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駆け込みガイア

ウルトラマンガイア』感想・第4話

◆第4話「天空の我夢」◆ (監督:高野敏幸 脚本:長谷川圭一 特技監督:神澤信一)
 砂と化して崩れていくオブジェ、そして高層ビル群……と派手な特撮でスタートし、瞬く間に直径約1kmが砂漠化する謎の現象で、臨海地区が壊滅。
 「水際で防衛もできず、街一つ失うとは……」
 映像からこれを分子レベルでの崩壊現象と判断した我夢はチーフと共に現場上空へと出撃し、そこで半透明の巨大なクラゲ怪獣を発見する。だが六角ファイターのミサイル攻撃は何故かクラゲをすり抜けてしまい……クラゲ怪獣は、量子飛躍する不連続的存在だったのだ!
 XIGのファイター部隊は一時帰投し、天才物理学者たる我夢が怪獣について解説。
 「奴を僕らが手の届くマクロの世界へ引きずり出せれば、攻撃は可能です」
 波動生命体である怪獣はこの時空間においては同時に複数の場所に存在しているといってよく、人間が視認できるのは異次元に存在する本体から投射された影のような物のみ。それに対して我夢は、反発する波をぶつける事で怪獣の存在を一点に収縮させる、という作戦を提案する。
 天才物理学者である我夢のフィールドにスポットを当て、難解な説明を思い切って突っ込んで来つつ、“怪獣の特性”と“対処方法”に関しては具体的に示す事でわかりにくさを低減し、総合的に怪獣がキャラクターになっているのが好印象。
 敵の特殊能力に物語内での理屈を与えて分析、それに対抗する手段を考案する、という展開も好みです(ちなみにここ何年かで触れたヒーロー作品でそのフォーマットを非常に巧く組み上げていたのが、事あるごとに褒めている海外ドラマ『FLASH』)。
 少し余談になりますが、近作と『ガイア』を比べて見えてくる要素として、過去怪獣の再利用を前提としている近年の《ウルトラ》シリーズにおいては、怪獣をゲストキャラクター化する事が難しくなっている為に、良くも悪くも物語の連続ドラマ的性質を強めると同時に怪獣ではなく「怪獣を操る」存在にキャラクターとしての焦点を当てる傾向が強まっているのだな、と改めて(過去作における、ヤプールやブラック指令が下敷きなのかもですが)。
 それでも『オーブ』はそれなりに、怪獣のキャラクター化を意識していた節はありましたが、ある程度の規模で分析・対策を行う背後組織(防衛隊ポジション)が不在の為に〔ヒーロー/仲間・組織〕というチームアップ構造には至らず……そう見ると『ジード』は、大規模な防衛組織を出せないなりにチームアップ構造をやろうとしていた事が窺えますが、その点はあまり巧く行かなかった感。
 それぞれ、時代時代の流れや要請、制作環境の事情などが諸々あるわけですが、同じ《ウルトラ》シリーズとはいっても、『ガイア』~『ルーブ』まで20年の歴史の中で、作劇の基本構造そのものの変化を見て取れるのが興味深く、一周回って、『ガイア』が新鮮です(勿論、この20年の中にも様々な変遷があったのでしょうが)。
 チームアップと言えば、クラゲ対抗装備の作戦を友人達に依頼した我夢が、かつて在籍していた研究室との関係が途切れていなかったのは良かった一方、丁度良い機材があるからという理由はつけるも、組織の体面と指揮系統、そこに所属する人々の誇りを個人的正義で踏みつけにするのは相変わらずで、夜中にエリアルベースから窓外投擲されないか心配になります。
 これは我夢の天才ゆえに最善手に飛びつく際の無神経さにして、未曾有の緊急事態において枠組みを突破していくヒーロー性でもあり、物語中においては「ウルトラマンに選ばれた事」(と命がけの姿勢)によりその正当性が担保されてはいるのですが、“最善手を選び続ける事が最善とは限らない”事もあるわけで、我夢の周囲への配慮不足が生む陥穽と挫折、みたいな展開まで踏み込むと面白そうですが……大学の友人達の姿を見る感じでは、どちらかというと、周囲の人間が自然と我夢をフォローする形でまとまっていくというタイプのキャラクターになっていくのか。
 できれば、頭が良くて責任感も使命感もあるが故に「後は任せました。お願いします」が出来ない人物をそのまま肯定的には描かないでほしいところですが、そういう点では、オペ子さんショートが事あるごとに「子供」「子供」とボールをぶつけに行くのが、多少なりともバランス取りとして有効に機能しているといえます。後、かつての同輩には信じて任せているといえるので、単純にXIGとの関係性は時間的問題なのかもしれませんが。
 大学で対クラゲ装備を受け取った我夢は、移動を開始したクラゲ怪獣を止める為に、独断でEXファイターに乗り込んで発進。
 「空だ……これが、現実の空……」
 シミュレーターでは高得点を叩き出していた我夢が現実の空の光景に圧倒され、実際のGに思うようにファイターを飛ばせない、というのは今作らしいディテール描写ですが、同時にサブタイトルでもある天空を翔る我夢の姿を彩るBGMは、非常にヒロイックで格好いい。
 「素人がいったい何考えてる! すぐ引き返せ! 実戦は遊びじゃない!」
 「僕はこの翼を、平和を壊す奴らと戦う為に作ったんです」
 「そんな事はわかってる!」
 顔を合わせると火花を散らす仲のライトニングリーダーが、決して後方の人間を軽んじているわけではない、むしろその気持ちを背負って飛んでいる、というのは良いフォロー。……まあどちらかというと、前線の隊員達を軽んじてなんでも自分でやらないと気が済まないのは我夢の方なわけですが。
 「戦うすべを持たない人達を守る為に、こいつのした事は許せない!」
 クラゲのビームを回避するも急上昇によるブラックアウトで墜落しかける我夢だが、ギリギリで体勢を立て直して復帰し、無謀な行動はともかくその心意気についてはどうやら認めるライトニングリーダー。
 「簡単に墜とすな。空に出たからには、おまえも自分の仕事をやり遂げろ」
 「了解!」
 空の戦友補正により勢いで絆レベルを上昇させた我夢は対クラゲパルスの照射に成功し、一点に収縮して観測される事で実体を与えられるクラゲ。
 「上出来だ!」
 ファイターのミサイル攻撃を受けたクラゲは炎上しながら地上に落下すると、首長竜の化石のような頭部を揺らす地上形態にフォームチェンジし、その反撃を受けて3号機は今日も景気良く離脱。それを見た我夢はガイアに変身するも遠距離ではビーム、近距離では触手攻撃を受けて苦戦するが、ライトニング1号の支援射撃が突き刺さった隙にバック転で距離を取ると、概念化された光の頭突きことうにょんバスターを炸裂させる。
 最後は燃え上がるクラゲに空中からビームを吹きかけて消滅させ(消火活動?)、今回も帰投シーンがEDを浸食。
 「……我夢の、無断発進については、後で厳しく処分します」
 「ん」
 横に並んだ監督から無言のプレッシャーを受けたコマンダーは、処分を確約してお引き取り願うと(あ、俺これ、減給処分かも……)と胃もたれしているみたいな顔になって椅子に座り、キャリーのチーフは今頃きっと(母ちゃんごめん、俺もう、今年のボーナスは無いかも……)とあふれ出る涙をぬぐっているのであった。
 なお、墜落もしていない内からコックピットで変身、という荒技を見せた我夢が操縦していたEXファイターは自動操縦で健在であり、初代『ウルトラマン』の頃から難しい要素だった「戦闘機が墜落しないと主人公が変身できない」問題は量子と科学の力で解決されました(今作以前にも、この問題の解決策を示した作品はあったかもですが)。
 そして怪獣の被害にあった地区を報道していたTVクルーは、被害地域で想定よりも遙かに多数の生存者が発見されたという吉報を受け取っていた。
 「気にいらねぇのは……その全員が同じ証言をしてるってことなんだよなー」
 「て、なんて?」
 「誰かに、頭ん中覗かれてたような気がしたそうだ」
 思わせぶりに姿を見せた謎の黒シャツの男が多くの市民を助けた事を匂わせつつ、同時にそれにまつわる不穏な情報も提示して、全ての情報をXIGに集約する事なく、無理なく分散して視聴者に伝える、というのは今作の複数視点が巧く機能しています。
 果たして、黒衣の青年は何者なのか……次回――青い巨人、再び。
 もう少し、我夢とXIGの足場を固めてから第二のウルトラマンが本格登場するのかと思っていたのですが、ぐいぐい来る作劇が、吉と出るか凶と出るか、そして、半年後のコマンダーの給与は幾らなのか?!
 切実に我夢には、戦うすべを持たない人達だけではなく、チーフとコマンダーの給料明細を守る為にも、もう少しだけでも周囲への気遣いや事前の連絡を覚えてほしい。