのに(タイミング的に脚本上の連携は難しかったと思われるにしても)、高山家の微妙な親子関係の掘り下げが特に無かったのは、大変残念でした。
 前回が盛り上がりすぎたというのもありますが、色々やろうとした割には、諸要素がとっちらかったままで連動も収束もなく終わってしまい、今作のアベレージからすると、物足りない内容。
 川上脚本だと、ガイアvsアグルの決着へ向けて、前半戦の要素を色々拾って上手くまとめていった第20話は秀逸回だっただけに、今回は歯車がズレっぱなしで惜しまれます(その前の狼男回はやはり色々ズレていたので、あまり期待値は高く取らない方が良いかもですが……)。
 次回――僕らにはまだ筋肉が足りない。