東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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試運転

仮面ライダージオウ』感想・第1話

◆EP01「キングダム2068」◆ (監督:田崎竜太 脚本:下山健人)
 「俺はやっぱり……王様になりたい! 世界を全部良くしたい。みんな幸せでいてほしい。そう思ったら、王様にでもなるしかないじゃないか!」
 主人公は今のところ、底抜けに懐の大きい夢想家、という感じですが……その夢想を実現する為に何かしているのか、夢ばかり大きくて何もしていないのか、というのがわからない為、正気と狂気の境界線が不明瞭で、掴みにくい印象。ある種の狂気ならばある種の狂気と描いてくれた方が個人的には有り難いのですが、第1話の限りでは、素人?相手にアスファルトの階段で巴投げを決める柔道部員の方がよほど狂気。
 まあその柔道部員に対して、「僕のSPにならないか?」と言い出す主人公も狂っているといえば狂っている気がするのですが、狂っているというより、ただの失礼な馬鹿なのでは疑惑も少々。
 次回、主人公に好感を持てるような要素が入ってくるといいのですが、現時点だと、これだ、というプラスの印象が特に残らないキャラクターになってしまいました。
 あと、これはどうも演出の方でワンパターンになりがちな点に思えるのですが、魔王ジオウ(68歳)の魔王ぶりを示すのが、群がる武装勢力(練度低そう)を適当に蹴散らすというアクションシーンだけの為、魔王がどのぐらい魔王なのかがあまり伝わってこず、色々あった上であそこに至る、という省略はわかるのですが、もう少し、台詞などで補強した方が良かったかなと。
 根本的なところでは個人的にどうも、「魔王を倒す為に50年前に戻って魔王候補を抹殺(或いは人格矯正)する」という物語の導入自体にあまりときめきを感じなかったのですが、それならそれでいっそ、第1話の主観は思い切ってツクヨミゲイツに寄せて、最低最悪の魔王誕生を阻止する為に最後の手段を用いて過去に戻ってみたら、魔王候補は色々アレな青年だった……みたいにして、ツクヨミゲイツの心情に視聴者を同調させつつ、そのギャップから主人公の好感度へ繋げていく、といったような思い切った仕掛けがあっても良かったのではないか、みたいにも。
 時間旅行しつつ、さらっと次元の壁の突破を織り交ぜ、前作の主役コンビを出し、一通りの基本情報も見せ、もちろん主役の変身からバトルもあり、と立て込んだ内容を整理して見せる手腕は田崎監督がさすがでしたが、一方で、第1話としては大人しくまとまりすぎた感もある中、一番面白かったのは、ジオウ初変身を讃える朗読を始めるマネージャーさん。
 時空ドライバー、2ヶ月ぐらい使っていると回転機構がやわになりそうでドキドキするのですが、そろそろ危なっかしくなってきた頃合いを見て、
 「魔王様、替えのドライバーでございます」
 とマネージャーが新品を持ってきてくれるのか。
 あと、“本来の歴史なら死んでいた人間”と契約して怪人にする、というのは面白かったです。ただ、今回の対象者が切迫感も非現実感もいまいち感じられないままあっさり契約してあっさり怪人になってしまい、もう少し外連味の強い演出でも良かったかな、と。
 そしてアナザービルドは、悪いビルドというよりも、邪悪なキカイダーに見えます(笑)
 全体的に第2話待ち、という印象ですが、時計屋に下宿する事になりそうなゲイツの、変身ポーズは格好いい。
 気になる点を一つ挙げると、
 「決めた。俺は、魔王になる。ただし、最低最悪の魔王じゃない。最高最善の魔王になってみせる」
 という主人公の宣言が、「魔王」という単語を弄ぶレトリックでしかなく、「魔王」の中に「王」の字が入っているから喜んでいる主人公をはじめ、右も左も「魔王」という名称の表層にこだわっているだけに見えてしまう事。
 もちろん、名前は存在を縛りますし、今後の展開の中で「魔王」の意味そのものを掘り下げていくのだと期待したいですが、アイデアの「表層」だけで満足して掘り下げをしないでいる内に、その「表層」に振り回されてしまうという、『ニンニンジャー』で見せた下山さんの短所が、物語構造そのものに重なって見える節があるのは、少々不安。