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失恋ウィザード

仮面ライダージオウ』感想・第7-8話

◆EP07「マジック・ショータイム2018」◆ (監督:諸田敏 脚本:下山健人)
 「やあ~、我が魔王」
 「ウォズ、元気?」
 マジックショー見物にやってきたソウゴの元を通りすがったマネージャーさん、ごく普通に挨拶されて、振り返った笑顔がちょっと嬉しそう(笑)
 「お陰様で」
 一礼したマネージャーさんは、所属アイドルのプライベートにまで首を突っ込む気はないと前置きしつつ、最近、悪い友達と距離が近すぎてちょっと心配。
 「大丈夫。ちゃんといい魔王になるから、心配しないで」
 あまりこういう、「魔王」ではなくて「いい魔王」だからOK、みたいなレトリックは好きではないのですが、どうやらこれを本気で言っているらしいソウゴは、男子高校生18歳というより、少年マンガの主人公14~12歳みたいなキャラ造形。
 勿論、フィクションの主人公なのでデフォルメはされているわけですが、デフォルメの上に更にデフォルメされている、といった感。つまりSD。
 「――実に心配だ」
 悪影響に嘆息するマネージャーさんの気も知らず、ショーを見物したソウゴ達は、噂のマジシャン・ウィザード早瀬に仮面ライダー疑惑をかけて出待ちをし、いきなりドスンと突き飛ばしたゲイツが変身するとそれに呼応するかのように早瀬はアナザーウィザードの姿に。
 ライダーになった顛末を実力行使で聞き出そうとするゲイツをジオウが止め、揉めている間に早瀬は逃亡。追いかけたゲイツは、強力な時間停止能力を持つノースリーブおじさんによってビルの屋上から落とされそうになるが、間一髪でその危機を救ったのはマネージャーさん。
 「なんのつもりだ?! ウォズ」
 「昔のよしみで助けただけだよ。これを機に私たちも仲直りをしないかい? 我が魔王に君みたいな仲間が居てくれるととても助かるんだ」
 そう、ユニット名は、キング&プリンス(それ駄目絶対)。
 「黙れ! それ以上俺を愚弄するなら――ここでお前を倒すぞ!」
 「へぇ~。私がゲイツくんに負けた事、あったかな?」
 余裕のマネージャーさんは、殴りかかってきたゲイツ@本日は市松模様、を軽くあしらった上にふんわり空中に浮かんで屋上から見下ろす、という人間離れした能力を披露し、現状の個人戦闘力では一番強そう(紫おじさんが凄く強いという可能性はありますが)。
 虚仮にされたゲイツは早瀬の追跡を続行し、失恋の逆恨みから同僚に襲いかかるアナザーウィザードと再び戦闘に。
 アナザーウィザードの多彩な魔法攻撃は面白くて、このぐらい見せてくれると、こういうライダーの主人公作品があった、という導線としてそれなりの納得はできるのですが、その点でも前回は仮面ライダーとしてのファイズの魅力がさっぱり描写されておらず、オールドファン向けに「巧と草加がオリジナルキャストで出てくる」という物にしかなっていなかったな、と改めて。
 そんなファイズの携帯アーマーを装着したゲイツは、チンピラナックルによる連打から必殺円錐キックでアナザーウィザードを撃破。
 「おまえがその力を得たのはいつだ? 言わないならば、嫌でも吐かせてやる。言え!」
 質問は既に、拷問に変わっているんだぜ。(声に出して使いたい日本語)
 だがそこに、マネージャーさんから情報を得たジオウが割って入る。
 「ゲイツ、やめてよ」
 「こいつは人を襲い始めた! おまえの温さが招いた結果だ!」
 「でも……ここまでする必要は無いと思う!」
 そう言うソウゴの判断基準がさっぱわりわからず、相も変わらず話の都合に合わせたリアクションをしているだけの、パッチワーク主人公ぶりなのですが、「見極められるから主人公」なのではなく、「主人公だから見極められる」という作劇になってしまっているのが残念。
 「おまえ言ったよな? 俺を仲間にするのは諦めないと」
 「……うん」
 「俺は俺のやり方でしか戦わない。おまえになんと言われようとな。それでもお前は俺を仲間にするなどと言えるか?」
 ツクヨミの仲裁で喧嘩が中断したところでフォーゼ-ファイズ編からクローズアップされている「仲間」という言葉が持ち出され、ソウゴとゲイツの関係性の進展を物語の縦軸に置きたい、というのはわかるのですが、そもそも両者の目的意識が共通ではないのに、「仲間」という言葉だけが先行してしまっており、まずは2人とも、目的意識の摺り合わせが必要なのでは……。
 そこにオーラが介入してアナザーウィザードが再起動し、逃亡する際にスリープの呪文を受けたツクヨミが意識を失ってしまう。
 「残念だが我が魔王。やはり君に仲間など似合わない。……果たして、我が魔王は無事、仮面ライダーウィザードの力を奪えるのか。ご期待いただこう」
 で、つづく。

◆EP08「ビューティ&ビースト2012」◆ (監督:諸田敏 脚本:下山健人)
 「ツクヨミ……おまえは俺一人で何とかする」
 眠りに落ちたまま目覚めないツクヨミを助ける為、ウィザードの誕生年とウォッチを求めるソウゴとゲイツは、方針の違いから衝突して別行動を取るも、ソウゴが強引にマネージャーさんを巻き込んだ即席チームを結成。ライドウォッチを持つ謎の男――仮面ライダービースト――の記憶を一時的に取り戻す事で、ウィザードウォッチを手に入れたゲイツが2012年へと向かう。
 2012年のクリスマス、誕生したてのアナザーウィザードが、走行中の車とビル一つ丸ごと消し去っているのですが、これで人的被害0と言い抜けるには無理がありすぎで、前回「ここまでする必要」が明確にあった事になるのでは。
 と、画面の派手さに引きずられてデリケートさを欠く諸田監督の悪い癖が炸裂。
 両肩からウィザードの顔が突き出している点(指輪の意匠かもですが……)に目をつぶればウィザードアーマーは割と格好良く、2012年でジャイアントアックスを振り回すゲイツ
 一方、ジオウは2018年のアナザーウイザードと激突し、その内に秘めた願いに踏み込む。
 「ライダーの力は、何かを上手く行かせる為のものじゃない! 誰かの事を、守るための力だ!」
 のいきなり何を言い出したんだ感が大変残念ですが、いつの間にソウゴの中で「ライダーの力」がそういう扱いになったのか、正直さっぱり。今回、アナザーウイザードの原因を根治しようとする姿勢には永夢先生の影響が感じられなくもなく、ひとまずそこに焦点を合わせて少しずつレジェンドからの学びを血肉にしていく、みたいな構成でも良かったと思うのですが、ステップを踏まずにいきなり次の階へ飛び移ってしまう為、説得力が生じてくれません。
 「あんた、あの人のこと好きなんだろ?」
 視聴者には最初から見え見えとはいえ、これもソウゴがそれに気付くのがさっぱり納得できない上、6年以上に渡って早瀬の気持ちに全く気付かないお嬢さんと同僚の間抜けぶりが酷い事になっているのですが、ここでも「見極められるから主人公」なのではなく、「主人公だから見極められる」作劇になってしまっているのが残念。
 立ち上がり2ヶ月かけて、そこに毛ほども説得力が生じていない、というのは苦しい所です。
 「目ぇ覚ませよ! 守りたかった人を襲ってさ。あんたに必要なのは、魔法の力なんかじゃない! 思いを伝える勇気だろ!」
 この台詞と、それを風にコートをたなびかせながら見つめるマネージャーさん、という絵は良かったんですが。
 2012年ではマジカルゲイツが空中静止からのヨガキックでアナザーウィザードを撃破し、2018年ではジオウがきりもみ宇宙キックで同じく撃破。
 マネージャーさんから借りた未来電話により、未来早瀬から過去早瀬に電話させる事で、ライダーの力を取り除くだけではなく早瀬自身を“生まれ変わらせる”、というオチも悪くはなかった、のですが……憧れの女性への人生を賭けた恋に破れた30がらみの男に対して、同情と共感の眼差しで肩に手を置いてしまう常磐ソウゴ18歳、というキャラクターは、どうにもこうにもしっくり来ません。
 主人公補正にしてもやり過ぎに思うのですが、まあ、ソウゴ、民草を慈しみ愛でる王様として誰よりも高みからものを見ているので、
 知ってる? 人類の約半分は、女子なんだぜ!
 とか考えているのかもしれませんが。
 むしろ、そんな2人を柱の影から見つめるマネージャーさんが、我が魔王様に翻弄される事になって少しはイライラしているかと思いきや、人を食ったような笑みさえ引っ込めて存外穏やかな表情から視線を落とし、未来で辛い失恋とかあったのかな? と思えてきます。
 アナザーウィザードの消滅によりツクヨミは眠りから目を覚まし(100%寝ていただけで、ヒロイン力ほぼ上がらないという失態……!)、ゲイツはウィザードウォッチをゲット。みんな大好きらしい某社長さんが高笑いして、つづく。
 今作、パイロット版における未来社会の大虐殺に始まり、個々のエピソードの主題や、ライドウォッチにより物語や人の記憶が失われるという設定が重い割に、それを扱うキャラクター達がソウゴを筆頭にやたらざっくりしている(なので、元より未来人のツクヨミゲイツはともかく、ソウゴに人の心が薄いように見えてしまう)という劇中の寒暖差が、どうにも見ていて据わりが悪く、個人的にはキャラクターの軽さの側に合わせてくれた方が見やすいのにと思っているのですが、なんとなく掴めてきたのは、
 やたら重苦しいエピソード内容――既存ファン向けの<平成ライダー>的なる重さを、子供世代へ向けたヒーローであるソウゴがあっけらかんと塗り替えていく
 という構造を狙っているのかな、と。
 それが作品としての面白さに繋がっているのかというと、あまりそうは思わないのですが(穿った見方をすれば、悪い意味で白倉さんの挑発的な意図も見えなくもないですし)、当面『ジオウ』は、この作風そのものが抱える“馴染まなさ”をどこまで許容できるか、が楽しく見られるかどうかのポイントになるのかなぁと。
 とりあえず、マネージャーさんは好きです。