東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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引っ越しルパパト27

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第27話

◆#27「言いなりダンシング」◆ (監督:加藤弘之 脚本:大和屋暁
 冒頭からヒヨコギャング(どうやらパトレン特別編のリペイント怪人)と戦うも、華麗なステップに翻弄されて逃げられてしまうルパンレンジャー。追いかけようとした青だがヒヨコの持つコレクションの力で何故か追いかけられなくなってしまう。
 しばらく後のある日、買い出し帰りにしつこい勧誘に困っている男を見かねて助けに入る透真だが……
 「お主、儂の道場に入門するがいい」
 「…………はい」
 気がつくと透真は、代わりに勧誘を受けて、武突参(ぶっさん)流古武術の道場に入門していた。
 「……なぜ俺はここに居るんだ?」
 導入部分で、見も知らぬ男を助けに入るというのはどうも透真にそぐわない感じがして、「通りがかりの料理人だ」を言わせたかっただけというか一度言ってみたかっただけというか、導入の為の導入になってしまった感があるのは残念でしたが、ここから物語は一気にトップギアに入るとフルスロットルで獣道を駆け抜け、久しぶりに、大和屋暁さんの恐ろしさを思い知る事になるのでした……!
 「……ん?! いつこんな格好に着替えたんだ?」
 道着姿の透真の周囲には、同じく道着姿で真剣な面持ちの門弟が4人。道場主である小柄な中年男性・小紫庄右衛門の言葉に「押忍!」の大合唱で、なんとなく雰囲気に飲まれる透真(笑)
 そして基本の指導係として紹介されたのは……
 「こんにちは! 師範代の、陽川咲也です!」
 「は?!」
 「透真くん! 君も入門したんだね! どうぞよろしく!」
 咲也は笑顔でサムズアップしながら軽薄なウインクを飛ばし、全編ぶっ飛び気味のギャグ回なのですが、咲也の笑顔と透真の仏頂面の対比にしっかりとここまでの蓄積が活かされて笑いを発生させており、咲也は今回だけで、もはや1年分の大勝利(笑)
 咲也の、頭が回る割にはあまり他人を疑わず、良く言えば人なつっこく、悪く言えば脳天気、撃っても撃っても笑顔で付きまとってくるゾンビのような精神性が、こんな形で弾けるとは思いませんでした!
 その頃、国際警察ではジムを通じて、咲也が古武術の道場の師範代になった事が報告されていた。
 「射撃の能力だけに満足せずに、近接戦闘のスキルまで鍛え出すとは、なかなか見上げた心がけだな」
 「この短期間で師範代なんて、よほど向いていたのか?」
 先輩達に概ね好評で本人の与り知らぬ所で咲也株が上がる中、道場で軽快なリズムに乗せて始まる「武突参流古武術、ジョギング!」。それは……
 (これは……)
 「伸ばして縮めて! 伸ばして縮めて!」
 ……駄目、もう、咲也、面白すぎる……。
 (まさか……)
 「ニータッチ! ニータッチ!」
 会心の笑顔とハイテンションで、予告でばっちり見せたにも関わらず、予告の数倍面白くて凄いよ咲也!!
 (なんというか……!)
 「どう見てもエアロビクスだ!」
 予告から売りにしていたように、わかりやすい笑いのポイントは仏頂面の透真のレオタード姿なのですが、道着の時点で既に面白い咲也が素晴らしすぎます(笑)
 演出的にはモブ門弟4人がいて、師匠も何故か加わって、鉄面皮でツッコみ続ける(でも律儀に踊っちゃう)約1名含めて、合計7人で声を合わせて踊る、というのが凄く効いており、加藤監督が、いい仕事。加藤弘之×大和屋暁というと、『烈車戦隊トッキュウジャー』において、けん玉探偵ヒカリ回がありましたが、トンデモ回における波長が合う座組なのかもしれません。
 疑問を高らかに叫んだ透真だがしかし、入門の時と同様に、師匠の放つ言葉のパワーに素直に頷いてしまい、照明効果も加わって更にエキサイトしていくエアロビクスもとい武突参流古武術
 熱く ダ・ダ・ダンシング 心が踊る
 「ヘイッ! フゥ! マッスルボーイ! マッスルボーイ! ヘイッ! フゥ! M・U・S・C・L・E マッスル! プッシュ! キック! タップ!」
 最後は恐らく『キャッツアイ』パロディで締め…………ええともしかして今回、プロットの発端は「巷で幾つか言われているみたいだから、いっそ『キャッツアイ』ネタをやりましょうか」から始まって気がつくと魔境に辿り着いてしまったのでは。
 「なぜ俺はあんな道場に弟子入りしてしまったんだ……」(皿を磨く)
 「でも意外だよね~。透真が習い事なんてさ」(店の床を磨く)
 「いいんじゃね? ストレス発散になるっしょ」(自分のスマホを磨く)
 目を伏せて何やら考え込む透真、
 (ストレスがあるとしたら、3割はおまえだ……)
 とか考えていそうで怖いです。
 ある日の練習後、咲也から「一緒にお茶でもどうだい」と誘われるも即座に断った透真だが、不可解な現状を把握する為の情報源になるかと思い直して承諾し……何故か、ジュレでお茶する二人。
 ……いや多分、ケーキは、業者から仕入れてるから、自作では無いと思いますが!
 「あの、咲也さんは……」
 「ちっちっち。僕らは同じ道場に通う仲間だよ。先輩と呼んでくれたまえ!」
 後輩人生がたまに辛くなる咲也、透真に「先輩」呼びを要求し、宵町透真23歳、今になってわかる、初美花の気持ち。
 「……じゃ……じゃあ……咲也先輩」
 「え?! よく聞こえませんけど?!」
 「名護さんは最高です! どうか弟子にしてください! 僕、何でもしますから!」
 ……じゃなかった
 「咲也先輩!」
 「やー、気持ちいい! 「先輩」という響き、さいっこーーーーーーー!!」
 咲也は全身で喜びを表現し、透真はそれを憮然と見つめ、その光景に首をひねる魁利と初美花。
 「……何やってんだあれ」
 「さぁ……? あの二人、いつの間に仲良くなったの?」
 「仲良くなってるようには見えないけど」
 日頃、初美花に咲也からの好意を利用するように促している手前、退くに退けずに悪魔に魂を売ってのけた透真は、咲也が道場に入門したのは僅か3週間前だと聞き出す。
 「そんなにすぐに師範代になれるのか?!」
 「なんか僕、飲み込みが早いらしいんだよね~」
 (頼む……おかしいと感じてくれ)
 透真の視線が氷点下になる中、時間を気にして席を立つ咲也は妙にニヤニヤ。
 「え?! ここのお代?! いいっていいって! 僕は君の――先輩なんだから」
 聞かれもしない内からアピールしてウインクを飛ばす咲也に対し、石像のように無表情な透真の下に出現する、いらいらPOWERゲージが1目盛りUP!
 「ねえねえ透真くん! モテる秘訣ってあるの? あるなら、先輩に教えてくれない? てゆうか……恋の師範代になって下さい! なんちゃって。ははははははは」
 ここから少しの間、次々とシーンを切り替えながら、透真と一方的に心の距離感を縮めていく咲也の姿が描かれ、咲也視点のモテる透真=
 「こんなにモテて楽しいの初めてだいえーーーーーい!!」(風評被害)、なので、絶妙に透真の逆鱗に突き刺さり、いらいらPOWERゲージが一気に3目盛りUP!
 「ねえねえねえねえ、透真君。先輩として聞くんだけどさ、やっぱ先輩より、パイセンの方が今時なのかな?」
 ケチケチせずに、あっという間にMAXだ!
 遂に退会届を出す透真だが、またも師匠の言葉のパワーに意志をねじ曲げられてしまい、冒頭でヒヨコギャングが用いていたコレクションの能力なのですが、師匠がわざとらしく顎に手をやるのは、視線を誘導して腹部の光を悟られないようにする為、という理由づけなのか(単なる発動のキーかもですが)。
 魁利と初美花は、さすがにどうにも透真の様子がおかしい、とノエルに相談を持ちかけるが、ノエルが思い返す咲也の様子は……普段通りだった。何はともあれこっそり道場を覗いた3人は、レオタード姿で踊り狂う咲也と透真の姿を目撃。
 「随分……エアロビクスに似た武術だねぇ」
 「いや……エアロビクスだって」
 「見てはいけないものを、見てる気がする」
 そんな折、ヒヨコ師匠が何者かに電話で指示を受け、おはぎと偽った爆弾入りの重箱を国際警察に届けてくれと咲也に頼み、それを盗み見ていた透真はコレクションが発動する光を目にして、師匠の説得力のカラクリに気付く。
 そこに魁利達も顔を出し、レオタード姿を見られたショックに身をよじる透真。ここまでなかなか、表情や仕草では笑いを取りにいけなかった透真をかなりギャグに寄せて描写してきましたが、外へ向けて主張している自身のイメージを崩されると弱い、というのは上手い所を突いてきたと思います。
 「殺せ……俺を殺してくれ」
 「それより、咲也くんを放っておいていいのかい?」
 これまでのあれこれを思い出し……大変嫌そうな表情で
 「…………いいんじゃないか」
 という結論に辿り着くのが大変面白かったですが、咲也とは一応アムールの絆で繋がれた同僚であり、パトレンジャーにも利用価値を見ている筈なのでテロを成功されても困るノエルが、敢えて一度「選択」のボールを透真に渡すのはやはり、意図を持って快盗に「今」の人間関係を意識させようとしている気がします。
 そして……重箱抱えて会社に向かう咲也からそれを強奪したブルーは、追ってくる咲也の前で重箱を師匠の家に投げつけて爆弾である事を見せつけ、爆発の炎に巻かれて化けの皮の剥がれた師匠=ヒヨコギャングだと咲也が知ったところに、ノエルから連絡を受けた1号と3号が駆けつけて、警察チェンジ。
 だがパトレンジャーは、ヒヨコ爆弾と華麗なステップ、更にコレクションが操る言葉のパワーに大苦戦。
 「見たか。あいつは言葉で人を操る」
 「つまり、あいつの声を聞かなきゃいい、って事か」
 これを高みの見物しながらルパンレンジャーはコレクションの力を確認し、共闘の次の次の回で、警察戦隊を実験台に使う快盗戦隊、というのは、両者はまだまだ相容れない関係である、という事を示してきて良かったです。……まあでもノエルは、もう少し申し訳なさそうな顔をしてもいいと思いますが!
 パトレン1号危うしのその時、投げつけたX剣で強引にヒヨコの口を塞ぐと、素早い前転で懐に飛び込んだ透真が華麗にコレクションを回収。直後、後方からの援護射撃をひらりと回転しながら横によけるのも、格好良かったです。
 「おまえだけは絶対に許さない」
 いつもの変身バンクのフル名乗り……と見せて、物凄くドスの利いた新規アフレコでその名を告げた「ルパンブルー」は、マンタ回を越える殺意を込めて、猛然とダッシュから、VSチェンジャーで直接殴打(えぐい)
 赤と黄が両腕を拘束し、磔状態の所を銀が銃撃(えぐい)
 後方から飛び越えた青が大回転キック更に追い打ちで銃撃(えぐい)
 トドメは、電車2台×ジャイロ×スペリオル、の合体技で今回もオーバーキル(えぐい)
 「行ってやれ。次はあいつが借りを返す番だ」
 ヒヨコが巨大化すると、ブルーはグッティを促して2号の元へと行かせ、パトカイザーが出動。このまま快盗のターンで終わってしまうとあんまりだったので、警察戦隊に巨大戦を譲りつつ、そろそろ咲也とギャングラー被害者の会が血盟されつつある透真の、微妙な心境の変化が盛り込まれたのは良かったです。
 「咲也! おまえの武術修行の成果を見せてみろ!」
 「はい! わかりました!」
 先輩の声援を受け、今こそ見せろ武突参流古武術……で、おもむろに踊り出すパトカイザーと2号。
 「それが……古武術
 「咲也おまえ……何を習ってたんだ?!」
 更に師匠からもダメ出しを受けたところでXが助っ人に入り、ようやく、騙されていた事に気付くパトレン2号。
 「……そんな……あの……高額な月謝が、無駄だったのか?!」
 夏は古武術でモテモテだった筈なのに!!
 怒りの咲也は1号からクレーンとバイクとセンターを奪い取ると、伸ばして縮めて! 伸ばして縮めて! ヘイッ! フゥ! マッスルボーイ! マッスルボーイ! ヘイッ! フゥ! M・U・S・C・L・E マッスル! プッシュ! キック! タップ! のリフトアップストライクでデリートし、幻に終わった夏のビーチの視線は釘付けの恨みを晴らすのであった。
 なんだかいたたまれなくなった先輩達が打ちひしがれる2号になけなしのフォローを入れた後にパトカイザーは分離し、飛び立っていくグッティを見ながら、仮面を外す透真。
 「借りは返せたな……先輩」
 で、しみじみ……終わるわけがなかった。
 「それにしても……なかなかいいコンビだったな」
 「息もぴったりだったしね~」
 赤と黄は覗き見していた武突参流古武術を踊り出し、改めて、恥ずかしいあれやこれやを思い出し、苦悶する透真。
 「おまえら……今日の事は忘れろぉ……頼む……忘れてくれ……!」
 ……君たち、あまり弄ると、まかないに下剤入れられるゾ。てまあ、もはや透真が「料理」にそんな事をする筈がない、というのは積み重ねから伝わってくるので、第3話のあれはやはり「冗談」であった、と納得できるわけですが。
 大和屋さん得意のトンデモ方面のギャグ回でしたが、ただネタに終始するだけではなく、半年分の蓄積を踏まえた上でネタに転化しているのがさすがの腕前。「透真と咲也がレオタード姿で踊る」というわかりやすいインパクトに、「透真の仏頂面と咲也の笑顔が映像と人間関係の双方で対比される」事で更なる笑いを上乗せしており、演出と脚本の狙いが巧みでした。
 また、顔面表情筋の動きが鈍く表向きは鉄面皮の透真ですが、実は真に面の皮が厚いのは咲也ではないのかというのが裏のギャグとして仕込まれているのが、お見事。
 まあ一歩間違えるとサイコパスのストーカーなのですが、圭一郎にあれだけなつける陽川咲也の只者でない部分が垣間見え……やはり全て、演技なのではないか咲也ぁ?!(しぶとい)
 前回が、目くらまし程度の微妙な効果のコレクションを有効活用して荒稼ぎを図るギャングだったのに対して、今回は物凄く強力な効果のコレクションをケチな小銭稼ぎに使うギャング、という1セットの構成も面白かったです。
 気になるのは、小銭稼ぎから一転、国際警察への爆弾テロを指示してきた謎の電話(ただし、ヒヨコの応対は敬語ではない)ですが、果たしてヒヨコは咲也を国際警察の関係者だと知って入門させたのか、はたまた単なる偶然を裏に居る存在が利用しただけなのか……面白く拾われるのを期待したい。
 久々の戦隊参加となった大和屋さんが、香村シェフが織り成す繊細な和風懐石フルコースの真っ最中に、大皿で真っ赤なカレーを投げ込んできつつ、コース全体の調和はギリギリのところで崩さない、という見事なお手前を見せてくれて、楽しい1本でした。