『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第39話
◆#39「こいつに賭ける」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:香村純子)
「エビフライが爆発して!」
「……エビフライ?」
「昨日からの爆発騒ぎ。現場にエビフライが落ちていたという証言と一致します」
「OK。不審なエビフライを見かけたら、回収するヨウ、通達を出ソウ」
「不審なエビフライ……不審なエビフライ……不審なエビフライ……」
出オチ要素かと思われたエビフライが、きっちり使い尽くされて素晴らしかったです(笑)
ある日の朝――
「なにか、新しい情報はあるかなぁ……?」
早朝から、国際警察の捜査情報を盗み見るノエル。
前回(「僕は君たちの事が好きだ!」)の今回で、のっけから好感度を削り落としにくるストロングスタイルですが、あと10話程度で、パトレンジャーとノエルの間に真の絆が生まれるのかどうか、甚だ不安になって参りました。
ザミーゴについて知ったノエルはジュレを訪れ……
「あ、まだ開店前なんですけど」
割と反応が厳しい!
でもお友達だと信じているからめげない!
「ザミーゴってギャングラー、知ってる?」
「……ザミーゴ? 初耳だな」
しれっと言ってのける透真に初美花は目を剥き、あくまでノエル相手にも手札を隠すという、今作のこういう所はホント好き。
一方、買い出し帰りの魁利は、出勤途中の圭一郎に捕捉されていた。
「やあー、魁利クン」
「……目ざといかよ」
魁利の心の隙間を割れ目に広げて乗り込もうと、めげない圭一郎はぎこちなくもコンタクトを取ろうとするが、近づくだけ近づいて特にかける言葉が思い浮かばず、なんだか完全に職質対象になっていた!
「どこまでついてくんの?! 国際警察あっちでしょ」
「あ……あ」
「じゃ」
「……難しいなぁ」
きっぱりと拒絶されて立ち尽くし、客観的には大変面倒くさい人ながら、愛すべき好漢に見えるのはこれまでの積み重ねが良く効いています(笑)
(追っかけてくんなよ。ますます兄貴と被んだろ)
打ち解けたくもないが決定的な拒絶も出来ず、逃げの一手となる魁利だが、響き渡る爆発音。
「あーーもう、結局行き先同じだこれ」
と冒頭、テンポの良いやり取りが面白かったです。
爆発音の元に駆けつけた圭一郎は、つかさ・咲也と合流し、そこでザミーゴに殺されたとばかり思われていた伊勢エビを発見。
「やっぱ動けるって、さいこー」
「おまえは、確か」
「氷から戻してもらったに決まってんだろ」
「消されたんじゃなく、転送されていたという事か!」
快盗達のスタート地点となったザミーゴの能力の正体がさらっと明かされ、対象が半分ギャグ怪人だったり、解明のきっかけとなるエビ解凍の理由にこれといった必然性はなくザミーゴの気まぐれに過ぎなかったり、というのはどうも美しくなくて残念。
なんだか、幾つか用意していたルートのどれを選ぶか決めあぐねている内にタイムリミットが来てしまい、慌てて駆け込み乗車したみたいな印象なのですが、スーパー化関連のあれやこれやの余波があったりしたのでしょうか。
迫り来るエビフライミサイルを全て撃ち落とすパトレンジャーだったが、コレクションによる物質浮揚で動きが取れなくなった所に攻撃を受けて姿を見失ってしまい、物陰で様子を窺っていた魁利は、現場を立ち去る怪しい男に目を留めてその後を追う。
支部に戻ったパトレンジャーはノエルに確認を取り、凍結そして転送がコレクションではなくザミーゴ自身の能力であると判定すると、不審なエビフライの捜索に。その最中、悩める初美花の相談に乗った咲也は、“いい人”ポイントをゲット。
「ノエルさんに話そう! ザミーゴの事」
「……忘れたのか? あいつはルパン家の」
「わかってるよ!」
咲也のアドバイスから、問題解決の為にはやれる事をなんでもやるべきだ、と心に決めた初美花は、たとえ一人でもノエルに相談する事を宣言。その背中に向ける視線がやはりなんだか保護者モードに入っている気がする透真も折れて二人はノエルに連絡を取り、警察の掴んだ情報から、ザミーゴを倒せば失われた人々は凍結を解除されるに違いない、という大きな確証が快盗達にもたらされる(出来ればもう少し、情報の接続に時間をかけたかったのでは、と思われる部分)。
快盗トリオにおいては妹分ポジションである初美花が、ノエルは自分たちの側の人間である、と信用して強い意志で行動する事で一皮剥けるのですが、その背中を押して事態を好転(と思いたい)させるのが、“今”の人間関係である咲也、というのは地味に良かったところ。
目前の問題が大きすぎて初美花にその自覚がまだ無さそうではあるのですが、これは咲也、軽い気持ちで結構大きなポイントを稼いだと思うぞ!
勿論、詩穗ちん復活の暁には、君の存在自体が「振り返る必要の無い過去」フォルダに投げ込まれる可能性もあるけどな!
魁利にも吉報を伝えようとする3人だが、怪しい男の<化けの皮>を剥いだ魁利は、伊勢エビと一人で戦闘中。浮揚攻撃をワイヤーアクションで逆転するとルパンコレクションを回収してエビを追い詰めるが、その場に響く、ロックアイスを噛み砕く音。
「なーんか騒がしいと思ったら……おまえだったか、ルパンレッド」
「ザミーゴ……デルマ」
大変お久しぶりに、<化けの皮>のザミーゴ登場。
「イセロブ! ほんの気まぐれで解かしてやったら、面白そうなの引っかけてきたじゃないか。人間界じゃこう言うらしいぜぇ……海老で鯛を釣る」
少ない出番ながら、黒塗りめいた瞳といい、口角を吊り上げる笑いといい、嫌らしい台詞回しといい、印象深いザミーゴなのですが、印象深いだけに、もっと出番があったらもっと強烈なキャラになったのでは、というのがどうにも惜しまれます。……ここまでの展開を見る限りやはり、W戦隊構造の時点で、ギャングラーサイドに避ける時間が少ないのは前提で、構成されているようではありますが。
「俺も会いたかったぜ! ――死ぬほどな」
「はっはひひひ。さあ……遊ぼうか。ルパンレッド」
正体を現したザミーゴと伊勢エビも交えたバトルが始まり、互いに好き勝手に攻撃しそうなエビとザミーゴの連携が、割と取れているのが妙に面白い(笑) 青・黄・銀が駆けつけ、凍結対策に青にシールドをレンタルした赤に、向けられるザミーゴの銃口。
「あらら~。折角の切り札を。甘いんじゃない?」
「こいつに賭けんだよ。防ぐだけじゃ、勝てないからな」
ビクトリーストライカーをセットした赤は、ぶっつけ本番でダイヤルを回し、発動したミラクルマスカレードで、スーパー快盗チェンジ。タービン付き銀の胸甲と翼を纏ったスーパールパンレッドとなると、“少し先の未来が見える”というサイドエフェクトがその身に宿る!
戦隊のスーパー化で、能力や武装の強化のみならず、特殊能力が発現する、というパターンはかなり珍しいでしょうか。予知されたフェイントを行うザミーゴの姿が深刻に間抜けで、そういうシーンだとわかっていても、ちょっぴり可哀想になるレベル(笑)
サイドエフェクトによってザミーゴの射撃を完全に回避、凍結弾も全て迎撃したルパンレッドは、先を読んだ攻撃でザミーゴを追い詰め、遂にはマグナムを直撃させる。
「ふふはははは……はははははははは! ルパンレッド! おまえ最高だよ! ひゃははははは!」
「全部返してもらう!」
大変気合いの入った叫び……から、青と黄が両肩のダイヤルを回す、という必殺シークエンスが先程のザミーゴ以上に間抜けでしたが、ただでさえマグナム持ちでルパンレッドの戦力が突出しているので、せめてフィニッシュ攻撃は3人の力を結集したかった、という気持ちはわかります。
……とすると、元来パトレン用だったと思われるサイレン強化のフィニッシュも、桃と緑が両サイドでトリガーを引く想定だったのが、スーパールパンXになってしまった為、ノエルが自分で連射するという面白アクションになってしまったのでしょーか(笑)
…………ノエル、生き方を改めて、友達、出来ると、いいね……。
ところで両サイドから他の二人がサポートする、というとXエンペラーの電車ビークル起動シーンを思い出すのですが、それがアクション的にはスーパーフィニッシュの布石だったと考えると、つかささんが疑問に思ったノエルがVSビークルを自ら使わず、電車ビークル二つをわざわざ他人に起動してもらうのはもしかして、「友情のトライアングルごっこ」がしたかったからなのか(涙)
トライアングルがマッチリなら、俺たちは負けない!
哀しすぎる真相(!?)はさておき、ザミーゴの回避先を予知して突き刺さるかと思われたビクトリールパンフィニッシュだが、ザミーゴは外野で傍観状態だった伊勢エビを凍結、自分の前に転送させて盾にする、という奇策でこれをガード。
「やるじゃーん。ルパンレッド。ここまで俺を追い込むとはねぇ。だが、動きを読むのも限界があるみたいだな。次遊べるのを、楽しみにしてるぜ。アディオース」
あくまで遊びのスタンスを主張したまま姿を消したザミーゴ、現時点での純粋な戦闘力はトンデモ能力を発現したスーパールパンレッドが上回った感じですが、個人的なこだわりからコレクションを使ってはいないものの、貰ってはいる可能性はありそうなので、次の登場時にはコレクションを使ってくる可能性はありそうか。
ゴーシュが出てきて伊勢エビを巨大化し、快盗はビクトリールパンカイザーを発動。伊勢エビの天ぷら油火の海地獄を受けるも「天ぷら火災には化学消火器だ!」とシェフが速やかに消火。エビFLYする伊勢エビを飛行モードで追い詰めると、トドメはビクトリードリルキックでアデューするのであった。
(ルパンレッドのあの気迫……他のギャングラーを相手にした時と、まるで違う。強敵だからか? ……それとも……)
マグナム → スーパールパンX → スーパールパンレッド と、快盗サイドの火力強化を立ち尽くしながら見せつけられる、というもの悲しい状況が連続している警察サイドですが、圭一郎が「俺も警察バズーカとか撃ちたい」じゃなかった、ルパンレッドの姿に引っかかりを覚え、そろそろ散りばめていた点と点が繋がってきそう。
仮にザミーゴの能力と大量失踪事件を繋げる所まで行くならば、凍結された人々を救う為のなんらかの作戦として、圭一郎が命がけで自ら凍結されるなんて展開もあるかもで、そんな圭一郎が見られたら割と満足してしまうかも(笑)
ジュレではノエルが、ザミーゴの件に関してはコグレに伝えず、3人に協力する事を改めて約束。
「ザミーゴを倒したら、みんな元に戻る。ハッキリしたら、なんかやる気出てきた」
コレクション収集以外の活路が明確な形を取り、力の入る3人。打倒ザミーゴの切り札となりえるビクトリーストライカーを見つめる魁利だが、笑顔で去っていったノエルについて、ふと気が付く。
(……ノエルはザミーゴの事を知らなかった。て事は、あいつが取り戻したい人は……誰にやられたんだ?)
ザミーゴ撃破による目的達成、の芽が出ると同時に、ルパンレンジャーとノエルの願いを叶える手段が分裂する、という可能性が生じたのは、またもグサッと巧い所を突いてきて、1枚カードがめくられると次の伏せ札に繋がる手並みは『ジュウオウジャー』に続いて鮮やか。その上でそんな事はおくびにも出さず3人への全面協力を約束するノエルは、さすがにもう裏は無さそうと信じたいのでトリガーを担当してくれる友達が出来て欲しい気はしますが、もう少し警察戦隊への態度は改めた方が良いと思います!
ザミーゴの能力に関しては、凍結転送はともかく、いつまで「保管」しているのか? そもそも何が「目的」で大量の人間を凍結しているのか?(<化けの皮>の原材料?) ザミーゴを倒せば転送先から単純に「帰還」できるのか? というクリアになっていない問題が幾つかあるので油断なりませんが、ここから更に地獄に突き落としてくる(ぬか喜びだった事になる)のはあまりに酷いので、被害者に関しては軟着陸ルートに入りそうな気配が強くなり、願わくばその「救出」において警察戦隊が大きな役割を果たすのを期待したいところ。
そしてそうなると――魁利に関しては勝利兄貴と向き合えるのか、という課題があるのですが――今作の最終的な焦点は、それぞれの大切な人々を取り戻し、快盗である理由を失って日常を取り戻した後に、例えばノエルの為、例えばギャングラーと戦い続ける警察戦隊の為、例えば誰かの明日の為に、彼らは「変身」する事が出来るのか?というところになるのかも。
巧く転がせば、劇中の因果応報はそれなりに精算・魁利が勝利と向き合う転機・警察への正体バレ回避・ルパンレンジャー継続、と、諸要素をまとめて解決できそうな気もしますが、いよいよ終盤戦に入っていく中で、どういう舵取りになるのか、楽しみです。
その頃、異世界では、ドグラニオ様直々のコレクション強奪指令を仕損じた不甲斐なさに、デストラさんが酒に逃げてやさぐれていた。
「リベンジしたかったら手を貸してあげてもいいわよ」
「なに……? 誰がおまえなどに」
「うふふ、その気になったら声かけて?」
ゴーシュに挑発されるデストラさん、どうやらクリスマスの生け贄としてフォーカスされたところで、つづく。
次回――一息入れて色々大盤振る舞いはさておき、誤解にしても食い合わせの悪そうなネタですが、さてはて。