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墜落の匠

電撃戦隊チェンジマン』感想・第19話

◆第19話「さやかに賭けろ!」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 長崎での作戦に失敗したアハメスは星王バズーからいきなりのお仕置きを受け、それをかばうギルーク。だが……
 「二人一緒になってまた儂に刃向かう気か?」
 「は?! と、とんでもない! 滅相もございません」
 ギルークはバズーの恫喝を受けて慌てて弁明に追われ、ここの「は?!」が、頭の片隅にあったからこその狼狽とも、夢にも思っていなかったからこその驚きとも取れる絶妙の間合いとなっており、またどちらにせよバズーの脅威の表現になっているのが秀逸。
 徹底的に低姿勢で恭順を誓うアハメスが呼んだ新たな宇宙獣士、その名は、宇宙の殺し屋・ジーグ。重力を操り、自由自在に宙を舞うジーグに手も足も出ないチェンジマンだが、こんな事もあろうかと、さやかが研究班と開発していた反重力ベルトを装着して、再出撃。
 さやかの頭脳がいつの間にやら「参謀」から「開発」にすり替わっているのは少々残念ではありましたが、頭脳派ポジションが博士ポジションも兼任(大体は順序が逆ですが)するのはままある事なので、目をつぶる方向で(ところで『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の霞は、邪悪×策士×科学、で割と明確にさやかの後継者であったのか)。
 工場地帯を破壊してチェンジマンを挑発するジーグに対し、金ピカのベルトを起動してバーディ!する5人だが、宙に浮かんだと思った途端に、ベルト・爆発。
 ヒロイックな飛翔シーンから、次々に腹が爆発、というなんともいえない味わいの面白シーンに(笑)
 「なにが反重力ベルトだよ?! もー!」
 「私たちを殺す気?!」
 「ごめん! ……今度こそ、必ず」
 「え!? まだやる気かよ?! 冗談じゃないぜ。御免だぜ俺は!」
 普段、上で取り澄ましている人間が失敗すると、風当たりが強い(笑)
 「馬鹿言えおまえ! こんなもん付けたんじゃな、こっちが先にお陀仏だ! 俺は俺のやり方であいつを倒す!」
 頭に血が上った黒青桃は飛竜の制止を振り切って基地を飛び出していき、通常任務の命がけ度合いを考えると、挫折を味わうエリート(白)とそれを励ます熱血隊長(赤)という、構図の都合がやや出る分断になってしまいましたが(特に、さやかと仲が良い筈の麻衣)、優秀な兵士だからこそ、味方に撃たれるのは我慢ならないのか。
 また、赤白は前夜に一度、ジーグと直接対決して撤退を余儀なくされている、というのが温度差の伏線になっているようですが、これは少し、わかりくかったかもと(感想書いていて、そういう事か? と気付きました)。
 「元気を出せさやか! このピンチを切り抜けるのは、反重力ベルトしかないなんだ!」
 飛竜と伊吹長官に励まされたさやかを中心に、電撃戦隊の研究チームはベルトの開発に全力を集中。基地を飛び出した黒青桃が獣士に翻弄される一方で、赤は改良されたベルトを装着して華麗に空へと舞い上がり、重力操作による上下動も披露。
 「成功だわ……」
 Pi!
 「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
 またも腹から火を噴き、悲鳴を上げながら吹っ飛んでいくタイミングが最高で、個人的に『快傑ズバット』第11話、「見ていろ、俺はたった今、このズバットスーツの改良に成功した。もう5分たってもバラバラになる事はない」の直後にスーツ大破で早川呆然、のシーンに匹敵した瞬間。
 思わず笑ってしまいましたが、ただ落下するのではなく、画面の奥側に吹き飛んでいくという映像に墜落の距離感が出て良かったですし、直後にさやかばかりではなく、電撃戦隊のサポート隊員や開発スタッフ一同が口々に「剣さん!」と叫びながら崖下に倒れる飛竜に駆け寄る、というのも人数を使った良い描写。
 「なんて事をしてしまったの……。私……剣さんを、殺してしまった……剣さん……!」
 ピクリとも動かない飛竜にすがりつくさやか、だが、高所落下のプロフェッショナル・剣飛竜が、この程度で死ぬわけがなかった!
 「馬鹿だな、この俺が死ぬわけないだろ!」
 たとえアースフォースに選ばれていようが死ぬ時は死ぬ、という生死の感覚を持ち込んだ上で、悲痛に嘆くさやかに向けて、目を開けた飛竜が笑顔で応えるのが大変格好良く、さやかの頭脳・挫折・再起ばかりでなく、“リーダーとしての剣飛竜”の掘り下げを進めていくのが、お見事。
 そして実験は再開され……幾ら高所落下のプロフェッショナルだからって、インターバル短いな(笑)
 「ドラゴン!」「ドラゴン!」
 「大丈夫だ!」
 上下だけでなく横移動もこなすドラゴンだが、またも落下して地面に叩きつけられるも鍛え上げた落下ダメージ耐性を見せつけ、まさか、序盤から繰り返されてきたドラゴンの落下癖が、こんな重要な伏線だったとは(たぶん違う)。
 ナレーション「チェンジドラゴンは、この時ほど、チェンジスーツを有り難く思った事は無い。苦痛に歪んだ顔、傷だらけの体を、隠してくれているのだ」
 一瞬、防御力の話かと思ってドッキリしたのですが、仮面のヒーローの生き様を端的に示す、物凄く格好いいナレーションでした!
 ナレーション「――だが、さやかには、そのゴーグルの下の顔、スーツに刻まれた体の傷が、手に取るようにわかっていた」
 そして同じ戦士であるからこそ、一切の弱音を吐かない飛竜の気持ちがわかる、と今回の曽田脚本はキレキレ。
 プロフェッショナル飛竜の奮闘に応えるべくさやかとスタッフが懸命にベルトの改良を続けている一方、黒青桃は獣士の攻撃を受けて崖を派手に転がり落ち……温度差が大変な事になっていますが、これはこれで、獣士の目を引きつける役割を果たしているので、むしろ、「完成するまで俺達が時間を稼ぐぜ!」と格好良く出て行っても良かったような気も。
 「いつまで逃げるつもり?」
 「あれだけ啖呵切って飛びだしたんだ。今更格好悪くて戻られっかよ」
 「啖呵切ったのはおまえでしょうが!」
 「何すんだこの櫛はもう」
 髪のセットにこだわる疾風、勇馬に愛用の櫛を乱暴に扱われて慌てるのですが、やはり、レンジャー七つ道具な秘密の暗殺武器なのか。
 揉めているところを獣士とアハメスに見つかり追い詰められる3人。上空からの砲火が迫るその時、両手を広げた荒ぶる魔球のポーズで横からフレームインしてきたのは、宙を舞うチェンジドラゴン!
 「その勝負、チェンジドラゴンが買ったぞ!」
 白も姿を見せて疾風らも再変身し、5人並んでチェンジマン。本日もチェンジソード(射撃)が唸りをあげてヒドラ兵を蹴散らすと、ドラゴンと獣士の一騎打ちの開始から、背後で流れるOP曲がボーカル入りになる、というのは定番ながら格好いい演出。
 「宇宙獣士ジーグが、反重力ベルトなどに負けるものか」
 4人とアハメスが見つめる中、ドラゴンとジーグは吊りを駆使した空中一騎打ちを開始し、カット割りの工夫で結構普通に空中戦していて凄い。
 銃を落とすドラゴンだが急上昇からの旋回斬りで獣士を撃墜し、トドメは5人でパワーバズーカ。巨大化した獣士はチェンジバルカンを宙に舞ってひらりひらりとかわしてみせるが、チェンジロボは、第1話から飛べるのだ!
 空中への組み付きから急降下逆落としで脳天にダメージを与え、よろめく獣士にお株を奪う空中からのバルカンを浴びせると、最後は電撃剣スーパーサンダーボルト!
 かくしてチェンジマンは、アハメスの送り込んできた難敵に辛くも打ち勝ち、薄情な3人の結果的なアシストにより好感度メーターがぐいーんと上がる飛竜とさやか。
 「剣さんの励ましに、どれだけ勇気づけられた事か」
 「いや、さやかと研究開発スタッフの、みんなのお陰さ」
 微笑むさやかの差し出した手に、なんといえばいいのか、下からではなく、上から手を出して握り返した結果、握手というよりガッツポーズかハイタッチとなり、凄く台無しです飛竜……!
 まあ凄く、飛竜だしな! 感は出ているし、戦隊的にも絶妙の回避方法であったのですが(笑)
 そこへやってきた3人&サポートメンバーに冷やかされた2人は慌てて手を離し、さやかは満更でもなさそうに照れる、と思ったより踏み込んだ反応(この先、特に何も無いかもですが、それはそれで)。
 オペレーションルームに二人きりである事を足下から映して表現したり、手を差し出すシーンをスカートの前で組んだ手のアップから入ったり、細やかな情感を付け加えるカット割りも雰囲気が出て良かったのですが、この辺りは長石監督の参戦による山田監督側の化学反応、というのもあったりしそうでしょうか。
 「いやー、さやかちゃんの頭脳ならね、必ず成功すると思ってましたよ僕は!」
 「じゃあ! ためしてくれる?」
 一通りの賑やかしの後、調子よく持ち上げてくる飛竜に、何やら物騒な銀色に輝くバックパックを手渡すさやか。……明らかに最初から用意してあったのですが、疾風の性格を把握して何もかも計画通りの仕込みだったのか、あのまま邪魔が入らなければ、「そんな剣さんを見込んで頼みがあるの」これを渡すつもりだったのか、どらに転んでも鬼だ! 鬼だよ渚さやか!
 「ナニコレ」
 「前から研究してた、超音波エンジンよ!」
 ひきつる疾風、毎度の事ながら、普段の二枚目ぶりとのギャップが実に効果的。
 「うむ、疾風翔。今度は君が実験台になりたまえ。これは長官命令だぞ」
 渚さやかの恐ろしさに震えていたのも束の間、和やかな一件落着シーンの冗談半分にしても、部下を平気で実験台呼ばわりできる感性が、さすが過ぎます伊吹長官。
 机をスライディングして逃げようとする疾風は皆に囲まれてジェットパックを背負わされ、安定の疾風オチで、つづく。
 曽田さんが結構気に入っているのか、女性メンバーアイドル枠の力なのか、一日ママ回に続いて出来の良いさやかメイン回でしたが、今回は特に、これまで正統派すぎて薄味になっていた“リーダーとしての剣飛竜”が立ち上がってきたのが大変良かったです。個人単位ではなくスタッフと共同開発する姿で電撃戦隊の色を出しつつ、墜落した飛竜に大勢が駆け寄る姿で慕われているリーダーの印象を付ける、という活用はお見事でした。
 次回――大星団ゴズマの営業ノルマは厳しい。いよいよギルーク司令、立つ。