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ギリギリまで頑張って ギリギリまで踏ん張って

ウルトラマンガイア』感想・第20話

◆第20話「滅亡の化石」◆ (監督:原田昌樹 脚本:川上英幸 特技監督:原田昌樹)
 チーム・ハーキュリーズの吉田リーダーは、恐竜やマンモスなど絶滅した古生物に関心があり、今までに類例を見ない恐竜の卵の化石が発見された、というニュースに興味津々。
 ハーキュリーズの漲る筋肉に囲まれ、本日も弾薬積み込みの手伝いに駆り出される我夢@僕を支えてくれるマネージャーはどこ、の図から同じニュースを見ながら筋トレに励んでいる藤宮のシーンに移行して、大爆笑。
 ニュースの内容に興味があるのか、玲子さんの出演番組をチェックしているだけなのか、凄く悩ましいのですがともかく、俺の! 大胸筋に! 地球のパワーが溜まってきただろう!
 「絶滅……?」
 発見された卵の化石には別の生物が寄生していた、という研究者の解説に反応する藤宮……日課の筋トレに合わせて、玲子さんの出演番組をチェックしていただけだな藤宮!
 「何億もの時の間……地球に君臨してきた生物が絶滅する。たとえそれが、自然環境の異変によるものであっても、不可解な事だと俺はいつも思うんだよ。それがいつか、人類にも訪れるんじゃないかとね」
 「吉田さん……」
 かつてアルケミースターズの古代生物学者・浅野未来が指摘したように、地球史上で繰り返される大規模絶滅とは、地球の選択による必然なのか……? 藤宮の呟きから吉田の言葉に繋げ、破滅招来体の脅威にさらされる人類の現状に思いを馳せかける我夢に炸裂する、突然のヘッドロック
 「な、何するんですか?!」
 このボディランゲージの面倒くささ、個人的には近くに居たら絶対嫌なのですが、劇中における我夢との好対照ぶり(その上で我夢を気遣っている大人の視線)は、凄く効果的で面白いので困ります(笑)
 「いやー、ガラでもねぇ台詞吐いたら、気持ち悪くなっちまってよ。お、その日のために、体を鍛えておこうか」
 そう、筋肉があれば世紀末だって乗り越えられる筈。
 「じゃあトレーニングルームに、行ってみようか!」
 「3人は脳味噌鍛えましょうよ!」
 我夢、勢いに任せて凄く酷い事言ったぞ(笑)
 しかし我夢が、こういうタイプの軽口を叩ける相手、という意味でも、ハーキュリーズは貴重な存在感。
 化石卵に興味を持った藤宮が、身分を偽装して研究所に潜入している頃、筋トレをくぐり抜けてまた一つ成長した我夢は、食堂でラーメンを前に考え込んでいた。
 (今日こそ、バナナ味のプロティンバーに挑戦してみるべきだろうか……いや、しかし)
 じゃなくて、
 (ある環境を支配してきた生物が、一斉に淘汰される。それが地球の意思……? いや、それが破滅招来体の襲来によるものだとしても、その要因となるものは……?)
 ――今の人類は、自然の頂点に立つには自己中心的すぎる。
 「頭だけで考えても、人は救えない」
 藤宮の言葉が去来したその時、梶尾に後頭部をはたかれた我夢は、怪獣はなぜ出現すると思うのか、を梶尾に問う。
 しばらく考えた梶尾は「わからん」という言葉の後に、怪獣も地球の生物ならば人類の都合で無碍に殺すのをどうかと思う事もあるが、実際にその怪獣によって涙を流す人達が居るのであり、戦闘機パイロットとしてはその人達の事だけを考えるようにしている、と軍人としての信念を述べ、感銘を受けてキラキラとした眼差しを送る我夢(笑)
 今回、絶滅した古代生物絡みという点も含めて、第8話「46億年の亡霊」(脚本:武上純希)を意識して繋げたのかと思われる節が幾つか見えるのですが、「人が滅びていい理由」と「人を救いたい意志」は別に存在していい筈だ、という事が示唆されており、第8話における浅野未来に対する我夢の言葉、
 「人類に、彼らを消してしまう権利なんてない筈よ!」
 「だけど、破滅させられる理由もない!」
 という意志が、我夢のスタンスの軸として再確認されます。
 研究所へ潜り込んだ藤宮と、ジオベースからの報告を受けた我夢は共に、「発掘された恐竜の卵に寄生している生物は仮死状態でまだ生きている」事を知り、研究所を訪れた我夢は藤宮の残した暗号メッセージを受け取る。それを解読した我夢は、駐車場で車のトランクに押し込められていた本物の助教授(藤宮が成りすました人物)を救出。この助教授がやたらとコミカルに演出されるのですが、クレジットに右田昌万さんの名前があり、カメオ出演だったりしたのでしょうか。
 続けて、壁にウルトラマン関連の記事が所狭しと貼り付けられていてだいぶ気持ち悪い藤宮のトレーニングルームに辿り着く我夢だが、そこでは既に卵から寄生生物の遺伝子を入手した藤宮が待ち受けていた。
 「こいつの遺伝子は、とても不可解なものだ。その環境により植物的にも動物的にも、その姿を変化させる要素がある。云うなれば……絶対生物」
 そうかその名称は、君のセンスだったのか藤宮。
 「こいつの名前は、ゲシェンクと名付けた。ドイツ語で、贈り物。いい名前だろ?」
 研究所では、卵の化石から流れ出す、ゲル状のゲシェンク
 「これは記念に取ってあるだけだ。俺が手を下さなくても、ゲシェンクは勝手に目覚め、勝手に行動する」
 藤宮の言葉に呼応するかのように、零れ出したゲシェンクは、二足歩行の巨大な怪獣の姿で、現代へ顕現。
 「人類の数をある程度調整したら、ゲシェンクは次に、破滅招来体を迎え撃つ。そして全てが片付き、存在理由が無くなった時、再び長い眠りへと入る」
 強いなゲシェンク
 破滅招来体を相手には、それに適したフォームにチェンジするという事なのでしょうが、そこまで信頼していいのかゲシェンク(笑)
 怪獣出現の報告を受けた我夢だが、藤宮に腹パンを受けて気を失い、目を覚ますと…………レーニングマシンに縛り付けられていた(ひぃ)
 これどう見ても、目を覚ますと不条理にデスゲームを仕掛けられていた系の状況なのですが、おまえが一分間に何回マシンを動かせるかで、助かる街の数が変わるのさ我夢ぅ……!
 今、高山我夢の、筋トレの成果が試される!!
 「梶尾さん、吉田さん、堤チーフ……見て下さい、俺の筋肉!」
 ちなみに藤宮愛用のトレーニングマシンの名称がわからなくて色々と調べたのですが、どうやらバタフライマシン(ペクトラルフライ)と言う模様。マシンの色々な写真を見る感じでは、藤宮はホームジム(1台のマシンで20ぐらいのトレーニングが出来る!的な家庭用マシン)を使用しているのかと思われ、藤宮のお陰で一つ賢くなりました。
 「ゲシェンクの復活も、破滅招来体の出現も、全て人類が呼び起こした事だ。結局人類は増えすぎたんだ。大いなる淘汰を、人類自身が求めているんだよ」
 すっかり悪役路線の藤宮は、誇大妄想的な言葉と共に我夢の変身アイテムを奪い去ると、それを机の上に置いてアジトを後にしようとする。
 「悪いな、我夢」
 ここで、立ち去る藤宮がホームジムに自動制御マシンを組み込んでいて、我夢が強制筋トレを行う事になったら個人的には大変面白かったのですが、『ガイア』的には多分ダメだったので、藤宮に人の心が残っていて良かった。
 「僕は、誰も失いたくない。奪われたくもない。……藤宮! 君には居ないのか?! 失いたくない人が、誰も」
 我夢の叫びに、ハムスター・稲森博士・玲子さん、を順々に思い出した藤宮は足を止め、目が泳ぐ。
 「君は、地球の為を強調するが、一番簡単な方法を取ろうとしているだけだ。もっと悩んで、もっと苦しめば、地球も人類も、全てを助ける方法がきっとある」
 藤宮にも藤宮の煩悶があった末に、自分を地球の意思の遂行者と割り切る事で、ある意味では諦めの境地に至っているわけですが、我夢がそんな藤宮を全否定するのではなく、藤宮にも出来るなら別の方法を取りたい意志がある筈だ、と信じている――正義とか良心というよりも、藤宮の中にまだきっと残っているであろうギリギリまで踏ん張る「人間」である事そのものに呼びかけている――というのが、悩み続ける我夢の言葉としてもふさわしく、大変良かったです。
 正義や正解に簡単に辿り着けないかもしれないが、迷い、足掻き、ギリギリまで藻掻きながらより良い答を見つけだそうとする事に「人間」の意味があるのではないか、というのは好みのテーゼですし、玲子さんの「人の存在理由って誰が決めるのよ!」(第13話/脚本:長谷川圭一)・「人間は死を待つためになんかあるんじゃない。今なにをしようか、今どうしようかって精一杯生きていく。人間はその為にあるんじゃない」(第15話/脚本:右田昌万)といった藤宮への言葉とも接続して、川上さんがこれまでの要素を色々と拾い集める良い仕事。
 結局は無言のまま立ち去っていく藤宮の、ちょっと悲しげで寂しげな表情も素敵でした。
 一方、怪獣に立ち向かうチーム・ライトニングは、間の抜けた効果音とは裏腹に高い誘導性能と破壊力を兼ね備えたゲシェンクボールに追い詰められるが、堤チーフが出撃させたハーキュリーズが、地上からこれを撃墜。
 「吉田リーダー、感謝」
 「そういう台詞は戦いに勝ってから言え」
 東京へ向けて進撃する怪獣を食い止める為、XIGは空と地の両面から迎撃を仕掛け、それを見つめる藤宮。
 「巨大な恐竜には寄生する事で滅ぼし、人類に対しては、巨大怪獣になって一掃か」
 そして我夢は、藤宮がわざとらしく机の上に置き捨てていったエスプレンダーを見つめながら、筋肉さえ、筋肉さえあればこんな戒め引きちぎってしまえるのに、と歯がみしていた。
 「くそ! 守りたいんだ! 僕は、人類を、そして地球を、守りたいんだ! ……僕は守りたい! いや、守ってみせる!」
 その時、エスプレンダーが眩く紅い光を放ち、それに飲み込まれた我夢は、ガイアへと変身。……結果的には筋肉で引きちぎったような気もしますが、状況としては、プール飛び込みによるアグル復活と重ねた意図でしょうか。
 藤宮はゲシェンクに立ち向かうガイアに冷笑を浴びせ、尻尾攻撃で叩き伏せられるその姿に、呆れたような溜息を落とす。
 「無駄だ……我夢。我夢、人類は淘汰されるべきなんだ。これは避けられない事なんだ」
 ゲシェンクボールで吹き飛ぶ高層ビルを背景に嘯く姿が大変マッドな感じになってきた藤宮だが、降り注ぐ瓦礫の下敷きになりそうだった少女を、咄嗟にダイビングで助けてしまう。
 自分の行為に愕然としなら、その手を見つめる藤宮。
 「俺は……」
 一方、カラータイマーを点滅させながらもガイアが必死に粘る内に、怪獣のボール攻撃を阻止すべく、後方に回り込むハーキュリーズとライトニング。
 「おまえの敵はウルトラマンだけじゃないぜ!」「食らえー!」
 「オラオラどっち向いてんだぁ?!」「チーム・ハーキュリーズをなめんなよ!」
 「あの角を狙え!」「俺に任せろ!」
 両者の連携は遂にゲシェンクの角を破壊し、これを彩るのがOPインスト、というのが大変熱い展開。
 ウルトラマンだけでは無理なのかもしれない……だが、多くの人が手を繋ぐ事で、地球も人類も、全てを助ける方法にきっと辿り着ける筈、という表現としても非常に良かったです。
 反撃のラッシュを叩き込んだガイアは一気に自分のペースに持ち込むと、首投げから必殺のうにょんバスターで大勝利。怪獣はド派手に吹き飛び、エリアルベースではコマンダー(突然一人だけ着替えるが、誰も何も言及せず)が満足そうに頷くのであった。
 「心だ……心が……ガイアの光に、通じた。……藤宮。……君にも、心がある筈だ。心が……」
 精も根も尽き果てた我夢は気を失い、カプセルの中でゲシェンク遺伝子が消滅するのを見つめた藤宮は、次のトレーニングルームへと向け、歩み去って行く……果たしてその胸に、我夢の言葉は届いたのか否か。ホームジムの大量注文を追っていくと、藤宮のアジトに辿り着けるのではないか。赤と青の地球の意思は、人類に何をもたらそうとしているのか、でつづく。
 いやぁ、良かった。
 殴り合いを経て再び面と向き合う我夢と藤宮の意志の衝突、そこで語られる我夢の言葉、藤宮の中に残る割り切れないものの示唆、そしてガイアとXIGの連携に物語的意味をきっちり乗せたバトル、と大満足の一編でした。
 次回――そういえばこれまでなかった海中戦。