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間にグリッドマン

電光超人グリッドマン』感想・第3話

◆第3話「電話パニック危機一髪」◆ (監督:神澤信一 脚本:平野美枝)
 見所は、


 オロカナ ニンゲン ドモヨ
 オレサマガ ニンゲン セカイヲ
 セイフクスル ヒマデ
 コンランニ クルシムガヨイ

     マオウ カーンデジファー

 だいぶ頭の悪そうな署名入り犯行声明を、地元ケーブルテレビ局にFAXで大量送信するカーンデジファー様。
 悪の組織としての公式デビューが、FAXによる世界征服宣言というのは史上空前ではあるまいか。
 学校のプレートがハッキリ映り、年代の微妙な感じだった主人公達は、中学生と判明。そして公衆電話でやいのやいのする女子を無言で見つめていた武史くんはしっかり、同じ空気もなるべく吸いたくないという忌避の反応を受けており、こういうところ、いちいちリアルですね!
 「ラブコールなんかする奴は、叱られて当然だ」
 本日も逆恨みエネルギーをチャージする武史は後ろから走ってきたゆかの自転車に引っかけられ、割と明確に自転車でぶつかっておいて、落とした鞄を拾おうと自転車を降りる素振りすら見せないヒロインも、結構アレな感じだった……!
 ネガティブな反応を受ける時以外、誰からも顧みられない空気のような少年は、ポケットに忍ばせていた手紙を取り出しながら、ゆかの背を見送り、魔王様の光線を受けた後も病んだ人格面がそのままでホッとしました(第2話と第3話なので、物語の連動にズレが生じている可能性もありますが)。
 「電話なんか、大嫌いだ!」
 毒づく武史は家に帰ると、「はいママ……わかりました、そうしますので」と母親からの電話にかしこまった敬語で接し、何やら家庭に問題を抱えている様子。
 「どうせ……僕にかかる電話は、ママからの命令だけだ!」
 「ふふふふふふふふ、電話か、面白い」
 武史を煽ったカーンデジファー様は電話への憎しみから新たに火山怪獣を誕生させ、善と悪の両サイドに少年少女を配置する事で、“ヒーローを直接手助けする楽しさ”と“私の考えた格好いい怪獣が現実になる面白さ”の双方を取り込んだのは、子供心に目配りの利いた面白い構造。
 その頃、父親の携帯電話を勝手に持ち出して使いながら外を歩いていた一平妹は、「怪獣とヒーローを見た」と言って地元ケーブルテレビ局のニュースに出演して、人気者気取りの大地と遭遇。
 「誰も僕の言う事信じないんだな」
 「信じるか信じないかは人を見て決める事にしてんの」
 卓見だ(笑)
 二人は友達とのかくれんぼ中に古いコンテナ車に閉じ込められてしまい、「セクハラ」という単語が登場。しかも、一平妹が大地に対して「男らしさ」を要求するのに対して大地が反駁を試みる、という文脈で用いられているのが面白いのですが、携帯電話を小道具に使うのも含めて、時代の新しい要素を積極的に物語に取り込んでいこうという意図でしょうか。
 なお、携帯電話のレンタルサービス開始が1987年で、92年7月にNTTドコモが誕生しており、93年当時だと一般向けの普及が広がり始めたぐらいの時期だったのかと思われます(なので、父が恐らく業務用に契約している携帯電話に娘が興味を示したという事なのかなと)。
 一平妹に高圧的に命じられた大地は、なんとかドアをこじ開けようと体当たりを重ねるも跳ね返され、衝撃の痛みで泣きじゃくるが、一平妹は目も向けない。
 「はぁー……なっさけなーい。……そーうだ! これがあったのよー!」
 わざとらしく呟きながら携帯電話に手を伸ばす一平妹、本当に今思い出したのか、「おやおや~? こんな所に黒い箱があるぞ? もしかしてこれは、外に助けを求められる、電話ってやつかなー」と今気付いたふりで大地くんを嘲弄しているのか、演技の拙さゆえに判別ができず、とんでもない鬼畜生に。
 携帯電話を用いて兄に助けを求める一平妹だったが、電話局のシステムに侵入した怪獣の影響で、電話が途中で不通になってしまう。街が徐々に大混乱に陥っていく中、一平はとにかく自転車で走り回って妹と大地を探し回り、Gコールを受けた直人はジャンクの元へ。
 「グリッドマン出動だ!」
 「電話のやつどうなってるの?!」
 「話は後だ!」
 ……あれ、早くも、ハイパーエージェントと、混ざってきている?!(不穏)
 必死に妹と弟を探す友人と行き会っても実質スルーしており、第1話ではあんなに弟を心配していたのにな……!
 尊い犠牲を払いながらアクセスフラッシュしたグリッドマンは電話局のシステムに突入し、火山怪獣と戦闘開始。戦闘中に電話回線の部分的復旧を頼まれるという無茶ぶりを受けながらもキラキラミストを放って修復を行い、色々と不穏な香りのするハイパーエージェントが、悪い人ではない事を行動で示してくれたのはホッとしました(笑)
 グリッドマンの助力により携帯電話が再び通じ、妹たちの救出に向かう一平。怪獣の火山弾攻撃に苦戦するグリッドマンだが、四つ足怪獣に対するお約束の馬乗りから反撃に転じると、火山弾を放つ背中の砲口を破壊し、弱ったところにグリッドビームを放って消滅させるのであった。
 1-3話と、怪獣の部位破壊を行ってから必殺光線でフィニッシュ、という流れは共通しており、とりあえずこれが戦闘におけるキーポイントいう意識でしょうか。
 グリッドマンは電話局のシステムを復旧し、収まっていく街の混乱。一平妹と大地は無事に救出され、存在して当たり前だと思っていた社会的インフラがいざ使えなくなった時の恐ろしさを、直人達は身を以て知るのであった……。
 閉じ込められた妹弟は一平が車を発見して即解決ではなく、最終的に電話の復旧後に消防署に連絡して救助してもらうという形になるのですが、最後に警官や救急隊員の姿が描かれる事で、今回のエピソード全体が災害などの緊急事態の寓話であった事が明確に示され、ヒーローが常人の目に見えない世界で戦う一方、そこから発生する問題(のエッセンス)を現実に引き寄せる、というのが今作の狙いの一つとなっていくのでありましょうか。
 そして、担架に横たわりながらも懲りずに友達に電話をかけ、大地くんは男じゃない、と語る一平妹、武史を凌駕する邪悪。
 もはやオチのほのぼのギャグとか子供の無邪気さを遙かに越える領域で、カーンデジファー様好みの、世界に対するねじくれた憎悪とは種類の違うものではありましょうが、こちらを、下僕に選んだ方が良かったのでは?!
 今回、武史の家庭の事情が匂わされるのに合わせてか、直人父はケーブルテレビ局の次長、一平父は愛妻家、とそれぞれ家族の姿が織り込まれ、少年少女をメインに据えた物語としては手堅く周辺要素を掘り下げ。また、恐らく今後コメディリリーフ的に日常に関わってくるのかと思われる警官のシーンが挿入され(かなり唐突でしたが)、日常生活のディテールが広げられたのは、今後うまく転がってほしいです。
 次回――物凄くそのままなサブタイトル。