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引っ越しルパパト29

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第29話

◆#29「写真は記憶」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:金子香緒里)
 「「歓迎会?」」
 「はい、ノエルさんが来てから、まだやってなかったので」
 「確かにやってないが……誰が主催するんだ?」
 「ノエルさんが」
 先輩2人に平然と説明できる咲也は、魂がビブラニウム製なのか、或いは過去に自分主催自分誕生パーティでも開いた事があるのか、闇の深まりと共にドンドン化け物に成長していきます(笑)
 つかさが真っ当に首をひねりながら深遠の蓋に手をかけたその時、堂々と街を練り歩いていたゴーシュ&構成員と遭遇して戦闘に突入し、しばらく夏休みスペシャル生アクション祭。その最中、頭部を金庫に改造された構成員のチョップを受けた圭一郎の記憶が、大量の写真となってばらまかれ、圭一郎は咲也の事を忘れてしまう……。
 「僕の、写真……? ……先輩……そんなに、僕の事を……嬉しいですっ!!」
 「君はいったい誰なんだ?! つかさの知り合いか?!」
 「圭一郎……おまえ、まさか……」
 というわけで、記憶を写真に閉じ込めるコレクションの効果により、長い付き合いのつかさは別に、咲也やジム、ルパンレンジャーの事をすっかり忘れてしまった圭一郎。写真を通してその記憶を振り返るという、夏の最後の総集編。
 見所は、女子高生初美花(ドリーム世界)の記憶写真を、懐に収めようとしてつかさに止められる陽川咲也容疑者。
 ……これ、咲也からすると、先輩がどうしてこんな記憶を……? という凄く謎の多い写真なような(笑)
 つかさと咲也は、写真の拾い残しがないかを確認に向かい、圭一郎が快盗戦隊の写真に反応を示すのを目にしたノエルはジュレへと向かう。
 一方、ドグラニオ邸に戻ったゴーシュは、事の推移をボスへと報告していた。
 「移植に成功したようだな」
 「はい。ただコレクションの能力を、完全には発揮できないみたいで」
 これまで、再生時の核となる事からギャングラーの本体疑惑もあった金庫を、構成員に移植、というのは大変不穏ですが、金庫はどこかに転がっているものなのか、死体(下手すると生体?)から構成員に移植したという事なのか。久々にゴーシュが闇医者スキルを発揮すると共に、ギャングラーの金庫とは何か? という要素が再浮上し、改めて後半スポットが当たってくれそうなのは楽しみ。
 「ドグラニオ様にコレクションをねだったかと思えば、こんな事に使っているのか」
 「後継者争いは、面白い方がいいでしょ?」
 もう一つポイントは、ドグラニオは全てのコレクションをギャング達に配ったわけではなく、(その方が今後の物語も展開しやすいでしょうが)手元にまだコレクションを残しているというのがハッキリした事で……まあ、管理しているのはデストラさんだと思われますが。
 「私は実験を再開してきますわ」
 「……人間を切り刻むだけじゃ飽き足らないのか」
 「ふふふふふふふ」
 元部下への対応など見る限り、デストラさんも特に人情肌という事はなくドライな性分であると思われますが、それでもゴーシュの身内に対する人体実験には感心しない様子を見せ、これがデストラのゴーシュに対する嫌悪感の要因の一つであり、デストラの持つギャングラーとしての倫理観である、というのが短いやり取りの中で示されていて、秀逸な呟き。
 「僕は、快盗も警察も、どちらも必要だと思ってる。君たちだって、圭一郎くんを元に戻さないと、困るんじゃない?」
 「「困らない」」
 変身前の快盗の写真を拾い、首を捻りながら回想していた魁利達に事情を説明するノエルだが、圭一郎&透真、見事なユニゾン
 「……うんうんうんうん」
 「……少しは困ろうよ」
 一方、つかさと咲也は道ばたで、頬すりすりと女体化エピソードの写真を発見・回収。
 「あの時の撮影は、楽しかったですね……」
 「あれが楽しいと思えるおまえを、尊敬する」
 咲也の、最強生命体への進化が止まりません(笑)
 つまり、咲也が、プレシャスだ!(待て)
 つかさはどちらの記憶も闇に葬り去ろうとするが咲也に止められ、ジュレではノエルが圭一郎の記憶復活に快盗の協力を要請していたが、男二人の反応は否定的。
 「初美花ちゃんは?」
 「……わかんない。女性に対しては最低だと思うけど」
 その問題、根深かった……!
 「さて、どうしようか? 厄介な圭一郎くんの記憶を、取り戻す? 戻さない? 答は、君たちに任せるよ」
 その頃、正義の本能の赴くままに警察署を飛び出した圭一郎は、金庫頭に襲われていた市民を助けるもギャングラーに追い詰められ、咄嗟にVSチェンジャーを引き抜いていた。
 「へ~、そういうとこは覚えてんだ。……さっすがぁ」
 「君たちは?」
 真っ昼間の街中では職質待ったなしの珍妙な3人組に対して平然と問いかける圭一郎、ギャングラー事件への関わりと関係なく、基本的に変質者のハードル設定が高かった……!
 俺に職質をしてほしければ、もっとおかしな格好をしてみせろ快盗ぉぉぉ!
 「あんたが忘れた――快盗さ」
 それはともかく快盗戦隊がテーマ曲をバックに予告状代わりに写真を投げるのが格好良く決まり、しばらく快盗の生アクションのターン。その戦いに記憶を刺激された圭一郎は立ち上がり、今甦る、硝煙に彩られた愛と銃声のメモリー


 「我々が手にしたものは、人々を守るための力だ。使い方を間違えてはならない」「どんな言い訳をしようとも、快盗という手段を選んだ時点で! 貴様等は間違っている!!」「……俺がすべきは、己のプライドを守る事じゃない。人々の安全と、平和を守る事だ!!」
 「おのれかいとぉぉぉーーー!」
 「やっと思い出したか」
 「俺はパトレン1号! 朝加圭一郎だぁ!! 警察チェンジ!!」
 気合いマックスの圭一郎は、今回ただ一人となる変身から警察ブーストすると、完全にギャングラーと快盗の区別なく殴殺しようとクレーンを振り回し……つまり、記憶が戻った最後の一押しは、
 快盗への殺意。
 …………逮捕、する気、あるんですよね……?
 国際警察の権限において、捜査中の射殺・殴殺・撲殺その他諸々の発生は、大変遺憾なので減給一ヶ月の処分です。
 「やっぱり、もう少し改良が必要ね」
 快盗はなんとかコレクションを回収、事の顛末を見届けたゴーシュは帰宅し、ひょっこり出てきたグッティがまとめてロボ回想をして、事件は解決。一同は高尾ノエル主催高尾ノエル歓迎会で顔を合わせる。
 「本日は、僕の歓迎会に集まってくれて、メルシー・ボクー。やあみんなどうもありがとう~」
 上機嫌のノエルは演歌歌手のディナーショーのような出で立ちで現れ、資金提供により高級食材使い放題の宵町シェフは、大変ノリノリだった。
 歓迎会の名目で敢えて一同を集めてみせたノエルは、最終的な思惑はどうあれ、快盗と警察の融和を図っていると見て良さそうですが、全員分の浴衣を用意して着用させ、ハレの場を演出する事で祭の雰囲気に乗せて互いの友好度をなし崩しに上昇させようという計算が見えるのが、良くも悪くもずる賢い(笑)
 「圭一郎くんの記憶が戻って、良かったね」
 「俺たちはコレクションを取りに行っただけさ。記憶が戻ったのは偶然だろ」
 嘯く魁利をノエルは微笑で見つめ、両戦隊の明確な橋渡し役を担った今回のノエルに関しては、さすがに背景の善意を信じたいところではありますが、ここからどう立ち回り、どう転がっていくの、引き続き楽しみです。
 最後は花火(これもノエル提供……?)を見ながら和気藹々と大団円で、なんとなく視線とか交わしてしまう魁利と圭一郎の友好度が、ノエルの思惑通りに上がった!
 なお、このビッグウェーブに乗るしかない! とアムールの国から来た男が生んでくれた地形効果を背負って初美花にアタックを仕掛けようとする陽川咲也容疑者だったが、前回の騒動の結果、俺は“親に想われている娘”を無事に親元に帰さなくてはならないのでは……? と若干の保護者意識に目覚めたのではという雰囲気のある透真の《虫除け》効果が発動して空振りに終わった事を、謹んでご報告させていただきます。
 ……ところで真面目な話としては、透真や初美花とは別に、拒絶する事で大切な人を失った過去を持つ魁利にとって、幾ら“今”の人間関係が願いの為の偽りだとしても、それを切り捨ててしまう事はかつての過ちを繰り返す事に繋がり、命を賭けた願いを持つからこそ、実は魁利は今を切り捨てる事が出来ないのではないか――宝石デザイナー回も踏まえた上で、魁利の抱えるそんな二律背反が背後に横たわっているエピソードであったかもしれません。
 というわけで、久々の警察のターンは危惧された総集編で少々残念でしたが、総集編の導入としては大変スムーズでしたし、回想シーンのテンポも良く、新規撮影分のちょっとしたやり取りの数々もそれぞれ面白かった上で隙間隙間に今後への布石もばらまかれ、かなり上質の総集編でした。惜しかったのは、ザミーゴを出せなかった事ぐらい。
 ただ一つ気になったのは、圭一郎って知力70台、もしかすると80台はありそうなのですが、杉原監督回だと、圭一郎の知力が10~20は下がって見える事(笑) 
 もちろん杉原監督はパイロット版担当として番組立ち上げから参加し、キャラクターの構築にも深く関わっていると思うのですが、恐らくわかりやすさと撮りやすから当初の演技プランとして寄せたと思われる、『ルパン3世』の銭形っぽさ、というのを演出陣の中で杉原監督だけが引っ張りすぎている感があって、特にそれが今回、金子脚本との化学反応もあって強く出過ぎたかなと。
 杉原監督も多分、圭一郎について“実際は十分に頭が切れるのだが、いっけん単純で馬鹿っぽく見える”ぐらいの意識で撮っているのだとは思うのですが、演出の傾向もあって“馬鹿っぽいを通り越している”時が散見されて、このズレが後々、大きな地割れを生むのではないか、というのを少し心配しています。
 まあ圭一郎、メンバーの中では顔芸で笑いを取りにいける貴重な人材、というのはわかるのですが。
 次回――夏休みなぜか魁利とふたり旅。