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ようやく『インフィニティ・ウォー』

アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』感想(ネタバレあり)

 ※満遍なく内容に触れているので、ご留意下さい。


 宇宙の始まりと共に誕生したと伝えられ、それぞれが絶大な力を秘める6つの宝石インフィニティ・ストーン……。姉弟対決により崩壊したアスガルドから脱出してきた宇宙船団が、ストーンの力を求める帝王サノスの軍団による襲撃を受け、ソー、ハルク、ロキが次々と敗れてしまう。この危難を伝えるべく虹の道により地球へ逃がされたハルクを拾ったのは、ドクター・ストレンジ。インフィニティ・ストーンの一つである、タイム・ストーンを所持するストレンジはアイアンマン/トニー・スタークにコンタクトを取るが、サノスの尖兵は既に地球へ近づいていた……!
 いよいよ強大無比の宇宙帝王がその野望を剥き出しにして迫り来る、『アベンジャーズ』第3弾。実質、マイティ・ソー:バトルロイヤル2 ~スターロードと愉快な仲間達~』でした。
 すっかり忘れていたけど、雷神様は『アベンジャーズ』世界では規格外組だし、なにより集団戦適性が高いのだった! とこれまで積み重ねてきた描写の蓄積がソーに関しては大変活かされており、納得度が高かったです。単独作品も含めて史上最高に格好良かった気がするソーを、君は見たか!
 一方で、贔屓のキャップが、物凄く地味だったのは個人的に不満。
 電車の向こうにシルエットを現すだけでサノスチルドレンの動きを止めて恐怖を感じさせるとか、場に居るだけで周囲の味方ユニットの能力を大幅に引き上げる支援効果とか、それなりの見せ場は用意されてはいるものの、『シビル・ウォー』からの流れを考えると、物語としてキャップから焦点が外れていたのは、残念でした。
 今回通して、トニーとの訣別の象徴であり、キャップにとってのアイコンである盾とマスクが与えられていないので、次回へのタメだと思いたいですが。
 そのトニーは、長い傷心旅行に出ていて『ウルトロン』以後の事情を知らないブルース・バナーに、「キャップと喧嘩して2年ぐらい口聞いてない」と気まずそうに説明し、傲岸不遜で鼻持ちならないヒゲのおじさん枠であるストレンジと嫌々ながら共同戦線を張る事になり……ヒゲ、多いな。
 『アベンジャーズ』第1作が、単独作品を踏まえた上で、個々のヒーローがそれぞれのヒーロー性ゆえに衝突し、だが一つのチームになっていく、というのを巧妙な段取りで描いたのに比べると、一部性格の悪い者同士の舌戦は別として“俺らヒーローだから地球と宇宙の危機を守ろうぜ後サノスむかつく”のくだりが全体的に駆け足気味でやや物足りないところはあったのですが……何かこの感覚に覚えがあるなと思ったらあれだ、“基本的に大半が主人公属性なので、巨悪を倒すという目的の為にはハイスピードで一致団結していく”『ナムコクロスカプコン』シリーズだ(笑)
 そういう意味では、クロスオーバーというのはそういう一面があるのでしょうし、恐らくは敢えてそこを丁寧にやった第1作と同じ事を繰り返しても仕方ない、と受け止めた方が良いのではありましょうが。
 全体的に、ヒーロー側の、“ヒーローである”心理がすっ飛ばされ気味で、そこはもう少し『インフィニティ・ウォー』として掘り下げて欲しかったのですが、その分を割くような形で掘り下げられるのが、ヴィラン、というよりは、アンチヒーローとしてのサノス。
 貧富も善悪の別もなく、増えすぎた宇宙の人口を無作為に半分にする事で、生き残った半分による全宇宙の“幸福な継続”を成そうとするサノスは、誇大妄想の大言壮語でもなければ、狂信的な熱狂に突き動かされているわけでもなく、かといって無機質なマシンどころか不器用な父親の面を見せながらも、手段としての大虐殺を淡々と実行していく、というのが悪役像として面白い描き方。
 そして今作は、
 ソーを助ける為に四次元キューブを渡すロキ
 ビジョンの持つストーンの破壊という手段を先延ばしにするキャップ達
 ガモーラを失った怒りに任せてサノス打倒の千載一遇の機会を逃してしまうスターロード
 トニーを助ける為にタイムストーンを渡すストレンジ
 などなど、ヒーロー達の見せる、誰かの為の怒りや優しさがことごとくサノスの利となり、その逆転が描かれないまま破滅に至る、という徹底的な“ヒーローの敗北”を描いているのですが、一方のサノスは、己の信念を成し遂げる為に最愛のガモーラを失う、という試練を乗り越える事でストーンを手に入れている、という犠牲の先の勝利が描かれており、信念は如何にして成し遂げられるべきなのか、という二重の構造が厄介な作り。
 「半分の死による残り半分の幸福」を掲げるサノスに対して、「他に選択肢がある以上、誰かの死で誰かを助けてはいけない」というのがヒーロー側のテーゼとなるのですが、その結果として、小に囚われて大を失う最悪の結末を迎えてしまい、その正しさを問う為にこそサノスがヒーローの鏡面として深く掘り下げられているといえます。
 『スパイダーマン:ホームカミング』は、MCUがこれまで築いてきた作品世界を活かして、「ヒーローの居る日常」を完成させた映画でしたが、今作はその「ヒーローの居る日常」を木っ葉微塵に粉砕し、これまでのあらゆる作品世界を帝王サノスの肥やしにしてみせた、というのがとんでもなく贅沢な作り。
 もちろん後編で、ヒーロー達のヒーロー故の逆転勝利が描かれるのだろうとは思うのですが、世界の救済を成し遂げ、穏やかな表情で田舎ライフを送り始めたサノスにどうやって痛撃を与えるのか、楽しみです。まあ完全に前後編の作りになった事で、ストレンジが露骨に怪しげな言葉を残して布石にしているのですが……<ジャスティス・リーグ>ならフラッシュが時空の壁を越えてくれそうですがこれは<アベンジャーズ>なので、トニーは何回《説得》コマンドを使うとサノスが根負けしてくれるのか、或いは、どの時点まで遡ってやり直すとバッドエンド回避ルートに入れるのか。
 「ああまた、スティーブと仲直りしたけどペッパーと別れる事になって、うちの会社が倒産したぞ?! リセットリセット」
 トニーは今回、いよいよペッパーと結婚する事になり子供も欲しくなったりで社会への帰属性を一層強くしていき、なんだかんだあちらこちらで彼女持ちだったりヨリが戻りそうだったりする中、相変わらずのキャップと、全てを失ったソーが孤独の二巨頭なのですが、ソーはまだ、民さえ戻れば王として世界に繋がれる一方、友人はぼちぼち増えているけど“今の世界”との繋がりを薄くしか持たないキャップが、今の世界と如何にして繋がりを持つのか、という『ウィンター・ソルジャー』『エイジ・オブ・ウルトロン』『シビル・ウォー』で描かれてきたテーマ性が、吹き飛ばされずに次作で焦点が当たってくれる事に期待したいです(これをやってくれるかどうかで多分、私個人の次作の評価が大きく変わる)。
 「許しは求めていない。認めてもらおうとも思わない。――地球を守ってた男が消えた。だから来たんだ」
 『バトルロイヤル』のラストで母星を失うも、民が居る所がアスガルドだ! と希望を持って出航直後に民全滅(アスガルド民が悲惨すぎるので、次作で何らかの救済があると信じたい要素ですが……)し、彼女に捨てられ父とハンマーと姉と国と弟をマッハで失うまで2時間5分だったソーが、ガーディアンズと絡み、アライグマと相棒関係になったのは、面白かったです。
 「家族は厄介だな。父が死に際に言った。実はおまえには姉が居て、幽閉されていると」
 改めて、マジ最低だな、父さん(オーディン)……。
 「その姉が戻ってきて、俺の目を刺した」
 家族の事情と筋肉でガモーラにアピールするソーに嫉妬するスターロード(ややぽっちゃり)が、父親のクズ加減なら負けないぜ、と張り合うなどのやり取りも面白く、全体的に凄惨かつショッキングなシーンの多い中で、単独映画と同じノリでギャグを突っ込んでくるスターロード(お義父さん相手に下ネタも辞さない)、実に貴重な人材(笑)
 「船は2隻ある。それにアホも一杯いる」
 そしてロケットが非常においしく、一気に物語が大宇宙規模になる中で、ガーディアンズ組は非常に良い存在感でした。一方で、パンサー陛下は“都合の良いお金持ちのお友達”ポジションにしかならなかったり、さすがに全ヒーローをフォローしきれない部分も出てしまいましたが。
 パンサー陛下は特に、キャップ達の都合で国が巻き込まれる事について(事態はそういう規模ではないとはいえ)物分かり良く視野が広すぎて、もう少し葛藤が描かれても良かったかな、と。……上述したように、そういった葛藤面は、すっ飛ばし傾向の映画なのですが(スターロード×ガモーラ、ヴィジョン×ワンダ、の主要カップルを除く)。
 全編、各キャラの「ヒーロー」というよりも「私人」の側面にスポットが当たっていて、ストレンジを除くと、家族や恋人(やがて家族になる者)のテーゼ持ちのキャラが目立つ傾向が特徴といえますが、どうもそろそろ本格的にヒーロー卒業を考えている様子の見えるトニー、一方で「ヒーロー」としてしか生きられないキャップ、という両者が、後編では落ち着くところに落ち着いてほしいです。
 この2人を再会させないまま次作へ続いた、というのは、やはりそこが次作のキーでありクライマックスである、というメッセージだとは思うので。
 アクション面は相変わらず見応え抜群で、ジェットコースター展開の中で様々なメリハリをつけて面白かったですが、割と肉体派なストレンジ先生の魔法武闘術は、色々なマンガの実写化に繋げられそうだよな……と夢が広がりますし、全体的に好き。一方、手や足の先が自在に変形し、背中からフィン・ファンネル飛ばしたりするナノアイアンマンは少々やり過ぎ感。ストレンジの何でもありはOKでアイアンマンの何でもありは微妙なのはダブルスタンダードだとは思うのですが、アイアンマンには機械の不便さが欲しいというか、もう少し泥臭かった頃の方が好みではありました。
 あと、個人のスペック的には劣りそうな所を、各種トリッキーな装備で補って強敵とやりあうスター・ロードが、アクセントにもなりバトル面でも良い存在感。ガーディアンズ勢の使い方の上手さは、大変光りました。
 『シビル・ウォー』による分断を経て、“ヒーロー大集合する”映画かと思ったら、“ヒーロー大集合しない”映画であり、徹底してヒーローの敗北を描いた今作、後編にあたる(中編でないといいな……)次が『アベンジャーズ』一つの区切りになるのかなと思いますが、その着地点がどう描かれるのか、今回宙ぶらりんにしたテーゼがどう収束するのか、キャップは果たして己のアイコンを取り戻して世界と繋がれるのか――楽しみに待ちたいと思います。
 「辛い道を選ぶには、強い意志が必要だ」
 「我々の、意志だって、同じぐらい、強いぞ!」