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焼きそば代が欲しかった

ウルトラマンルーブ』感想・第12話

◆第12話「俺たちの守るべきもの」◆ (監督:武居正能 脚本:武上純希
 黒衣の少女が召喚した狼怪獣にはゴッドハンドが通用せず、盛大にぶぼばーしたオーブダークは早々にリタイア。吹き飛んできたオーブリングネオを拾ったアサヒは、狼怪獣に惨敗したウルトラ兄弟がキラキラしながらイサミとのカツミの姿に戻るのを目撃する事になり、気絶した二人は入院。
 翌日、黒衣の少女が再び怪獣を召喚し、目的不明の存在が怪獣を出したり引っ込めたりするのが話の都合にしか見えない(そこの理由付けが示されない)のも苦しいのですが、家族を軸に生活感を出そうとしている作品なのに、バンクの都合でいつもの衣装に着替えないと変身できないのが、地味に痛い。
 これはもう設計段階における明確なミスだと思うのですが、今作が志向する生活感や、感性や視線が一般市民に近いヒーロー像と、“私服の制服(記号)化”という手法が全く噛み合っておらず、変身バンクやウルトラマン内部映像に、もっと工夫が――別のアプローチが――必要であったと思います。
 あと第5話辺りであった記憶ですが、いつもの衣装以外の私服=怪獣は出てこないか出てきても変身に至らない、その後でいつもの衣装になる=これから怪獣が出てきて変身します、というサインになっているの、単純に作劇としてマイナスだと思いますし。
 「この手でこの街を守らなきゃなんねぇ。俺たちが育った、この街を」
 「いつの日か必ず帰ってくる母さんの為に。戻ってくる場所を守らなきゃいけない」
 ウルトラマンの正体を知ったアサヒに、戦いに向かう事を止められる二人は自分たちが守ろうとするものを宣言し、行きがかりでウルトラマンになってエゴサーチとかしていた兄弟がこんなに立派になりました、という意図だったのかもですが……ここ数話、基本的に同じような事を繰り返し口にしていますし、第7話の時点で
 (俺たち兄弟が何故、ウルトラマンの力を授かったのか、それはわからない。けれど、目の前に救える命がある限り、俺たちはこれからも戦い続ける)
 と堂々たるヒーロー宣言をしており、その具体化とか根っこにある芯の言語化というより、テーゼが行きつ戻りつして効果的に示せていない、という印象。
 むしろ、(2クール作品なら)3、4話ぐらいで形にしておいて、今回はその次のステップに進まなくてはいけないタームではなかったろうか、と。
 また、「俺たちが育った街」「母さんが戻ってくる場所」というのは納得しやすい動機ですし、兄弟にとってウルトラマンとして街を守る事がいつしか母の帰還を約束する行為にスライドしている(?)とも想像できるのですが、それならばなぜ兄弟は、15年前の母の失踪に明確に関わっている愛染を、もっと強く追求しないのか。
 そして、一つの節目扱いで「この手でこの街を守らなきゃなんねぇ」と宣言したエピソードにも関わらず、そこで立ち向かう敵が、繰り返し怪獣を召喚して街を危機に陥れてきた、兄弟にとって許されざるべき敵であると判明した愛染(オーブダーク)から、別の存在に外れてしまっているのか。
 行動と宣言、宣言と物語の展開が少しずつズレて深刻な断層を生んでいるのですが、つまるところ今回の兄弟の宣言はせめて前回なされるべきであり(それならば敵としてのオーブダークにピントが合った)、今回は新たな敵の影と共に、兄弟も次のサイクルへと向かっていかなければならなかったのでは、と思うわけです。
 今作、シリーズ構成を3人置き、ここまで12話で9人の脚本家を起用、純然たる単発エピソードといえるのが第5話ぐらいである事から、各話オーダーがかなり明確に出ていると思われるのですが、その割には話の構成がスムーズとは言いがたく、作り方が巧く機能しているのか、どうも首を捻ります。
 「カツにい! イサにい!」
 「……心配するな」
 「「俺たちは、ウルトラマンだ!!」」
 前回の感想で書いた通り、この「ウルトラマン」の扱いもどうにも物語の中にしっくり収まって感じないのですが、加えて個人的には、怒濤のアサヒちゃんヒロイン推しが全く得しない(笑)
 まあこれは趣味嗜好の問題にしても、急に泣きヒロインというのもどうかと思います。
 狼怪獣に立ち向かう兄弟は、土で周囲を覆って高熱であぶる事で固めてしまう縄文土器作戦を行うも、想像を超える怪獣のパワーに失敗。再び追い詰められたその時、アサヒが手にしたオーブリングネオが光を放って兄弟の元に届き、怪獣を吹き飛ばす。
 「これは……」
 「オーブリングネオ」
 とかやっても、致命的に劇的になりません。
 オーブリングネオ、兄弟が自力で獲得した要素がほぼ皆無なので、物語上でなんの象徴にもなっていない(ある意味では、愛染の執着の象徴)上に、そもそもこれをどういう物だと捉えているのかさっぱりわからないので、正直、頭を抱えるのを通り越して真っ白になる展開。
 もしかしたら兄弟、ルーブクリスタルと同じウルトラアイテムのノリで受け止めているのかもしれませんが、ここまでを見ている限りでは、某残念さんが質に流したとかでない限り、愛染が作り出したようにさえ見えるので、その出自が示されないまま「俺たちのパワー」扱いされても、大変困惑。
 また、守りたい存在であり支えてくれる存在でもあるアサヒから受け渡す事で、ヒーローが2人だけで戦っているわけでない事を示す狙いがあったのでしょうが、ここ数話の兄弟が勝ったり負けたりを繰り返している事からも、むしろ兄弟が自力で勝ち取る(試練を乗り越える)という形で見せた方が良かったと思います。
 色々な問題をひっくるめた結果、困難をひっくり返す逆転のアイテムが、ヒーローの成長とほぼ関係ないところから飛んでくるという大惨事。
 存在自体が物語のミステリーの中核にしても、アサヒも物凄く都合のいいヒロインになってしまっているのですが、どうしてもアサヒからパスするならせめて、兄弟が愛染をしばき倒して強奪 → 使おうとするが使えない → 再び愛染の手に → アサヒが拾う → アサヒの想いが浄化 → 切り札に変貌、ぐらいのプロセスで説得力を足してほしかったところですが、やはり第10話でざっくり使ってしまったのが響いており、オーブダークを数話に渡って登場させたいが、オーブリングがルーブのアイテムである事は見せないといけない、という販促の事情で物語としては無駄にリングを行き来させる事になったとしか思えないのが惨事に繋がった印象。
 「イサミ! 俺たち二人の気持ちを一つにするんだ!」
 「ああ! わかった!」
 リングを使っての連続必殺光線で狼怪獣を後ずらせた兄弟が、リングを填めたウルトラハンドルをがしゃこんすると赤と青の光が混ざり合い、二人の背後に召喚される巨大風来坊先輩。やたら別格の扱いを受けるも、前回の感想に書いたように全く物語の中に降りてきていないので、正直『ルーブ』としては意味不明なオーブのスタンドと共に、ロッソとブルは大出力の4属性合体必殺光線を放ち、狼怪獣を消し飛ばすのであった。
 史上最大の強敵であった狼怪獣を倒したウルトラ兄弟は再び群衆の喝采を浴び、前回で失墜した人気を取り戻すが、一方で無惨に敗北したきりで出てこ(れ)なかったオーブダークへの反応は一切描かれず、オーブダーク及び愛染の執着への描写も徹底していないのが残念。
 その愛染の元を看護士コスプレで訪れた謎の少女は、“古き友”と称してオスカー・ワイルドを引用し、白と黒がさっそく接触。一方、店に戻った3兄妹は、父に叱られるも和気藹々と開店作業を行うが、その様子を微笑ましくも複雑な面持ちで見つめる父の手元の写真には、記憶と違いアサヒの姿は映っていないのであった! でつづく。
 アサヒはやはり、湊家の男衆に偽の記憶を植え付け、地球人の妹・アサヒに擬態して暮らす、宇宙生命体(正体は南夕子メダル)なのか?! という疑惑が再浮上したところで、次回、定番の総集編。