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その瞳に映るもの

ウルトラマンガイア』感想・第25話

◆第25話「明日なき対決」◆ (監督:村石宏實 脚本:右田昌万 特技監督:村石宏實)
 アリゾナ?の砂漠をさまよう我夢は、砂に埋もれた巨大なガイアの姿を目にする……ところで跳ね起き、立派な住所不定無職として、友人の家に世話になっている事が判明。友人に教えられて天体望遠鏡を覗き込んだ我夢は、前回伏線のあった星空の異常に気付き、一方エリアルベース上層部は、甦らせた怪獣を何故か自ら葬り去った青いウルトラマンの意図に困惑していた。
 「いったい何を考えてるんだ?」
 じょ、女子アナの事ですかね……。
 そこへ「石の翼」回に登場した参謀の甥っ子から、「夜空の恒星の配列が滅茶苦茶になっている」と連絡が入り、過去のゲストを天体観測を再開している事を含めて拾ってくれたのは嬉しかったのですが、民間人からの直接電話が通じるエリアルベースの通信セキュリティはとことんザル。
 その頃、玲子さん(24歳と判明)の拉致犯として全国ニュースに素顔でデビューした藤宮は、その玲子と行動を共にしており…………えーつまり……前回EDパートで玲子さんの横を無言で格好つけて通り過ぎた直後、疲労困憊でひっくり返って動けなくなったところを玲子さんに拾われたという可能性が高く、大変、藤宮です。
 休息を取ろうと入った街道沿いのうらぶれたバーでガラの悪い男達に絡まれた藤宮は、パンチ一発で一人をのした直後、背後から他の男に不意打ちを受けて倒れた所をよってたかって袋だたきにされ、弱っているとはいえ、大変、藤宮です。
 「人間は汚い……! 人間は醜い……! 人間なんて……人間なんて……みんな地球から吐きだしてやる!」
 路上に叩き出された藤宮は人間への憎しみゲージをぎゅおーんと高め、高度な思想犯である藤宮の行動理由をわかりやすく見せる為に、露骨なチンピラに不条理に痛めつけられるという状況を持ち込んだのかと思われますが、マクロな視点で物を見(ようとし)ている藤宮の行動と、袋だたきにあったミクロな憤りとは、重ね合わせが少しズレた感。
 主語を大きくして物事を捉える、というのは藤宮らしくはありますし、揺れ惑う自らにそうやって「人間はゴミだ」と言い聞かせようとしている、とも取れはしますが。
 「ダニエル……僕は夢を見たよ」
 「夢を?」
 「最高に効率的な筋トレで夏の海の視」
 「でもあれは、夢なんかじゃない。僕は地球の未来を垣間見たんだ」
 「……どんな未来だ?」
 「変えなくてはいけない未来。このままでは地球は……その為にも、藤宮を放っておけないんだ」
 ダニエルくんを通して天体の異常に関する推論をXIGに伝えた我夢は、リザードのネットワークを 藤宮直伝筋トレ ハッキングするとその情報を元に藤宮を追い、我夢がXIGとしての使命感を失っていない事を確認したコマンダーは、敢えてそれを放置する。
 ――翌日、車の中で目覚めた藤宮は、アグルのエネルギーが回復している事を確認。
 「人間は地球のばい菌だ……ばい菌は殺菌しなきゃ。地球は破滅する」
 その物言いに、思わず吹き出す玲子。
 「何がおかしい?!」
 「まるで自分が地球になったように話すんだもん」
 「当たり前だ。……俺はその為にウルトラマンの光を授かった」
 改めて藤宮が、自らを地球意志の代弁者として位置づけようとしている事を確認。
 「可哀想」
 「……人間が?」
 「あなただよ。地球から選ばれて、選ばれたが為に苦しんで、自由をなくしてる」
 「……俺にウルトラマンになるなというのか?! 他の人間のように、身勝手に生きろと?!」
 「自分を大切にしてって言ってるの。地球のことを思う前に、まず自分を大事にしてよ。自分を大事にできない人間に、地球を守れるわけないよ」
 そしてそんな藤宮に対して、玲子が“人間”である事を求めるのは、“ヒーロー性”と“人間性”の相克、という普遍的テーゼへの今作なりのアプローチといえますが、ここで藤宮が特徴的なのは、地球を救う為に人間を排除しようとするに際して、自分自身を「ガン細胞でもばい菌でもない特別な人間」と高みに置くのではなく、もはや「人間の枠外の存在」と位置づけている事。
 だから藤宮は、矛盾なく人間を排除しようとし、排除する為に自分を地球と同一視しようとしているのですが、逆にいえば、そうしなくては人間を排除できない、というのが藤宮の抱える脆さと希望といえます。
 そして同時に「排除すべき人間を選別する神」として力を振るうおこがましさを持つにはセンシティブに過ぎて、それらを恐らくは自覚しているが故に、“人間”に戻るわけにはいかない藤宮は、子供の頃の夢など「藤宮博也」という人間の個人的な過去を聞きたがる玲子の問いを拒絶するが、そこに我夢が現れる。
 「藤宮、大変な事が起きようとしている」
 「もう遅い! 奴が来る前に、俺は全ての怪獣を覚醒させるつもりだった」
 「君は知ってて!」
 拳を握りしめる我夢。
 「おまえが鈍すぎるんだ!」
 「最低だぞ藤宮! ――怪獣だって、何も望んで出てきたわけじゃない!」
 おお成る程。
 前回、怪獣と心が通じ合う的な展開は個人的にあまりピンと来ない……と書きましたが、人類に積極的に害を為そうとする怪獣はともかくとして、「怪獣」と呼ばれる(呼ぶしかない)存在としても、人類(ウルトラマン)の都合で勝手に目覚めさせて勝手に葬り去る、というのは許される事ではない、というのは納得できる怒り。
 「いずれは目覚める」
 「君はウルトラマンの力の使い方を間違ってる!」
 「俺が本当のウルトラマンだ!」
 「違う! 本当のウルトラマンは!」
 爆弾発言の直前、いいパンチを貰った我夢は砂浜に倒れ、我武者羅に体当たりを仕掛けると馬乗りになり、藤宮、100%《ともえなげ》のチャンス!
 だが藤宮は、《ともえなげ》を覚えていなかった!
 マウントからのパンチが入る寸前、玲子が割って入り、振り上げた拳を止める我夢。
 「この人弱ってるの」
 藤宮はパンチ以上のダメージを受けた!
 女子マネ……僕も……女子マネが……欲しいな……
 我夢は朦朧としている!
 玲子と藤宮の逃避行ドライブは続き、なんだか身も心もすっかり削られ果てた藤宮は、車窓を流れる海を見つめながら、目を細める。
 「……海を探検したかった」
 「え?」
 「俺の夢さ」
 「どうして海なの?」
 「人間は海のほんの上っ面しかしらない。地球の7割は海だというのに、どの国も、自分とこの優秀さをひけらかそうと、宇宙ばっかり行きたがる。誰も海の本当の姿を知ろうとしない。だから俺は…………あそこは俺達の生まれ故郷なんだ」
 「素敵な夢ね」
 とげとげしかった藤宮が、一度は拒否したパーソナルな事を語るに際して子供のような表情を浮かべるというのがメリハリとなり、また、宇宙の対となるのが海、というのは、アーサー・C・クラーク的なSF感が盛り込まれて良かったです。
 束の間流れる穏やかな時間だが、リザードカーの追跡を振り切ろうとした玲子がハンドル操作を誤って車が崖から転落し、藤宮はそれを救うためにアグルに変身。
 アグルの手に乗せられた玲子が、鳥の視点で大地を見る、という飛行シーンの映像に尺が採られ、これにより玲子が、間接的にアグルの見る景色を目にし共有するというのは、今回の大変好きなシーン。
 劇的な意味づけにおいては、地上の人であった玲子さんに天空の視点が与えられたともいえ、同時にアグルとの心理的距離感も大きく接近する事になったわけですが、すっかりキーキャラとなった玲子さんの物事の捉え方が今度どうなっていくのかは気になるところです(稲森博士の二番煎じにはしないでしょうし……)。
 完全にやらかし案件となった瀬沼さんですが、もしかしたら尺の都合でカットされたのかもしれませんし、完全に筋の脇道という点では無くて当然とはいえるのですが、藤宮が袋だたきにされたバーを訪れたワンカットの後に、バーに入って粋がったチンピラを締め上げる情報収集シーンがあっても良かったかなーとは思うところ。
 バーのチンピラが大変嫌な感じの連中なのが話の筋の必然というのはわかるのですが、それはそれとして多少のお仕置きが劇中で描かれても良いかなとは思うところで、ここの大失態に加え、現状、悪役ポジションに近い瀬沼さんにちょっとした見せ場があるとバランスも取れて嬉しかったなと。
 瀬沼さん、自覚的に汚れ役をやっている人、というのが結構好きなので、今後の劇中で、いいとこあるといいなーと思う次第。
 飛翔するアグルの姿を見た我夢は、砂浜での体育座り(様子を見ていたリザードからも完全放置)から復帰するとやや過剰反応気味に変身アイテムを構える。
 「藤宮……おまえはウルトラマンじゃない!」
 その脳裏に再び浮かぶ、量子の夢、可能性未来――一面が砂にまみれた大地に眠るガイア、そして、アグルの姿。
 「僕が……僕が本当のウルトラマンだ!」
 アグルに追いついたガイアは、ちょっとツラ貸せや、とハンドサインを送り、承諾したアグルは、玲子を地上へと降ろす。
 「藤宮くん! 連れてってよ! ねぇ!」
 拒否する玲子をやや強引に置き去りにするとアグルは軽く飛翔し、再び正面から向き合う2人のウルトラマン
 「どっちが本当のウルトラマンか、決着をつける時が来たようだな」
 「望むところだ」
 変身後は基本ジェスチャーでやり取りしていたので、それで通すのかなと思っていたら、ここではウルトラマンの姿に藤宮と我夢の声を直接乗せる形で演出。この辺り、シリーズにおける紆余曲折と試行錯誤があるようですが、少なくとも今作においてが、変身前後のシンクロをあまり意図していないアクション演出なので、直接声を乗せるとやや違和感というのが正直。まあこういうのは慣れの問題もありますが。
 ここから激しいウルトラバトルに入り、空中スピンとプロレス的な返し技の応酬が多めなのが特徴的。エリアルベースからはチーム・ライトニングとクロウ、そしてコマンダーを乗せたベースキャリーが発進し、延々と続く互角の死闘だが、まるでその激突が最後の鍵であったかのように、天空で起きる異変の向こうから、地球にその時が迫っていた――。
 EDにはみだしたウルトラバトルで、ぶつかりあう二つの必殺光線から、砂に埋もれた二体のウルトラマンの映像に変わり、つづく。
 前回、怪獣相手に沈静うにょんバスターに切り替えたガイアが、中身人間相手に本気うにょんバスターを撃ち込んで、つづく!
 次回――変な頭が出てきた。