東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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続けて『ルーブ』

ウルトラマンルーブ』感想・第10話

◆第10話「湊家の休日」◆ (監督:武居正能 脚本:勝冶京子)
 冒頭からルーブ兄弟と怪獣の戦いが描かれ、グランドの色合いは格好いい。ブル:グランドが自転車を吹き飛ばしながらがに股重力波をぶつけた所に、ロッソが前回奪い取ったペロペロキャンディーを躊躇なく使って必殺光線で怪獣を仕留めるが、目・肩・腰にアリナミンV! が欲しそうな姿をTVの前で見せる兄弟に、観戦していた愛染社長は不満たらたら。
 「ぶざまな勝ち方は、ヒーローの美学に反するねぇ。前回は少し油断したが、やはり、ウルトラマンにふさわしいのは、この私。人々がヒーローに求めるもの、それは、一度負けた逆境から、這い上がる姿だ!」
 否定しづらい……(笑)
 「これが俺たちの新しい力か」
 イサミはペロペロキャンディにキラキラした視線を送り、いやそれ、2人がかりで殴る蹴るした異星人から強引に奪い取ってきたものだと思うのですが……。
 愛染への対抗意識もあってか、「ウルトラマンである」事に以前より強くこだわるようになり、ヒーロー活動に前のめりになっていくイサミは、お揃いの恥ずかしいTシャツを来た家族ピクニックでも、波動の収集を優先。
 「俺たちはウルトラマンとしての使命がある。遊んでる場合じゃねぇよ」
 「休憩も大事な仕事だと思うぞ。……それに、今は湊イサミと、カツミで、俺たちには家族が居る」
 そんなイサミに、カツミは自分たちが自分たちである事を支えてくれる、大事なものがあるのではないか、と諭す。
 「あの笑顔を守れるのは……俺たちしか居ないだろ」
 「…………そうだな」
 家族の存在を軸に、ウルトラマンより前に「個人」である事を確認した兄弟が、自分として大事な物があるから「ヒーロー」としても戦えるのでは、と愛染のメタ的なヒーロー理想論に対して、改めて立ち位置を見定めるのは悪くなかったのですが、少し引っかかった(そして私が今作にもう一つはまりきれない原因の一端な気がする)のは、「ヒーローとは何か」をかなりストレートに次々と投げ込んでくる作劇の結果、それらの全てが、ダイジェスト気味になっている印象。
 いってみれば、既製品のショーウインドウのようになっており、個々の既製品が悪いわけではなく、それらを集める事も悪くはないのですが、あれも良いこれも良いと好きな物みなぶら下げすぎた上に、兄弟がそれを着てみせる為のマネキンと化してしまっている部分があり、服を着るに至るプロセスと、その服を兄弟にフィットさせる為の仕立ての部分が弱いな、と。
 これは兄弟がヒーローとして未成熟だからであり、後半戦ここから、所狭しと並べられた既製品を『ルーブ』としてのオーダーメイドに仕立て上げていく、という構造になるのかもしれませんが、並べたい物を並べようとしすぎて、オーダーメイドに着手する前に散漫なまま終わってしまわないかどうか、が若干の不安。
 そういう観点では、愛染社長は既製品のセールスマンとも言えるので、それと対立する兄弟の存在に計算はあると思いたいのですが、既製品のコーディネートの中から、俺色に染め上げた『ルーブ』のうちゅ~んを生みだしてほしい。
 ピクニックからの帰路、一家の前に姿を現した愛染は、兄弟の目の前で堂々と怪獣を召喚。
 「今から、君たちが本当にウルトラマンとして、私よりふさわしいか、最終試験を行います」
 今回のキーとなった「家族」との接触を挟んだ上でなので、「家族を取るか、街の人々を取るか」というえぐい選択でも迫ってくるのかと思ったら、単純に物凄く強い怪獣を送り込んで戦闘を採点するだけ、というのは大変拍子抜けでしたが、その強力怪獣が四つ足の獣タイプだったのは、良かったです。
 狼怪獣のスピードに苦戦するウルトラ兄弟が、竜巻で動きを止めたところに重力魔球で硬直させ、その間に空から大技を叩き込む、という連携も格好良かった……のですがトドメをさせず、逆に反撃を受けたブルが、キラキラしながら消滅。必殺光線の余波で倒れたビルから家族を守ったロッソも、続けてキラキラしてしまう。
 「家族を守って負けるのは、本末転倒ぉぉぉーーー!!」
 兄弟の敗北にテンション最高潮の愛染は、前回と真逆のシチュエーションで、倒れ伏す兄弟の前からペロペロキャンディを回収。
 「愛染マコトです。お疲れさんです」
 厭味たっぷりに、「負け犬の歯ぎしり」という名言カードを置くと、更に追い打ち。
 「ヒーローは、遅れてやってくるんだよ」
 うわ、言い回しのコピーが完璧で、物凄くいらっとします(笑)
 流れ弾で、本家への好感度も落ちそうだ!
 「君たちは、家族とか言ってるから、スケールが、小さい」
 「おまえは……なんの為に戦ってる」
 「強くて格好いいヒーローは、人々に、希望を与えるからだよ」
 守るものの為に戦った結果としてヒーローになるのではなく、ヒーローになる事そのものが目的化している愛染は、その看板を支える柱の無さを兄弟との対比として描かれる一方で、理想のヒーローという看板そのものは磨き上げられている為に、表面上の発言は真っ当に聞こえる部分があるのが悪役としてのタチの悪さ。
 「おまえには、守りたいものがないのか?!」
 「哀れなヤツだな」
 一方の兄弟は、着せられているテーゼが先行しすぎて反論が飛躍気味になっていところに主人公としての弱さを感じるのですが、特に、悪玉が善玉に「愚かなヤツ」と告げるのと似たような感覚で、善玉から悪玉に「哀れなヤツ」と言わせてしまうのは、感心しません。「他者を哀れむ」という心情は、もっと慎重に用いなくてはいけないと思うのです。
 「今の君たちこそ哀れだねぇ。どっちが正しいか、そこで見物してるといいよ。あ、就職の件、決めたら連絡してね」
 どちらかというと、この返しをやりたかったのでしょうが、主人公が悪役に引きずり倒された感。
 兄弟を嘲弄して身を翻した愛染が、逃げ惑う人々の中をただ一人、怪獣に向けて真っ直ぐに進んでいくというヒーロームーヴ発動は大変面白かっただけに、間にパロディのパロディである「あばよ」を挟んだのは、私の好みとしては余計でした。


 ウルトラマン それは正義を愛し、悪と闘う この地球を守る唯一無二の存在
 絶望の中、人々の祈りの声が聞こえる
 求めている 負けても尚立ち上がる 完全無欠のヒーローを
 「その存在こそ私、愛染マコトだ。全世界待望、ウルトラマン伝説が、幕を開けるのだ」
 愛染は再びオーブダークに変身し、自身が召喚した強力怪獣に立ち向かおうとする、ところでつづく。一つ間を空けるのかと思いきや、今回も怒濤の愛染編となりましたが、果たして次回、愛染マコトは生き延びる事が出来るのか?!

 ☆今週の怪しいアサヒナビ☆
 母の失踪前に、家族写真を撮るシーンで赤ん坊として登場……したと思ったら何故か、乳幼児の頃の記憶あり。
 「そうそう、結局トイレに忘れてたんですけどね」
 部分的に母・ミホと記憶を共有している節が感じられますが……どう転がりますか。