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ウルトラマンルーブ』感想・第8話

◆第8話「世界中がオレを待っている」◆ (監督:辻本貴則 脚本:中野貴雄
 「おい、エゴサーチばっかして調子に乗るんじゃない」
 女子高生に声援を送られて手を振ってしまうウルトラ弟、勝利後に記念撮影を頼まれてポーズを取ってしまうウルトラ兄弟……その脳天気な姿と雑な戦い、ウルトラマンとしての品の無さに憤る愛染社長は、社員その他の精神エネルギーを注入する事で、遂にオーブメダルを起動状態にする事に成功する。
 「世界中は、誰を待っている? 世界中は、誰を信じる? そう――私だ」
 『オーブ』は知っているのでネタはわかるものの、思い切りメタというか、他作品が侵食してきましたが、そういえば今作のシリーズ構成かつ今回の脚本担当である中野貴雄は、『オーブ』のメインライターでもあった故なのか。
 父親の新作Tシャツ1万枚を納品に行く兄弟だが、何故か山奥の空き地で待ち受けていた愛染社長から、それぞれにウルトラ通信簿を渡される。
 「おまえらは、ウルトラマンとして、落第点だという事だ」
 ウルトラマンの正体が兄弟であると知っている事を告げた愛染は、大興奮で二人にダメ出しを連発。
 「そう、折しも今、私が着ているのも、愛染マコトというちっぽけな地球人の器だ。ある意味、私は、この中に15年も閉じ込められていたのだ」
 そしてその瞳が、人ならぬ赤い輝きを放つ。
 「……カツにぃ、こいつ人間じゃねぇ!」
 「そう、私は人間ではない! だが! おまえらより高い、市民税を、いっぱい払ってるぞぉぉぉぉぉ!!」
 1300年前、現在の綾香市に降り注いで砕け散ったアヤカ星から、ウルトラマンの力が分散した。それを求めてやってきた異星人チェレーザは、地球人・愛染マコトに憑依しながら、その力を手に入れようと活動していたのである……と怒濤の勢いで明かされる愛染マコトの秘密。
 思い切り良すぎて狼狽しますが、愛染社長の正体が判明する一方で、劇中における「ウルトラマン」の扱いが非常に不明瞭になり、アヤカ星に関しては完全に謎の存在で、今後はそれが、物語として謎の中心になっていくのでしょうか。社長の正体に関してはもう、熱狂的なウルトラマンファンの異星人なら仕方ないよね、という事で納得するしかないのか。
 地球人としての器を手に入れた愛染は、宇宙考古学者・湊ミホと共にアヤカ星を研究を進めていたが、15年前、完成目前だったウルトラハンドルを奪ってミホが「手の届かない場所」に消えてしまう。野望の達成寸前に成果を失った愛染は、それから15年の年月を掛けて今ようやく、光の力を手に入れたと豪語する。
 「今こそ宣言しよう――私こそが、ウルトラマンだ」
 オーブメダルを発動する社長、いきなりの黒タイツ姿に(笑)
 困惑というか当惑というか、今回の展開をどう受け止めればいいのか、感想を書いている現在進行形で未だに整理がつかないのですが、ハンドルをがしゃこんしながら様々な角度で捉えられる社長の決め顔、は悔しいけど大変面白かったです(笑)
 思わず、録画残してあった『ウルトラマンオーブ』(で二番目に好きな「ハードボイルド・リバー」)を確認してしまったのですが……あー、うん、ガイさん、似たような感じでアレでした(ガイさんの場合、カードを2枚通す関係で、目線を向ける事に必然性はあるのですが)。余談ですが「ハードボイルド・リバー」で顕著に描かれ、終盤の展開にも繋がる、オーブと一徹の間の謎の信頼感が好きです(笑) ガイさんの絆レベル明らかに、〔ナターシャ>>>ジャグラー>>>一徹>>>>>>>>>>>>キャップ〕。
 「銀河の光が我も呼ぶ。我が名は、ウルトラマンオーブダーク・ノワールブラックシュバルツぅ!」
 オーブカリバー担いで出現した黒いオーブ愛染は、兄弟へ更なるダメ出しを突きつける。
 「いいか? 一流のヒーローは悩まない! 己の未熟さを、世間に押しつけないんだよ!」
 ……え。
 今、どこかの風来坊の左こめかみにに特大の隕石が激突して、登場もしていないのに熱狂的シンパにより背中から機関銃掃射を浴びるクレナイ・カイさん(仮名)の残念パワーに戦慄します。
 (物語としては、シンパである愛染社長が、実はヒーローの表層しか見ていない、という事を示唆する要素であるのでしょうが……この辺り、悪としての愛染の「悩まない」というスタンスと繋がっていたりは面白いのですけど)
 「最近のウルトラマンは喋りすぎだ。神秘性がなくなる」
 「ヒーローとは決めポーズなんだよ。おまえらは致命的にそれが、ダサい」
 で、あれこれ書いている内にようやく、今回のエピソードに感じる引っかかりの正体に気付いたのですが、“意志無き力を奪い取る事によってウルトラマンに成り代わろうとする悪の宇宙人”というアイデアは物語の軸として普通に面白いのに、それを悪意めいたものさえ感じるメタネタで消費しているのが勿体ないな、と。
 お陰でこのアイデアも、真剣に描きたいのか、単なるパロディのネタなのか、捉えにくくなっていますし。
 まあ愛染の正体判明がやたら早かった事を考えると、これから登場する真の巨悪に対抗する為に、愛染が本気で理想のウルトラマンとして兄弟を育てようとしている可能性も、ごく僅かにありますが(とはいえ、これまでの破壊活動は看過できない)。
 「ハイ! 授業終わります」
 その実力とダメ出しの数々で兄弟を翻弄するだけ翻弄したオーブ愛染は、ダークストリウムダイナマイトを放って兄弟を完膚なきまでに叩きのめして変身解除に追い込み、念願のウルトラマンの力を振りかざして高笑いするのであった、でつづく。
 上述したように困惑が先に立つエピソードでしたが、冒頭のアリブンタ戦で、画面奥から手前に逃げてくるミニチュアの車が次々と炎上していく場面(走りながら燃えていく、というのは珍しい気がする)と、オーブ愛染の放った八つ裂きカリバー光輪が兄弟に直撃した後、時間差で送電線が倒れて、最後の一つが画面手前を塞ぐようにどうと倒れる、という場面の映像と演出は格好良かったです。
 個人的に、1996年の怪作『超光戦士シャンゼリオン』第30話「ヒーローの先生!」――C調の主人公に清く正しい理想のヒーロー像を求める怪人が、ヒーローの矯正を行おうとするエピソード(こちらは純然たるパロディ)――を思い出さずにはいられなかったのですが、次回、兄弟は特訓により、格好いい決めポーズを修得する事ができるのか?!
 私の嗜好としては素直に面白がりにくいエピソードで、色々、次回待ち。

☆今週の怪しいアサヒナビ☆
 お友達が誕生日を忘れている。