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だいたい青い

電撃戦隊チェンジマン』感想・第11-12話

◆第11話「SOS ココとキキ」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 ある夜、巨大な隕石が地球に落下。 新たな開業資金を求めて その調査に向かった勇馬だが、隕石の正体はポロ星人の宇宙船であった。ゴズマの尖兵、惑星ゴーストの宇宙獣士により攻撃を受けるポロ星を救う為、決死の覚悟で包囲網を突破してきたポロ星人ココの目的は、地球のダイヤモンドを手に入れる事。だが対ゴースト兵器にはダイヤモンドともう一つ、地球に向かう途中で別れ別れになってしまったココの仲間、キキの存在が不可欠なのであった……。
 君は、出会い頭にビームを撃ってくる宇宙人を信用する事が出来るか? という、異星人とのファーストコンタクトにおける対応の難しさを問われるエピソード。
 冒頭のバズー様の言行により、視聴者に対してはポロ星人が被害者側である事が提示されてはいるのですが、とりあえずビーム→スペース翻訳機により交渉を試みる、という順序のポロ星人の言い分を鵜呑みにしていいのかどうか少し悩みます(笑) やたら声が可愛らしいのも、翻訳機の効果による「相手を油断させて信用を得やすい声音」ではないのか!
 それとも勇馬、服が青いので戦闘員に誤認されたのか。
 バズーの命令によりポロ星人を追うブーバの軍団が来襲し、鎌の修理が終わっていないのか、巨大なスパナの様な剣を振り回すブーバはペガサスを叩き伏せ、良かった、ドラゴンとのライバル関係がいきなり剥奪されなくて本当に良かった。
 遠征軍に加わった宇宙獣士ゴーストの透明化攻撃に苦戦するチェンジマンは、当面の利益の一致と敵の敵はたぶん味方理論によりココを庇護するが、もう一人のポロ星人キキは孤独に都会を彷徨っており……藤井脚本の傾向からすると、異星を彷徨う二人ぼっちの宇宙人(カップル)の心情、の方に主眼があったのではと思われるのですが、勇馬とココの星を超えた友情が強調されるわけでなく、ココとキキの関係性が軸となって劇的な展開があるわけでもなく、当時の戦隊の尺×藤井脚本の相性の悪さが、今回も出てしまう事に。
 前者に関しては、飛竜×タロウ回と似通うのを避けた可能性はありますが、それならそれで、全然別のアイデアを持ってきて欲しかったなと思うところ。
 ……まあ尺があったらあったで、チェンジマンの友誼に応える為に命がけでゴーストの透明化を打ち破ったココが死亡し、ココの想いとダイヤモンドを胸に、キキはポロ星へと帰るのであった……という悲恋物一直線になった気がしないでもないので、二人が無事に母星へ戻れたのは、尺が短かったお陰かもしれません(笑)
 これといって勇馬ならでは、という要素も無かったりで、あまり面白みはないエピソードでしたが
 〔大星団ゴズマ→支配下にあるゴースト星→宇宙獣士ゴーストの攻撃→ポロ星→伝説の素材を求めて地球へ→母なる星を守る戦士としてチェンジマンスクラム
 という大宇宙規模の連動が描かれているのは、『チェンジマン』の世界観を示していて良かったです。
 あと、浄水施設?の戦闘シーンにおいて、通路の上を走るようにカメラを移動させながら、チェンジマンvs戦闘員のバトルを、カット割らずに次々と収めていく、という長回しは格好良い映像でした。

◆第12話「ママはマーメイド」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 「私は幸せな親子が大嫌いなのさ! だから、子供達から母親を奪ってやる!」
 シーマの送り込んだ宇宙獣士バンバの吹き矢を浴び、母親達が次々と、母の心を失って子供を襲う凶悪なヒトバンバへと姿を変えられてしまう。
 シーマの台詞はそれだけ取り出すと悪の組織の類型的なものなのですが、以前に乳母怪人が登場している事で、シーマの背景をにじませているのが、上手い。
 「シーマは、アマンガ星の姫となる為に、幼くして、母親から切り離され、愛よりも憎しみを、平和よりも戦う事を、教え込まれて、育ちました」
 「不幸せな生い立ちやなぁ」
 ギルークはバズーにシーマの生い立ちと作戦の主旨をプレゼンしており、ゴズマ内部の感覚においても幸せとはいえない幼年期である事が示されると同時に、シーマの出自も明かされ、序盤からゴズマ側も個人の内面に関わる情報をドンドンと積み重ねてくるのが、今作の面白いところ。
 シーマとバンバは次々とヒトバンバを増殖させ、突然、母親が黒い毛だらけの化け物に変わってしまう、というのはストレートに怖い表現。
 ナレーション「街は途方に暮れ、母を求めて嘆き悲しむ子供達で溢れた」
 先日の自動車回に続いてゴズマの作戦が市民生活に大きな打撃を与え、電撃戦隊が「税金泥棒」として罵声を浴びる可能性が増していく中、パトロール中のさやかは公園で嘆き悲しむ子供達を元気づけて回る明るい姉弟を目にする。
 「この街のお母さん達は、みんな居なくなったっていうのに……」
 首を傾げるさやかだが、同じ光景を目にしたシーマは、更なる怒りを瞳に宿らせていた。
 「何故泣かない?! あの子達は」
 ここでシーマが亡き乳母怪人を思い出す、というのがまた上手く、怒れるシーマを目撃したさやかは、シーマに目を付けられたかもしれない、と姉弟をガードする事に。恒例の後楽園ゆうえんちで姉弟接触したさやかは、二人の母親が既に亡い事を知るが、その背後に迫るシーマは大人しめコーデのさやかを姉弟の母親と勘違いし……もしかして、電撃戦隊側(疾風)もゴズマ側も、互いに異星人なので細かい顔の違いとか区別がついていないのか?!
 むしろチェンジマン変身後の方が、色の違いでゴズマ的に認識しやすくなっている疑惑(笑)
 姉弟と親しくなったさやかは、男の子から求められて「一日ママ」をやる事になり、しばらく、正統派アイドルルックスのさやかさんフィーチャー。予告からも、今回はシンプルなさやか推し回なのだろうなぁと油断していたのですが……。
 「お前達の母を奪ってやる」
 さやか&姉弟の前に逆恨みに燃えるシーマ(今回も尾行中は地球人コスプレ披露)が立ちはだかり、背後に立った怪人から毒針が放たれると、それをハンドバッグでガードしたさやかママは、くるっと回って早変わり。
 「シーマ、まんまと罠に引っかかったわね」
 …………え、あの、さやかさん? 得意満面のところ大変申し訳ないのですが、その言い方だと、シーマを罠にはめる為に姉弟を利用した事になりませんか。
 聞かされた背後の姉弟も、開いた口が塞がらずに愕然と固まっているのですが。
 珍しくロングスカートのファッションの時点で、勘違いさせる気満々の策略だったの?!
 と、シーマばかりか視聴者も凍っている不意を突き、後背の高所に陣取った仲間4人が銃撃を仕掛けるのが凄くチェンジマン。両陣営入り乱れての戦いとなり、その場を走り去る姉弟の後を慌てて追いかけるさやか、だが……振り向いた少年と少女は、率直な思いを叩きつける。
 「嘘つき!」
 「酷いわ! あんな小さい子に嘘つくなんて。利用してただけじゃないの! いくら悪い奴を捕まえる為だからって」
 おお、切り込んだ!
 弟の台詞に合わせてBGMを消すのも、面と向かって糾弾されたさやかが(後ろ暗いので)顔を逸らすのも絶妙にはまり――つまり誤解ではなく本当に得意満面の罠だった――というのを正面から突きつけてくる痛烈な展開。
 疾風を囮にする・飛竜の退路を断って野球ボールを握らせる、と身内を割とえげつなく利用してきたこれまでのエピソードも効いて、地球を守る使命に青春を捧げた電撃隊員はまだともかく、勝利を掴む作戦の為なら他者の感情を二の次にしてきたさやかがその横っ面をはたかれる、というヒーローの暗黒面の取り上げと批判に、説得力を持たせた展開は実にお見事。
 そして改めて、民間人の女子中学生を囮にするの、いけない(笑)
 さやかを拒絶して走り去った少年がシーマに捕まったところで主題歌アレンジが流れ出し、少年を抱えたまま滑走していくシーマを追おうとするさやかは、少女に真っ正面から約束する。
 「信じて! 一日だけママになってあげるといった気持ちは、本当よ! トシオくんは、必ず助けてみせるわ」
 ここから追跡シーンまで、BGMの使い方も非常に盛り上がって秀逸なのですが、
 シーマを罠にはめて得意顔 → 姉弟からの拒絶 → ヒーロー株大暴落 → ヒーローとしての再起
 という、この1分あまりに盛り込まれた、さやかを中心とした四者四様(さやか・姉弟・シーマ)の感情のメリハリが実に鮮やかで、これが“劇的”だ!という素晴らしい構成。
 シーマを追うさやかだったが、戦闘員と獣士に囲まれ、触手攻撃により大ピンチ。
 「子供を助けたいあまり、焦ったな、渚さやか」
 ここでも、単独行動で突出してしまったさやかの「焦り」が、常の冷静さを失っている事を示唆して、キャラの肉付けに繋がって上手い。
 「私は、一日だけ、ママとなる約束をしたわ」
 「うん!」
 「我が子を見捨てる、親は居ないわ。母親というものは、どんな事をしててでも、我が子を、助けようとするものなのよ」
 「黙れ黙れ!」
 追い詰められても目の光を失わないさやかの姿に激昂するシーマだが、そこに4人が駆けつけ、獣士の触手を破壊。さやかはチェンジブレスからブレスレーザーを撃ち出してシーマを退けると少年を救出し、ここで機転を発揮するのではなく、語りモードから救援の力技、というのは少々残念でしたが、愛の奇跡よりは銃弾のリアリティなのが電撃戦隊ではありましょうか(笑)
 「シーマ! あなたは母の愛や幸せとは、ほど遠い生き方をしたようね! 可哀想な人だけど、許さないわ!」
 さやかはチェンジマーメイドし、今作、悪の側にも重ねて、環境や侵略の犠牲者という側面が描かれているのは面白い特徴ですが、これらの要素が上手く集約されていくのを期待です。
 びしっと啖呵を切ったところで、5人揃ってフル名乗りから主題歌バックの戦闘に雪崩れ込み、曽田博久×山田稔、抜群のコンビネーション。
 忘れかけていた黒もじゃも乱入させてしっかり拾い、マーメイドの連続個人必殺技で獣士にダメージを与えると、元に戻る母親達。満を持してのパワーバズーカで獣士を撃破後、巨大戦もアースコンバージョンを入れた上でそれなりの尺を使い、ドラマ性と80年代戦隊の様式美がほぼ完璧レベルで融合した1本。
 非常にメリハリの利いた劇的な構成の中に、戦隊としての要点を不足なく盛り込み、正統派ヒロイン回としてさやか推しのみならず仇役のシーマもきっちり掘り下げてみせるという充実の内容で、総合的な意味で、傑作でした。
 メインライター4年目、戦隊作劇を手の内に入れた曽田脚本の真髄を、まざまざと見せつけられた感(それ故にか重宝されすぎて、精魂涸れ果ててしまう80年代後半になってしまうわけではありますが……)。
 事件は解決し、後楽園ゆうえんちで遊ぶ、さやか達5人と姉弟。メリーゴーラウンドに乗っている最中、男衆の誰かが少女の名前を叫んでいるのですが、これが疾風だったら(疾風のような気がするけど……)募る疑惑が、ますます危ない。
 そして、組み分けの結果、3人でティーカップに乗る成人男子3名の絵が酷い(笑)
 大仕掛けの話ではないながら、1クール目の締めに、名作回でした。
 次回――こ、これは、悪の天才?!