東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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魔王とゴルフと本当の邪悪

電光超人グリッドマン』感想・第4-5話

◆第4話「暴走自動車」◆ (監督:神澤信一 脚本:平野靖士)
 「こちらが、先週ハッカーによって、各地に送られてきたFAXです」
 直人父が勤めるケーブルテレビ局のニュースで公開されてしまう、カーンデジファー様のちょっと恥ずかしい犯行声明(笑)
 一応、「各地」に送られていてホッとしました!
 それに対する、コメンテーターの細野(ゲスト出演の黒部進さん、品が良くてバタくさい二枚目顔からの、感じ悪いインテリ演技が物凄く腹立たしい(笑))による「馬鹿なハッカー」「個人の車のコンピューターには入れない」という発言を耳にして、闘志に火が点いた武史&魔王様は、細野の所有する最新型のコンピューター制御システム搭載自動車をハッキングして目に物見せてやる、と嫌がらせの敢行を決意。
 「そうだ! 我々を侮辱すれば、その報いがどんなものか教えてやれ。はははははははは!」
 楽しそうだな、君たち。
 塾をさぼって一平達とジャンクパーツを漁っていた直人は母親に見つかってお叱りを受け、極楽とんぼな兄の姿に弟・大地が大人ぶって己の招来を憂えてみたり、直人父が細野との接待ゴルフでへこへこと頭を下げたり、随所に妙に世知辛い要素が盛り込まれるのも、なんだか『超人バロム・1』を思い出してならないのですが、小中学生ぐらいを主役に据えた場合、両親などを通して社会を風刺的に描いてみせる、というのはある種のセオリーだったりするのでしょうか。
 アニメ・特撮問わず、そういった作品の視聴経験があまり無いのでわかりかねるのですが、或いは、今作近傍の作品でいうと《不思議コメディ》シリーズにおける浦沢先生の毒っぽさの影響があったりするのか。
 武史は、直人父を乗せて接待ゴルフに向かう細野の自動車をハッキングし、送り込まれた飛行怪獣による、Cワールドの破壊シーンは迫力たっぷり。ここまでの怪獣絡みのシーンでは、一番心を引かれる格好良さでした。
 しばらく車の暴走シーンが描かれ、自宅謹慎中の武史の腕でけたたましく鳴り響くGコール。
 それを聞いた途端、塾をさぼった罰による外出禁止令を無視して外へと飛び出していく直人の姿は、世界を守る使命感なのか、ゲッシュに基づくギアスの効果なのか、凄く、悩ましい。
 そして、大地を振り切り脱走を図った直人を追いかけた結果、父親(の乗った車)が警察に追われているところを目撃してしまう母子(笑)
 第4話にして直人父の社会的生命が崖っぷちなのですが、第1話では井上病院で重大な医療事故が起きかけていましたし、割といいところまで追い詰めているぞ武史!
 母と弟が愕然としている間に、その場を離れる事に成功した直人は、ジャンクに辿り着くとアクセス・フラッシュ。暴走自動車のシステムに飛び込むグリッドマンだったが、怪獣に投げ技を放つも飛行で回避され、透明状態での攻撃に苦戦。これを見たゆかは隠しファイルを見えるようにするプラグラムを送り込んでグリッドマンを支援し、どうして、それについて書かれた本が普通に棚に置いてありますかね(笑)
 戦況を見守る武史がぷるぷるする中、怪獣の透明化を打ち破ったグリッドマンは連続バック転から宙返りで翻弄し、両翼をもぎ取ってから必殺のグリッドビーム。身軽に飛び蹴りを多用するグリッドマンですが、怪獣の飛行能力による投げ技無効が良いアクセントになり、今回は戦闘もなかなか面白かったです。
 一方、暴走自動車を止められない細野は遂に運転を放棄して後部座席に転がりこんでおり、あ、これ……「運転していたのは私ではなく、彼だ。最新型の自動車をどうしても運転したいというから変わってやったらこんな事に……」って全責任をなすりつけられて夕方のトップニュースになるやつだ!といよいよ社会的生命がバッドエンドを迎えそうになっていた直人父だが、グリッドマンの勝利とシステム復旧により、暴走車が停止。
 偶然にも、知り合いの警察官(前回ちらっと登場)を轢き殺す寸前でブレーキが利いた事が功を奏し、直人父はむしろ暴走自動車を停めたヒーローとして警察から感謝されて家長の威信を取り戻すのであった、でオチ。
 ……つまり今回の物語の教訓は、
 人生で大事なのはコネクション
 なのでありました。ちゃんちゃん。

◆第5話「男の意地の必殺剣!」◆ (監督:村石宏實 脚本:平野美枝)
 とぼとぼと街を歩いていた武史は、スーパーに商品を運び込もうとする台車に轢かれて笑い物にされた事で逆恨み……というか今回は完全に、口では「危ない」「危ない」と言いながら台車を止めもせずに進め続けた人が悪い業務上過失傷害案件なので、その後の対応を見ても、まあちょっとぐらい思い知らせても良いのではないか(おぃ)
 怒れる武史と煽るカーンデジファー様が生み出した裂刀怪獣が配送センターに送り込まれると、腕についた刃の一閃でCワールドの建造物を派手に破壊し、佐川和夫さんの特撮によるカメラに向けて破片が迫り来る爆発が迫力満点。
 この影響で街の流通に多大な障害が発生し、食料品だけでなく病院の医薬品まで届かない事態に陥ってしまう。それによって引き起こされるパニックの前振りとして、直人・ゆか・一平、それぞれの家庭の一幕が描かれるのですが、そもそも病院経営とはいえ、流通の障害で医薬品を届けられない事を平謝りする電話の相手に向けて素で「なんとかしたまえなんとか」と叱り飛ばす井上父とそれを軽く聞き流して食後の紅茶をたしなむゆか、という井上家のブルジョワ感。
 直人母も左ハンドルの真っ赤な外車(自動車に全く詳しくないので車種などはさっぱりわかりませんが、デザイン的にはとても4人家族の日常用には見えないのですが……)に乗っていたりで、1993年という時代の差もありますが、なんだかんだ趣味で余暇に巨大なジャンクPCとか作れてしまう3人組の家庭環境が窺える、妙なリアリティ(笑)
 インテリアショップを経営する一平の家は以前に「景気が悪い」という会話はありましたが、敷地内に子供達の好きに使わせている地下倉庫(ジャンク置き場)とかありますし。……まあこの辺りは、ジャンクを中心とした秘密基地を設定する為の都合であってあまり厳密には考えるべきでない部分でしょうが。
 流通の停止により大混乱のスーパーが食料品を買い求める主婦達でパニックに陥る中、黒焦げのホットケーキを大量生産する一平妹は「大地を毒味役にして直人に一番美味しいものをあげる」とのたまい、冒頭の演出もですが、デフォルメが一線を越えて笑えない感じに。
 「ぼく毒味役?」
 「あんたはただの練習台」
 第3話の印象があまりにも悪かった一平妹ですが、その言行は、飾らない子供の素直さや無邪気さとやらで済まされる範囲を超えて、おまえの血は何色だレベルの邪悪。
 「モテモテね、カナちゃんには」
 ゆかに小突かれ、てへ、と頭をかく直人、そこは照れるところなのか。今、目の前で君の大事な弟が、人間性を蹂躙され、迷路に閉じ込められたハツカネズミのような扱いを受けているゾ。
 その女は多分、「直人くん、イカの塩辛入りのホットケーキは好きかなー(棒)。ほら大地、男なら食べてみなさいよ。……男なら、女の子の手料理を、食べられないわけないわよねぇぇぇぇぇぇぇ、ちょっと優しくしてやったらつけあがりやがって何様のつもりよこのチビスケがァァァ」(三角定規を眼球に突きつける)と荒木飛呂彦キャラ的に豹変するぞ。
 そんな一平妹と直人弟にジャンクの存在を誤魔化す一幕を挟み、アクセス・フラッシュ。流通センターのシステムに飛び込むも怪獣の身に纏う鋭い刃物に苦しむグリッドマンだが、お気に入りのホットドッグを食べられなかった逆恨みに燃える一平が、対抗する新装備として盾と剣をデザイン。
 「グリッドマンスペシャルドッグを送るから頑張れ!」
 何を言っているのかわからん……と必殺グリッドビームを放つグリッドマンだが、弾かれてしまう大ピンチ。
 「名付けてバリアシールド! GO!」
 そこへゆかがプログラムした盾と剣のセットが送り込まれ、シールドで刃物攻撃を防いだグリッドマンは中段蹴りを叩き込んでから連続斬り。怪獣の両腕を切り落とすが、劣勢になった怪獣は一時撤退という新しいパターンで、流通センターのシステムは無事に修復されるのであった。
 一平は母ちゃんのホットドッグを食べて大満足し、怪獣ハッキングの引き起こした社会的事件だけではなく、日常パートから発生した家庭の問題も解決して大団円、というのは良かったです。中学生である直人達にとって「世界/社会」というのはまず「家庭」であって、そこが好ましい場所だからこそ世界を守ろうと戦える、というのが母親との間に何やら問題を抱え、家庭において孤独である武史との大きな差として置かれているように思えます。そういう点では、スルーされがちながらめげない姿が微笑ましい、愛妻家の一平父の存在は、象徴として地味に大きいといえるのかも。
 「グリッドマン強し、されど、母もまた強し」
 カナのホットケーキから逃げる直人をカメラが捉えつつ、なにやら巧い事を言ってオチをつける、ナレーションさんであった。
 切り口は色々とあるので良い悪いという話とは別に、90年代初頭の東映特撮が『特警ウインスペクター』『鳥人戦隊ジェットマン』という二大エポックで特撮ヒーロージャンルにおけるドラマ性の質的変化を遂げたのと比べると、今作は凄く、80年代的な作劇を感じます(笑) 現時点での印象はなんというか、「悪役の魅力的な80年代作品」。
 次回――コンピューターワールドに妖精現る。