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銀河を貫く伝説のアレ(『シャンゼリオン』的語法)

電撃戦隊チェンジマン』感想・第16話

◆第16話「翼を持った少女!」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 公園のベンチで一輪の花を手に寝っ転がっていた疾風、警察を呼ばれ……じゃなかった、ボールをぶつけられて安眠を妨げられるが、ボールをぶつけてしまった少女・さくら(今回は20前後に見えます、色々大丈夫です)に一目惚れ。
 不思議な事に、さくらが踊ると比喩抜きで満開に花が開き、木の陰からそれに見とれる疾風をからかいにやってくる飛竜たち4人だが、そこに巨大な天使の彫像メモリードール、そしてそれを追うゴズマがやってくる。
 さくらの正体は、かつて星王バズーが宇宙征服の手始めに侵略破壊した思い出の星メルルから、惑星崩壊の前に宇宙の様々な星へ脱出させられた子孫の一人だったのだ!
 「やめて! 争いはやめるのよ。お願い」
 メモリードールから放たれた光を浴びたさくらが呼びかけると、凶暴なヒドラ兵が惚けたように動きを止めて武器を取り落とし……脳機能に影響を与えているようで怖いよ!
 「ヒドラ兵だけじゃない。俺達の戦う気持ちも消えていくような気がする」
 それは平和の名の下に、他の生物を家畜にする光線なのでは。
 飛び出してきたブーバさえも、さくらのスマイルに脳をやられかけるが、聴覚と視覚を閉ざしても行動できる単眼の宇宙獣士がメルル電波を無効化して、さくらを捕獲。怒りのグリフォンアタックでさくらを救出したチェンジマンは一時撤退し、ゴズマの面々は星王バズーのお叱りビームを受ける事に。
 「愚か者! チェンジマンにメルル星人を奪われるとは、怒っても怒り足りぬ!」
 興奮しすぎて、なんだかちょっと面白い台詞回しになっていましました(笑)
 病室で目を覚ましたさくらを疾風がドギマギしながら警護している頃、飛竜達はメルル星の詳細と、星王バズーが侵略活動の手始めにその星を滅ぼした事を長官から教えられ、伊吹長官はどうして、そんな宇宙的知識を持っているのか。
 「だがメルル星人は、密かに子孫を脱出させたという、宇宙伝説があるのだ」
 独自の研究でした!
 ……ええともしかして、後に『激走戦隊カーレンジャー』第23話「王女様にオーバーヒート!」(監督:坂本太郎 脚本:荒川稔久)において、リッチハイカー教授が情報源として口にしていた「信頼ある伝説筋」ってこれ(伊吹学説)の事だったの?!
 『カーレン』を見ていた時は、浦沢ワールドらしい言霊をサブライター回でひねり出してきたな……と思って見ていたのですが、まさか『チェンジマン』と繋がっていたとは(笑)
 「あなたには使命があります。宇宙に散っているメルル星人の子孫と共に、宇宙に平和を取り戻す使命が」
 一方、病室を抜け出したさくらがメモリードールの光を浴びると、背中から翼が!
 メルル星人として完全に覚醒したさくらをブーバの魔手から守る疾風だが、男衆がブーバを追っている間に、壁を破って出現した単眼獣士により、さくらがさらわれてしまう。
 体内にさくらを取り込んだ獣士、そして格好良く空間を割って短距離ワープを用いてきたブーバとの戦いとなり、この当時に割と見られる、敵味方が入り乱れながら一斉に動き出すのを引いたカメラでまとめて画面に収め、画面の奥行きを付けながらその内の一部にスポットを合わせていく(場合によって長回しで連続して個々の戦いを見せていく)、という戦闘シーンの映像手法が凄く好き。
 愛のパワーで奮戦するグリフォンがマウントを取って獣士に連続パンチを浴びせるが、獣士を倒すと中のさくらも死んでしまう事をブーバに告げられ、手出しの出来ないチェンジマンは一転ピンチに。だがその時、獣士が苦しみだすと、さくら、自力で脱出。直後に笑顔を浮かべてその場で浮上し、なんかホント、怖いよ……!
 「戦いはやめるのです。邪悪な心を捨て、愛を信じ、幸せを願うのです」
 満面の笑みで双方に向かって宣言し、ハート型に組んだ手の中から家畜化もといラブ&ピース光線が放たれると、ブーバ以下のゴズマ軍団が揃って戦意喪失。
 それはバズーが真っ先に滅ぼそうとする筈だ、という説得力は非常にあるのですが、これはこれでもはや生物兵器の領域に達しており、あまりにも強制力の強い戦意喪失ビームの威力に、ディストピア感しかありません。
 「みんな、仲良くしましょう。愛を信じ、幸せを願うのです」
 両手を広げて宙を舞うさくら天使の姿は、メルヘンとか神秘的とか通り越して若干ホラー風味に見えてきて、この宇宙人、愛と平和の為なら「個性」なんて不要とか考えていそう……!
 アンチゴズマは、それはそれで人類の敵なのでは、という気がしてならないのですが、異星種族の精神性と藤井先生のロマン趣味が化学反応を起こした結果、全く別の宇宙獣士が誕生してしまったような。
 藤井脚本における、異星種族とチェンジマンの関わりを中心としたアプローチそのものは、今作の世界観を巧く固め広げているのですが。
 世界が愛と平和に覆われるかと思われたその時……にわかに空がかき曇ると、轟く雷鳴が直撃してさくらは墜落(グリフォン、お姫様キャッチ)。
 「戦え……! 戦うのだーー!!」
 姿を見せぬギルークの声が響き渡ると、俺達は牙を抜かれた豚ではない! と銀河を駆けるサラリーマン根性を取り戻したブーバ達は正気を取り戻す。
 「おのれ! 何者だ?!」
 「大星団ゴズマ、司令官ギルーク!」
 ここで、声のみながら敵勢力の指揮官を初めて認識すると共に、それを戦いを駆り立てる悪意の象徴として示し、今作はこういったチェックポイントの抑え方に、実にそつがありません。
 「おのれぇぇ! 大星団ゴズマめー!!」
 怒りの黒が敵陣に向かって突っ込んでいく姿を、敢えて少し離れたカメラで後ろから撮ったカットが、多対一をものともしない勢いが出ていて、格好いい。
 腹から絞り出すような「チェンジソード!」の叫びで切り込んだ黒だが獣士のビームを受け、倒れたところにブーバの剣が振り下ろされるが、それを両サイドから赤と青が剣をクロスさせて受け止めるのも格好良く、ここ数話の長石監督回でかなりコミカル描写の増えたブーバですが、戦闘面での脅威を失っていないのは良いところ。
 黒のズーカが獣士に直撃したのを見て形勢不利とブーバは撤退し、チェンジマンはパワーバズーカで獣士を撃破すると、巨大戦はさくっとサンダーボルト。
 そしてさくらは……死んだ?
 疾風が目を開かないさくらを花畑に横たえると、飛来したメモリードールがさくらの体を光に包み、宙に浮かび上がったさくらは目を開き……生きてた。
 天使さくらは、ゴズマの支配に苦しめられている人々を救う為に、同じメルル星人を探しながら宇宙を巡る旅に出ると告げると、地球はチェンジマンが居るから大丈夫でしょ、と飛び去っていき……どっちに転んでも悲恋、というのは実に藤井脚本なのですが、疾風の想いがあまりにもさくらに伝わっていない(そもそもさくらに、人間と同じ恋愛感情が無さそう)為、涙を流してさくらを見送る疾風が最初から最後まで独り相撲すぎて、もう少し何かあっても良かったような。
 遠距離からミサイルぶちこめばいい、など弱点自体はハッキリしているものの、とにかくメルル星人が生物兵器として危険すぎて野に放っていいのか悩ましい気持ちでラストを眺めていたのですが、一般兵や獣士はともかく、ブーバぐらいはもう少し抵抗できても良かったかなと。
 次回――女王アハメス登場!
 という重要な局面にも関わらず、何故、サブタイトルに「長崎」(笑)
 まあ伝説のメタ予告ナレーション「九州ロケシリーズ、第一弾」が再び飛び出さなくて良かったですが、新展開の時期と遠征ロケのタイミングが重なったようで、阿蘇大爆発作戦、どごーーーん!」(違う)