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藤井先生の本領

電撃戦隊チェンジマン』感想・第26話

◆第26話「麻衣20歳の初恋」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 90年代に入ると、「ああこれはきっと扇澤さんだな……」というのが予告でなんとなくわかる脚本家筆頭ですが、80年代は、藤井先生がそのポジション(笑)
 そして藤井先生の趣味全開のエピソードに長石演出が加わると、物凄く昭和のメロドラマになるのでした。
 いやまあ、『チェンジマン』昭和ですが。あと、昭和のメロドラマにも詳しくはないのでイメージですが。
 ランニング中に知り合った、やたら渋い声の青年に、転んだ怪我の手当てを受けた麻衣は、ときめきゲージがぎゅいーんと急上昇。ところがそんな二人の前に落ちてきた小型UFOの中から、小さな竜と妖精を掛け合わせたような奇妙な生物が姿を見せる。
 「こいつはプレアデス星雲系の宇宙動物だな」
 「プレアデス星雲系の、宇宙動物?」
 「うん。昔一度見た事がある」
 「……あなたは?」
 いやホント、あなたは?
 疑問を解消する間もなく、どうやらその宇宙動物を追ってきたらしい鳥型の宇宙獣士ホーグルとヒドラ兵の襲撃を受け、麻衣さん生バトル祭。チェンジマンが揃って反撃に転じ、青年に託されて逃げた動物の追跡を優先する鳥獣士は一時撤収。バズーから宇宙動物の抹殺を念押しされたギルークは納得が行かない様子で首をひねるが、今回の段階ではこれ以上掘り下げられない為、果たして今後の展開に関わってくるのかどうなのか。
 宇宙動物の正体は、大星団ゴズマの攻撃を受けているリンド星の生物・ギギであり、滅亡に瀕するリンド星人からのメッセージと、リンド星を壊滅状態に陥らせた、鳥獣士のばらまく伝染病の病原菌を携えていた。
 救援を求めるリンド星人の必死の訴えかけが真に迫るのですが、地球の科学で……行けるのかプレアデス星雲系?
 アースフォース発現前からチェンジロボが存在していた事を考えると(起動できたのかは別にして)、特定のオカルトパワーに頼らずとも、地球人のテクノロジーレベルが侮れないのは間違いないのですが……スーパーパワーに付随して出現(完成)したのではなく、スーパーパワーを見越して事前に建造されていた、というのが割と謎のメカニック、チェンジロボ。
 リンド星の生物を電撃基地に運び込んだのは、麻衣が生物を託して逃がした青年……その正体はなんと、高名な宇宙生物学者にして、地球防衛隊アメリ支部に所属する、ドクター東郷であった。
 予告の時点でゲストキャラが基地の中に居たので、セキュリティに厳しい電撃基地にどうやって……? と思っていたのですが、実は関係者でした、というのはスッキリ納得。
 ギギの運んできた病原菌を分析し、ワクチンが開発可能である事を請け負った東郷は、飛竜を制して自らリンド星行きを志願し、そうか、行けるのか、プレアデス星雲系。
 東郷の決意に複雑な面持ちになった麻衣は、研究所へ向かう東郷の後を追いかけると思いあまって「私もリンド星に連れてって下さい」と同行を願い出るが、アンテナが女心の方には向いていない感じの東郷に、正論で諭されてしまう。
 「リンド星が俺を必要としているように、地球は君を必要としているんだ。わかるね」
 ネバーストップ! チェンジマン! 5人の戦士に安らぎいらない!
 東郷の覚悟と、自らの使命……地球守備隊の一員としてそれを受け入れようとする麻衣だが、二人はギギの幻影を用いたアハメスの罠にかかってしまう。ギルークに変わってギギ抹殺を買って出たアハメスは、二人を人質にしてギギとの交感を要求し、倉庫の窓の外から高笑いで見下ろしているのが、凄く、性格悪そうで良いシーン(笑)
 「ギギは渡さん。――しかし、二人も救出するんだ」
 伊吹長官は電撃戦隊に厳命し、与り知らぬといってもいい遠い星の出来事とはいえ、ゴズマの侵略により不条理に命が脅かされているのならば、全力を尽くして手を貸そうとするスペースワイドな物の見方は今作の一貫した姿勢であり、特に藤井脚本では、この要素のクローズアップが意識されているように思われます。
 一方、囚われの麻衣は宙吊り状態から、振り子運動で扉にまさかの体当たり。
 今回はアクション女優としての麻衣さんもフィーチャーされているのですが、宙吊りにされながら自分の体をハンマー代わりに叩きつけて脱出を図る、というアクションは初めて見た気がします(笑)
 扉の外では、アタッシュケースを手にした4人のチェンジマンが姿を見せ、上下を影で潰して、その間の白い光の中に4人が並ぶ、というのが凄く長石監督らしいカット。
 人質交換の筈が獣士がチェンジマンに奇襲をかけた事からどさくさ紛れに殴り合いとなり、身動き取れないまま炎に巻かれる麻衣とドクター。麻衣は宙吊り状態から体を反転させると、その炎で両手を縛るロープを焼き切ろうとする、という必死の行為で懸命にドクターを救おうとするが、外では、アタッシュケースの中身が空っぽである事がバレていた。
 ……作戦、無かった(おぃ)
 今作、基本的にチェンジマンが作戦を立ててミッションに望む事が多いので、何の工夫もせずに正面から乗り込んできた上に無策のまま人質の命を危険にさらした、というのは大変残念で、この後のラストが割と良かっただけに、非常に勿体ない展開でした。
 人命軽視の無理無茶無策の罰として、獣士の火球により哀れ焼死の危機に陥る麻衣だったが、すんでのところでロープを焼き切る事に成功するとドクターを助け起こし、アースフォースを纏って炎の中からドクターと脱出してくるその姿、まさに不死鳥!
 というのは、ブーバ驚愕のアップが挟まったのも効果的で格好良かっただけに、つくづく無策が残念。
 「おのれぇっ!」
 「おのれブーバ! チェンジマンの作戦にはまるとは!」
 責任をレンタル部下(節操が無いのか怖くて逆らえないのか)になすりつけるアハメスですが、作戦要素はどこにあったのか(笑)
 復帰したフェニックスのファイヤーで鳥獣士の毒の羽を焼却し、フェニックスアタックからパワーバズーカでフィニッシュ。工場の闇の中から扉を開けて台車に乗ったギョダーイが現れる、という変化球から巨大戦となり、獣士の火球攻撃に苦しむチェンジロボだったが、相手が飛び上がるや否や空中戦に持ち込んで撃墜し、大概の飛行型怪人より空中戦に強い(笑)
 そしてさくっとサンダーボルト。
 追っ手の魔手を退け、完成したワクチンと、道案内を務めるギギを抱えたドクター東郷は、いよいよリンド星へ出発する事に。
 「お体に気をつけて」
 「うん。麻衣くん、色々ありがとう」
 麻衣はあくまでも、一兵士に徹して別れの言葉をかわし、電撃戦隊と戦士団の敬礼を受けたドクターは、遙か深宇宙へと旅立っていく……。
 そして……地球へ戻るシャトルベースから遠ざかりゆくロケットを、独り舷窓から見つめる麻衣の目から堪えきれずに零れ落ちる涙。
 麻衣の気持ちに気付いていたさやかが寄り添って声をかけると、麻衣の頬に伝う涙をぬぐってそっと抱きしめ、こういう形でのドラマの見せ方は、シリーズとしてもかなり珍しい印象。
 戦闘後の尺も通例より長めに思えますが、その判断も含めて藤井先生のメロドラマ指向と長石監督のロマンチックな部分が巧く重なり、淡い恋の物語と戦友との信頼関係、幻想と戦争、青春と戦場、という『チェンジマン』の持つ二面性が映像的にも美しく濃縮。
 「いいわね……麻衣の初恋、いつも星空の中にあるんですもの。ね?」
 「…………うん!」
 麻衣は瞳にまだ涙を残しながらも笑顔を浮かべ、余韻の美しいエピソードとなりました……
 ナレーション「麻衣の、淡い初恋は、宇宙の彼方に消え去り、終わりを告げた」
 て、酷いよナレーションさん!
 ナレーション「だが、ゴズマとの戦いは続く。負けるなチェンジマン! 負けるな地球守備隊! 宇宙の未来は、君たちが、守るのだ」
 別れの余韻の台無し感がナイトダイナミックでしたが、BGMとナレーションの節回しが妙にテンポ良く重なって現実に引き戻されるのでありました!
 ネバーストップ! チェンジマン! 嵐を超えてどこまでも!
 次回――え?! そ、そこ拾うのですか?!
 場合によっては大変な惨劇が待ち受けていそうですが、どんな心構えをしていればいいのか。