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3/18付けレス

 本日は『リュウソウジャー』感想を書きました。ケボーン!(とはいったい何なのか)

エウレカ

◆橘まことさん
 >あれはその後のポーズとセット、というのも大きかったのでしょうか。ノリノリでやる天晴、戸惑いながら付き合う大和、完全無視のマベ&スティンガーも見てみたかったですが(笑
ああ、それは、凄く見たかったですね(笑) こっそり五本指広げてくれていいんだよスティンガー!
 >天晴の魅力は「周囲に流されない芯の強さ」であり、『ニンニン』本編ではリーダーである分、
 >状況に応じた変化を見せねばならなかったのが、キャラ立てと噛み合わなかったのかなあと思うところです。
天晴と舎弟達の関係性をどう描くのか、というのは本編でも試行錯誤というか混迷が見られましたが、天晴が引っ張っていく物語を描ききれず、物語に合わせて天晴を変えなければならなかった、というのが改めて見えてくる『ニンニン』のぶつかった壁であったんですねー。
 >めちゃくちゃ見てみたいですが、50周年でも嬉々として参戦しそうなドギーを始め、長官になるには倒さなければならないOBが多いのが問題ですね(笑
やはり……スーパー長官最強バトルを開催するしかないのでしょうか……。

◆さやまきさん
 >ブーバさん一行はあんな所で一体なにをやってたのか? まさかピクニックと洒落込んでいたのか(笑)
完全に通りすがりの上に、一切説明されませんでしたね……(笑)
 >それをこっそり?見ていたバズーもバズーという感じでしたが
バズーは段々、あれこの人、アハメスのファンなのでは?感が出てきていますね(笑)
 >海賊さんとブーバ(そう言えば宇宙海賊だったっけ、と思い出させてくれるのも良かったです)とのコンビネーションも良く
 >素直にカッコいいレベルでした
あの二人のアクションが、この回はホント良かったですね。
 >相変わらず民間伝承を1人で受け継ぐ少年と不自然なまでに宇宙の伝説に詳しい長官がセット扱い
長官ホント、何者なんでしょうね……地球守備隊のオカルト部門でそういう資料ばかり編纂している内に、禁断の叡知に目覚めてしまったのでしょうか……。
 >単なるシンボルとしての御神体かと思ってた黄金蝶が本当に本物だったというのは流石に驚きましたが(笑)
あれ、本物が石化していたのか、シンボルを媒介に黄金蝶の奇跡が発現しただけなのか、解釈に悩むところですね……。
 >馬ってリアルにバカでかい動物なので撮影とはいえ周りの緊張感がハンパない感じでした(苦笑)
専門家とコネクションがあったのか、慣れたスタッフが居たのか、かなりの登場時間で、今作はこういうところ、力入れてきますよねー。
 >しかしどうするのかと思ってたら容姿なく爆死してしまったペガサス号…(泣)
80年代のノリというか……イルカは爆死しなくて良かったな、としみじみと……。
 >ルーブは新しい映像表現への挑戦をしてましたね
CG戦闘だったのですかー。ウルトラマンはもともと「光」と親和性が高いので、予算規模の大きい劇場版だと、色々な映像を試せそうですね。
 >キャプテンマーベルのほうは凄く似た図式として ワンダーウーマンを思い出しました
ああ成る程、確かにそうなりますね。『ヴェノム』『スパイダーバース』『キャプテンマーベル』と、色々気になっております。

キラッと光るソウル!

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第1話

◆第1話「ケボーン!!竜装者」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:山岡潤平
 マスターレッド!
 マスターブルー!
 マスターピンク!
 という、この上なくストレートな呼び名に、思わず笑ってしまいました(笑)
 「今から、お前達が、リュウソウジャーだ」
 リュウソウルと剣を受け取り、リュウソウジャーとなった3人の若者――彼らが暮らし、そのパワーの源である神殿をいただくリュウソウの森……それは、青木ヶ原樹海にあったのです。
 そこへやってきたYoutuberを通して、リュウソウジャーの暮らす村が世人には秘密の隠れ里である事、リュウソウジャーはその境界を瞬時に乗り越えて行き来できる事、ただし外部の人間との接触は堅く禁じられている事、がさらりと説明され、謎の生き物に襲われたYoutuberを助けるべく、二人のリュウソウレッドが割って入る、ところで通常通りのOP。
 盾と槍を構えた敵戦闘員はチェック柄がお洒落で、青い幹部がルーク(城砦)に見える事を考えると、敵キャラの基本モチーフはチェスでしょうか。戦闘員にはどことなく“トランプの兵士”めいた印象も漂い、『不思議の国のアリス』もイメージに入っていそうですが、そうするとスライムキノコは帽子屋?
 そうそうそうそうその調子!でチェック兵を軽々と蹴散らし、掴みのバトルから派手なトライアングルダイナミックするリュウソウジャーだったが、それは、かつて恐竜が栄えた時代に地球征服を目論み、今から6500万年前に宇宙へと逃げた、戦闘民族ドルイドのほんの様子見に過ぎなかった。
 「奴らの狙いは恐らく、神殿に眠る大いなる力だろう」
 リュウソウジャーのパワーの源であり、リュウソウ族が守り続けてきた“大いなる力”――それは、リュウソウ族の先祖がドルイドン族に対抗すべく作り出した最終兵器」騎士竜。
 生体兵器めいたものを「作り出した」と明言されている辺りに、リュウソウ族の先祖へ対する不審ゲージがケッボーーーンと上昇していくのですが、戦闘民族の割に名前が「ドルイドン」だったり、100%リュウソウ族主観で語られる過去の歴史において、最終兵器を使う事なくドルイドンが「宇宙に逃げた」くだりに若干の不自然さが感じられたりと、割と歴史の暗部がありそうでワクワクします(笑)
 「ドルイドンなんて、俺が蹴散らしてやるよ」
 新たなリュウソウジャーとなった3人の若者達は、近づく戦いの気配に緊張を隠せず、ここで赤が、無鉄砲なのでも自信過剰なのでもなく、桃の様子を見て敢えて威勢のいい言葉を口にした、というニュアンスがあったのは非常に良かったところ。
 「油断は禁物だ」
 「大丈夫。俺と、メルトの剣の腕と、あと……アスナの馬鹿力があれば」
 「はぁ~?! 誰が馬鹿力、よ!」
 立ち上がった桃がつかつかと近付き、赤の胸を突き飛ばした瞬間、カット切り替わって煙を上げて岩に激突している赤、というのは大変面白かったです。
 第1話で一番面白かったかも(笑)
 岩に激突した赤は、いつの間にか隠れ里に入り込んでいたYoutuberを発見。Youtuberはバナナで3人を懐柔しようとするが、そこにいきなり長老が登場。
 「この村では、なんぴととも、外部の者を入れてはならん。コウ!」
 「ハイ!」
 「座敷牢に閉じ込めて、一生そこから出すな 夜明けと共に連れ出し、記憶を消せ」
 パワー系の青い敵幹部(割とさくっと退場しそうな予感)がCV:中田譲治だったり、そこかしこで『動物戦隊ジュウオウジャー』を思い出さずにいられないのですが、偶然なのか意図的なのか、「歴史の暗部」とか「侵入者の処分」とかで『ジュウオウジャー』を思い出す私がおかしいのか。
 「リュウソウジャーをコウ達に継承して、正解だったと思うか?」
 「あいつらなら心配ない。まだまだ未熟だが、騎士として最も大事なソウルが……あいつらには既に宿っている」
 「……そうだな」
 「まあ、手は掛かるけどね」
 翌朝――3人のマスターがコウ達について語るシーンを挟み、Youtuberを樹海の外へ送り届けたコウが、記憶を消すハンマーを構えて「大丈夫!」と笑顔を浮かべるのが、割と真人間に見えるが隠れ里育ちでどこかズレている表現としてはまりました。第1話から結構、色々な表情を引き出す演出と脚本になっていますが、レッドの役者さんもそれに応えており、スタッフ側の期待値がだいぶ高そう。
 Youtuberが抵抗を見せようとしたその時、樹海の入り口に巨大怪獣マイナソーが出現。冒頭の、存在を匂わせるシーンに続き、丘の向こうから叩きつけられる巨大な尻尾、直後に視界に入る頭部、など、かなり東宝というか円谷風味の演出。マイナソーのデザイン(100%怪獣)もあったのでしょうが、長老役の団時朗さんへの意識もあったりしたのでしょうか。
 この襲撃にW赤は神殿に向かい、残り4人は怪獣を止めようとするが、神殿にドルイドンが侵入した事により大いなる力が影響を受け、リュウソウジャーは変身不能になってしまう。神殿では青い幹部タンクジョウ、外では怪獣の攻撃から3人の若者をかばってマスター3人が次々と命を落とし、かなりストレートに、喪失を描写。
 変身可能な先代をどう処理するのだろうと思ってはいたのですが、どちらかといえば陽性の作風なのかなと見ていたところで、ここまで明確に殺してきたのは、予想外でした。
 演出が上堀内監督という事で、一瞬、キラキラ劇場が始まったらどうしよう……とか考えてしまいましたが、『ビルド』の傷跡は深い。
 「終わりだ……」
 「駄目だよ……たたかわなきゃ……」
 「マスター! マスターしっかりして!」
 「おまえも……俺も……ソウルは一つだ」
 生き残ったコウにタンクの剣が振り下ろされようとした時、コウの首飾りが光るとその巨体を弾き飛ばし、真紅の光の揺らめきに包まれたマスターレッドの肉体が消滅。そのソウルがコウの持つリュウソウルに宿り、コウはリュウソウレッドへと変身する!
 「おまえは……俺が倒す!」
 このくだりが正直わかりにくかったのですが……本来は変身できない状況から、死者のソウルでブーストして変身を可能にした、という理解でいいのでしょうか。
 聖域を汚された的なニュアンスと推測されますが、「ドルイドンが神殿に侵入したから」変身能力が失われてしまう、という状況設定の説得力が弱かった為、マスターレッドの遺志と限界を超えようとするコウの闘志がその状況をひっくり返した、という瞬間が、第一のクライマックスとしてピークを合わせてきたにも関わらず、もう一歩、劇的にならなかったのは残念だった部分。
 「覚えておけ。この星はもともと我々ドルイドンのものだ。必ず返してもらう」
 新生リュウソウレッドの猛攻にひるんだタンクは、怪獣の攻撃により神殿が崩壊したのを機に撤収。リュウソウレッドは封印されていた騎士竜の内部へ転送され、ソウルを一つにする事で、巨大な竜の騎士が目を覚ます!
 予告映像はかなりロボット押しの感じでしたが、弾け飛んだ神殿の中から姿を見せたリュウソウロボが大爆発と共に動き出し、一気にダッシュで怪獣に躍りかかる、というのは大迫力。戦隊ロボとしては『手裏剣戦隊ニンニンジャー』のシノビマルが同じ路線でしたが、合体後のロボで上半身に重厚感を残しつつ、下半身をスマートにしてスピード感を伴わせる、というのは挑戦的で、今後の見せ方も楽しみです。
 神殿の残骸をリングに見立て、回転運動を主体とした殺陣も格好良く、リュウソウロボはドリルニーからブレードキックの連続攻撃でパーツ付け替えギミックを見せると、低い姿勢から滑り込んで切り払う必殺剣で、巨大怪獣を撃破。ドルイドンの襲来をきっかけに、かつて使われる事なく眠りについた最終兵器が、現代に甦るのであった!
 「お前達のリュウソウル……。神殿の力は無くなっても……パワーは失ってはおらぬ」
 長老……たぶん、直接的な戦闘力は無いので、村人の避難誘導などをしていたのかとは思われるのですが、前線で3人が戦死した後にしれっと出てきて、その事には一切触れずにそれらしい語りを始めるという人でなし度を急上昇させる演出に、東映特撮の確かなDNAを感じます。
 「これからは、俺達が守ります。この地球を」
 3人はマスターのソウルが篭もったリュウソウルを手にリュウソウチェンジし、フル変身だと祭が始まるのは、これはもう完全に『獣電戦隊キョウリュウジャー』オマージュと思えますが、過去作品を想起させる要素は、世代を超えたフックとして意図的に仕込んでいる雰囲気。
 「勇猛の騎士! リュウソウレッド!」
 「叡知の騎士! リュウソウブルー!」
 「剛健の騎士! リュウソウピンク!
 「「「「正義に仕える3本の剣! 騎士竜戦隊・リュウソウジャー!」」」
 ピンクが大変力強く、マッスル担当である事を宣言し、騎士竜をバックに3人が揃い踏みを決め、つづく。
 ブルーとピンクが倒れている間にレッドが一人で合体ロボを操り敵を撃破する、という変則的な構成ながら、最後に戦隊としての名乗りを決める事で戦隊フォーマットへのこだわりを示し、「多人数戦隊」「VS戦隊」というこの2年の変化球から、王道フォーマット再び(でも、その中で進化とアレンジは模索し続けます)という方向性をまず見せてきた感のある第1話。
 メインライターが特撮作品初参加という事も考慮されたのか、スタート時点のメンバーを3人に絞ったのは良い判断だったと思いますし、それもあって『スーパー戦隊最強バトル!』で黒と緑だけが先行出演していたのか、というのも納得。
 その上で更に、青と桃の掘り下げをほぼ切り捨て、とにかく赤を中心に進める事で展開をスッキリさせ、情報が整理しきれなくなったり、焦点が散漫になってのジャンプ失敗を避けましたが、第2話以降で青や桃のキャラクターをしっかり見せていけるのか、それとも悪い意味でこの流れのままレッド偏重になってしまうのか、というのがまず一つポイントになりそう。
 また、戦隊作劇では1話勢い2話説明、というのがよくあるパターンとはいえ、今回時点では「ソウル」というのがあまりにも言葉先行になってしまっていたので、次回、その中身をしっかりと詰められるのかというのが気になるところですが、サブタイトルからは意識があるようなので、期待したいです。
 王道路線を感じさせつつ、どちらかといえば<平成ライダー>寄りに思われるリズミカルなギミック、キッズアニメの世界では既に定番化しているYoutuberネタ、などを取り込んでいるのが物語とどう融合していくのか、第1話時点では、特別グッと来るところは無かったがとにかく大事故は起きなかった、という印象なので、各キャラクターの掘り下げと共に、どんな戦隊の形が生まれてくるのか、楽しみにしたいと思います(今回の時点ではまだ、戦隊未満でありましたし)。
 先代のソウルを受け継ぐ事で強引にブーストして変身を可能としている(?)、というのはかなり重い設定ですが、あまり翳りを感じさせないキャラクター像と、背後に横たわる重い使命、の光と影をどういいったバランスで見せていくのかも、気になるところ。
 そういえば、OPでサポートキャラの思わせぶりなカットがある、というのは戦隊OPでは割と珍しいような気がして(他にも意味深なカット多め感)、その辺りの仕込みがどう出るかも、興味深い点。それにともない、スライムキノコのウェイトが随分と大きくなっているのですが、やはり、Youtuberとしてチャンネル登録者数を競い合うライバルになっていくのか。
 EDにはダンスが復活し、今回のダンスヤバい枠は誰かドキドキしたのですが、黒の人は、笑顔を浮かべる余裕が無いのか、キャラ付けとして意識的にあの表情なのか、微妙……大変微妙…………。
 ダンスヤバいチーム(とりあえず、トッキュウ4号とジュウオウエレファントは確定)は、次の最強バトルに向けてメンバーを募集中です!

少年は力を、少女は神を信じた。

ファイアーエムブレム Echoes』感想

 ここしばらくやっていたファイアーエムブレム Echoes ~もうひとりの英雄王~』をクリア。ファミコンソフト『外伝』(家人のプレイを背後で見ていただけなので、ところどころ印象に残っているが全体の記憶はざっくり気味)のリメイク作品で、『覚醒』『if/白夜』と続けて、システム面はともかくシナリオが大惨事だったので、物語の強化を謳うリメイクに不安が大きかったのですが、いやこれが面白かった!
 もともとゲームボーイアドバンス時代ぐらいまでの《FE》シリーズは、ストーリー部分はあっさり風味で、行間をプレイヤーの想像に任せる余地が大きいスタイルでしたが、そういったシリーズのスタイルと、物語部分の濃度と解像度を上げる事でプレイヤーへの訴求力を強めたいという方向性との間にあるズレが、シリーズ近作においてゲームデザインそのものに歪みをもたらしていた面があったのに対して、RPG色の強い『外伝』をベースにする事により、幕間を拡大・拡散し、“ストーリーの語り方”そのものを変える、というアプローチが成功。
 『覚醒』『if』はシリーズ従来のゲームデザインと、ストーリー性の強化(極めて単純に言えば、マップ間のテキストの増量)の擦り合わせに苦戦した結果、だらだらとした幕間がテンポを悪くした面がありましたが、今作ではそこをもっと思い切って踏み込み、キャラクターや世界の背景描写の強化・フルボイス化・随所に挟まれるイベントCGとムービーという、シリーズがその歴史において“選択しなかった方向性”に向けて切った舵が、テンポの変化を乗り越えて、今作独自の魅力となる事に成功。
 勿論それは、《FE》シリーズが実際に積み重ねてきたゲームデザインの持つ魅力を損なう部分を持ち、実際に“選択されなかった方向性”であるわけですが、『外伝』という舞台を得る事により、選択されなかった要素を巧く展開する事が可能となり、ゲームデザインの良くまとまった一作でした。
 イベント性の強化の面で特に良かったのは、個人的に苦手な中途半端ボイス(「待て!」とか「何という事だ……」とか、台詞の冒頭だけ音声が出て、後はテキストオンリーの手法)から、フルボイスになった事。フルボイスはフルボイスで諸刃の剣ではありますが、中途半端ボイスに凄く没入感を削がれるタチなので、どうせやるならフルボイス、になってくれたのは良かったです。
 また、『if』に見られたような中途半端に差し込まれるCGムービーではなく、明確に区分けしたアニメムービーを挿入する形になったのもアクセントとしてはわかりやすく、全体的に「その気になれば出来るのではないか」感が。
 これは上述したように、シリーズ従来のゲームデザインとの擦り合わせにおける試行錯誤があったのかと思われますが、シリーズ近作の陥っていた混迷が、『外伝』のゲームデザインと融合する事により一つのブレイクスルーを果たすに至り、恐らくは原典『外伝』がその企図として内在させていた“《FE》シリーズ進化のもう一つの方向性”が、20年以上の時を経て遂に形になった――『外伝』の先にあったかもしれないもの、いわば、「もう一つの『ファイアーエムブレムif』」であるのかな、というゲーム。
 なお、わかりやすいので比較対象として持ち出していますが、『if』はともかく、『覚醒』はゲームとしては好きです。
 両作においてセールスポイントであると同時に短所の面も持っていたユニット間の支援会話に関してはかなり絞られ、大体、1ユニットにつき一人か二人程度。少し絞りすぎて寂しいかなとも思いましたが、多すぎるよりはスッキリして良かったです。内容の出来は、しっかり作り込んであるのと、物凄く雑なのと、極端(笑)
 支援会話が少ない一方、村などを訪れた時に自軍のキャラと会話する拠点会話があり、章の進行によって変わる内容で個別のキャラ掘り下げをする、というのはゲームデザインとも噛み合いスマート。
 ストーリーの方ですが、バレンシア大陸全土を巻き込む戦乱に、アムルとセリカ、二人の主人公の立場で臨む、というのが今作の基本構造ですが、その「二つの立場」というのを物語を貫く軸として取り込み、「王の物語」を描くにあたって、「王と民の物語」として構築されている、というのが何より秀逸。
 プレイ当時に旧ブログにおける『覚醒』の感想で、「主人公が守ろうとする国や民の描写が欠落している」ので「そういったテーゼを持ち出すと中身が無い」点について触れましたが、今作は「王」に対する「民」、「貴種」に対する「平民」、という、対応する概念がしっかりと書き込まれており、それが今作のテーマの一つである「神と人の物語」とも接続しあっている、というのが考えられた構造。
 そして、貴種の中にも様々な物の見方があり、平民にも戦乱の中で立身出世を目指す者が居れば、元の分相応な生活に戻るのが一番だと考える者もおり、それらの温度差が意識的に織り込まれている事で、「英雄」の存在と意味がより鮮やかになる、というのもお見事。
 特にこの点において、アムル軍初期メンバーの村人トリオ(+1)が、“プレイヤーの任意で育成できるユニット”というゲーム的な意味ばかりでなく、物語の中で「村人」である事が重要な意味を果たしている、というのも良く出来ていました。
 ベースとして俯瞰できる原作の存在はありますが、しっかりとした芯を持って構成されたシナリオは高評価。追加キャラクターも変に物語を現代風にして要素を増やそうというより、ド王道の英雄譚である原作を尊重し、それを補強する為のわかりやすい造形に徹する、というのが良い判断だったと思います。憎まれ役も強化されているのですが、序盤から顔芸を連発するスレイダーさんは、物語を強烈に彩る怪演で割とお気に入り(笑)
 惜しかったのは、教団の妖術師などではない、一般のリゲル国民のドーマ信仰の描写が無かった事で、それがあるともう一つ「神と人の物語」として深みが増したのですが。
 今作は一見、善神と悪神の戦い、という構図のようでいて、善神の甘い導きもまた人を堕落させてしまった、という要素が描かれているのが面白みで、その辺りも巧く、原作を活かしてくれて良かったです。
 システム面ですが、『if/白夜』があまりにぬるま湯だった為、今回は最初から〔ハード〕でプレイした結果、色々と大変でした。
 とにかく序盤から総力戦!
 誰を優先して育てようとか、そんな事を考えている余裕のない総力戦!
 とにかく特定ユニットを贔屓している余裕が無く(さすがにW主人公はなるべく優先しましたが)、今居るパーティメンバーのリソースを生かし切って切り抜ける、というのが従来シリーズよりもRPG感の強いところなのですが、《FE》だけどちょっと違うというプレイ感覚が、思いの外楽しかったです。
 普段なら絶対に育てず2軍送りのキャラが、使いこなさざるを得ない状況で変な育ち方したりとか(笑)
 各マップもかなり嫌らしい作りで殺しにかかってくるのですが、 目先の戦いを突破する為にクラスチェンジをするかしないか、武器を強化するかしないか、というトータルのマネジメント要素も含めてシミュレーションRPG面も全体的に面白かったです。
 結果的には、クラスチェンジを引っ張りすぎて無駄に死闘をしていた部分もあったのですが、それはそれで解禁後が楽しかったですし、解禁すれば楽に抜けられるかというと、これまた嫌なマップ構造で単純には突破できないというのも良く出来ていました。クリア後に『外伝』の攻略本を読んだら、全体マップも戦闘マップも基本的に原作を踏襲しており、マップデザインは原作から良く出来ていたのだな、と。
 先の見えない状況でリソース管理をしないといけない序盤~中盤が一番苦しいのですが(この辺りもRPG的なレベルデザイン)、好きなタイミングで一定回数任意の手順まで時間を巻き戻せる「ミラの歯車」、3ターン目以降なら敵の戦力を削った状態で全体マップに戻れる「撤退」という二つの救済手段が用意されており、特に後者を駆使すれば割となんとか進軍可能な感はあり。道中の詰まり回避システムであり、最終章では結局、地力を試される事になるかと思いますが。
 「ミラの歯車」は死者即リセットをせずに済む超便利アイテムですが、〔ハード〕だと、それがあってストレスにならない、ぐらいのゲームバランス。
 難を言うとラストダンジョンが少し長すぎてダレましたが、ダンジョンは意図通りなのはわかるのですが視認性が悪く、ややストレス。それを除くと大きな不満もなく、(プレイヤーの任意で調節できる部分も含めて)やり応えがあって良かったです。
 以下、両軍のキャラクター雑感。このゲーム、基本的に成長率が悪いです(〔ハード〕補正?)。そして、とにかく壁役が重要です。

-アルム軍-
 ◆アルム:主人公。主人公らしくぼちぼち育つ。ド王道の勇者キャラなので、キャラ的な思い入れは特になし。リデザインは悪くない感じだっと思います。
 ◆グレイ:村人1。ストーリー必須キャラ(固定で仲間になり、ストーリーイベントに登場する)で、初期から比較的能力高め。傭兵ルートで魔界転生(傭兵系の再上級職である魔戦士は、LV10になると村人に戻れる)し、全軍第二のマッチョキャラに。
 ◆ロビン:村人2。ストーリー必須キャラで、アルムやグレイに対するカウンターとして、全体通して非常にいい味を出している、ストーリー面で重要なキャラ。成長率は微妙。家族の『外伝』プレイでアーチャー系が強かったのを覚えていたので、アーチャー系にクラスチェンジし、最終決戦までほどほど活躍。
 ◆クリフ:村人3、だが、ストーリー必須キャラではなく、ちょっと寂しい。物語上のフリとしては魔道士候補だったようなのですが、とにかく追撃できなくては話にならない、と傭兵になり、いかづちの剣要員として活躍。攻撃力は最後まで伸び悩んだものの、後半になって守備力がどんどん上がり、最終的には鋼鉄の魔戦士に。
 ◆エフィ:今作追加キャラ。アルムに片思いの村娘、という設定が如何にもすぎて使う気は無かったのですが、そんな事言っている場合ではない状況下で、魔法要員に。中盤の成長率が良く、魔法使いなのに壁要員となり、このキャラが居なかったらクリアできなかったかもしれない局面多数の敢闘賞。
 ◆ルカ:ストーリー必須キャラなものの、微妙なソルジャー。微妙。
 ◆シルク:貴重なシスター。シスターにしては足が速くて助かりました。多分「ワープ」が売りなのですが、このゲームに「ワープ」戦術を使う余裕は、終盤まで無し。
 ◆クレア:貴重なペガサスナイト……ではあるものの、Pナイトの例に漏れず、筋力(攻撃&守備)不足の為、敵の攻撃が激しい〔ハード〕では前線に出しにくく、結果、飛んできた矢に当たって急死しないように敵アーチャーの攻撃範囲の外側をうろうろしていた事が多かった印象。
 ◆クレーベ:ソフィア王国の誇る勇猛な武人にして、ソフィア貴婦人の憧れの的、CV:神谷浩史の貴公子、の筈なのですが……CV:神谷浩史以外、全部プロパガンダの偽情報なのではないかという疑惑のある、ぼんやりした顔のへっぽこSナイト。とにかく育たず、追撃も出来なければ壁にもなれない無能ぶりで困りましたが、アルムとの関係性が大きく掘り下げられたストーリー面は良かったです。
 ◆パイソン:家人の『外伝』プレイにおいて、やたらめったら育って大活躍した為に、我が家では通称“将軍”と呼ばれていたアーチャー。ぼちぼち育ってぼちぼち活躍。基本的にやる気はないがやる時はやる、というキャラ付けも良かったです。
 ◆フォルス:暑苦しいソルジャー。ルカと被っているがさして守備力が高いわけでもない、という微妙なポジションで、中盤まで常に総力戦を強いられる今作にしては、あまり使いどころのなかったキャラ。
 ◆マチルダ:CV:甲斐田裕子!(大変重要)で戦場を駆ける女丈夫であり、もはやワンダーウーマン。ぼんくらな恋人と違って全体的に成長率が高いが、どうも騎士としてはクレーベより有能(だが本人はクレーベにべた惚れの為に認識が若干ズレ気味)というのは、劇中の設定の模様。そして支援会話が大変バカップル。何故か公式サイトのキャラ紹介に載っていない一人なのですが、CV:甲斐田裕子だと、もっと早く教えてほしかった。
 ◆リュート:貴重な魔法要員……で参加当初はかなり活躍したのですが、しかし、世の中には兄より優秀な妹が居るのだ。
 ◆デューテ:如何にも育ちそうなポジションで、実際に育つ優秀な妹。打たれ弱い弱点を除けば、強い。
 ◆ティータ:終盤に仲間になるので戦力としてはなんともいいがたい聖女。
 ◆ジーク:終盤に仲間になるので戦力としてはなんともいいがたいGナイト。色々あって、扱いの難しいキャラ感。
 ◆マイセン:終盤に仲間になるので戦力としてはなんともいいがたいGナイト。

セリカ軍-
 ◆セリカ:攻撃魔法・回復魔法・剣装備可能、という初期職業「神官」が優秀な為、通して強かったもう一人の主人公。感触的には、アルムよりも育ち、終始、強キャラでした。メインでよく喋る為に、声がちょっと、個人的なイメージと離れていたのが少し残念(私の中では『外伝』は『F91』なので、セリカの脳内CVは冬馬由美さんであり、ご本人とは言わずとも、冬馬さん寄りの声質が理想だったな、と)。
 ◆メイ:攻撃力と速さの伸びが高い、セリカ軍のエースアタッカー。
 ◆ボーイ:当初は2軍送りにしようと思っていたのですが今作のバランスではそうも行かず、ぼちぼち育っている内にやたらめったら頑丈さだけが増していき、攻撃力はほどほど、足は遅いが、いっそ開き直って鋼の盾を装備した結果、前線で敵の攻撃を受け止めながら一発ずつファイヤーで殴り返す、移動砲台のような仕様に。特技は、敵の魔法使いの二回攻撃を受けて死にかける事。
 ◆ジェニー:貴重なシスター。終盤やたらと攻撃力が伸びた結果、最終的にドーマ教団の妖術師共を片っ端から葬り去って行く魔法兵器に。
 ◆セーバー:もやし軍団の大変貴重な、前衛に立てる人。盾というほどの防御力がないものの、頑張ってくれました。ストーリー必須キャラにも関わらず、中盤、成長がいまいちでヒヤヒヤしましたが、後半から守備を中心にぐいぐい伸びてくれたお陰で、盾になれる傭兵として大活躍。魔界転生後は、全軍トップクラスの能力値に。
 ◆バルボ:もやし軍団の大変貴重な盾約。何故かFC版の箱絵に描かれていたのは伊達ではない! という大活躍。「俺には通らないぜ!」に何度助けられたかわからない兄貴分。普段使わない事もあり、歴代シリーズで最高に思い入れの出来たアーマーナイトかも(笑)
 ◆カムイ:糸目の傭兵。非常に微妙な成長率でしたが、最終的には魔界転生
 ◆レオ:同性愛者、という最も大胆なリメイクを受けたキャラながら、変にネタにするのではなく、自他共にそれを認めた存在として描かれているという点で、今作における最も現代的なリメイク要素といえるでしょうか。アーチャーなので、最後までぼちぼちと活躍。
 ◆パオラ:Pナイトにしては攻撃力が育ち、しかしPナイトにしては足が遅く、そして守備力はやはり無い為、「お姉様に任せなさい!」というほどには任せられないペガサス三姉妹の長女。シリーズ近作と違い、今作のPナイトは特に魔法防御が高いわけではない為、油断していると「魔法攻撃を受けて瀕死になる」のが特技。自分から色恋ネタを振っておいて、自爆する姿には涙を禁じ得ません。
 ◆カチュア:お姉様よりは筋肉は無いが素早く、魔法防御が比較的高い為、平均的に最も使いやすいペガサス三姉妹の次女。やはり色恋ネタで自爆気味に(以下略)
 ◆エスト:成長率は高いながら、やはりPナイトは筋力不足の為に使いにくく、プレイヤーの愛の問題もあって微妙な位置づけのペガサス三姉妹の三女。基本的にパオラ姉さん派です。
 ◆アトラス:村人から傭兵ルートを辿り、魔界転生を経た全軍最強の筋肉を誇るマッチョで、自軍最強キャラの一角。とにかく無闇に強かった。
 ◆ジェシー:スピード特化型傭兵。やや筋力不足なものの、全般的に成長率の低い今作では、特定の能力値の伸びが良いのは使いやすい為、それなりに活躍。
 ◆ソニア:二択の魔女。能力値の伸びはそこそこながら、魔道士→神官なので、使い勝手が良し。原作でどこまで掘り下げされたか覚えていませんが、恐らく今作で補強されたキャラの掘り下げ部分が良かったです。
 ◆???:終盤に仲間になる今作オリジナルキャラなので、一応シークレットに。普通に強いが、良くも悪くも普通。
 ◆ノーマ:困った老人。

 プレイ時間は約70時間。最終マップでの演出も定番ながら熱かったですし、音楽も良く、満足の一作でした。