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ギリギリまで転がって

ウルトラマンガイア』感想・第22話

◆第22話「石の翼」◆ (監督:根本実樹 脚本:太田愛 特技監督:佐川和夫)
 「――僕たちの街には、大昔、空から落ちてきたと言い伝えられている、不思議な石がある。僕たちは、その石を、“石の翼”と呼んで、遠い星から来た、宇宙船の翼だったんじゃないかと想像したり、石の翼を持つ船が、宇宙を旅するところを考えながら、いつまでも、空を眺めていたりした。でも……もうそんな子供の時間は、終わってしまったんだと思う」
 その通称通りに翼のような形が印象的な石の立つ高台に、何かを埋める少年のモノローグから、という珍しいスタート。
 場面変わってエリアルベースが微細な電場障害を起こす雷雲の接近を観測していた頃、千葉参謀は東京で各国首脳会議に出席し、ガードの活動への不満を膨らませる要人と個別に折衝を行っていた。夜の会議までの空き時間に、妹の家を訪れた参謀は、甥っ子の弘希少年(冒頭の少年)に天体望遠鏡をプレゼントするが、少年はどこか浮かない様子。
 「でも……もういらないんだ」
 「……いらない? もう空を、見ないのか?」
 「おじさん……空を見ても、空にはもう恐ろしいものしか現れない」
 空への夢を失ってしまった少年は自室に閉じこもり(「こんな立派な物をいただいて何を言ってるの!」的なお母さんとのやり取りが省略されたと思われます)、3年前、今日と同じく千葉が天体望遠鏡をプレゼントしれくれた日の事を思い出す。参謀は甥っ子に宇宙へのロマンを語り、それを聞いた少年は、望遠鏡にボイジャー1号と名前を付けたのだった。
 (でも……僕はもう空を見ない。僕は、ボイジャー1号を、石の翼の所に埋めた)
 一方、急速に勢力を強めた謎の雷雲が首都圏に接近し、その内部にワームホール発生の兆しが確認される。エリアルベースでは避難指示を出すと共にベースキャリーとチーム・ライトニングが出撃し、前後を問わず、「観測をしない」「観測はしているのに事が起こるまで傍観している」という作品がままある中、『ガイア』は平均的に「観測・警戒・対処」の手順をしっかり描いてくれるのが作品の出来を高めているところ。
 防衛隊の対応に唖然とするような事は滅多にありませんし、だからこそ、その予測を上回る破滅招来体の脅威が増し、ギリギリのところでそれに立ち向かうウルトラマンの魅力も増す、という構造がしっかりと組み上がっています。
 拡大した雷雲の影響で強力な通信障害が首都圏を覆う中、ベースキャリーとライトニング3機の同時出撃シーンが描かれ、メカ特撮もこまめにアレンジ。
 だが地上の避難が終わる前に、雷雲の奥に開いたワームホールから怪獣が地上に出現。怪獣は二本の角から雷撃をばらまいて派手に街を蹂躙し、会議に向かっていた千葉参謀もまた、この災害に巻き込まれる事に。六角ファイターが怪獣を食い止めている間に市民を逃がすジオベースの避難誘導部隊だが、通信障害による無線の不能で指揮系統に混乱を来し、避難が遅れてしまう。
 現場の隊員達が的確な行動を取れずに右往左往しているその時、ふらっと現れた千葉参謀が、無言でボンネットの上に地図を広げるのが、凄く格好いい!
 まさか、千葉参謀を格好良く思う日が来るとは夢にも思いませんでした(笑)
 序盤、現場が警戒任務をしている頃に参謀はロビー活動を行っていた、と幹部としての仕事を見せた上で、主人公へ向けてなんか良い事を言うのでも、わかりやすく命を賭けるのでも、突然の思わぬスキルを発揮するのでもなく、混乱する隊員達をまとめ上げて的確な指示をてきぱきと出す、という極めて納得感のあるプロの仕事を行う、という“格好良さ”の見せ方が、とても良かったです。
 地図と現場の状況を見ただけで適切な避難経路を導き出すと共に、それを自分の責任として迷わず指示を出す、伊達に参謀ではない姿を見せつけ、今回、120%千葉参謀プッシュ回なのですが、まんまと参謀への好感度が上がってしまいました(笑)
 こうなると手遅れにならない内に、コマンダープッシュ回もお願いしたいところです。
 電波障害により誘導ミサイルが効果を発揮しない事に気付いた我夢は、堤の制止を振り切ってEX機で出撃すると、ハンドサインでマニュアル攻撃を伝達し、チーム・ライトニングは怪獣の歩みを遅滞させる事に成功。その間に千葉参謀の指揮の下に地上の避難誘導が進められ、避難中に母親とはぐれていた弘希少年は、そんな伯父の姿を目撃。
 足を止め、怪獣の暴虐を見上げる少年は、参謀にかけられた言葉を思い出す……。
 「根源的破滅招来体は、確かに、存在する。……それが、私たちの現実だ。その事を受け入れる為に君は、空を見るのをやめたのかもしれない。現実を受け入れ、大人になっていこうと考えて。だがな、弘希。君が空を見るのをやめた時、君がなくしたものは、本当に失ったものはなんだ?」
 怪獣を睨み付けた少年は道を引き返していき、避難誘導を終えて撤収寸前、甥っ子の姿を目にした千葉はそれを追い、二人が辿り着いたのは、少年がボイジャー1号(天体望遠鏡)を埋めた“石の翼”の丘。
 「ボイジャー1号が僕に見せてくれたのは、空だけじゃなかった! もっと大事なものがあったんだ!」
 それを掘り出そうとするも千葉と少年に怪獣の電撃が迫り、我夢が気付いた時には既に間に合わないその時、“石の翼”から放たれた黄金の光が、怪獣の雷撃を相殺し、二人を守る。その代償として“石の翼”は細かい粒子となって消滅してしまうが、次の雷撃はガイアが間に合ってガード。
 灰色の煙が渦巻く中でガイアと怪獣はぶつかり合い、本日は大柄な怪獣との取っ組み合いが続く為か、マッスル体型な感じ。
 大ジャンプによる電撃の回避からハイパーワールド仕込みの超伝導キックを叩き込んだガイアだが、ヘッドロックを仕掛けた際に感電して電撃ダメージを受け、以前もそんな感じで鉄板焼きにされた記憶があるのですが、我夢はもう少し藤宮を見習って、自分のTV報道を録画してチェックすべきなのでは。
 地面をのたうつガイアが、怪獣に繰り返し蹴り転がされているシーンで、何故か流れ出すOPインスト(笑)
 ピンチのピンチのピンチの連続すぎるガイアは、怒濤の放電攻撃を受けて炎に沈む……かと思われたが、勝ち誇った怪獣が近づいてきたところに至近距離から死んだふりビームを浴びせて木っ葉微塵に吹き飛ばし、唐突に腕クロス光線がちょっと強すぎ感はありましたが、とにかく派手な、佐川特撮回!というバトルでありました。
 「僕……僕が本当になくしかけてたもの、なんだかわかった!」
 「そうか!」
 「辰巳おじさん、もう一度、ボイジャーの話してくれないかな?」
 少年の求めに応じた参謀は、人類のメッセージを運び今も大宇宙を飛ぶボイジャーについて語り、破滅招来体そのものも確かに恐ろしいが、その存在により人の心が蝕まれてしまう事もまた恐ろしく、裏を返せば破滅に負けない人の心の強さこそ、人類の持つ真の力なのではないか、というのを少年の夢、大宇宙へのロマンと巧く接続したエピソードでした。
 導入の段階ではてっきり、石の翼の下には巨大な怪獣の本体があってどっかーん、とばかり思っていたらむしろ逆でしたが、今作の世界観においては、破滅招来体と匹敵する力を持ったものの欠片が地球に落ちていても違和感はあまり無いですし、それが、夢を抱き続けようとする人の心に反応した時に少年を助けた、と思えば、ガイアやアグルの光に通じる部分も感じるところです。
 「――そしてあの晩、伯父さんは、ボイジャーの夢を継いでいくのは、君たちだと言った。僕は、この空を見つめ続けようと思う。たとえ今は、根源的破滅招来体しか現れないとしても、この空に、二機のボイジャーを送り出したのは、人間が、未来を夢見る、力なんだと思うから」
 で、つづく。
 次回――サブタイトルよりも、藤宮の凄い表情が衝撃的な予告ですが、果たして何が?!