東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

また又・メザードが斬る!

ウルトラマンガイア』感想・第19話

◆第19話「迷宮のリリア」◆ (監督:原田昌樹 脚本:長谷川圭一 特技監督:原田昌樹)
 「やっぱり、生きる世界が違うのね……」
 故人曰く、下りた梯子は登らなくてはならない。
 藤宮博也によるエリアルベースへのテロ攻撃において、梯子の往復で散々な目に遭った敦子は、この筋肉上位世界で自分はやっていけるのか……2年任期のエリアルベース配属を更新するかどうかを改めて悩んでいた。
 折しもエリアルベース上空には金色の粒子が漂っており、敦子の迷いに付け込むかのようにブリッジへ伸ばされる魔手。電子機器を通してサイコメザードの干渉を受けた敦子は、不意に少女時代の記憶に支配されると、夢のような不思議な世界の遊園地で、非現実めいた黒衣の少女に話しかけられる……。
 悩める敦子の回想において、「お疲れ様です!」と挨拶しても無視される、本当にあった深い溝は梶尾さんが単純に感じ悪いだけなのですが、梶尾さんは、基本的に女嫌い(苦手)設定なんでしょーか(笑)
 序盤は我夢の対人関係の問題点が描かれていた今作、我夢が落ち着いてみると梶尾さんの、「俺は俺のフィールドで認めた奴以外は道ばたの石として扱う」スタイルが大変悪目立ちする事になってきているのですが、相対的に、間に入って調整役のできる堤チーフが段々と人格者に見えてくる筋肉マジック!
 閉鎖空間の人間関係は重く、それを円滑にする為に求められた共通の理想――それが、それこそがマッスル。
 上層部では、敦子の筋力不足、もとい、更新手続き保留を憂慮中。
 「彼女は有能なオペレーターです。エリアルベースには必要な人材だと自分は考えますが」
 「私もそう思う、だが……我々が今直面している状況は、XIG結成当時の予想を遙かに上回ってしまった」
 「はい。確かに楽観的観測は許されません」
 「……こういう時期だからこそ、個人の意志は尊重すべきだ」
 敦子の客観的評価とXIGの置かれた現況を自然な会話の中に収め、前回エリアルベースが直接危機に陥る、という流れとも綺麗に繋がり、良いやり取り。
 『ガイア』は平均して要所要所の大人の会話の配置が上手く、わざとらしい説明シーンになっている事が少ないのは長所の一つ(「説明され」シーンになってしまっている事は、ありますが)。
 「私……いつ自分の部屋に?」
 ぼんやりとしながら目を覚ました敦子の枕元ではメリーゴーラウンドを模したオルゴールが鳴り響き、PCモニターに並ぶLiliaの文字。部屋に飾られた写真には、少女時代の敦子と、ゴシックロリータ風ファッショに身を包んだ夢の中に出てきた少女が並んで座っており……再び夢うつつの世界に迷い込んだ敦子のオペレーションミスにより、ライトニングの2機が接触・墜落してしまう。
 敦子を襲うなんらかの異常としてメリーゴーラウンドを中心とした幻想的な遊園地の情景が繰り返し挿入され、vs藤宮編が一つのピークを迎えた直後の閑話休題編とはいえ、非常に大胆なメリハリの付け方。原田監督は丁度、本格的な藤宮編の直前となる狼男回もメルヘン風味の演出で異彩を放ちましたが、一風変わったトーンの交え方が、『ガイア』全体の中で良いアクセントになってきました。この辺り、脚本サイドから原田監督への信頼感、というのも見えるところ。
 5-6話の時点では、作品の現在地と演出が噛み合っていない気がして引っかかりが強かったのですが、11-12話そして今回と、物語の流れの中で存在感が良い方向に転がってきて、原田監督の演出がかなり気に入って参りました。
 敦子は地上で謹慎処分となり、金色の粒子をばらまいて消えたワームホールを追跡するXIGでは、本編開始から9分経ってようやく喋った我夢が、ファイターに付着していた粒子の特性を分析。……今回このまま、我夢が喋らずに通すのではないか、とドキドキしていました!(笑)
 メザード粒子には、電子機器の攪乱のみならず、大気中の電磁波と反応して特殊な電気エネルギーを放出、人間の記憶に関わる神経組織を刺激して、ある種の幻覚作用を誘発する作用があり、敦子の様子がおかしかった原因に気付いたジョジーと我夢は、敦子の部屋に残された、Liliaの文字を確認。ワームホールの追跡を続行すると共に、連絡のつかない敦子を心配する。
 「あっこの保護は……あの人に頼んでみよう」
 「あの人って?!」
 画面切り替わると、地上をXIGカーで走る梶尾@部下2人が負傷療養中で余剰人員。むすっとした顔でハンドルを握る梶尾は、空での出来事を思い返す。
 「問題は、彼女の精神状態です。今は一番信頼できるにんげ」
 「だからそれがなぜ俺なのかを聞いてるんだ!」
 我夢の素で朴訥な感じや、藤宮の突き放した一人語りなど、今作割と、役者さんの演技(力)にキャラを寄せていく傾向が見えますが、梶尾さんは時々、突っ慳貪な物言いが絶妙にはまる時があって面白い(笑)
 「……僕は梶尾さんを尊敬してます。でも、嫌いなとこもある。それは、人との間に距離を取り過ぎる事です」
 我夢の上げて下げて下げる直球3連投に押し負けた梶尾@部下2人が負傷療養中で余剰人員はかくして地上に降りる事となり、
 「――おまえに言われたくないな」
 と、ハンドルを握りながら呟くのが素晴らしかったです(笑)
 ここまで、〔ガイア誕生 → 環境テロリスト登場 → 『ガイア』とはこういう作品です → vs藤宮〕という流れだった今作、キャラクターとしての怪獣の魅力が溢れる一方、個々のXIGメンバーに関しては浅く広くという扱いだったのですが、閑話休題エピソードをキャラ回として敦子をフィーチャーするばかりでなく、そこに梶尾さんの掘り下げも加えてくれたのは、大変嬉しい展開。
 まずは敦子の自宅を訪れた梶尾だが、チャイムを鳴らしても不在で舌打ちしていた所に帰宅する敦子姉。
 「あのー……」
 「あー……すいません、いや、別にあの、え、はい、どうぞ」
 慌ててドアの前から退き、何故かそのまま住人の斜め後ろに立っているという、絵に描いたような不審者(笑)
 この人やはり、某海堂さんばりに女子への免疫が無いだけの気がしてきたのですが、制服着てきて良かったな!
 「え、自分は、あ、うん、僕は、えー……敦子さんと、XIGで、同僚の……」
 「もしかして……梶尾さん?」
 「え?」
 職場にクールで素敵な先輩が居る、と敦子が姉に話していた事が判明し、梶尾、若干動揺。
 いや待て梶尾、落ち着くんだ梶尾。
 米田さんの事かもしれないぞ!
 一方、エリアルベースでは我夢がクラゲの潜伏場所を絞る事に成功し、推定地域の電波管制を行う事でワームホールをあぶり出す作戦がスタート。梶尾は敦子姉から、少女時代の敦子が病気がちで友達が居なかった過去を聞かされ、「遊園地に行けば、リリアに会えるかもしれない」という言葉をヒントに向かった遊園地で、何も無い空間を見つめながら楽しそうに笑う敦子を発見する、と二つの状況が同時進行。
 「私ね、これからリリアのおうちへ遊びに行くの」
 「リリアなんて居ないわ!」
 「何言ってるよお姉ちゃん。リリアなら、ここに居るじゃない」
 幻想の中で少女時代に精神退行した敦子は黄金の巨大リリアを召喚し、ワームホールから出現して今日も炎上墜落したクラゲは、骨怪獣へとフォームチェンジ。基本デザインは前回登場時(携帯電話回)と同じながら、胴体に彫刻風の気持ち悪い顔が付き、この分だと、痛快・サイコメザードぐらいまで盛られていくのでしょうか。
 チームファルコンの苦戦に我夢はガイアに変身し、遊園地のイルミネーションを手前に戦う夜戦が、映像も美しくて格好いい。
 「リリアだけが、私の事を理解してくれるわ」
 「違う! おまえと俺は同じ世界に住んでる! その世界を守る為、一緒に戦ってきたんじゃないのか! そうじゃないのか?!」
 梶尾はサイコバリアに弾かれながらも懸命に敦子へと手を伸ばし、姉の指摘により、リリアとは少女時代になくしてしまった人形である事を思い出す敦子。梶尾さんが《説得》ロールで大変いい目を出したにも関わらす、やたらと台詞の多いお姉さんが最後の一押しを横からかっさらってしまうのですが、梶尾と敦子にこれといった関係性の積み重ねが無いので、ここで梶尾の言行だけで解放されてしまうのは、説得力に欠けるという判断だったでしょうか。実際の出来上がりでだいぶ印象が変わりそうで、IFとしてはどちらが良かったか悩ましいところ。
 敦子が正気に戻って気絶すると黄金のリリアはかき消え、その影響か動きが止まったメザードの隙を突いて懐に飛び込んだガイアが、会心の左上段蹴り、から遠心力を利用して右回し蹴りを胴体に叩き込む(潰れる顔の映像がえぐい)というのが、非常にスピード感があって格好いい連続攻撃でした。
 ガイアは弱ったメザードをがに股ショットで焼却し、この発射時のエフェクトがまた格好良く、映像の美しさも含めてアクション的にも大満足の見応え。
 かくしてガイアは空へ、敦子も無事に救出され、EDパートのエリアルベース。
 「梶尾さん、ありがとうございました」
 「空っていいよな」
 「え?」
 敦子に背を向けて窓の外を見つめたまま呟き、そういうの格好いいと思っているの梶尾ーーー?!
 掘り下げが進んだ途端に、藤宮に近づいたぞ梶尾リーダー(笑)
 我夢よりもむしろ、梶尾リーダーが藤宮と友達になれそうな気がしてきましたが、或いは我夢は、こういうタイプの人になつきがちな傾向があるのかもしれない(光量子コンピューターの先行研究をしていた人、という事なのでしょうが、初対面の時は藤宮に対して憧れの人めいたオーラを出していましたし)。
 「俺は飛行機乗りだから、いつも早く飛ぶ事ばかりを考えてきたんだ。……でもな、早く飛んでばかりだと、近くにある大切なものが見えない事もある」
 「梶尾さん」
 「……これからもよろしくな」
 「……こちらこそ!」
 照れくさげに咳払いをしつつも二人は何だかいい雰囲気を醸しだし………………それを廊下から恨みがましい視線で見つめる、負傷したライトニングメンバーの二人(笑)
 「はぁ~……梶尾さん」
 梶尾×敦子は完全に、サッカー部の唯我独尊エースストライカー×女子マネージャー、の関係に落ち着くのですが、前回ドキドキしていた科学部の天才転校生(高山我夢)の存在が、ちょっと可哀想(笑)
 「米田さんも結構、いい人だぞ」
 そして、怪我から帰ってきたら部室の雰囲気がピンクがかっていて、野球部(チームファルコン)への転部を検討する、冴えないディフェンダーの二人であった。
 「……がんばろうな」
 本編から墜落シーンと米田さんのシーンが挿入され、とぼとぼ去って行くライトニング02と03、というこれまた狼男回に続く遊び心たっぷりなED映像でオチ。
 ガイアvsアグルが物語の中心になっていく中で、一旦、我夢×藤宮の関係から離れ、一息入れるエピソードをXIG内部の人間関係を掘り下げるキャラ回に利用。演出も含めた大胆なトーンの変化で全体の流れにもメリハリがつき、大変いいタイミングでした。
 事務的な役割に終始しがちなオペレーターコンビへのスポットライトも、うまいこと前回からの綺麗な流れになりましたし、我夢×敦子や我夢×梶尾だけでなく、敦子×梶尾という線を引く事で、立体的になったのも非常に良し。予告から敦子フィーチャー回だとばかり思っていたので、梶尾の方まで掘り下げてくれたのは望外で、充実の内容でした。
 難を言えば、ただでさえ容姿やポジションが被り気味の敦子と玲子が、過去設定まで被り気味になってしまった事ですが、ホントこの二人はどうしてこういうキャラ付けなのか……もしかして敦子は、玲子の反物質なのか?!
 そして、どんどん無敵キャラと化していくジョジー(頭の回転が速く・行動力があり・工学系に明るく・最新の研究もチェックしていて・発想の転換力を持ち・周囲に目配りと気配りが出来て・少なくともバイリンガル……という、現時点で最前線部隊のエリート隊員を最も体現しているのがジョジーなのですが、裏を返せば敦子もこのぐらいのスペックの持ち主なのか)。
 敦子の心のひだをめくる幻想的な映像に尺を割きつつ怪獣バトルの方もおろそかにならず、脚本と演出のバランス、濃密な内容、という二点においては、ここまでの『ガイア』でも上位に入る印象。またまたメザードなので基本情報の説明は省ける、というテクニックは用いていますが、人間の心理的陥穽を突くといういやらしさを存分に振るった上でクライマックスの二局展開も盛り上げ、特に戦闘シーンの映像美は大変秀逸でした。
 藤宮のエリアルベースへの直接攻撃、それぞれの技能を活かすXIG各員の奮戦、ガイアvsアグルの直接対決による力の入った等身大バトル、という盛り上がる要素満載できっちり盛り上げてきた前回とはガラリと雰囲気を変えながらも非常に見応えのある面白さで、『ガイア』の懐の深さを感じた一本。
 次回――遂に藤宮とハーキュリーズが直接対決?!